県議会 質問
  昭和63年2月議会  
   質問項目
     1 浜名湖総合振興計画の策定について
       1)策定のスケジュ−ル
       2)湖上の治安と安全
       3)浜名湖の観光
    2 浜名湖周遊自転車道計画について
       1)周遊道の完結
       2)周遊自転車道の活用
    3 佐鳴湖の浄化対策事業について
    4 中小河川の環境整備について
 
○浜井
 『私は通告に従い、私の人生において初めての記念すべき質間を、主として地域の諸問題について、知事、関係部長並びに警察本部長にお伺いいたします。
 まず初めに、浜名湖総合振興計画策定の推進についてであります。
 浜名湖は琵琶湖とともに日本を代表する湖として、万葉の昔から多くの歌人、文人に親しまれ、詩歌や紀行文の舞台となってきた美しい湖であります。 西への旅からの帰り道、波間に夕日を散りばめた浜名湖を目の当たりにして、どこか違うようなふるさと静岡の潮の香りに触れると、心休まるのはひとり私ばかりではないと思います。まさに富士山と並んで県を代表し、天下に誇り得る景観であると思うのであります。
 明応七年、西暦でいうと1498年、マグニチュ−ド8、9という、これまでに東海地方を襲った中では最大規模の地震と津波によって南部の今切付近が陥没し、太平洋の波濤が入るようになったこの湖は、面積69平方キロメ−トル、琵琶湖の約8分の2、日本の湖沼中10番目、屈曲が多く変化に富んだ湖岸の長さ141キロメ−トルは、日本で3番目に大きい湖でありながら、浜名湖は県知事の管理下に置かれる二級河川都田川であることは御承知の通りであります。
 浜名湖は、北から都田川水系の淡水が流れ込み、南の遠州灘からは一日に約4230万立方メ−トルの海水が出入りする汽水湖の特性によって、ざっと500種を数えるという、他に類を見ないほどの淡水、海水の多種多彩な魚介類を成育し、既に160年も前からノリの養殖も始まっていたように、自然の恵みの宝庫でもありました。 一つの試算数値によれぱ、昭和61年度における1平方キロメ−トル当たりにして63トンという漁獲量は、全国平均の約6倍、県平均の約3倍に相当するものであり、豊富な水産資源は周辺地域の水産業を長期にわたって支えてきたのであります。
 また、四季折々に展開するすばらしい風景は、この地を訪れる多くの人々に楽しみと憩いと安らぎを与え続けてきましたが、周辺地域の開発の進展、経済杜会の進化に伴う人々の生活様式や意識の変化、藻の発生や底泥の堆積等、自然状況の変化に加えて、体系的な指針がなかったことなどから、湖を取り巻く環境は、長い間の関係者の努力にもかかわらず改善される方向には進んでいなかったように思われます。
 地方行政レベルにおける浜名湖の総合的利用に関する組織にっいては、昭和39年3月に、浜松、湖西の2市と、新居、舞阪、雄踏、三ケ日、細江、そして当時の庄内、6つの町の首長と観光協会長、漁協の組合長によって浜名湖周辺総合開発研究協議会が設立され、それまで各市各町が独自に何の連携もなく行われていた浜名湖周辺の施策を話し合う場をつくったのが恐らく最初であったろうと思われます。
 その後、多くの変遷を経て、今日の2市5町で構成する浜名湖会議や、浜名湖の利用に密接な関係を有する主要な団体を含めた浜名湖総合環境整備研究会、遊漁、海洋スポ−ツ等の諸団体、あるいは婦人や若者たちの団体等によって、利用及び整備の方策が真剣に研究、討論され、これまでに問題点の指摘とともに、多くの要望や提言を積み上げてきました。
 まず、潮流や浜名湖特有の風によって消失する砂浜や浸食される湖岸、離岸堤の造成、築堤と保存と種苗の育成、栽培漁場、浅海漁場の整備、衛生上も景観上も好ましくない沈廃船や廃棄物の不法投棄対策、6千隻をはるかに超えるといわれ、実数不明の観光レジャ−ボ−ト等の安全対策と、不法係船の処理対策、現行の県の河川法施行細則だけでは対応が難しい水上バイクやウインドサ−フィン等の、新しい型のレジャ−に対する規制と安全対策等であります。
 昨年6月に、閣議決定された第4次全国総合開発計画の基本的な方向は、余りにも巨大化しすぎた東京への一極集中を排して、多極分散型国土の形成にあり、かって昭和30年代において相次いで提唱された浜名湖遷都論とは異なった状況の中で、さきの代表質問でも我が党の政調会長がとりあげ、知事からも積極的な回答のあった浜名湖遷都の議論が再び浮上してきたことは、この地域がそれだけ開発の可能性と魅力を秘めているからであると思うのであります。
 問題は、長い年月にわたって既に積み上げられてはいるものの、整合性のある計画の策定までには大変な時間と労力を必要とする大事業であると思うのであります。
 遷都という、そういった大きなプロジェクトの受け皿としても十分に対応し得る浜名湖と、その周辺の整備について、21世紀に県民の夢をつなぐ総合振興計画の策定に向かって全速カで発進していただきたいと思うのであります。
 新年度予算において新規に浜名湖周辺、有度山丘陵地帯、そして大井川流域について、地域振興計画策定費が計上され、基礎調査に続く基本構想、基本計画作成に向かって大きな一歩を踏みだしたわけであります。
 県当局は、この浜名湖総合振興計画の策定をどのようなタイムスケジュ−ルで進めていこうとしているのか、お伺いをいたします。


○斉藤知事
 『浜井議員にお答えいたします。
当選後初めてのご質問ということでございますが、格調の高いご質問に敬意を表します。しかも、浜井議員は非常にロマンチストであるということを私は知りまして、大変うれしく思います。ご指摘のように、浜名湖はロマンがあり、またバラ色の未来があります。しかし、現実はご指摘のように厳しいものがあります。そうした観点からのご質問であろうかと思います。
 先生ご指摘のように、浜名湖はすぐれた自然資源であり、緑と水、水の幸多き本県にとってかけがえのない財産であると私は受けとめております。
 就任後、浜名湖の現実を知って、私は、直ちに振興センタ−に行動を命じたのであります。幸いに地元においても市町村や関係団体が呼応されて、61年10月に早速浜名湖総合整備研究会が発足し、秩序ある湖面利用の研究を進め、麗にレジヤ−ボ−トの安全対策、不法係船の処理対策など一定の成果を上げているほか、昨年11月には若手経済人の皆さんが、21世紀における浜名湖地域研究会を発足させ活動を始めるなど、大きな盛り上がりを見せておられるのは、うれしい限りでございます。
 県といたしましては、この機会をとらえ、地元市町村に協力して63年度、64年度の2ケ年で、これまでの研究成果等踏まえて、浜名湖総合振興計画の策定を推進し、浜名湖及びその周辺地域の表興を図ってまいりたいと考えております。
なお、昨今にわかに現実味をおびてきた遷都論につきましても言及されましたが、受け皿として総合計画等々も早期に考えなければならない間題ではなかろうかと、このように考えるところであります。
 また、浜名湖周辺の道路の整備は、観光開発の上からも、またテクノポリス等地域開発にとりましても、重要な課題であると認識しております。
 まず、県道湖東舘山寺線の整備についてでありますが、浜松市呉松町から和地町までの2,4キロメ−トルについて早期整備を図るため、62年度に創設いたしました道路等特別対策斉業により鋭意整備を進めているところであります。
 当面、未開通区問の1,4キロメ−トルの早期完成を図ることとし、引き続き完成に向けて地元の協力を得ながら努めてまいる所存であります。』
○ 浜井
湖上の治安と安全についてお尋ねいたします。
 労働基準法の一部改正に伴って、労働時間等を定めた本県条例の一部改正案が本議会に上程されましたように、杜会構造はますます余暇を増大させ、国民、県民のレジャ−に対する志向が多岐にわたっていく中でも、海洋レジャ−への志向は非常に強いといわれています。
 これだけの複雑な形と広がりを持った湖で、しかも、こうした状況のもとで湖上の事故の危険性は高まる一方でありますが、2級河川という行政区分の中では、公海上を規制の対象とする法律の枠の外におかれ、管轄する警察の警備艇の配備が一隻だけという現実では、無謀運転、不法運転をはじめ、密漁等に至るまで、対応する湖上の治安と安全が果たして守られるのかといったことを大変心配するのであります。
 本格的なレジャ−シ−ズンを迎えるに当たって、どのような対応を考えているか、お伺いをいたします。』

○福永警察本部長
『浜名湖の治安と安全についてお答えをいたします。ロマンチツクなご質間の中で、検挙だの取り締まりだの、不粋な言葉が出ることをひとつお許しいただきたいと思います。
 近年、余暇時間の増加と自然志向ブ−ム等を反映いたしまして、海上レジャ−が盛んになっているのはご指摘のとおりでございます。
 浜名湖におきましてもレジャ−船等がふえ、これに伴って漁業とレクリェ−ションとの調和を図ることが必要になって参っております。 
警察といたしましては、県民が安全にレジャ−を楽しんでいただくと同時に、漁業関係者が被害を受けることのないように、指導と取り締まりを努めているところであります。浜名湖を管轄する各警察署が共同して、事故の発生の多い夏を中心に、警察用舟艇等による水上パトロ−ル等によって、無謀な運転や密漁等の取り締まりを強化しているところでありますが、このほかに、新居警察署に機動隊員を増強派遣いたしましたり,弁天島に臨時に警備派出所を設置いたしましたりしております。
 確かに舟艇一隻というのは少ないんでございまして、夏場においては民間の船も積極的に借り上げるなどいたしまして、一層警戒警備、事故防止活動に努力をしてまいりたいと思っております。
 ちなみに、昨年の夏は、船舶職員法.、静岡県河川法施行細則等を根拠に、漁業調整規則違反、遊走区域外での水上スキ−、海技免許の不携帯等、77件を検挙及び警告いたしておるところでございます。
 今後も警察の指導、取り締まりに加えまして、漁業協同組合を初め、浜名湖総合環境整備研究会、浜名湖小型船安全協会、浜名湖マリ−ナ協同組合等と協力し、安全思想の普及のための指導広報や、マリ−ナ等においての操縦技能の指導等をお願いいたしまして、浜名湖における治安と安全対策をさらに強化してまいりたいとこのように考えております。以上でございます。

○浜井
次に、浜名湖の観光について 特に引佐舘山寺線の整備についてお伺いをいたします。
 浜名湖舘山寺温泉は、過去5年間の入湯税に基づく調査によれば、年間平均宿泊客数およそ55万人、そして市営動物園、フラワ−パ−ク、民間遊園地パルパル、イチゴ狩りや海水浴等に訪れる観光入り込み客数は、年間平均で約330万人といわれています。しかしながら、宿泊客数においては、昭和57年の60万7千332人、観光入り込み客数においては昭和58年の343万6千人という数字をピ−クに、横ばいもしくは減少傾向を続けているのであります。
 各旅館とも客単価の値上げによってしのいではいるものの、何らかの善後策を講じなければならないところまで来ているということは、関係者の一致した意見であり、また一様に危倶するところであります。
 これにはいろいろな意見がありますが、温泉ブ−ムといわれながらも、他と比較して特異性をもった泉質でないこと、個々の旅館や旅館組合の誘客宣伝事業が思うほどの効果を上げ得なかったこと。そしてまた観光客のニ−ズの変化に伴って、単に舘山寺の自然景観だけでは満足してもらえなくなったこと等、主としてソフト面の問題があり、一方、舘山寺温泉へのアクセス道路である県道鹿谷舘山寺線の渋滞と、絶対数において足りない駐車場というハ−ド面の問題があるのであります。
 ハ−ド面の対策の一つとしては、昭和42年に計画決定され、27億円余を投入して昭和52年5月に完成した村櫛舘山寺有料道路第一期工事の東名高速道路浜松西インタ−までの延長事業については、西インタ−と舘山寺、村櫛地区を結ぶ重要な道路として、また渋滞緩和策の一環として、関係者の熱い期待が込められていたのでありますが、昨年11月議会において計画変更され、道路等特別対策事業により、一般県道湖東舘山寺線として整備することとなり、本年度末ようやく用地買収の入り口に立ったところであります。
 この事業の円滑な推進を図るためには、何よりも地元の理解と関係地権者の協力が前提になりますし、第一線の担当者は、公共投資予算が増大している中で大変な努カをしていただいています。この県道整備に合わせて浜松市が東名高速道の北側に整備計画を進めている2路線は、昭和66年度ごろの完成を目指しているとのことでありますが、県は湖東舘山寺線整備の完成年度をどこに置いておられるか、お伺いいたします。
 また、この道路が接続する県道引佐舘山寺線の呉松町から舘山寺町旅館街の中心部に至る延長1,9キロメ−トルの区間につきましては、国庫補助事業として内浦湾の一部を埋め立てにより整備する計画であると伺っているのでありますが、この場合、この浜名潮総合振興計画の策定を待って着手するということでなく、できる限り早い時期に整傭を進めていっていただきたいと思います。この道路の整備方針についてお伺いをいたします。』

○斉藤知事
『次に、県道引佐舘山寺線についてでありますが、この道路のうち、湖東舘山寺線に接続する浜松市呉松町から舘山寺町まで約2,4キロメ−トルの整備が急がれていたところであり、その一部は既に完成を見たところであります。
 お尋ねの区間につきましては、現在公有水面の埋め立て等について協議をしているところでありますが、今後鋭意協議を進め、早期に事業に着手できるよう努めてまいる所存であります。
 また、浜名湖周遊自転車道の整備についてであります。自転車道は、県民の余暇活動や健康増進のために貴重な場を提供するものであると認識しております。県といたしましては、ご指摘のとおり、昭和53年度から浜名湖周遊自転車道の整備に取り組んでいるところでありますが、ご提言がありました活用方策等含む詳細につきましては、関係部長より答弁をさせていただきます。』


○浜井
浜名湖周遊自転車道等の整備計画についてお伺いいたします。
この事業は、県民の健全な心身の増進を目的とし、昭和53年度に着手されたものでありますが、浜名湖を文学碑で轄び、あわせて浜名湖観光の起爆剤としての効果をねらった計画であり、県の新総合計画に盛り込まれた太平洋岸自転車道の整備事業へとっながっていく事業であると思います。
 舞阪町弁天島、浜名湖大橋、舘山寺などの、浜名湖の東岸を佐久米海岸を経て三ケ日町宇志までの48キロメ−トルの区間を整備する事業でありますが、今年度末までの進捗状況はどのようになっているのでしょうか、お伺いをいたします。
 また、この自転車道は、昭和63年度からスタ−トする建設省の第十次道路整備5箇年計画中部地方版において、第二東名以下3本の高規格幹線道路、国道バイパス、そして長大架橋と並んだ中に対象路線として組み込まれたことによって、当初計画の完成に向かい一層の弾みがつくものと期待するものであります。
 しかし、呉松町から舘山寺町に至る区間は、前述の県道引佐舘山寺線に並行し、内浦湾から大草山を経由するル−トのほか、大草山すそ部の湖岸に沿って内浦湾に架橋するなどのル−トを検討中であると聞いているのでありますが、早期にル−トの決定をしていただきまして、事業の推進を図るための一層の努力を、これは要望するものであります。
 周遊自転車道の「周遊」という言葉から受ける感じは、だれしも連続、一体的な自転車道を想定すると思いますが、断続する自転車道間を結ぶ一般道路との連続性と安全性につきましてどのように考えておられるのか、そしてさらに三ケ日町より湖西市、そして新居町を経て舞阪町に至る浜名湖の西岸にも自転車道をめぐらせて、文字どおり浜名湖の湖岸を一つに結んだ自転車道の整備計画を引き続いて考えていくべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。』

○寺田土木部長

『浜名湖周遊自転車道の整備等についてのうち、進捗状況と今後の整備計画についてお答えいたします。
浜名湖周遊自転車道は昭和53年度に着手し、62年度まで32億5千万円を投入し、計画延長の48キロメ−トルのうち71,5%に当たる34,3キロメ−トルが完成したところであります。特に62年度からNTT株売却利益金を活用し、その早期完成に努めているところであります。
 ご要望のあった、舘山寺から大草山に至るル−トにつきましては、現地の諸条件を勘案し、早急に決定し着手する考えでおります。
 また、ご指摘の自転車道の連続性につきましては、全線が自転車専用道であることが望ましいところでありますが、浜名湖周遊道路のル−トの多くが湖岸の限られた部分を通ることから、一部については既に供用されている道路と一体的、効率的な整備を図っていく必要があります。したがって、安全対策には十分配慮し、事業を進めているところであります。
なお、浜名湖西岸の自転車道にっきましては、関係市町村のご意見等を伺い、今後進めてまいる所存であります。以上でございます。』

○浜井
浜名湖周遊自転車道の活用についてでありますが、現在この自転車道に配備されております貸し自転車は、県の振興センタ−のあっせんによって、舞阪町観光協会が管理するもの58台、舘山寺観光協会が管理するもの12台、細江町観光協会が管理するもの10台の計80台であります。
 これらの自転車の利用台数は、自転車道の整備状況に比例するように、わずかずつ増加を続けており、3つの観光協会の貸出台数の合計は昭和61年において762台、昭和62年には885台となっているのでありますが、今日の健康ブ−ムと浜名湖全体への年間観光入り込み客数を分母に据えてみると、着工以来10年の歳月をかけて努力されてきた関係者の労苦が実ってないように思われて、まことに残念であります。
 しかし、一方では、この整備事業の完成に期待を込め、三ケ日町においては観光5カ年計画の中で、引佐、紬江の二町と連携しながら、この自転車道とそれぞれの町内の主要な観光地拠点を結び、相互に乗り捨てができるようなシステムの自転車を利用した健康的な観光コ−スを編成編成する奥浜名湖観光の振興計画があるということでありますし、また舘山寺温泉の各旅館の関係者におきましても、内浦湾を渡るか、あるいはその岸辺を走るル−トのいずれかが完成する暁には、固有の自転車を設置して十分対応していく計画をそれぞれ温めていると聞いているのであります。
 浜名湖にかかわる旅館や民宿や商店が、それぞれ趣向を凝らして色とりどりの自転車を提供し、それらの自転車が湖畔の自転車道を彩りも鮮やかに疾走する光景を想像してみれば、健康的で魅力的な浜名湖のイメ−ジが倍加するのであります。
 そこで、これらの整備計画を一体的に考え、浜名湖周遊の案内標識や、沿道における駐輪場の整備、拠点地域における声の案内ボツクスの設置、総合的なパンフレツトの作成等により、観光等多方面での活用を図るべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 また、資源再利用の観点から、各都市の駅周辺を中心に、昨今非常な問題となっております放置自転車のうち、遺失物法の規定に基づいて、遺失者が権利放棄したり所有者不明で県に帰属した自転車を活用したらいかがかと思うのであります。
 しかし、ただ単に放置自転車を右から左へ移せばいいということではなくて、それは観光地に設置するにふさわしい自転車として選別整備されたものでなけれぱならないと思うのでありますが、ご所見をお伺いいたします。』

○小松知事公室長
 『浜名湖周遊自転車道の活用についてでございます。
サイクリングは手軽にできる屋外スポーツとして、健康づくりや青少年の健全育成のほか、余暇時代の観光にも多面的な役割を有するというふうに考えております。
 したがいまして、これまでも沿線に浜名湖ゆかりの歌碑を設けるなど、自転車道の魅力を高めるよう努めてまいりました。今後とも地元市町村や観光協会などとも連携し、案内標識や声の案内ボツクス等の設備の充実などを図り、より一層利活用の促進を図ってまいりたいというふうに考えております。
 また、放置自転車の再利用にっきましては、資源の有効活用の観点からも好ましいことで、こざいますので、地元市町村等とともに十分意見を交換しながら研究してまいりたいと考えております。以上でございます。』

○浜井
佐鳴湖の浄化対策事業についてお伺いいたします。
佐鳴湖はおよそ一万年ほど前、遠州灘の砂洲によってせきとめられてできた自然の湖であります。
 湖の東方すぐ近くにある蜆塚遺跡に今も残る貝塚の95%を占めるヤマトシジミや、魚介類を産出する豊かな海であったといわれています。
 この湖もやはり二級河川新川に属し、浜松市街地の西方およそ4キロメ−トル、三方原台地の南端に位置し、面積およそ1,15平方キロメ−トルで浜名湖に次いで県内で二番目に大きい湖であります。
 市の中心部に近いという地理的条件と、風致地区や鳥獣保護区、公園区域の指定を受けて、130種類に上る野鳥が湖面に群れ、周囲は自然を残した公園整備が施行され、多くの市民の憩いの場として親しまれている湖でもあります。
 しかし、三方原台地とその周辺地域の開発に伴い、湖水の水質汚濁が進み、年間を通しての透視度は20センチから30センチメ−トルの数値を示し、昭和59年にはCOD−化学的酸素要求量が12ppm、汚濁度全国第4位、そして昭和61年にはCOD14ppmとなって、2年連続して全国第3位という、まことに不名誉な記録をちょうだいしているのであります。
 日本一の健康県を目指そうとしている我が静岡県にとって、360万県民の健康は
もとより、県民の生活環境を構成する自然環境もまた健康でなけれぱならないと私は思うのであります。浜松市におきましては、昭和58年に建設省が、「水生生物をよみがえらせ、町の中で子供が水遊びのできる水辺を復活させ、住民ときれいな水との結びつきを深めることを目的どした都市づくりの活動』をカムバックアクアトピアと名づけた構想の指定を受けて、昭和60年から水質浄化のための下水道整備事業が進行中であり、流入河川における水の有機汚濁度の指標であるBOD−生物化学的酸素要求量調査の結果は、ごくわずかではあるが改善されつつあるということであります。
 一方、県は、昭和60年度より浄化対策のための調査を実施しておりますが、佐鳴湖の健康体を一日も早く取り戻すためにも、引き続き浄化事業を推進していただきたいと恩うのでありますが、今後どのように対応していかれるのか伺います。


○斉藤知事
佐鳴湖の浄化対策であります。
これまた佐鳴湖は可能性豊富な大変な資源と私は承知いたしております。まず、その浄化対策であります。
 良好な生活環境を維持するためには、水質環境の保全が重要な問題であると認識しております。県といたしましては、佐鳴湖の浄化対策にっきまして調査を行い、浜松市とも連携を図りながら、可能なことから逐次実施に努めているところであります。 なお、強化対策等々につきましては、具体的なことは関係部長より答弁をさせていただきます。』
 

○鈴木生活環境部長
 『佐鳴湖の浄化対策についてお答えいたします。
佐鳴湖の水質の状況は先生ご指摘のとおりでございます。この水質汚濁の主な原因は生活排水によるものでありまして、その割合は85%と、他の地域に比べて高く、改善には下水道の整備が必要であると考えます。
 このため、西遠流域下水道事業や公共下水道事業の計画的な推進を図っているところでありますが、特に浜松市におきましては水質保全の当面の対策として、佐鳴湖へ流入していた家庭排水を順次中部浄化センタ−へ流入させる措置をとっております。
 また、60年度からは堆積汚泥量の調査や、この排除方法の検討などを進めているところでありますが、63年度におきましても引き続き調査検討することといたしております。
 さらに、これらの対策にあわせまして、浜松市と連携をとりながら、工場、事業場等に対する排水監視のほかに、地域の家庭を対象にいたしまして、台所の流し台、排水口に取りっける網目容器を配付して、生ごみなどを流さないように、そうした生活排水浄化実践活動を推進し、あわせて啓発活動を達ております。
 今後とも引き続き補助金の確保や地域住民への働きかけを通じまして、佐鳴湖の水質の改善に努めて参る所存でございます。以上です。

○浜井
中小河川の環境整備についてお尋ねいたします。
 日本人の想像する最も一般的な原風景は、山のふもと、山の端に住み、目の前には小川が流れ、その川の向こうにはなだらかな丘が広がり、その先に再び緩やかな山が連なっている光景だと言われています。「兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川」は、まさにこの光景の中に点在しているのであります。
 そしてまた、太古、人類の祖先も含めて、地球上の生命は海から発生したといわれ、世界の主要な文化、文明も川のほとりに起こっていったという事実を考えますと、生きとし生けるものすべてのものにとって、水を集め、いずれも海に向かって流れてやまない川は、命と魂のふるさとであるといっても過言ではないと思います。
 しかし、地形が急峻で降水量が多い日本の自然条件は、極めて厳しいものがあり、川はそのはんらんによって生命、財産を一瞬のうちに奪い去る恐ろしい存在でもあります。
 特に高度成長期に入っての急激な都市化の進展は、自然開発によって、保水や遊水の機能ばかりか、従来川の持っていた生態系をも消失させていきました。また、生活排水の流入によって水質は汚れるに任せ、効率的な機能追求のために、.川は地域住民とのかかわり合いを薄めて、対立する存在として位置づけられていたように思われます。
 最近になってようやく、川を市民生活の中に取り戻して、緑と潤いを持たせ、治水機能一辺到であった川を親水性のある川へ再生させようとする動きが活発になってきました。
 第四次全国総合開発計画においても、「水と緑のネットワ−クの形成」の項で、「水と人とのかかわりの再構築を目指す。都市においては、水面空間、水辺空間の有するオ−プンスペ−スの確保、自然とのふれあい空間の創出、非常時用水の確保等の多様な機能を復活確保するため、これらの空問を緑とあわせて配置し、水辺を生かしたまちづくりを進める水と緑のマスタ−プランを策定する」とうたい、昨年の9月に閣議決定された第7次治水事業5箇年計画における概要は、安全で活力ある国土基盤の形成、杜会経済の発展に向けての水資源開発と並んで、潤いと触れ合いのある水辺環境の形成を基本方針としているのであります。
 こうした状況のもと、新年度予算において建設省は、治水対策事業の整備推進の諸施策にあわせ、新規事業として「河川とその周辺の良好な景観の形成を図るため、堤防の強化とあわせ、堤防に植樹を行う桜堤モデル事業」、そして「住民による堤防の良好な維持と河川空間の適切な緑化を積極的に推進するラブリバ−制度.の創設」を予算化しております。
 我が県内には、一級、二級河川の数合わせて89水系525本、準用河川808本があり、うち二級河川の延長はおよそ2800キロメ−トルで、全国平均を220キロ上回って、延長数において第16番目であります。
 そのため、非常にたくさんの住民団体が、地域の河川を再生させようとして、さまざまな活動を展開しているのであります。昭和46年以降、県内における河川愛護団体の表彰数は206団体に上り、そのほかにも他の任意の機関や新聞杜等、氏間の表彰を数え上げれば、恐らくさらに大きな数字になると思われます。
 継続的に、しかも自発的に草を刈り、愛情を持って稚魚を放流しごみを拾う、こうしたこれらの団体に属する人々の心の中には、集会所や公民館や体育館では求めることのできない、また別のすがすがしいコミュニティがあると思うのであります。
 自然の天蓋のもとで、何よりも川をよりどころとしたコミュニティでありますから、ふるさとの川はコミュニテイ−リバ−であると思うのであります。
県当局におきましても、県単独河川改良事業費、県単独臨時河川整備事業費に加えて、新年度より新規に河川特別対策事業費が予算計上されて、治水対策にっいては評価すべき体制が整ったように思いますが、こうしたコミュニティ・リバ−となっている地域中小河川の環境を整えていくことは、地域におけるささやかなリゾ−ト開発でもあると思うのであります。
 知事は、このような環境整備についていてどのように考えておられるか、お伺いをいたします。以上をもちまして、湖と川を主体とした私の質問を終わらせていただきます。


○斉藤知事
『中小河川の環境整備についてでありますが、水と緑の貴重なオ−プンスペ−スとして、河川空問の持つ価値が改めて見直され、最近、潤いと触れ合いのある水辺環境づくりが脚光を浴ぴていることは、大変喜ばしいことであると思っております。河川環境の整備につきましては、私はかねてから深い関心を持っておりまして、建設大臣のとき河川審議会に対し、今後の河川環境管理はいかにあるべきかにっいて諮問を行いましたが、そのときいただいた答申が、現在河川環境施策の基本になっているところであります。
 河川事業につきましては、従来とかく治水対策に重点が置かれ、実施されてきているところでありますが、最近における県民意識の変化、生活様式の多様化等に伴い、ご指摘にもありましたように、人間の生活と深いかかわりを持つ河川本来の機能が着目されるようになり、河川環境の整備に対する要望が高まってきているのはご案内のとおりであります。
 このため、県といたしましては、先生からも強いアピ−ルのありました、従来からの河川環境整備事業に加えて、昭和62年度から新たに河川環境特別整備事業を創設し、地域のまちづくりと一体となった、潤いと安らぎのある河川環境の形成に努めているところであります。
 また、河川環境の保全と整備を図る施策を総合的、計画的に実施するため、河川環境管理基本計画を策定することとし、そのための調査費を新年度の予算でお願いしているところであります。県といたしましては、こうした調査結果を踏まえ、今後とも地元市町村とも協議しながら、中小河川の環境整備の推進を図ってまいる所存でございます。』