食育を通じて子どもたちの生きる力を養い、一方で、国民の間に広がる肥満や生活習慣病を抑制するため、食生活を改善したり、安全面を確保したりする必要が社会に生じてきた。日本人の食の大半は海外への依存度が高く、四季の変化に伴う豊かな自然の中ではぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚、そして日本の食文化が失われつつあるという危機意識から、「食育基本法」が制定されたのは平成16年のことだった。
今年2月、高知県で開かれた全国教職員組合主催の教育研究集会において京都府立高校の教師が報告した「生徒の食生活実態調査」には、正直驚かされた。「朝食抜き」、昼は「菓子パン一個」、夜は「カップラ−メン」。これが育ち盛りの高校生の一日の食事だというのだ。
私自身の高校生活を振り返ってみると、部活は「柔道部」に所属していたものだから、毎日の練習の後はとにかく「腹が空いて」いた。当時は家元を離れた男女生徒共同の寮生活だったから、おかずは十分ではなかったが、その代わり「たくあんの漬け物」と「ふりかけ」だけはあった。おかずで茶碗3杯、残りはたくあんとふりかけだけでもう2杯や3杯ぐらいは皆、軽く食べていた。
ところでこの教研集会の報告はさらに続き、授業の途中で「疲れた」として保健室にやってくる生徒は一年間に千三百八十四人にのぼり、在籍する生徒の約二倍の数に達しているとされた。
小学校以来、親に朝食を作ってもらったことがないという生徒もざらにいるという。国の法律はできたものの、実行する国民の側に理解や協力の姿勢がない。
私は嫌いだが、テレビの「大食い番組」が常態化し、飽食の時代といわれる今日だが、次代を担う子どもたちのこの貧しい食生活で、この国は本当に大丈夫だろうかと心配になってくる。 |
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