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世界経済、データ・統計編
Q1. 完全失業率ってどうやって調査しているの?
Q2. 景気動向指数(DI)ってどう見ればいいの?
Q3.GDPってどうやって計算されているの?
Q4. GDPの速報値と確報値ってどうちがうの?
Q5. いろんな指標の最新データはどうやって集めればいいの?
Q6. オーストラリアとニュージーランドの間は一体どんな関係があるの?
Q7. カナダドルが一次産品国通貨と言われる背景は?
Q8. サッチャー首相が行なったイギリスの構造改革とはどんなものだったのですか?
Q9. ビッグバン(Big Bang)とは何ですか?
Q1. 完全失業率ってどうやって調査してるの?
A1. 日本では総務省統計局によって通常毎月末「労働力調査」が発表されており、その一項目に完全失業率があります。そのサンプリング方法は原始的で、無作為に抽出された4万世帯(約10万人)へ調査員が対象世帯へ調査票を取集してまわっています。調査内容は15歳以上の者を月末一週間に少しでも働いたか否か等の事実に基づき、それぞれ「就業者」、少しでも求職活動をした「完全失業者」、あるいは両者以外の例えば学生、主婦、退職者などに分類します。そして15歳以上の就業者と完全失業者を合計して「労働力人口」を算出し、労働力人口のうちの完全失業者割合を完全失業率としています。従って調査の精度からみて多少のブレが生じることはやむを得ず、この統計を分析するには前月との単純比較ではなく、トレンドで判断していく必要があります。
Q2. 景気動向指数(Diffusion
Index)ってどう見ればいいの?
A2. DIとは設定されている構成指標のうち、3ヶ月前と比べて上昇あるいは拡張を示している指標の割合を表す指数のことで、毎月上旬に内閣府から速報が公表されています。主にこの指標や専門家の意見を基に政府は景気循環の山と谷の転換点の決定を行っています。DIが50%を上回っている時が景気拡張期、DIが上昇傾向のなかで50%に達する時点を景気の谷と判断されます。またDIには景気とほぼ一致して動く一致指数、予測の役割を担う先行指数、確認のための遅行指数が定義されています。
この指数は2002年1月に5年ぶりに入れ替えられました。
先行系列
Index of Laeding Indicators |
最終需要財在庫率指数 | |
生産財在庫率指数 | 鉱工業 | |
新規求人数 | 除学卒 | |
実質機械受注 | 船舶・電力を除く民需 | |
新設住宅着工床面積 | ||
耐久消費財出荷指数 | 前年同月比 | |
消費者態度指数 | ||
日経商品指数 | 42種総合、前年同月比 | |
長短金利差 | ||
東証株価指数 | 前年同月比 | |
投資環境指数 | 製造業 | |
中小企業業況判断来期見通し | 全産業 | |
一致系列
Index of Coincident Indicator |
生産指数 | 鉱工業 |
生産財出荷指数 | 鉱工業 | |
大口電力使用量 | ||
稼働率指数 | 製造業 | |
所定外労働時間指数 | 製造業 | |
投資財出荷指数 | 除運送機械 | |
百貨店販売額指数 | 前年同月比 | |
商業販売額指数 | 卸売業・前年同月比 | |
営業利益 | 全産業 | |
中小企業売上高 | 製造業 | |
有効求人倍率 | 除学卒 | |
遅行系列
Index of Lagging Indicatior |
最終需要財在庫指数 | |
常用雇用指数 | 製造業・前年同月比 | |
実質法人企業設備投資 | 全産業 | |
家計消費支出 | 全国勤労者世帯 | |
法人税収入 | ||
完全失業率 | ||
国内銀行貸出約定平均金利 | 新規分 |
アメリカでは別の指標を採用しています
Q3. GDP(Gross Domestic
Product)ってどうやって計算されているの?
GDPとはある国内である期間に生産された全ての「最終生産物」の合計のことです。最終生産物とは他の生産物とはならず、そのまま最終消費されてしまう「財」と「サービス」の合計のことです。例えば同じ自動車のタイヤでも自動車の組み立て工場に納品すればGDPにカウントしない「中間生産物」、自家用車のオーナーに直販すればGDPにカウントする「最終生産物」となります。また新しいタイヤに交換(最終生産物)すればタイヤ代(財)と工賃(サービス)の合計が対価となり消費者によって最終消費されます。これを「内需」といいます。この内需に輸出額をプラスし輸入額をマイナス(貿易・サービス収支)するとGDPが算出できます。ちなみに最終生産物と中間生産物の差額を「付加価値」といいます。
国内総生産(GDP)=国内総支出(GDE)であることから、国内の支出額の合計からGDPを算出できます。
国内の支出は個人や企業が消費や投資をする民間部門と政府や地方公共団体などが消費や投資をする公共部門で構成されています。例えば政府が多額の財政を出動しダムや道路などに公共投資をしたとすれば、その分だけGDPは成長します。従ってGDP成長率の数字だけを分析するのではなく、どの部門がそれだけの伸びを示したのかの詳細を分析しなければ、その国の経済状態を計ることはできません。実際公共部門で支出した資金が企業や個人に循環し、民間部門が公共部門に続いて刺激を受けさせるような政策がないと、一旦良い数字を見せたGDPもすぐに尻すぼみになってしまいます。
Q4. GDPの速報値と確報値はどう違うの?
統計の作り方が全く違う別モノと考えてください。速報は需要関連の家計調査や法人企業統計をベースにして推計され、2ヶ月半後に発表されています。一方、確報は産業関連表や工業統計をベースにしてコモディティ・フロー法という手法でやはり推計し、毎年末頃に発表されています。同じ支出でもそれが最終生産物か中間生産物かの選別がもっとも困難な作業であり、そこへのアプローチの手法が違うわけです。また日本のGDPは5年ごとに基準改訂がなされます。この改訂によって実質GDPは0.1%から0.4%も下方修正されることがあります。
一方アメリカでは日本よりも早く翌月末には速報値が発表され、その1ヶ月後に暫定値、さらに翌月確報値が発表されています。つまり日本の速報値はアメリカでは暫定値に相当します。アメリカの速報値は大きく修正されることがしばしばありますが、発表が早い分日本の速報値よりマーケットインパクトがあります。
Q5. いろんな指標の最新データってどうやって集めればいいの?
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名称
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Name
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出所
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時期
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URL
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日本 | GDP統計 | Gross Domestic Product | 内閣府経済社会総合研究所 | 四半期終了後1ヶ月+10日程度 | http://www.esri.cao.go.jp |
景気動向指数 | Diffusion Index | 翌々月上旬 | |||
全産業活動指数 | Indices of All Industries Activities | 経済産業省 | 翌々月20日頃 | http://www.meti.go.jp | |
鉱工業生産指数 | Indices of Industrial Production | 翌月末 | |||
日銀短観 | BOJ TANKAN Survey | 日本銀行 | "調査月(3、6、9、12月)の翌月初" | http://www.boj.or.jp | |
景気ウォッチャー調査 | Economy Watchers Survey | 内閣府 | 翌月上旬 | http://www.5.cao.go.jp/keizai3/getsurei.html | |
家計調査 | Family Income and Expenditure Survey | 総務省統計局 | 翌月末 | http://www.stat.go.jp | |
商業販売統計 | Current Survey of Commerce | 経済産業省 | http://www.meti.go.jp | ||
新設住宅着工戸数 | New Dwellings Started | 国土交通省 | http://www.mlit.go.jp/ | ||
機械受注統計調査 | Orders Received for Machinery | 内閣府 | 翌々月初 | http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/menu.html | |
企業倒産件数 | (株)東京商工リサーチ | 翌月中旬 | http://www.tdb.co.jp | ||
(株)帝国データバンク | http://www.tsr-net.co.jp | ||||
国際収支統計 | Balance of Payments Statistics | 財務省 | 翌々月中旬 | http://www.mof.go.jp | |
労働力調査(完全失業率など) | Labor Force Survey | 総務省統計局 | 翌月末 | http://www.stat.go.jp | |
消費者物価指数 | Consumer Price Index | ||||
マネーサプライ統計 | Money Supply | 日本銀行 | 翌月上旬 | http://www.boj.or.jp | |
米国 | GDP統計 | National Income and Product Accounts | B E A (商務省経済分析局) | "当該四半期終了後、翌月末(速報値)" | http://www.bea.doc.gov |
"当該四半期終了後、翌々月末(暫定値)" | |||||
"当該四半期終了後、翌々々月末(確定値)" | |||||
鉱工業生産指数 | Industrial Production Index | FRB | 月次。翌月央。 | http://www.federalreserve.gov | |
企業在庫 | Business Inventory | 商務省センサス局 | 月次。翌々月中旬。 | http://www.census.gov | |
ISM指数(全米供給管理協会指数) | Institute for Supply Management | ISM | 翌月3営業日 | http://www.ism.ws | |
消費者信頼感指数 | Consumer Confidence Index | コンファランス・ボード | http://www.conference-board.org | ||
失業率 | Unemployment Rate | B L S (労働省労働統計局) | 月次。翌月第1週の金曜日。 | http://www.bls.gov | |
失業保険新規申請件数 | Initial Claims | E T A (米労働省雇用統計局) | 週次。毎週木曜日。 | http://www.doleta.gov | |
非農業部門就業者 | Nonfarm Payrolls | ||||
消費者物価 | Consumer Price Index | B L S (労働省労働統計局) | 月次。翌月15日前後。 | http://www.bls.gov | |
貿易収支 | International Trade in Goods Services | 商務省センサス局 | 月次。翌々月20前後。 | http://www.census.gov | |
経済分析局 | http://www.bea.doc.gov | ||||
国際収支 | International Transactions | B E A (商務省経済分析局) | "四半期。当該四半期終了後、3ヶ月後15日前後。" | ||
欧州 | GDP統計 | Eurostat (欧州委員会統計局) | 四半期。翌四半期の最終月中旬。 | http://www.europa.eu.int/comm/eurostat/ | |
鉱工業生産 | 月次。翌々月下旬 | ||||
失業率 | 月次。翌々月上旬 | ||||
小売売上高 | 月次。翌々々月上旬 | ||||
PPI (生産者物価指数) | 月次。翌々月の上旬 | ||||
HICP(消費者物価指数) | 月次。翌月中旬 | ||||
国際収支 | 四半期。翌四半期の最終月上旬。 | ||||
E C B (欧州中央銀行) | 月次。翌々月下旬 | http://www.ecb.int/ | |||
マネーサプライ M3 | 月次。翌月下旬 |
Q6.オーストラリアとニュージーランドの間は一体どんな関係があるの?
A6. 両国のは1963年から順次通商上の障壁を低くし、1990年7月からは全品目にわたる関税を撤廃しました。また投資の完全自由化も行い事実上単一の経済圏の形成していると言えます。これはオーストラリア・ニュージーランド経済協力緊密化協定(CER)に基づいています。その結果ニュージーランド側の輸出がやや増加の傾向にあります。オーストラリアが鉱工業生産の発展に重点を置き、ニュージーランドは農産品の輸出によって相互補完の関係を維持しています。
CERはアジア諸国家に対して経済的競争力を強化することを重要な目的としています。またEUのような政治的連合体を形成させることには両国とも現在のところは明確に否定しています。
Q7. カナダドルが一次産品国通貨と言われる背景は?
A7. カナダは従来G8として先進国のメンバーでいながら、電器、自動車、IT関連などその時代をリードする産業の中心とはなりませんでした。これは、もともと人口が少ないことや米国の隣国ながら人件費が圧倒的に低いメキシコ側に生産拠点の移転が進んだこと等が挙げられます。一方でカナダは一次産品輸出国としてかつて(1970年代)は輸出全体に占める原料・資源の割合が60%を超えており、これがカナダドルはオーストラリアドル等と同様に商品相場の変動に左右されやすい通貨と言われた背景です。しかし1990年代からの商品市場の下落によって同国の経常収支が1993年には対GDP比▲4%まで悪化したことをきっかけに、政府主導による経済の多様化を推進、1999年には前述割合が30%まで低下し、商品相場との連動性は薄れてきています。
Q8. サッチャー首相が行なったイギリスの構造改革とはどんなものだったのですか?
A8. いわゆる「英国病」からの脱却を目指して、サッチャー首相(当時)は1979年以降、福祉政策を全面的に見直すとともに、生産システムでは日本、企業経営では米国をモデルとした競争原理を導入し、市場機能を重視した政策をドラスティックに実施しました。改革初期には失業率が5%台から10%程度まで一時急上昇するなど経済情勢が一段と悪化した時期もありましたが、最終的には3%台へと回復し、現在の安定した経済成長を維持する礎となっています。
具体的には、先ず「大きな政府から小さな政府」旗印に国有企業数を減少させ民営化を推進しました。これら民営化した国有企業の株式が相次いで上場。イギリスは国有企業株式の売却益で財政の黒字化にも成功しています。
民営化はイギリス航空(BA)等の航空、ブリティシュ・テレコム(BT)等の通信、自動車、ブリティシュ・ペトロリアム(BP)等のエネルギーなど幅広い分野で実施されたほか、金融や航空分野では規制緩和に伴う競争の激化が外資も巻き込んでの活性化をもたらしました。
外資流入により、いつかの伝統的な企業が淘汰されましたが、この痛みと引き換えに保守的であった企業の経営風土が大きく変わり、企業活動の活性化が雇用を創出、結果経済が回復したのです。
Q9. ビッグバン(Big Bang)とは何ですか?
A9. 1986年10月27日から実施されたロンドン証券取引制度の改革のことをいいます。
改革そのものはそれよりも以前から開始され、現代でもいろいろな構造改革が行われていますが、主な点は
証券売買手数料の自由化:固定手数料の廃止し大口の機関投資家の参加を呼び込んだ
単一資格制度の廃止:自己勘定のディーラーと顧客の注文を繋ぐブローカーとの兼業を解禁し手数料自由化に伴うブローカーの弱体化を避けた
証券取引参入規制の緩和:取引所会員会社への出資規制を撤廃し、会員会社への出資によって取引所参入を容易にした
の3点です。
さらに1979年には為替の管理が撤廃され、これにより英国企業と海外のブローカーの競争が激化、英国の金融の構造的弱点である英国企業の資本の不備などが明らかになり、英系金融機関の大胆なリストラと再編が始まったのです。
その一方で取引高は増加し、ビッグバン以降、整えられた環境の中でロンドンは欧州の金融センターとしての地位を築いています。
外国企業による英国企業の買収が盛んになったことについて、イングランド銀行の歴代総裁は「英国の金融機関を保護できなかったことで批判されているのは知っているが、総裁の仕事とは英国の金融機関を保護することではなく、英国にある金融機関を保護することである。」と答えています。