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外国為替、国際金融知識編
Q1. 東京外国為替市場ってどんな市場?
Q2. ジャパンプレミアムってなに?
Q3.市場介入ってどうやっているの?
Q4. インフレターゲットってなに?
Q5. ハイパーインフレって一体どのくらいのインフレのこと?
Q1. 東京外国為替市場ってどんな市場?
A1. 外国為替取引には銀行間で行っているインターバンク取引と銀行と顧客との間で行う対顧客取引があります。インターバンク市場に参加できるのは外為公認銀行、ブローカー、日銀の3者に限定されています。
市場は戦後1952年に復活して以来、1973年2月の変動相場制移行を経て現在では1日あたり1千億米ドルを越えています。最近ではユーロ統合による主要通貨数の減少やメガバンクの統合などによって、取扱高は減少傾向にあります。取引の約9割がドル円の取引です。
また株式市場のように特定の場所はなく現在では約9割が電子ブローカー、残り約1割が電話によって取引が行われています。東京でも24時間取引が可能ですが、市場参加者の商習慣によって夜間はLDN, NYCに取引の場が移される慣例です。
世界の外国為替市場の1日あたり取引高[10億米ドル]
Year
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Spot
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Forward, Swap
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Total
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1992 |
394
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382
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776
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1995 |
494
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643
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1,137
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1998 |
568
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862
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1,430
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2001 |
387
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787
|
1,173
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Q2. ジャパン・プレミアム(Japanese
Premium)って?
A2. 最初にジャパン・プレミアムが発生したのは1974 年です。ドイツのある銀行の倒産をきっかけに起こったユーロマネー市場の混乱により、当時の主要な資金の出し手であるオイルマネーが一斉に米英銀行に資金をシフトさせました。主要な取り手であった邦銀勢はたとえ優良銀行でもユーロダラー資金が調達できない状態に陥り、やむを得ず米英銀行比高い金利を支払って資金調達をおこないました。この金利差のことをジャパン・プレミアムと呼び、ピーク時にはLIBOR比175bp(1.75%)のプレミアムを払っていたのです。最近では1997年頃から邦銀の不良債権問題がクローズアップされ、ユーロ円の調達ですら22bp程のプレミアムを支払う時期が続きました。その後1999年の公的資金導入によって沈静化していましたが、ここにきて、銀行国有化議論等を背景にまたくすぶりだしてきています。ジャパン・プレミアムはTIBOR金利からLIBOR金利の引き算で簡単に算出できます。銀行間ではTL Costとも呼ばれています。
Q3. 市場介入ってどうやっているの?
日本銀行が財務大臣の代理人として外国為替資金特別会計の外貨(いわゆる外貨準備(Official Reserve))を使って介入しています。この市場介入には外貨の売買に伴って需給変化が生じた自国の金融市場を公開市場操作によって相殺する「不胎化された介入」と相殺しない「不胎化されない介入」とに分類されます。また実弾とは日銀が市中銀行に対して大量のオーダーを実際に入れることで、レートチェックとは大勢の市中銀行にレートインディケーションを入れてまわることで介入を匂わすことをいいます。
例えば日銀がドル買い介入を行ったと仮定しましょう。すると必然的に日銀にある市中銀行名義の当座預金残高(ハイパワード・マネー)が増加します。すると市中銀行は自身の持つ預金量がだぶつくため、コールなどで借入があれば直ちに返済にかかります。このため短期を中心に金利は低下圧力がかかり、日銀にとっては金融緩和の効果も同時に得ることができるのです。
また日銀は自身のもつ預金量の収支について毎月公表しますので、覆面介入した場合などでも、この収支が合わないことがら、日銀が公表するより前に市場には噂がでてきます。
Q4. インフレターゲット(Inflation
Targeting)って?
中央銀行が金融政策の説明責任を果たす意味で設定されるインフレ率の安定目標値や目標範囲のことです。本来高インフレに悩まされている国や地域が安定した経済成長を図るためにインフレを鎮静化するために掲げるのが一般的であり、近年では1988年にニュージーランドが当時6%程度あった消費者物価上昇率を抑えるためにこの制度を採用し、成果をあげています。この事例を見て90年代にはカナダ、オーストラリア、イギリスなどの先進国でも同様の枠組みが採用されています。
最近日本で議論されているインフレターゲット論はデフレ経済を克服するためのものであり、日本のスキームはこれら成功事例とは全く異質のものです。
Q5. ハイパーインフレって一体どのくらいのインフレのこと?
インフレは明確な定義はないものの通常その進行速度に応じて3つのタイプに分類されています。それはハイパー・インフレーション、ギャロッピング・インフレーション、クリーピング・インフレーションです。ハイパーとは短期間のうちに物価が数倍にも跳ね上がるもので、戦後のドイツ、最近ではトルコやアルゼンチンで見られました。クリーピングは年率数%程度の持続的な物価上昇をいい、高度成長期の日本もこの環境下で先進国入りを果たしました。またこの中間がギャロッピングです。
インフレターゲット論の中で懸念されているのは、前述の事例がいずれも赤字財政に頼る経済運営によってハイパーインフレを巻き起こしていることから、その国の財政状態を省みずインフレ政策を実行するとコントロールを失ってしまうというリスクシナリオのことです。