県議会質問
  平成元年9月議会  
        1 農政問題について
           1)農林水産業ビジョンと既存計画との調整
           2)農山村の花嫁対策
           3)農産物の広告宣伝手法
           4)農業用廃塩化ビニ−ル処理対策
        2 浜名湖の水産振興について
            ・ 浜名湖のしゅんせつ
        3 ボランティアの育成と福祉教育について
           1)シルバ−ボランティアの育成
           2)特殊教育諸学校における福祉教育
        4 地方公営企業の経営基盤強化と公有地の有効利用について

〇浜井
 私は、自由民主党所属議員として、当面する県政の諸問題について、知事、関係部長、関係局長、教育長にお尋ねをいたします。

まず、農政についてのうぢ、農林水産業ビジョンと既存計画との調整についてであります。
我が国農業は、少ない国土面積に比例する零細な規模の農用地を活用し、水田農業主体の自給型農業を営んできましたが、戦後杜会が落ちつきを取り戻した昭和35年ごろから、世の中は近代工業杜会の構築に向かって歩み始め、食糧需要の変化と雇用情勢の改善に伴い、農村の労働力は高度経済成長杜会の中へ少しずつ吸収されていったのであります。
 翌昭和36年に農業基本法が制定され、国民経済の重要な構成要素である農業の近代化と合理化を図り、国民各層と等しい生活を営むための新たな目標を掲げたのでありますが、法施行以来実施されてきた第一次、二次構造改善事業と、その後を受けて53年から始まった新農業構造改善事業、前・後期対策ば、土地基盤や近代化施設の整備を図り、土地利用型農業の構造改善を主な課題として推進されてきました。
 しかし、耕地面積は年率0,5%と減少を続け、農業就業人口も同様に3,8%の減少を示したことに見られるように、農業は若者にとって魅力ある職場にはなり得ず、これまでの国の農政は、その意味で十分な効果を上げることができなかったと言えるでしょう。
 こうした反省の上に、農水省は、地域の特性を生かした高生産性土地利用型農業の確立と、需要鮒造型農業の推進、そして、何よりも人問というすばらしい資源を地域の中で活用した活力ある農業の育成を目的とするポスト新農業構造改善事業を来年度からスタ−トさせることになりました。
 県は、今度の補正で農林水産業の技術向上、経営安定、地域活性化、そして、整備等を柱とする農林水産業ビションを策定することとしていますが、その目的は何なのか竈そして、ポスト新農構や進行中の新農構後期対策、そして、主要事業推進のために既に策定済みの基本計画及び市町村が策定した既存の計画等との位置づけはどうなのか。また、それらの調整をどう図っていくのか、お伺いをするものであります。

〇浜井
 農政について、次に、農山村の花嫁対策についてお尋ねいたします。
農林水産省が今年まとめた新規農業従事者の数は二万六千六百人で、対前年比10,4%の減少は、調査開始以来の十年問で最少の人数を示しました。また、昨年西部農林事務所が農業後継者確保対策の一環として実施した西部地域の新規就農老実態調査では、この十年問の若手新規就農者の充足率は、目標の30%であるとの報告がなされています。
 総務庁の就業構造基本調査は、非農林業の就労老平均年齢について、おおよそ54年が39歳、57年40歳、62年41歳と、比較的に緩やかな上昇であるのに対し、農業における就労老の平均年齢は、同じく54年51歳、57年53歳、62年は55歳と高齢化が進行し、平均年齢の差は拡大する一方であることを明らかにしております。
このように極めて速いテンポで高齢化が進む過疎山村や農業環境の中で、嫁不足の問題がとりわけ深刻になってまいりました。ポスト新農構の中で農水省が打ち出したまちとむらの若者ふれあい促進事業は、異性との出会いの機会が少ない農山村の若老に対して、国が花嫁探しに手をかそうとする事業であり、農山村に若い担い手の定着を図ろうとするものであります。
 専業農家であっても、娘だけは農家に嫁がせたくないという風潮の中での花嫁探しは、農業を続げようとする青年たちにとって重大な人生問題とたっているのであります。県が来年度策定しようとしている農林水産業ビジョソ、あるいはポスト新農構の新しい事業にあわせ、農山村の花嫁対策について何らかの施策を考えてほしいと思うのでありますが、ご所見をお伺いいたします。

〇浜井
 農政について、次に、農産物の広告宣債手法についてお尋ねいたします。これまでの農業は、大量生産、大量消費による農産物のスケールメリットを追求するものであり、また、荷崩れやこん包しやすいなど、流通資本の流通体制に合わせた農業でもあったと思うのであります。グルメの時代、飽食の時代と一言われ、また一方で、余暇の増大や高齢化の進展に伴って、消費者である住民の生活様式や嗜好に大きな変化が起こりつつある今日であります。
 本県においても、こうした消費文化や需要の変化に対応した地域農業の展開を図り、高い生産性とすぐれた品質を持った特産品の産出を目指して、ほんものづくり静岡県運動を推進しているところでありますが、幾らすぐれた品質の農産物、生産老が誇る農産物をつくり出したとしても、それが大都市圏などの消費者に情報として伝達され、現実に消費されなけれぼ、運動の成果はないのであります。
 本県においては、シソポジウムやフェスティバル等の開催、県内外で企画される同様事業への参加、啓発資料の作製や広報活動の実施等によって、県産品の広告宣伝を行っているところであり、昨年から開始した大相撲9月場所優勝力士へのトロフィ−と特産品の贈呈という新しい試みは、評価されるものであります。
 オレンジ輸入自由化を2年後に控え、全国の、ミカン生産県では、産地生き残りをかけた消費拡大に知恵を競い合っており、ことしの初めごろ、みずみずしいミカンの山に体を埋めた女性モデルが「食べごろ」とささやき、そして、「ミカン伊予カンわしゃすかん、親の言うこと子は聞かん」とリズミカルに歌う愛媛ミカンのテレビスポツトが東京、大阪で流され、「伊予カンのイメ−ジにびったり」、「とても新鮮」と大変な好評を博したというのも、その一例であります。
 日本一のミカン生産県愛媛県でも、我が県同様、ミカンなどの宣伝費は、生産出荷組合等に対する補助金の形で負担していたようでありますが、今回は伊予カンの出荷時期に合わせ、県の単独事業として、県がみずから制作、放映を手がけたということであります。愛媛県がこれに費やした宣伝費はおよそ四千万円、テレビだけでなく新聞広告、特選ミカン送付等を内容とするかんきつPR推進事業費は、総額1億1千8百13万2千円であり、一地方自治体がこうしたテレビコマ−シャル放映に取り組んだのは、恐らく全国でも初めてのことであろうと言われているのであります。
 今年度、本県における農水産物の広報、宣伝に関する予算は、ほんものづくり静岡県運動推進事業費、その他行政費と関係団体等への助成費を合わせて、総額でおよそ1億3千万でありました。本県農業の一層の振興を図るための重要な施策の柱であるほんものづくり静岡県運動を成功させるためにも、また、本県で産出する農産物のブランドイメ−ジを全国に確立するためにも、他県とは一味も二味も違った独創的な消費拡大策を考えていくべきであると思うのでありますが、知事の御所見をお伺いいたします。

〇浜井
 農政についての最後は、農業用廃塩化ビニ−ルの処理対策についてであります。本県は温暖な気候、風土に恵まれた地の利を生かして、早くから花の栽培が盛んに行われており、バラの生産日本一を始めとして、菊、カ−ネ−ションなどの生産は、全国有数の生産量を誇っているのであります。水田減反や農産物輸入自由化の波に揺れる農家のほとんどは、花の栽培に目を向け始めており、各県が一斉に何か花をつくる機運にあると、全国農業協同組合連合会も認めているところであります。
 私は、昨年の9月議会で、こうした動向を予測した上で、花升振興対策に関連した施設転換のための政策資金枠の拡大についてお願いいたしましたが、幸い知事のご配慮をいただいて、この枠組みにこだわらず、他の項目からの資金引き出しの道をあけていただきました。これにより、県内各産地では、施設化、装置化に一層の弾みがつくものと思われますが、その一方で、.施設の増大につれて問題となるのが、使用済み農業用廃塩化ビニ−ルの処理であります。農業用廃塩化ビニ−ルば産業廃棄物とされ、法律によって、排出者である農業者が、みずからの責任において処理しなけれぼならないとされているのでありますが、放置しても埋めても腐敗しないこと、焼却すると、悪臭とともに微量の有毒塩素ガスが発生し、周辺の樹木や植物を枯らしてしまうという弊害が出て、個人で処理するには非常に困難が伴うものであります。
 過日、農業粗生産額において全国第2位、そして、施設園芸県としては熊本県に次いで第2位という茨域県で行われている第三セクタ−方式による廃塩化ビニ−ル処理システムの情報を得て、私は茨城県を訪ねてきました。もともとが肥沃な関東口−ム層に覆われている茨城県は、東海村原子力研究所、鹿島臨海石油コソビナ−ト等が開発されるまでは、農業を主な産業としてきただけに、大量の廃塩化ビニ−ル類の処理には相当頭を悩ましていたようであります。年間の総排出量およそ1万3千トン、我が県の4倍にも達する膨大な量を抱える茨城県は、これを適正に処理するため、昭和61年、県と31の市町村、そして中央会や経済連等の農業団体と協力し、それぞれ3分の1の負担において、杜団法人茨城県農業用プラスチック処理協会を設立したのであります。同時に、これらの収集に関連して、市町村収集対策協議会を設けて、市町村ごとの収集の計画策定と実施という役割分担を行いました。会員市町村や農業団体には回収目標数量が与えられ、事業を開始して3年目の昨年になって、初めて目標の3千トン回収を達成し、ようやく処理事業が軌道に乗ったということでありました。 この方式では、再生処理される製品に市場性を持ったパ−トナ−を見っけることが最大の課題であ利、更に市町村と農業団体、生産組合等の全国的協力なくしてはできないことであります。
 しかし、こうした試みは既に十年の実績を持つ高知県や鹿児島県、長野県、山梨県、栃木県等で実施されており、群馬県と千葉県でも検討を始めたとのことであります。
 本県の廃塩化ビニ−ルの排出量は、昭和62年度調査で年問3,580トン、このうち塩化ビニ−ルが2,704トンであり、これらの処理は、これまで農業者個人と各単位農働がそれぞれ集積したものを、県外の処理業者に委託して埋め立てや焼却処分に付されていたものでありました。最近は特に再生原料の需要が停滞中であり、愛知県や長野県等の他県業老に頼る本県の現状では、全国的な傾向として、今後もふえ続ける産業廃棄物の処理について、必ずや厳しい対応を迫られることになると思うのであります。
 本県農業の振興と農村環境の保全、そして、将来の課題としての産業廃棄物県内処理といった複数の観点からも検討する時期に来たと思うのでありますが、知事のご所見をお伺いいたします。

〇浜井
 次に、浜名湖の水産振興についてお伺いいたします。
昨年、浜名湖総合振興計画の策定についての私の質問に対して、知事は、浜名湖を縁と水、水の幸多き本県にとってかけがえのない財産であると受けとめていただきました。入江あり、岬あり、島陰あり、きらめき揺れる湖面は、四季折々の光景をのみ込んで、万葉の歌人に始まり、中世、近代へとつながる文学の舞台であり、浜名湖を自然の宝庫として、さまざまな水資源の恵みを享受してきた周辺庄民にとっての生活の場でもあります。
 本年4月決定された浜名湖総合振興計画基本目標の圏域像は、「水と緑に彩られた環浜名湖都市圏の創造」であり、その最初に掲げられた「浜名湖の美しさを高める」という目標は、まさに水と緑の保全にほかならたいと思うのであります。
 今年8月公告された河川及び湖沼の環境基準地点の水質汚濁状況によれば、浜名湖水域水質調査地点8カ所のうち、湖西、新所、新居の3地点で化学的酸素要求量が環境基準に達しなかつたと報告されていますが、日間平均値の範囲が示す最高数値は、8カ所の調査地点のすべてにおいて類型ごとに規定されている基準値を超えているのであります。こうした水の汚れは、当然のごとく水産資源に大きな影響を与え始めており、かつて数えられていた幾つかの魚種や海草が姿を消し、漁業者のみならず、水辺に親しむ一般市民をも悲しませているのであります。
 63年度の浜名湖内漁業の水揚げ高は、およそ25億6千万円先祖代々漁業を生業としてきた沿岸漁業者にとって、水の汚れによって失われていく水産資源とヘドロや土砂の堆積による漁場の損失は、まさに死活間題なのであります。
 今回の補正で県は、航路しゆんせつに2千斤円、沈廃船対策に60隻分750万円を計上して、二つの事業に着手することになりました。大きな前進であります。今回の事業ば沿岸整備事業の一環でありますが、港湾区域と漁港区域の指定を受けていないその3倍にものぼる浜名湖の水域の中には、航行安全と潮通しを代えることによって可能な漁場造成の立場から、強いしゅんせつの要望が沢山積み上げられていても、残念ながら、これらの要望に対応する予算の項目が見あたらないのであります。
 かって、県立湖南高校の敷地造成工事に関連して、新川のしゅんせつを行ったのでありますが、しゅんせつの結果は、より多くの魚介類の生息が確認されて、漁協組合員のだれもがその効果を認めているところであります。このように、しゆんせつによる水産資源の造成効果は実証済みでありますから、漁業資源の確保、期待される栽培漁業の放流漁場の造成といった広義の浜名湖水産振興のためのしゆんせつ事業に対する県単独枠の設定についてのお考えを伺うものであります
 また、次善策として、地先の市町村、または水域全般に漁業権を持つ浜名漁業協同組合が水産振興として行うしゆんせつ事業に対して、単独助成はできないものだろうかと思うのでありますが、ご所見をお伺いいたします。

〇浜井
 次に、ボランテイアの育成と福祉教育にっいてお尋ねをいたします。
まず、シルバ−ポランテイァの育成についてであります。1940年まで、約50歳であった日本人の平均寿命は、今日、男性で75、54歳、女性は81,3歳と、世界一の長寿国へと駆け上がってきました。西暦2020年には、ほぼ4人に1人がお年寄りという超高齢杜会が予想され、近代文明が人問の寿命を伸ばした分だけ、また多くの問題を積み増すことになったのであります。
 かって、今日ほどの豊かさはなかったけれど、世の中が落ち着きと安らぎを持っていた時代には、夕食のテ−ブルを囲む家族全員の姿があり、祖父母の昔話を聞き、父親や母親の小言を聞いたものでありました。今日、創出家族の増加、核家族化の進行によって、隣近所とのつき合い、杜会の慣習やしきたりを口づてに伝える場所と、思いやりやいたわりの心を伝える機会が消えていってしまったのであります。ひとり暮らし老人や寝たきり老人、あるいは、老夫婦だけの世帯がふえ、連帯意識が薄れていく杜会において、これらの老人はもちろん、子供たちも、この高齢化社会の犠牲者であると考えていました。
 中学生以上を対象にこの夏行われた第8回サマ−ショ−トボランティア活動においては、開始以来最高だつた昨年の参加者を一挙に317人も上回ったことを聞き、また、今年13回目の静岡県高校生ワ−クキヤンプ事業には、県内12地区で518名が参加したことを聞いて安心したものであります。こうした経験をもとに、高校生などの自主的なポランティアグル−プが生まれ育っていくことを期待するのでありますが、県ボランティア協会と社会福祉協議会が今年初めにまとめた活動グル−プ実態調査は、グル−プ、会員数とも増加している反面、実働会員が少ないという実際の活動上の問題点を指摘しているのであります。受験戦争のまっただ中にいる大多数の中・高校生に、年間を通したボランティア活動を望むことは、しょせん無理かもしれません。昨年、ス−パ−オ−ルドと呼ばれる85才以上のお年寄りが初めて100万人の大台を超え日本人の平均寿命はまだまだ延び続けると予測されているのであります。
 そこで、お年は召しても元気なお年寄りを啓発し、そうしたお年寄りたちによるシルバ−ボラソティアの制度を創出したらどうかと思うのであります。自ずからの生きがい対策にもつながるこの考え方についてのご所見をお伺いいたします。

〇浜井
 次に、特殊教育諸学校における福祉教育についてお尋ねいたします。毎年行われているサマ−ショ−トボランティアと高校生ワ−クキャンプには、特殊教育諸学校の生徒たちが時折参加していることを知りました。特に、聾学校の生徒たちが、言葉の不自由さにもめげず熱心に働いて、この生徒たちの奉仕を受けた障害者に、他の何にもまさる刺激を与えたという報道に接したとき、少なからず感動したことを覚えています。自立可能な障害者が、自立困難な障害者に奉仕することができるような教育、訓練を特殊教育諸学校の教育課程の中に取り入れることができないだろうかということをかねてより考えていたからであります。
 今年の夏、文部省は、盲、聾、養護学校の学習指導要領改定案を発表いたしましたが、それによると、個々の障害児の実態に応じた指導の充実を目指すとともに、高等部での職業教育の充実を図るとしているのであります。障害者は、いつも杜会的弱者として受動的でなく、自ずからの能力の可能な範囲内で能動的に社会参加やボランティア活動に従事する場を用意してあげるべきであると私は思っています。そして、障害者が一生懸命にボランティアとして奉仕する姿を一般県民がその目にとめるならば、県民の福祉意識がさらに高まっていくものと確信しているのであります。
 特殊教育のそれぞれの学校において、「私・発」福祉の時代に即した福祉教育の推進についてどのような取り組み方を考えておられるか、お伺いするものであります。

〇浜井
 次に、地方公営企業の経営基盤強化と公有地の有効活用についてお尋ねをいたします。我が国の経済杜会は、戦後の混乱期を抜け出ると、その教育水準の高さと勤勉性を背景に、産業の米ともいわれる石油をはじめとした海外からの安い原材料を輸入し、強い対外競争力と高い付加価値を持った製品を輸出することによって、快適な近代工業杜会を形成してまいりましたが、石油シヨックを契機に、諸外国との経済摩擦が激化するに伴い、杜会構造の変化を迫られてきました。
 昭和27年、公共の福祉の増進を目的として地方公共団体が経営する企業について、法が制定されて以来35年余を経過しつつあります。地方公営企業は、総じてこうした変化の激しい杜会に揺られながらも、法の目的に沿った一応の成果を上げてきたものと思われます。昭和61年には、大幅な法改正によって、事業数が飛躍的に伸びた昭和40年当時の6千件から、8千件へと事業数で33%もの伸びを見せ、職員数で35,9%、決算規模では実に十倍強と拡大されるに従い、公営企業は赤字事業といった定説も徐々に覆され、赤字経営事業数の割合は、オイルショック後の昭和50年度の44%に対して、昭和61年度には22,9%と、ほぼ半減しているのであります。高齢化・高度情報化、そして国際化の時代を迎えて、我が国社会は、地域の隅々に至るまで再びより激しい構造変化を遂げようとしている中で、行政に対する地域住民のニ*−ズはますます多様性に富み、質的にも高いものが要求される時代に入ってきたのであります。
 昨年、公営企業金融公庫総裁を委員長とする地方公営企業研究会による報告では、こうした時代の要請にこたえて、地方公営企業の果たすべき役割とその経営基盤強化の方策について多くの提言が行われました。今」、地方公営企業が設立当初の目的としてきた法定事業以外の事業を実施する地方自治体は32都道府県に及び、その内容はダム管理、水族館、保養施設・テニス・スキ−場に加え、ゴルフ場やスポ−ツセンタ−に至るまで、まことに多種多様な展開を図っているのであります。
 また、自治体公営事業に関する別の調査によれば、地方公営企業が公営企業にふさわしい新たな事業を計画しているところは、全国の1都道府県に及び、加えてなお10県が今後の検討を予定しているということてあります。
 本県は、62年4月静岡県公営企業の設置等に関する条例を改正し、企業局は、これまでの事業に加え、新たに地域振興に寄与する事業用地の造成、分譲を可能にしたわけでありますが、進行する高齢化杜会が地方財政に大きな負担を求めつつある今日、一般会計への依存度を極力薄めながら、生活様式や意識の変革に伴って要求される高度な住民二−ズにこたえて、公営企業の果たす役割は今後ますます重要になってくると思うのであります。そのためにも、ふるさと創生やふるさと活性化といった県と市町村行政との整合性を求めながら、地域の振興と地域住民の福祉の向上に貢献するた
め、企業局の施設用地の複合的な利活用はもちろん、国有林や遊休県有地などの公有地、.民間資本の手が届きにくい山間地や河川敷等について新たな事業の展開を図るべきであると思うのでありますが、ご所見をお伺いいたします。
 また、それらの新規事業の実施に当たっては、第三セクタ−方式や公設民営方式等が想定されるのでありますが、もう一歩踏み込んで、企業局自ずからが経営の主体となるようなお考えはないか、合わせてお伺いするものであります。
なお、過日、あるマスコミを通じて報道されました富士川河川敷公設ゴルフ場建設構想と、それとは別に、現在、企業局西遠事務所が浜松市において計画中の業務用地の開発計画については、関係白治体事業、計画等との整合性や地域関係住民との十分な合意を得ていただきたいと思うのでありますが、これらの計画について今後どう推進指定校としているのかお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  

〇斉藤知事
 浜井先生にお答えをいたします。まず、浜井先生は、法学士でしたね。にもかかわらず、農政間題等、多岐にわたってのご研さんにつきまして、改めて敬意を表します。
ご案内のように、我が国の農業は、今、非常に厳しい過渡期と言ってもいいくらいの環境に立たされております折だけに、先生の数々の農水産のビジヨンに対するご意見を踏まえての質疑につきましては、改めて傾聴させていただきました。特に、土地利用関係における振興方についてのご卓見につきましては、大変に勉強になったわけであります。ご案内のように、本県では昭和57年度に策定いたしました静岡県農業振興の基本方向に基づき実施してまいっておりますが、厳しい環境変化に的確に対応するため、新たに21世紀を展望した静岡県農林水産業ビジョンの策定を進めているところであります。この策定に当たっては、国際化時代に対応する高生産性農業の展開や、すぐれた経営感覚を持った担い手の育成などを重点課題として、基本構想の一つに位置づけるとともに、特性を生かした地域計画を樹立することとしております。このピジョンは、農林水産業に関する総合的なビジョンであり、今後の本県農林水産業行政の指針となるものでありますので、今後の農政を展開していく上で、役割を分担することとなる国や市町村との十分な意見の交換を行いながら、各種の計画との整合性を図った上で策定してまいりたいと考えておりますので、なお引き続きご卓見等ご開陳くださりますればありがたい限りであります。

〇斉藤知事

 次に、農山村の花嫁対策のご提言をいただきました。これまた大変取り上げたその視点につきまして恐縮いたしますわけであります。やはり、農山村の花嫁対策は、当然若い諸君の定着の間題もさりながら、後継者の問題に大きな考え方を及ぼさなけれぼならたいかとも思います。今、「春日局」をやっております。局が一番頭を悩ましている今の現況は、いかに家光に嫁をとらせて子供を、後継者をつくるかということに、今最重点になっておるわけであります。既に、その当時のことまで思いをはせて、浜井先生は、これは今後のことを考えての花嫁関係であろうかと思いますと、また感服するところであります。まさに農山村におげる花嫁、それにはやっぱり花嫁が楽しく農業に従事する環境づくりをするということが、私たちに課せられた問題ではなかろうかと思います。楽しい農業、そして、きれいとは言いませんけども、その生産が民族の生産、地域農業振興に果たす役割ば大きいんだという認識、意識の問題を定着させて、進んで花嫁が楽しい家庭をつくるという意気込みで来られるような環境づくりが必要ではなかろうかと思います。よくこの花嫁対策につきましては、関係者と相
談して、どのような形が静岡県の農業関係において最もふさわしいかということにっきまして、なお、検討、勉強をさせていただきたいと思います。

〇斉藤知事
 次に、農産物の・広告宣伝手法でございますが、これまた、静岡県の農業は非常に底が深く多品種で、将来はあるわけでありますが、どうも静岡県人的と言うと失礼でありますが、少しPR不足なんですが、その点、このごろは若い農業従事者等々が非常に先見性を持たれて、例えば東京の何と言うんですかね、六本木とかああいうところで農産物を陳列して宣伝をするとか、ご指摘のように、昨年から大相撲で農産物を懸賞に出すとかというようなことを今一生懸命でやっているわけで、その他なお、いろいろの宣伝効果等を含めながら、手法につきまして勉強もさせていただきますし、ご指導等もお願いを申し上げる次第でございます。茨城へご視察にも行ったそうでありますが、また具体的なこと等をご教導を賜りますれば、ありがたい隈りでございます。


〇斉藤知事
 次は、農業用廃塩化ビニール処理対策であります。この問題も、近代的な公害の大きな課題であって、いまだに、これだけ科学技術が進んでいながら、この塩化ビニ−ルの消去法というんですか、廃棄方法というものは、的確な方法手段が見つかっていないということ。そこに、ご指摘のあった茨城県等をご御視察になった問題が含まれていると思いますが、これは関係者それぞれに、起因者が原因者として、それを処理するというようなしどうもしておるようでございますが、これはまた県サイドで、当然農業振興を含めながら、この問題については対策を図らなければならない問題というように承知いたしておるわけでございます。なお、各地、現実に視察等々してまいりました、それを踏まえながら、今後ご指摘を踏まえて積極的に対応を図ってまいる所存でございます。

〇斉藤知事
 次に、浜名湖の問題につきましては、先生から、地元ということもさりながら、再三にわたって浜名湖周辺につきましてご指摘等、ご示唆、ご質疑をいただきました。特に今回は、水産振興についてでありますが、ご案内のように水と緑の浜名湖は、まさに環境といい水資源といい、あらゆる資源を持った、静岡県にとってはかけがえのない宝庫であります。したがって、これらの保護をすることはもちろん、振興という環境から重大なこととして受けとめて、浜名湖振興策につきましては水産振興を含めながらやってまいるというようなことを考えておるところでございます。今後、今ようやく浜名湖周辺の関係諸団体、関係業者も同じテ−ブルにようやくこの一、二年ついてくれるようになりましたので、皆さんで挙げて、ひとつ浜名湖の振興について対策を図っていきたいと、このように考えているところであります。引き続き、当然のこととして努力してまいる所存でございます。

〇斉藤知事
 次に、ボラソティア育成と福祉教育のうち、シルバ−ボランティアについてであります。昨今の核家族から、一つの家庭における団らんということまで含めてご発言がありましたけども、今回はポランティアについてのご指摘があったわけでありますが、高齢化の中で、豊かな福祉杜会の実現のためには、当然、ポランティアのすそ野拡大を図ることが一層必要となってきておるのは、ご指摘のとおりであります。
特に、高齢者みずからの豊富な知識や経験、技能を生かしたボランティア活動は、地域福祉を支える大きな柱となるものと考えております。県下では既に老人クラブを中心としたひとり暮らし老人への友愛訪問や、地域のお年寄りの老人福祉施設への奉仕活動など、さまざまなシルバ−ポランティアの活動が見られ、県も支援しております。 改めて、ボランティア関係方々に心から敬意と感謝を申し上げるわけでありますが、なお一層これらのボランティア方々に、お骨折りでありましょうけども、促進を図るために友愛訪問の拡大を図る、ご指摘の計画を図るとともに、指導者養成や啓発事業を積極的に実施することといたしております。
 いずれにいたしましても、青少年から高齢者まで、県民が幅広くポランティア活動に参加しやすいよう、拠点づくりや環境づくりなどの条件整備に努め、住民啓発とあわせ、その育成について取り組んでまいる所存でございます。
 なお、公営企業の関係についてもご質疑がございました。ご指摘のとおり、新しい企業局のあり方として、条例は条例として、今後のあり方として、皆さん方にお諮りして、現在の業務の範囲をどのくらいまで拡大するべきかという回答等につきまして、いずれ皆さん方のご献策をいただきたがら、改めて、企業局関係の対応は図っていかなければならぬ、考慮しなければならない時期に来ておるというふうに私自身受けとめておりますので、なお細部につきましては、企業局長から答弁させていただきます。
 以上、私からの答弁は終わりますが、なお残余につきましては、関係部長から答弁をさせていただきます。

〇教育長
  特殊教育諸学校における福祉教育の推進についてでありますが、特殊教育諸学校では、教育活動を通して、自分の力で生活できることをふやし、将来職業的に自立できるとともに、社会の一員として活躍できる生徒の育成を目指しております。例えて申しますと、盲学校では、授業で身につけたあんま、指圧、マッサ−ジの技術を生かしまして、地域の老人ホ−ムで奉仕活動をしておりますし、聾学校では、サマ−ショ−トポラソティア活動に参加して、自分自身の生き方を考えさせております。さらにまた、養護学校では、ワ−クキャソプに参加したり、杜会福祉施設での生
活体験を通して福祉について学んでおるところでございます。
障害者は、ともすれば援助を受ける態勢になりがちなので、このように、少しでも自分たちから他へ働きかけることができるよう、教育活動全体の中で取り組んでおるところでございます。今後とも、特殊教育諸学校の児.生徒に対しまして、地域の人・と互いに触れ合う中で、自ずからの福祉に対する意識が高まるよう、奉仕精神の涵養と実践力の育成を目指した福祉の教育を推進してまいりたいと、このように考えております。以上であります。

○企業局長
地方公営企業の経営基盤強化と公有地の有効活用についてお応え申し上げます。
まず、現在企業局が経営しております工業用水道事業、広域水道事業、土地造成事業の三事業についてでありますが、おかげをもちまして、極めて健全な経営状況であり、今後とも新規需要への対応も含めて、経営の充実に鋭意努めてまいりたいと考えております。

 次に、今後の公営企業のあり方についてでありますが、ご指摘のとおり、社会経済環境の変化に対応した新しい事業の展開が期待されていることは事実であり、私どももまたそのように認識しているところであります。こうしたことから、企業局といたしましては、民間企業の手の及びにくい、また、一般県民が気軽に利用できる余暇利用のためのスポ−ツ・レクリエ−ション施設、文化施設、さらには新都市開発事業などの分野につきましても、収益事業としての公営企業の特性を生かした中で、事業化の可能性につきまして検討を重ねているところであります。
 具体的には、遊休県有地、身近な国有林、河川、海岸、低湿地等の有効活用、さらには、山間地の都市近郊丘陵地域の総合的な開発などにつきましても、他県の事例などを参考にしながら、その開発の可能性につきまして調査研究を進めているところであります。また、企業局が研究している新規事業分野は、経営を伴うものでありますが、これらにつきましては直営方式、第三セクタ−方式、民問委託形式など、事業の種類や地域に見合った経営手法の研究も行っているところであります。
 なお、ご指摘のありました河川敷の活用と、浜松にあります企業局西遠事務所の業務用地の利活用等にっいてでありますが、スポ−ツ・レクリェ−ション施設としての事業化の可能性について、具体的に検討しているところであります。今後、地元市町村等の意向を踏まえ、関係機関とも協議し、合意が得られた場合には、事業実施を図ってまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、昭和34年に本県の公営企業がスタ−トしてから、おようど30年を経た今、新しい企業局のあり方、さらには21一世紀の県土づくりのために、企業局として何ができるかを鋭意検討しているところであります。今後とも県議会のご理解、ご指導のほど、よろしくお願意申し上げます。以上でございます。