県議会における質問
  平成04年9月議会  
1 地球規模の環境問題について
        1)県庁内のフロン対策
        2)市町村及び産業界のフロン実態調査
2 地域規模の環境問題について
        1)環境財団による浜名湖の浚渫
        2)骨材資源としての活用
        3)環境教育
            ・環境教育の展開
            ・野外活動施設の活用
            ・環境読本
        4)産業における環境対策
        5)建設発生土の再処理施設
        6)再生材の検査体制
        7)農業用廃プラスティック対策
3 小規模授産所の事業について
          ・授産所における自然農法の導入
                        
○浜井
 去る9月20日、無地帰還し、旭に包まれるスペ−スシャトル「エンデバ−」の横で大きく手を振る日本人初めての宇宙飛行士毛利衛さんの笑顔が、今でも鮮明に浮かんできます。子供たちに夢を伝えたいと地上と結んで行った宇宙授業や、34種類もの宇宙実験を通じて、私たちは改めて宇宙の不思議と神秘に驚き、多くの子供たちとともに新たな宇宙への夢と希望を心に抱いたものでありま
した。
 毛利さんが宇宙空間から感慨を込めて跳めた地球は、今、大気汚染・水質汚染・温暖化・熱帯林減少などの傷を負い、まさにSOSを発し始めているのであります。
 今年ブルジルで行われた環境会議は大きな話題を呼びましたが、実は平成元年九月、日本政府及び国連環境計画主催の地球環境保全に関する東京会議が開かれたことを記憶している方は少ないと思われます。
 この会議こそ、我が国が地球規模での環境保全に積極的に取り組む姿勢を示した初めての国際環境会議でもあったのであります。
 地球規模で考え、そして地域規模で行動する、今、私たちに可能な行動を起こして地球の悲鳴に対する救いの手を差し伸べるときが来ていると思うのであります。

○浜井
 そこで、地球規模の環境問題についてのうち、県庁舎のフロン対策について伺います。
 青く美しい水の惑星、この地上には、成層圏と呼ばれる大気の層があり、さらにその内側に存在するオゾン層が太陽から降り注ぐ有害な紫外線を吸収し、すべての地球上の生命を守る大切な役割を担っています。
 さて、今世紀の最も大きな発明の一つと言われるフロンは、冷蔵庫、エアコン、カ−ペット、包装用パッキング等の日常品の中で、また半導体、時計など電子部品や精密機械、果てはドライクリ−ニングの洗浄溶剤にまで、極めて便利に使われてきました。しかし、このフロンがオゾン層破壊の元凶であり、地球温暖化の共犯であることが証明されると、国連は直ちに行動を起こし、昭和60年、ウィ−ンで開催された環境会議で破壊物質規制条約を制定、続く昭和62年には、フロン11、フロン21、フロン113から115まで5種類の特定フロンについて今世紀末までに全廃することを目指したモントリオ−ル議定書を取り交わしました。
 我が国もこうした動きに同調し、昭和63年には、オゾン層の保護を図り、前述の条約並びに議定書の趣旨を実行に移すため、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律を制定し、冷房用冷媒として最も使用頻度の高い特定フロン11の生産と消費を全廃することを世界に約束したのであります。
 最近では、南極に続き北極上空のオゾンの減少も確認され、モントリオ−ルの地で多くの科学者たちが憂慮した当時をはるかに上回る速さで、ぞの破壊は進んでいると言われているのであります。
 こうしたことから、議定書締約国は、当初の予定を繰り上げ、3年後をめどに特定フロン全廃に動き出したことから、政府も急遽、庁舎を初め一部省庁の出先機関も含めて、順次、代替物質に切りかえる方向を打ち出しました。
 産業界も、企業経営と環境保全という大きな命題に対する真剣な取り組みが始められており、特に時計業界などは、挙げて来年中のフロン全廃を決め、県内においても、フロンも含めた環境対策を考える部署を新設する会社があらわれるなどの新しい動きが見られるようになりました。
 県はことし6月、「静岡県における地球にやさしい実践行動計画」を定め、フロン対策について県民が守るべきこととし、フロンガスを使用しないスプレ−など、できるだけエコマ−クつきの商品を使用するよう啓発活動を開始したところであります。
 そこでまず、県みずからが行うことのできる地球規模での環境対策は、現在、東館の冷媒として使用中の特定フロン11について、平成7年とする国の目標を参考にしながら積極的な対応を図っていくことであると思いますが、知事のご所見を伺うものであります。

○浜井
 次に、市町村及び産業界のフロン実態調査について伺います。県下の市町村では、昭和50年代以降今日まで、それぞれがその特色を生かした個性的ですばらしい冷暖房完備の役場庁舎や文化会館などの諸施設が建設されてきたことと承知しています。 また、前述したように、フロンは近代工業社会のあらゆる産業分野において便利に使用されてきました。
 予想外に速く進行するオゾン層破壊に対応して、各国とも全廃目標をこの秋にも繰り上げる可能性が出てきたことから、県は市町村及び産業界における特定フロン使用の実態調査を行っておくべきであると思いますが、ご所見をお伺いいたします。

○浜井
 地球規模から、次は、地域規模における環境問題について伺います。
まず、浜名湖の浚渫と資源の有効活用についてであります。全国的に増加を続けるプレジャ−ボ−ト対策については、本県が全国に先駆けて河川法施行細則の一部改正を行い、ハンドルの形状の如何を問わず、すべての20トン未満の原動機付船舶に対し通航許可証発行制度を発足させました。
 これまで浜名湖における推定船籍の数はおよそ1万隻。そのうちのおよそ7千5百隻のプレジャ−ボ−ト等について既に通航証の発行を済ませ、財団の新しい事業としてはまずまずの出発を果たしましたが、反面、通航証被発行者には、それ相応の権利を与えたことにもなります。係留場所の確保、安全航行のための航路標識の整備と航路の浚渫、そして廃船処理と処分地などについて、財団への問いかけは今後一層ふえ続けるものと思われます。
 このうち廃船対策については、既におよそ2千万円を投入し、140隻ほどの処理を済ませたところであり、係留施設についても、この9月補正で2カ所の事業費を計上するなど、将来計画に立った実効性ある取り組みに期待するものであります。
 さて、当面の解決を要する問題は、漁業振興にもつながる湖内の浚渫、それはすなわち航路の浚渫であります。数年来、浜名湖東側の庄内湖は、これまでクルマエビの中間育成場として.活用されてきましたが、年々砂の堆積が進み、育成場は南へ南へとその位置を変えざるを得なくなっています。
 今年の夏、その庄内湖の湖面にアオサと呼ばれる海草が一斉に繁茂するとともに、酸欠状態を引き起こし、。魚介類がこの一帯から姿を消しました。こうした事実は、湖底の水が動きにくい状況にあるからであり、それは、すなわち潮の道も兼ねる航路が埋まりつつあることを証明しているものであります。
 ところが、浜名湖全体のおおよそ10%程度をカバ−する漁港区域と港湾区域の重なり合う2つの区域の外側での浚渫については、河川流入部におげる雨期前対策事業として行う以外に該当する制度がなく、残りの水域については、すべて河川法の適用を受けることとなり、浚渫は、技術を有する県もしくは地先の市町村が事業主体となるもののほかは、漁場振興を望む漁協といえども手を出せないのであります。
 そこで、通航証発行業務を初めとし、浜名湖の環境保全に総合的な役割を担うこととなった浜名湖総合環境財団は、県河川法施行細則の事務を委託された第3セクタ−という資格を持つこととなり、したがって、浚渫事業については、財団がその実施主体となることは可能であると考えますが、ご所見を伺うものであります。

○浜井
 次に、私は、平成元年9月議会において本県における骨材資源にかかわる質問をいたしましたが、その後も骨材需給の動向は以前に増して厳しいものがあると理解しています。
 骨材資源のおよそ30%を神奈川、山梨両県に頼っている本県の実情を考慮し、あらゆる可能性を探る中に、浜名湖において第三セクタ−によって行われた実附が残る浚渫土砂の骨材利用が考えられるのであります。
 財団が事業の一環として浚渫を行い、副産物としての土砂を新たな骨材という資源にかえ、財団の基盤強化を図りながら、浜名湖の環境保全事業を継続していくシステムを考えるべきであると思いますが、当局の考え方、財団の役割について伺うものであります。

○浜井
 地域規模の環境問題について、次は、環境教育についてお尋ねいたします。
まず、教師の共通理解と認識についてであります。アメリカ、イギリスなどの先進国における環境教育は、昭和47年、ストックホルムで開かれた国連人問環境会議、国連環境計画策定と前後して始められたと言われていますが、我が国の環境教育は、高度経済成長時代に頻発した各種の公害への対応に追われ、体系的な環境教育は行われてこなかったとされています。
 この4月、本県教育委員会は、一.二学年の生活科から、中・高学年の社会、理科あるいは家庭、体育、道徳科にまで及んで、学習指導要領に関連させた小学校教師用指導資料「地球にやさしい静岡県の教育」を発行いたしました。
 この春、青少年教育活動研究会がまとめた報告では、子供たちにもっと自然体験、生活体験を持たせたいと揖言いたしましたが・全く同様に、本県教育委員会発行資料においても、環境に主体的に働きかける体験的な活動の大切さに触れているのであります。
 文部省では、地球環境について、昨年、中.高校用指導資料を作成、配付したのに続いて、今年は、幼いうちからの環境意識の啓発を目指し、小学校用の指導資料を作成すると聞きます。その意味では、本県の指導資料集発行は一歩先んじていると思われます。当該資料の中でも触れられている環境教育の教材化、あるいは自然体験教育の指導方法等について、教師間の共通理解と認識がまだ不十分であると思われます。そこで、今後の環境教育をどのように展開させていかれるのか伺うものであります。

○浜井
 次に、環境教育のうち、野外活動施設の活用について伺います。
 前述したストックホルムでの国連環境計画と昭和50年のベオグラ−ドにおける人間環境会議で採択された行動計画の中で、環境教育の目的が明示されたことを受け、我が国においても同年、全国小・中学校環境教育研究会が発足し、環境教育という概念が定着いたしました。「かって人が自然とともに生きていた時代には、自然は偉大な教師であり、人々は自然の中で生活しながら、自然の仕組み、自然の恵みと厳しさ、自然と人との関係を学んできた。今、人はこの偉大な教師を失い、特に子供たちは、その最も感性豊かな時代に、それに接することができなくなってしまった」元上野動物園の園長を務めた中川志郎さんのこの言葉は、自然と人間との関係を見事に言いあらわしているど思うのであります。
 新しい分野である環境教育の範囲は多方面にわたるものの、その本質が体験学習にあることは、先進諸外国の実例でも明らかであります。
 そこで、自然に恵まれた既存の青少年自然の家、山の家あるいは野外活動センタ−などの施設を、小・中学生が積極的に環境教育に利用することが必要であると思いますが、教育長にお伺いいたします。
 また、そうした自然との触れ合いによる体験学習を一層充実させるために、環境教育にかかわる専門的な知識を持つ人材をこうした施設に活用するべきであると考えますが、あわせて教育長にお伺い致します。

○浜井
 地域規模の環境問題について、次は、環境読本であります。平成元年から2年にかけて10億円の地球環境保全等基金造成を行った本県においては、昨年3月、所管の環境企画課から、小学校高学年向けの環境読本「わたしたちの環境」が発行されました。ここで、読本とは文字どおり読む本のことでありますが、もとは小学校の国語の教科書を意味し、また副読本は、主となる教科書に添えて補助的に使う教科書の意であると、辞書に記されていることを念頭に置いて質問を続けます。
 環境教育は、学校、家庭、そして社会が共同して行うべきものであるとの教育委員会の方針にそのまま従えば、読本と副読本とを使い分げる考え方は、それなりに理解できます。しかし、子供たちの学習する場所と環境を考えるとき、学校にまさるものはなく、残念ながら、今日の家庭や、とりわけ地域社会が子供たちに対応できる環境教育シズテムはほとんど機能していないと思われます。
 今日、文部省が幼いうちからの環境教育の重要性に着目し、これを推進させようとしていることを認識するなら、それと一体となった啓発と教育の推進が望ましいと思うものであります。
 そこで、既刊されている小学校高学年向けの読本にとどまらず、幼児向けや小学校低学年向げなどの、それぞれの発達段階に応じて利用できるようなものを、教育委員会との連携のもとにつくっていくお考えはないか、さらにまた、これらの発行部数についてどのように考えていられるのか、伺うものであります。.

○浜井
 次は、産業における環境対策についてであります。
まず、建設副産物対策のうち、再利用計画について伺います。
社会資本の充実を大きな施策の柱の一本に据える斉藤県政のもと、県民一人一人が明るく幸せに暮らせる県土づくりを目指して、就任直後に策定された静岡県新総合計画の一層の推進を図るため、知事は、21世紀を指呼の間にとらえた基本戦略や施策展開の方向を示した中期発展プランを、今年年頭に示されました。それらの目指すところに合わせて、本県は空港、高規格幹線道路など国との連携を持っハ−ド事業や音楽公園、大規模ス,ポ−ツ公園、こどもの国などの広域都市公園建設など、ハ−ド、ソフト両面で21世紀へのみちを拓くプロジェクト21を具体的に進展させようとして
います。その中で、国の公共投資基本計画に従って進められる事業と本県のプロジェクトとが錯綜しながらト−タルとして排出する建設副産物は、ますます増加の一途をたどるものと思われます。平成元年度に排出した産業廃棄物のうち、建設業からのそれはおよそ2百万トン、種類別構成比で15,3%のうち、埋立処分される量およそ60万トンは、埋立処分量の41,2%を占めており、その意味では環境負荷の高い廃棄物であります。
 建設業は、資源資材多消費型産業であり、そのため、再生資源の有効利用は、処分場の確保や発注官庁の受け入れ態勢などによって大きく左右されるものであります。
 そこで、多くの大プロジェクトを抱える本県として、コンクリ−ト塊やアスファルト塊の再生基準の策定と再利用の推進策についてどのように考えておられるか、当局に伺うものであります。

○浜井
 次に、具体の問題として、建設副産物である掘削土、今日いうところの建設発生土の再利用加工処理施設について伺います。
 リサイクル法の施行によって、建設業界は土砂、コンクリ−ト塊、木材などを再生利用促進の副産物に指定され、業界自身はもとより、地域環境保護の観点からも、再生処理と利用率の向上という宿題を抱えることになりました。
 今日、発生土をプラント加工処理して再利用するシステムを開発しているのは、東京都、川崎市及び大阪市であります。大阪市を例にとれば、既に昭和51年、廃棄物リサイクルシステム開発委員会を発足させ、土質判定法や改良法の開発、品質管理と施行管理基準案の作成などを経て、現在ある改良プラントを完成させました。
 昨日の土木部長の答弁によれば、私の聞き間違いでなければ、本年6月より稼働を始めた建設発生土処理情報交換システムにおいて集めた発生土情報は、既に192万立方メ−トルにも達したとされており、この4カ月間に、昭和52年に大阪市が苦しんだ年間百万立方メ−トルの建設発生土処理量のおよそ2倍に及んでいます。
 さきに策定された本県の第2次産業廃棄物処理計画では、処理体制の整備に際して施設整備への資金助成などを積極的に行うとする考え方も示されました。
 建設発生土については、産業廃棄物には含まれないものの、建設業界などが建設発生土の再利用を図る目的で処理施設等を計画した場合、県はどのような対応ができるか、伺うものであります。

 また、将来にわたる発生土中間処理問題に対し、委員会を設けて研究するなど継続性のある取り組みを望むものでありますが、あわせてご見解を伺うものであります。

○浜井
 次に、再生材の検査体制について伺います。建設発生土を改良土に変えて、路盤材、盛り土、埋め戻し材としたり、あるいはまた発生土を骨材に転換して、いずれも再生資源としτの利用を図ろうとした場合、それらについての使用基準や分類基準、その種類ごとの用途などについて、県の考え方が明確になっているかということであります。本県の土木工事共通仕様書第2章第1節、通則第201条によれば、「この仕様書に規定されていない材料については原則としてJISまたはこれに準ずる品質、規格に適合するものでなければならない」とし、さらに、同203条では「監督員の指示する材料については検査を受けなければならない」と規定されています。また、この共通仕様書第2節土の項では、盛り土、路床材、路体材について、第3節の石材及び骨材の項では、割石、道路用砕石、コンクリ−ト用砕石、セメントコンクリ−ト用骨材等について、それぞれの基準が示されているのでありますが、県はこれらの再生材の検査体制についてどのように対応しておられるのか、伺うものであります。

○浜井
 産業における環境対策について、次は、農業用廃プラスチック対策について伺います。農林水産省は先ごろ、「新しい食料・農業・農村政策の方向」、いわゆる新政策をまとめました。
 それによると、平成2年に383万戸の農家の数は、平成12年には250万ないし300万戸になると予測し、これらの農家のうち他産業並みの労働時問と生涯所得を確保できるような個別経営体を育成するため、農地の集約、土地利用の明確化、生産法人設立要件の緩和などを図りながら、環境と調和する産業である農業の特質にかんがみ、生産性の向上と環境への負荷の軽減にも配慮した持続的農業を推進することを基本姿勢に据えています。
 高齢化と後継者不足の中で、国民への食糧供給産業であり、水や空気を守り育てる環境産業としての農林業を守らなければならないとする農林水産省の意気込みと願いが、この新政策から伝わってきます。
 さて、本県の農業のうち、野菜、花卉等を中心とする農業は、施設化への転換と栽培技術の一層の向上を図ろうとしており、新政策の目指すところと全く方向を同じくするものであります。
 しかし、施設化を進め、栽培技術を革新していく過程での一番の難題は、ビニ−ルハウスやマルチ栽培に使われる農業用廃プラスチツクの処理であります。
 従来は、隣の愛知県、長野県や山梨県の業者に処分をゆだねていましたが、ここに来て、愛知県の業者が処理の限界に達したとされ、長野、山梨両県においても、いずれ近い将来に飽和状態に達することは目に見えているのであります。
 環境に優しいはずの農業におけるこれらの対策と処理を誤れば、本県農業にとって赤信号がともることにもつながります。民間企業による土中で溶解するプラスチックの開発や、鳥取県農業試験場で確認された、溶けてなくなる水田用の再生紙マルチ栽培法など、幾つかの成功例もありますが、コストや技術の面で、いまだ実用段階には至っていないのであります。
 本県農業の振興を図る上で、生産性を上げる反面、処理が難しいため、生産者の営農意欲を減退させるこの厄介な廃プラスチック対策について、県は経済連とともに活動を続けてきたと思われますが、それらの状況と今後の対応について伺うものであります。

○浜井
 次に、小規模授産所の事業について伺うものであります。
私たちは、春の季節が来ると、幾つかの学校の卒業式に参列する機会を与えられます。最近では、通いなれた学校の教室とグラウンド、心を通じ合った先生や友との別れに涙する光景は、昔に比べれば少なくなったように感じております。
 こうした涙は、我が子の成長を喜びながらも、一つの節目を越えていく別れの儀式という独特の雰囲気の中での一時的な感傷の涙であると思いますが、心を打たれるのは、養護学校の中等部や高等部の卒業式で見る卒業生や保護者の涙であります。
 それは別れに伴っての涙というよりも、もう少し複雑な感情が込められた重たい涙のように感じます。
 養護学校の卒業生、特に重度の障害を持った卒業生にとっての就職は極めて困難であり、職場から取り残された重度障害者たちにとって、働くという社会参加は、小規模授産所や作業所などのいわゆる授産所に入所する道しか残されていないのであります。しかも、これらの施設のほとんどが、能率仕事や大量生産に不向きな障害者の仕事を確保するために、関係者たちは大変な苦労を重ねているのが現実であり、たとえ入所できたとしても、本人たちにとって必ずしも快適な仕事場になるとは限らないのであります。
 ちなみに、現在、県下の小規模授産施設89施設の作業内容について調査したところ、昨今のバブルの崩壊は少なからずこうした施設に影響を与え始めており、ただでさえ弱い財政基盤をさらに圧迫する傾向にあると思われます。
 そこで今日、高齢化と後継者不足の中で、一部において農家による耕作放棄地が散見されることから、高齢農業者などを指導員として、このような農地の利用を図るとともに、障害者たちが自然に親しみながら自然農法野菜などの栽培を行うことを授産事業として認めることができないかと考えるのであります。
 彼らに小さな作業所の中で、苦手で能率の上がらない細かい手仕事をさせるよりも、自然の中で伸び伸びと野菜や花などを生産しながら収入を得ることができれば、環境に優しく、しかも障害者に優しい仕事になると思うのであります。
 当局においては、農地の利用の形態、施設の規模、指導室や休養室などの設備、さらには保健衛生上の問題など検討する課題は数多くあると思いますが、小規模授産所の事業における自然農法の取り組みについて、知事のご所見をお伺いし、広義の環境という大きなとらえ方の中でまとめた質問を終わります。


○斉藤知事

 浜井議員にお答えいたします。地球規模の環境問題についてでありますが、青く美しい水の惑星、この地球の環境を保全し、子々孫々のために良好な環境を残していくことが、今に生きる私どもの使命でありますことは、浜井議員のご指摘のとおりでありますし、「エンデバ−」に乗られた毛利氏の言をまつまでもありません。今に生きる私たちの使命であります。学術研究により開発され、日常生活の中で便利に活用されてまいりましたフロンがオゾン層破壊、地球温暖化の原因であると証明された以上、地球環境を保全する上から、代替物質に転換してまいらなければならないことは当然のことであります。フロンに対する国際的な規制につきましては、既に基本的な合意がなされ、我が国においても、従来よりも5年繰り上げた平成7年末に、その生産を全廃する方向で検討が進められているところであります。
 本県でも、「静岡県における地球にやさしい実践行動計画」のフロン対策として、事業用や冷暖房用のフロンの段階的な削減等、可能なことから取り組んでいくこととしております。
 ご質問の第一の県庁舎のフロン対策についてでありますが、特定フロンを使用している東館の冷凍設備につきましては、従来から特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律に基づく国の指針により、20数項目にわたり厳密な点検整備を行っているところであります。
 しかしながら、特定フロンの全廃の時期が早まる見通しとなったため、今後、早期に冷凍機械及び配管類の密閉化を図るための工事を行いたいと考えております。今後の方向といたしましては、特定フロンを使用しない新しい冷凍機械の導入を検討することとしておりますが、機械室のスペ−スの確保、機械の搬入、搬出、既設の配線、配管等の設備の改善など大規模な工事を行うこととなりますので、専門家に調査を依頼し、別館完成後の東館改修時などにおいて抜本的な対策を講じてまいりたいと考えております。

○斉藤知事

 次に、市町村及び産業界のフロン実態調査についてであります。ご指摘のとおり、県内の市町村や産業界におけるフロンの使用実態を把握することが必要でありますので、まず、市町村庁舎などの調査をすることとし、産業界につきましては、使用実態が複雑でありますことから、情報収集や調査手法の検討を進めてまいりたいと考えております。

○斉藤知事
 地球規模の環境問題についてのうち、浜名湖の浚渫と資源の有効活用についてであります。
 県といたしましては、浜名湖の秩序ある利用を図るため、沈廃船の処理及び船艇の通航許可制を実施してまいりましたが、引き続き係留施設の整備を進めてまいりたいと考え、この9月補正予算に事業費を計上させていただいたところであります。係留施設の整備に当たりましては、桟橋などの施設は浜名湖総合環境財団が実施主体となって整備することにしておりますが、浚渫事業は多額の事業費を必要といたしますので、財団が実施主体となることにつきましては今後の検討課題とさせていただきたいと考えております。
 また、湖底資源の有効活用についてでありますが、一般に河川から海へ流出する土砂は海岸を形成する上で大きな役割を果たしておりますので、近年、海岸浸食が進行していることから、河川砂利の採取を抑制しているところであります。
 このため、浜名湖におきましても、浚渫により発生した土砂については、養浜や護岸整備などに使用することを優先させたいと考えております。
 いずれにいたしましても、浜名湖は県民共有の貴重な財産であり、多様な漁業、レジャ−の場として利用されておりますので、議員ご指摘のように、係留施設、航路の浚渫などを相互に関連づけ、総合的な環境整備に配慮してまいる所存であります。

○斉藤知事
 次に、産業における環境対策のうち、建設副産物対策についてであります。21世紀に向けて豊かで活力ある県土づくりを推進するため、中期発展プランを策定し、静岡空港を初め第二東名目動車道などの大規模プロジェクトの具体化に積極的に取り組んでいるところであります。議員ご指摘のとおり、これらの施策を推進するに当たりましては、大量の建設副産物の発生が見込まれておりますが、この有効利用を図ることが重要な課題と認識しております。既に本県におきましては、再生資源の利用の促進に関する法律の趣旨に基づき、建設副産物からの再生材を活用しているところでありますが、今後さらに用途の拡大を図るなど有効利用に努めてまいりたいと考えております。

 なお、その他、関係部長から答弁させていただきますが、最後に、小規模授産所の事業について質疑をいただきましてありがとうございました。こうした面につきまして、きめ細かな心配りのご配慮、ご質疑につきまして、改めてお礼を申し上げます。小規模授産所の運営等々は非常に小規模なるがゆえに困難性を持っておりますので、先生のご示唆もございますので、このことにつきましては前向きで対応してまいりたいと、このように考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

○庄田教育長
 
地球規模の環境問題についてのうち、環境教育についてお答えいたします。
まず、教師の共通理解と認識でありますが、小・中学校においては、児童・生徒の発達段階に応じ、すべての教育活動を通して自然愛護や環境美化、環境保全などの環境教育を計画的に推進しております。特に、理科や社会科などの教科では、環境問題に目を向けた学習に積極的に取り組んでおり、また、児童・生徒会活動を中心に、道路や公園の清掃や、アルミ缶や古紙の回収などの実践活動に取り組んでおります。
 県教育委員会といたしましては、昨年度、静岡県の自然や市民の生活と環境等を内容とした小学校教師用指導資料を作成しましたが、引き続き本年度は、静岡県の産業や地球規模の環境問題等を内容とした中学校教師用指導資料を作成しているところであります。
 今後はこれらの資料の活用と教員の環境教育に対する理解を図るため、講習会等を通じ体系的、系統的に環境教育を行うよう、指導計画や指導方法の工夫改善を図ってまいります。環境教育を進めるためには、御指摘のとおり、教師の共通理解と認識が大切でありますので、あらゆる機会を通し教員の研修を深めてまいりたいと考えております。

○庄田教育長
 次に、野外活動施設の活用についてでありますが、小・中学校での自然体験活動や学校間の交流活動などを行うとき、多くの学校が野外活動センタ−や青少年目然の家などの施設を利用しております。
 その際、施設に指導主事などの担当者がいることで、その地域における動植物の生態や自然とのかかわり方などについて学習することができ、自然愛護の心を育て、環境に関心を持つ上からも、極めて大きな効果が上がっております。
 したがいまして、これら指導主事や地域の人々から、さまざまな自然にかかわることを学んだり、施設に環境教育に関するコ−ナ−を設けたり、資料の展示を行ったり
して、小・中学生の環境教育を進める上で役立たせております。
 県教育委員会といたしましては、今後とも小・中学校に対して、自然教室やふるさと交流学習などの機会に野外活動施設を積極的に利用するよう指導するとともに、環境教育にかかわる専門的な知識を有する人材の活用についても十分配慮してまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、これらの施設が、小・中学生の生活体験学習とあわせて、環境教育を進める上からもより一層効果的役割を果たすことができるよう努めてまいる所存であります。以上でございます。

○石川環境・文化部長
 環境教育についてのうち、環境読本についてお答えいたします。
地球環境問題への関心が高まっている今日、複雑化、多様化する環境問題を解決し、かけがえのない環境を将来の世代に引き継いでいくためには、私たち一人一人が人間と環境とのかかわりについて理解と認識を深め、責任ある行動がとれるような学習を推進することが重要な課題であります。
 県におきましては、総合的、体系的な環境教育に取り組むため、平成3年1月、環境教育への取り組み方針を策定し、市町村や教育委員会等と連携を図りながら、環境教育リ−ダ−育成のための各種支援やビデオライブラリ−を初めとする情報提供等を行うとともに、平成2年度には、小学校高学年向けの環境読本を作成するなど、環境教育の積極的な推進に努めているところであります。
 また、ご指摘の幼児期の環境教育は、環境保全意識を体得させ、豊かな感性や環境問題への感受性を養う上で大変重要であり、幼児期からそれぞれの発達段階に見合ったきめ細かな学習を進めていくことが肝要であると考えております。今後、該育委員会等とも十分連携を図り、幼児や小学校低学年向けの環境読本等の作成につきまして、発行部数を含め検討してまいりたいと考えております。以上です。

○大川土木部長
 産業における環境対策のうち、建設副産物対策についてお答えいたします。まず、建設副産物の再利用計画についてであります。建設副産物のコンクリ−ト塊、アスファルト塊につきましては、従来からコンクリート塊の再生材は道路用盛り土材料や埋め戻し材料に、アスファルト塊の再生材は舗装材料として活用に努めてきたところであります。また、本年七月には、土木工事共通仕様書を改正するとともに、再生資源活用の運用基準等を定め、原則として、リサイクルエ場から一定の範囲内の建設工事においては、建設副産物のリサイクル工場への搬入と再生材の使用を義務づけ、廃棄物の発生の抑制と再生資源の活用を図っているところであります。
 さらに、再生材の活用範囲の拡大を図るため、舗装用路盤材料として利用するための試験工事を実施しているところであります。
 いずれにいたしましても、公共事業の増大に伴い発生する建設副産物の取り扱いにつきましては、今後なお一層再利用を進めるという考えで対応してまいる所存であります。

○大川土木部長
 次に、建設発生土の再利用加工処理施設についてであります。議員ご指摘の再利用加工処理施設は、建設発生土を良質な土質に改良する施設であり、発生土処分量や購入土量の削減といった直接効果に加えて、沿道環境の保全、不法投棄の防止等の間接効果も期待されます。建設業界等が計画する再利用加工処理施設につきましては、国において補助事業や特別償却制度等の支援策が現在検討をされておりますことから、県といたしましては、その動向を踏まえ、対処してまいりたいと考えております。
さらに、建設発生土の中間処理問題につきましては、現在、官民が一体となって組織しております静岡県建設発生土活用対策協議会にも諮りまして、検討してまいりたいと考えております。

○大川土木部長
 次に、再生材の検査体制についてであります。再生材の使用に当たりましては、土木工事共通仕様書等の改正を行い、材料の種類、用途別に使用基準や品質基準を設げ、適正な使用を行っております。
 この検査体制につきましては、一般の材料と同様の取り扱いをしておりまして、一定量以上を使用する場合は検査官が検査し、それ以下の通常の場合は請負人から品質、規格等に関する証明書を提出させ、監督員が審査し検査にかえております。以上でございます。

○小林農政部長
 産業における環境対策についてのうち、農業用廃プラスチック対策についてお答えいたします。県内施設園芸の被覆資材等に使用された塩化ビニ−ルの農業用廃プラスチックの年間排出量は約3千トンになっております。
 現在、この処理につきましては、農協ごとの県外処理業者への委託や埋立処理などによりまして対応しておりますが、環境問題、規制の強化、採算性などから、現状の処理方法が将来にわたって継続し得るかどうか懸念しているところであります。
 このため昨年、経済連を中心に農業団体、市町村及び県で組織する静岡県農業用廃フラスチック適正処理推進委員会を設置し、排出物の適正な処理に係る農家指導、処理業者の選定、リサイクルシステムや代替資材の検討などを進めてきたところであります。
 この処理対策は、本県のみならず、施設園芸の盛んな東海4県においても共通の課題となっておりますが、各県ごとに処理施設を設置することは、排出量、操業率、立地条件などの問題から困難でありますので、共同で設置することについて、本県農業団体が中心になって検討を始めたところであります。
 県といたしましても、環境保全に十分配慮しつつ、施設園芸のさらなる発展のため、各県との連携を図りながら、農業用廃プラスチックの処理対策に積極的に対応してまいりたいと考えております。以上でございます。

○秋山民生部長
 小規模授産所の事業についてお答えいたします。
小規模授産所は、障害者め就業の場として、本県の在宅福祉対策の大きな柱として位置づけております。関係者のご協力に支えられまして、本年10月1日現在、県下に89カ所、定員1444名を数えております。
 しかしながら、なかなか厳しい運営実態にあることはご指摘のとおりでございます。県といたしましては、これまでに市町村と連携しながら運営費等の助成の充実を図るとどもに、授産推進員を県下3カ所に配置しまして、仕事の受注、製品の販売促進や製品開発のための情報提供を行うなど、運営の安定化に努めております。自然農法などを授産種目に取り入れたらどうかとのご提言につきましては、大変示唆に富むお話でございますが、農地の確保等検討すべき課題も考えられますことから、関係機関のご意見を聞きながら十分研究してまいりたいと考えております。以上でございます。