20020517jh-iyoku
テーマ:意欲的に取り組める活動
富士松中学校指導委員訪問資料

平成14年5月17日
刈谷市英語指導委員   
刈谷東中学校 犬塚章夫

「生徒が意欲的に取り組めるコミュニケーション活動・ゲーム」

1、まずは「まねる」ことから

市販されているコミュニケーション活動実践事例集を読んでネタ探しをしよう。

NEW CROWN アクティビティアイディア集1 NEW CROWN編集員会編 三省堂 1999 1900円
NEW CROWN アクティビティアイディア集 NEW CROWN編集員会編 三省堂 1999 1900円
NEW CROWN アクティビティアイディア集 NEW CROWN編集員会編 三省堂 1999 1900円
言語活動成功事例集 藤井昌子・イヴァン・バーケル共著 開隆堂 1998  952円
続・言語活動成功事例集 藤井昌子・スティーヴン・アシュトン共著 開隆堂 2001  952円
中学生のためのActive Class 1・2・3 英語科ワークシート研究会著 学校図書 2001 2200円
中学生のための選択用英語教材ア・ラ・カルト1
すぐに使えるアイディア
青野保、斉藤国明、柳充著 学校図書 2001 3800円
英語授業のコミュニケーション活動
(新指導要領準拠 東書TMシリーズ)
茨山良夫・大下邦幸編著 東京書籍 1992 2000円
だから英語は教育なんだ
心を育てる英語授業のアプローチ *1
三浦孝・引山貞夫・中嶋洋一編著 研究社 2002 2400円
10 ★NEW HORIZON 指導書

*1 筆者3名による講演会があります。(詳細はホームページで)
平成14年5月25日 14時〜17時 日本福祉大学中央福祉専門学校(鶴舞駅徒歩5分)

2、生徒から学ぶ・まずはやってみよう

 コミュ二ケーション活動がうまくいかなくてもやめてしまってはいけない。まずは授業の中にコミュニケーション活動を入れよう。同じ20分で、パターンプラクティスと文法プリントのほうが効率的に見えるかもしれないが、心通いあうコミュニケーション活動をさせたほうが、記憶に残る活動になるのかもしれない。もちろん、基礎基本のドリルは大切であるが、それだけで終わらせず、クラスの仲間と英語を通してやりとりをさせる(英語を使う)場面を作りたい。
 コミュニケーション活動は楽しければよいのでもない。活動をさせたら、生徒に感想を書かせたい。生徒がこの活動をどう思っているのか、生徒の感想の中には素直な気持ちが現れてくる。「基本文を楽しみながら覚えることができた。また、このような授業をしてほしい。」などと書かれていれば成功である。また逆に「日本語で会話をしてしまった。」「もっと練習してからやらせてほしい。」などの要望にも耳を傾けたい。そこにコミュニケーション活動の改善へのヒントがあるのだから。

3、指導案作ってますか

 毎日の授業で、教材研究ノートのようなものに指導案(指導略案、あるいはメモ)書いてますか?全英連の模範授業をやられた先生の講演会で、「私は毎日の授業の指導案は必ず書いています」という聞き、あんなベテランの先生でも指導案を毎時間書いて授業に臨んでいるのか、いや毎時間指導案を書きながら授業をしているからこそあんなすごい授業ができるようになったのか、と驚かされました。
 どんな順序で何をやるのか、簡単なメモのような略案でいいのです。そして、授業をしながら改善点をメモしたり、活動を蓄積していったり、そのときの気づきもメモしていきましょう。使用したプリントなどもノートに貼っておくと、同じ学年を担当した場合役にたつことでしょう。

4、少人数授業では、お互いの授業情報交換を

 少人数授業では、1つのクラスが2つに分離するため、お互いに相手の授業内容が気になるものです。まったく違った教材で、まったく違った宿題で、まったく違った授業が展開されていると、生徒は不安を覚え、そして多くの場合、もう片方の授業のほうがいいなと思ったりします。教師の不信感にもつながりかねないので注意したいと思います。できる限り話し合いを密にして、共通の宿題・共通のワークシート、共通のコミュニケーション活動に心がけたいものです。少なくとも、お互いにこんなことやっているという情報交換(作ったプリントを同じ担当学年の教師机上に置く)はしたいものです。そしてよい教材であれば、自分の授業でも取り入れるなどしていきたいものです。
 絶対評価が始まります。各教師が同じ評価場面で同じ基準で評価していかないと、A先生の「5」とB先生の「5」のレベルが違ってくることになります。中1・中2では、それが保護者からの不満や教師への不信感にも発展します。「うちの子は英検3級もってるのに、なぜ3なのか?隣の子は英検4級なのに、なぜ5がもらえるのか?先生が違うから、評価が違うんでしょうかねえ。」などと言われないようにしたいものです。

5、コミュニケーション活動の留意点

(1) コミュニケーション活動で使う「単語」との出会いを大切に
 コミュニケーション活動で使う絵や単語を示して、英語で口頭導入することから活動は始まります。生徒に英語を聞かせる絶好の場面です。(リスニングテストだけでは、リスニング力はつきません。さまざまな場面で教師による口頭導入を聞かせましょう。)たとえば、コミュニケーション活動で国の名前が出てきたら、その国の地図を示してこんな会話ができます。
Teacher: What country is this?
Student: It's Australia.
T: That's right. What animal is famous?
S: Koalas. ...
生徒のスキーマ(背景知識)を活性化させる必要があります。これは、リスニングやリーディングでも、プレ・リスニング活動、プレ・リーディング活動として大切な段階です。

(2) コミュニケーション活動で使う「文型」に十分慣れさせる
 会話のパターンなどの練習が不十分であると、コミュニケーション活動中に英語でなく日本語で情報交換してしまうことになります。ドリル活動や暗唱させる工夫が必要です。ゲーム的活動が10分かかるとすると、同じくらいその前段階の活動(口頭導入や文型のドリルなど)が必要です。

(3) 活動時間の提示方法の工夫
 ア、BGNの利用
 コミュニケーション活動はたいてい、5分から10分の活動です。5分で終わる音楽、10分で終わる音楽を用意しておくといいでしょう。効果音のCDなどには、爆発音やチャイムなどのCDもあります。最近はコンピュータのCDーRなども利用できるので、5分の音楽と爆発音をCDに焼いておいたり、10分の音楽とチャイムをCDに焼いておいたりすると、活動中は音楽が流れていて、時間が来るとそれを示す別の音が流れて活動の終了を知らせてくれます。教師も時間を気にせず、活動に参加できます。このような活動中の音楽は、Back Ground Noiseと言って、何か音が流れていると会話の声が自動的に大きくなります。ただ、普通教室での利用は隣の教室への迷惑になるので注意してください。英語用の特別教室での利用がいいでしょう。
 イ、キッチンタイマーとOHCの利用
 キッチンタイマーを利用して、5分間たったらピィピィという音を鳴らして活動の終了を示すこともできますが、そのタイマーの画面をOHCでモニターに表示してやると簡易「大型タイマー」になります。20分間でテストをやらせるような、静かな場面での利用のほうが効果があります。生徒もあと何分かなとモニターを見ると、「あと5分」と残り時間を知ることができるのです。英語用の特別教室がある場合は、OHCとビデオセットなど設置しておくとさっと使えて便利です。

(4) ドリル的な活動から、実践的なコミュニケーションへ
 コミュニケーション活動には、基本文型を繰り返し使うパターンプラクティス的な活動と、どんな表現を使ってもよい「場面重視」の実践的コミュニケーション活動があります。どちらの活動にも取り組ませてみたいものです。インフォメーション・ギャップを用いたりして、英語を使う必然性・必要性がある状況を作りましょう。実践的コミュニケーション場面(買い物や道案内など)では、小道具にも凝ると、生徒の学習意欲を喚起できます。

(5) まとめの活動
 あまりにゲームのこりすぎてルールを複雑にしてしまっては逆効果です。あくまで遊ぶためのゲームではなく、ゲーム的要素を取り入れた「コミュニケーション活動」ですから、英語を使うことを第1目的としたいものです。まとめの活動で、各チームのゲームの結果発表と表彰だけに終わらず、今日の活動ではどんな表現を使えたのかを振り返る場面も作りたいものです。活動によっては、優秀生徒にモデルの会話をさせるとか、各自のプリントに英文にして書かせるとか、黒板に書いてある基本文を再度読むとかの学習のまとめをしっかりしていきたいものです。

6、コミュニケーション活動の実際例・・・(受け身形・ALTとのTT)

(1) 使用英文の提示
 コミュニケーション活動で使う英文を導入する。ALTが5つの英文(変な受け身形の文)の意味をジェスチャーや絵を用いながら英語で説明し、生徒はプリントにその英文の意味を書いていく。(英語を聞いて意味を理解する練習になる。)
1, I was born on the moon.
2. I was shot by a yakuza.
3. I was hit by a bus.
4. I was poisoned by a snake.
5. I was eaten by a tiger.

(2) 英文の読み練習
 上の5つの英文の意味がわかった状態で、ALTのあとについて3回ずつリピートし、英文を言えるように練習する。単語を一部置き換えながら練習していく。(英語を読むときのリズムに注意させる。リズムでテンポよく発音していく練習をする。)

(3) 英語によるゲームのルール説明を聞く
 ALTにゲームのルールを英語で説明してもらう。ジェスチャーや図を用いて説明する。生徒が理解したかどうか、「おおまかにどんなことするんだろう?」と確認し、必要があればJTEが日本語で補足説明をする。(わからないながらも、どんな意味なのか想像しながら一生懸命英語を聞く練習になる。)

(4) ゲームを行う
 ルール:下の表のようなプリントが各グループ(4人で1グループ)に配布されている。

生徒のカード Bob Ken Mike Susie Penny
was born
on the moon
         
was shot
by a yakuza
         
was hit
by a bus
     ★    
was poisoned
by a snake
         
was eaten
by a tiger
         

ALTと2人のJTE(少人数クラスを1つに合体させてTTで行った)がいたので、上のような表が3枚グループに配布される。それぞれの先生のところに、上の表のうちのどこかのマスの英文を覚えて、言いに行く。たとえば、
I think Mike was hit by a bus.と言うと(上の図の★のマス)、あらかじめ各先生はそれぞれのマスに得点をつけておいて(下の図の★)、Yes. It is 50 points.などと得点を生徒に知らせる。生徒はグループに戻り、その得点をマスに記入して、別の生徒がまた別の英文を覚えて次の先生のところに走っていくというゲームである。15分くらいの活動時間で、3人の先生にそれぞれ10回英文を言いに行ってよいことになっており、その得た得点合計で競う。

教師のカード Bob Ken Mike Susie Penny
was born
on the moon
 70    100    80
was shot
by a yakuza
   100    30  
was hit
by a bus
 60    ★50    90
was poisoned
by a snake
 80    10  50  40
was eaten
by a tiger
   50    20  

(5) 活動のまとめ
 各班の得点合計を計算させ、1番だった班には、プレゼント(カナダドル)を渡して拍手。最後に、受け身形の文の作り方についてまとめて終了した。

(8) 生徒の感想など、実践してみて感じたこと
 プリントに感想を書かせて回収してみた。「知らないうちに英文を覚えることができた。」「こうやって英文を覚えると楽しい。」など、好意的な感想が多くみられた。ただ英文の暗唱をするだけでは(別の時間に教科書暗唱については、暗唱テストとして実施もしている)つまらないので、このようなゲームの中で、英文を覚えて何も見ずに教師のところでそれを言わないといけない状況を作ることが必要であると感じた。さらに別のまとめの方法として、日本語だけを与えて、覚えた英文を再度書かせて終わる方法も有効であると思う。