1 100字程度のあらすじを書く。
この授業では、100字程度で『わらぐつの中の神様』のあらすじを書こうとするものである。
「あらすじ」を書く手順を身につければ、
- 物語を大まかに読みとることができる。
- 次の作品にも使える技術となる。
- 主題を書くときの大きなヒントになる。
(1) あらすじの書き方手順
次のことを検討していき「あらすじ」を書く。
1 あらすじの主語を誰にするか。→中心人物を検討する。
2 中心人物(主語になる人物)の考え方の変化を検討する。
- はじめの考え方(起承転結で言えば、起承にあたる)=こだわりを持っているものに対する考え方
- 終わりの考え方(起承転結で言えば、転結にあたる)=こだわりを持っているものに対する考え方
3 中心人物(主語になる人物)の考え方が変化した原因
4 2と3を文章上で合わせる。「あらすじ」を書く。
2-1,2-2,3を合体させた文章が「あらすじ」である。
*ここでは、1時間で扱った。(すでに、『わらぐつの中の神様』をいくつかに分け、それを要約する学習をしてあったからだ)
1,2,3をそれぞれ1時間かけてもいい。また、子どもが習熟すれば、「あらすじを書こう」というだけですべての作業を自分で行うことができるようになるはずだ。
(2) あらすじの構成
あらすじの構成は基本的には、次のような文章になる。
中心人物は、はじめ□□□について○○○だと考えていた。
しかし、****という事件(話)があって(のため)、
□□□は◎◎◎と考えるようになった。
(3) 「わらぐつの中の神様」のあらすじ
子どもたちが次のような「あらすじ」を書けるようになればいい。
マサエは、はじめわらぐつの中に「神様」がいるという話は迷信だと思っていた。
しかし、いい仕事とはみかけで決まるものではなく、使う人の身になって作ることで
あるという話を聞き、わらぐつの中にも雪げたの中にも、心のこもったものには、「神
様」がいるのだと思うようになった。
2 授業の実際
(1) 100字のあらすじ
説明 今から「わらぐつの中の神様」のあらすじを100字程度で書きます。一緒に書き方を勉強しよう。
(2) 中心人物は誰か。
発問 中心人物は誰ですか。
その人物が「あらすじ」を書くときの主語となります。
これは、ほぼ全員がわかっていた。
なぜならば、中心人物は、「はじめの考え方から終わりの考え方が変わっている人物である」という定義を学習しているからだ。 中心人物はマサエである。
(3) 中心人物の「はじめ」の考え方
発問 マサエが「はじめ」の部分でこだわっているものはなんですか。
- スキー靴とわらぐつ
- マサエは「わらぐつの中に神様がいるということは迷信」であると考えている。
第一部を見ればわかる。これまで要約をしているので、すぐに出てくる。
これらを板書をして、次へ進んだ。
(4) 中心人物の「おわり」の考え方
発問 マサエが「終わり」の部分でこだわっているものは何ですか。
「わらぐつ」
「わらぐつの中に神様がいるという考え方に変わっている」
これも、問えばすぐにわかる。
しかし、それが明示的に書かれている部分はない。
発問 マサエがわらぐつの中に神様がいると考え出したことは、どこからわかりますか。
指示 その部分に線を引きなさい。線が引けたらもってきなさい。
「そいで、大工さん、おみつさんのことを、神様みたいに大事にした」に線を引く子がいた。間違いであるといってもう一度考えさせる。
「この雪下駄の中にも、神様がいるかもしれないね」である。
発問 わらぐつのことが書いていないが、なぜその文からわかるのか。
指示 それがわかる部分を○で囲みなさい。
そうして、「にも」の「も」がわかる。雪下駄とわらぐつを同等にみたことがわかるのである。
(5) 原因部分を書き出す
例えば簡単なあらすじなら、今までの学習で書ける。こうなる。
マサエはわらぐつの中に神様がいるというのは迷信だと思っていた。
しかし、おみつさんの話を聞いた。(原因部分)
そこでマサエは迷信ではなく本当にそう思った。
しかし、これよりもさらにもうもう一歩踏み込みたい。
原因部分を詳しく表した方がよい。そこが主題に関わるからだ。
そこでさらに詳しく書くために次のような手順(スモールステップ)を踏むといいだろう。もちろん、すぐに「ウ」が出てきたら、この手順でなくていい。
- ア 原因部分を一言で表す。(おみつさんの話)
↓
- イ 原因部分の重要部分〈行動の結果〉を指摘する。
「おみつさんが大工さんを頼もしく思いプロポーズされた」*
↓
- ウ 重要部分(行動の結果)の原因をまとめる。(なぜ頼もしく思ったのかをまとめる)
*第二部は、おみつさんの物語だから大工さんの言ったことが簡単な要約には入ってこない。おみつさんを主語として書くからだ。
『わらぐつの中の神様』は、以下の図のように物語の中にまた物語が入っている構造になっている。それゆえ、原因の原因を追っていかないと、的確なあらすじは書けない。
(6) 原因部分を書く授業の流れ
説明 「はじめ」と「おわり」のマサエの考え方がわかりました。
次は、考え方が変化した原因を書きます。
前述した「ア」〜「ウ」のスモールステップで、原因の原因を書けるようにしていく。
ア 原因部分を一言で言い表す。
指示 原因部分は、第一部に書いてありますか。第二部ですか。第三部ですか。
・第二部
発問 第二部を一言で言うと誰の話ですか。
・おみつさんの話
イ 原因部分の重要部分〈行動の結果〉を指摘する。
説明 第二部をさらに前半と後半の二つに分けましたね。
発問 前半、後半、どちらがより重要でしょうか。
・後半の部分
要約をするときに、第二部(おみつさんの話)を二つに分けた。そのどちらが重要であったか、を問うたのだ。
発問 では、後半の部分のどこが重要でしょうか。 重要な部分はおみつさんの考え方が書いてあるところです。
どこでしょうか。
・「大工さんがなんだかとてもたのもしくて、えらい人のような気がしてきた」というところ。
この部分は前の時間に要約をしているので、比較的簡単に指摘することができた。
指示 「えらい人のような気がしてきた」のはなぜですか。その理由が書いてある段落を言いなさい。
・38段落(大工さんが急にまじめな顔になって話す部分である)
ウ 重要部分(行動の結果)の原因をまとめる。
指示 そうですね。この部分です。では、この大事な部分をまとめなさい。〈〜の大
工さん〉という形で書きなさい。
こうして、原因の原因を追うことをしたのである。
子どもたちの持ってきたものは、次のような文になっていた。
- A いい仕事は見かけで決まるものではないという大工さん。
- B いい仕事は使う人の身になって、使いやすく、じょうぶで長持ちするように作ることだという大工さん。
以下は,この部分の個所。
「おれは、わらぐつを〜。(A)いい仕事ってのは〜。(B)使う人の〜。おれなんか、〜思ってるんだ」
子どもたちは、(A)と(B)の文のどちらかを要約している。(A)も(B)も含めているようなものは書けていなかった。
そこで、Aを書いた子一人、Bを書いた子一人にそれぞれの文を板書するよう指示した。
私は、板書が完成するまで子どもたちが持ってくるノートを見ていた。
(7) いつも、「もう一歩踏み込み原則」で。
要約の文章を書かせる場合は、必ずもう一歩踏み込みの原則を使うと要約文がより適合した文章になってくる。
- A いい仕事は見かけで決まるものではないという大工さん。
- B いい仕事は使う人の身になって、使いやすく、じょうぶで長持ちするように作ることだという大工さん。
指示 A、B、どちらでも不十分なので、AとBを合わせると十分な文になります。
そのような文を作りなさい。できるだけ短くしなさい。
A、Bそのまま写し合わせて書いて持ってくる子にはもっと短くと指示した。
C いい仕事は見かけではなく、使う人の身になって作ることだという大工さんの話。
Cでよい。
(8) あらすじを書く。
指示 板書を参考にしてあらすじを書きなさい。
説明 あらすじは、中心人物の心の変化とその原因を書けばいいのです。
あとは板書の図を見ながら、「あらすじ」を書けばよいのだ。
〈板書〉
- 主語
- マサエ(中心人物)
- はじめ
- わらぐつの中に神様ー迷信ーみったぐない
- 原因
- いい仕事は見かけではなく、使う人の身になって作ることだという大工さんの話
- おわり
- わらぐつの中に神様ー本当
(9) 子どもの書いたあらすじ
子どもたちがノートに書いて持ってくると「評定」していく。
「おしい、6点」などといいながら点数をつけていく。 10点にならなかった子は、再度書き直してくる。
(10) 不十分なあらすじ
不十分だったあらすじは次のようなもの。
- マサエは、スキーぐつがぬれてあした学校でスキーの日だった。そして、おばあちゃんが、わらぐつをはいていきないと言ってマサエは、いやだと言った。
そしたらおばあちゃんがわらぐつの中には、神様がいると言ったが、マサエは迷信だと言った。だがおばあちゃんがわらぐつの話をしてくれて、マサエは神様がいると信じた。
この子は、前半部分が詳しすぎて、肝心の後半部分が十分に表現できていない。
「あらすじ」を書かせると前半部分が詳しくなりすぎる傾向がある。こういう子には、
「前半が長すぎる。3点。黒板を参考にしなさい」と助言した。
(11) 子どもの書いたあらすじ(最終のもの)
何回も書き直してくる子もいたが、最終的には次のようなあらすじになっていた。
- はじめマサエは、わらぐつの中に神様がいることは、迷信だと思っていた。けれどもおばあちゃんの話を聞いて、いい仕事っていうのは、見かけで決まるものではなく、使う人の身になって作るものだとわかって、マサエはわらぐつの中にも神様がいると信じた。
- マサエは神様の話を迷信だと思っている。でも、話の中の見かけではなく使う人の身になってと言う大工さんの言葉を聞いて気持ちがかわった。マサエはその「神様」の話は本当だと知った。
- マサエは、おばあちゃんにわらぐつをすすめられ、みったぐないと思い、わら靴の話をおばあちゃんから聞いた。いい仕事は見かけでなく、使う人の身になって作るのがいい仕事と聞き、それじゃあわらぐつの中にも神様がいるんだなと思った。
(12) まとめ
説明 このように原因が簡単すぎたら、原因の原因を探っていくことで、あらすじは詳しくなります。
以上1時間の授業である。
3 どの子も書けるあらすじ
このような手順で授業をし、どの子も同じように「あらすじ」を書くことができた。物語を理解するためには必要な技術だと考える。
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