葦毛湿原は本当に「東海のミニ尾瀬」か?

 葦毛湿原は尾瀬のように四季折々、多くの花が咲き、その湿原の素晴らしさから「東海のミニ尾瀬」と呼ばれるようになったのでしょう。
自然豊かで素晴らしい湿原であることは間違いありません。
 しかし、湿原の起源から考えると大きな違いがあります。
尾瀬は、湖沼が徐々に埋めたてられてできた湿原であり、また北海道の釧路湿原は河川の氾濫原に展開したものです。葦毛湿原はこれらの湿原と全く異なった成因をしています。
 葦毛湿原の背後の山には、年中枯れることのない湧水源が存在します。その湧き水は、地下の浅いところに分布しているチャート岩盤のために少量の水でも地下に浸透せずに山腹斜面を流れ、緩やかな斜面でよどみをつくります。そこでは水を含む帯水層の水位は高く保たれ、湿原が生まれたのです。
 よって、湿原の水は常に流れており、泥炭の堆積はおろか、土壌の堆積もわずかなのです。そのために、表層土が非常に薄く貧栄養な湿地となり、限られた植物しか生育できない環境となります。
 東海地方の湿原は、このような特異な成因のものが多く見られます。
湿原の成因を考えると、湿原内に人が踏み込む行為自体が植生の破壊につながることが理解いただけると思います。