我が国の近代は、第二次大戦の敗戦とその後の復興期を経て、世界に冠たる経済国家をつくりあげてきた。
それでも台風や集中豪雨、地震などの自然災害や交通事故などの人災に見舞われ、平和のうちにも多くの貴重な人命を失い、経済的な損失を蒙ってきた。そうした繰り返しの中で、それを教訓としてきたと考えている。
それにもかかわらず、平成16年7月の集中豪雨、同年10月の新潟県中越地震などにおいて、一人暮らしの高齢者や要介護者、重度の障害者などへの対策が十分でなかったことが浮き彫りとなった。
国は平成17年3月、地方自治体が所有する福祉部局の「要援護者情報」を防災部局や地域の自主防災組織などと共有する「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定した。
この中で「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合で、本人の同意を得ることが困難であるとき」は個人情報保護法の適用除外であるとして、ガイドラインでは本人の同意を必ずしも求めていない。
しかし、自主防災組織などには守秘義務がないこともあって、自治体の中にはこれを疑問視するところもあるようだ。
国は作成を急ごうとしているが、少子高齢化や核家族化の進展に伴う「地域力」の低下、あるいは要介護度や障害の等級などの個人情報を一方的に提供することへの抵抗感も強い。
また、要援護者の日常行動を常に追跡把握する必要があること、個別の支援計画の作成事務量が膨大になることなどを理由に、全国的に市町の腰は重く、新政令市浜松をはじめ、本県内の他の市町も同様に遅れている。
こうしたことから、本県は先に「市町災害時要援護者避難支援モデル計画」を作成し、早急に市町における要援護者支援計画を作成するよう求めたところである。
自主防災組織は自治会役員と兼任で、しかも高齢者が大半を占めている現実を見ると、要援護者と援護者は同じ被災者としては「紙一重」だ。
中学生や高校生などの地域の若い力をどう活用するか、学校も含めて、今その知恵が問われている。
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