講義ノート
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平成14年6月23日更新
第1回目 持続性農業・アグリビジネス・遺伝子組み換え
第2回目 ミネソタ州の人々の暮らし方

第3回目 海を渡った日本人ー日系アメリカ人の歴史と居住地域
第4回目 米国経済の現状・歴史と展望


第1回目:持続性農業・アグリビジネス・遺伝子組み換え
ーアメリカ農業の現在ー
                   中川 正(三重大学)

T アメリカ農業の特徴
 1、大規模経営 日本の10倍の面積が農地(農業のイメージが日本とは違う)
 2、企業的な農業 85%が家族農場だが、少数の大規模農家や企業が市場を支配している
 3、海外市場向けの農業 アメリカからの輸出 全穀物46% トウモロコシ80% 小麦32%
 4、景観的特長
  @タウンシップ制 土地を東西南北6マイル四方の升目に区切った。西部開拓をさせるための方策
  A等高線耕作 同じ高さの土地に同じ作物を作る
  B地域分化

U アメリカ農業の動き
 1、農業保護から自由競争時代へ 1996年の農業法以来、自由化される→農家は必死になる
 2、環境保全の動き 1985年1990年農業法以来、土壌の保全、湿地の保護、野生動物の保護が叫ばれる

V 持続的農業
 低投入持続農業
    目標 生産性および収益性の維持・資源および環境を保全・農業者の健康と農産物の安全性の確保
    手段 ローテーション作物、総合的病害防除、土壌と水の保全、有機物の利用、耕種と畜産の複合化

W アグリビジネス
 アグリビジネスの特徴
    農業に工業や商業的なものが加わっている
    大型合併による再編成
    グローバルに展開するようになった    

X 遺伝子組み換え作物
 1、遺伝子組み換え作物とは、
     植物、バクテリア、ウイルス、動物からとった遺伝子を組み込んだ作物
     除草剤への耐性や殺虫成分を生み出す=除草剤をまいても枯れない、虫もつかない作物
 2、代表例
  @ ラウンドアップ・レディ・ダイズ (モンサント社が開発)
      モンサント社とは、農薬会社で、世界で一番売れている「ラウンドアップ」という除草剤を販売している。
      そのラウンドアップという除草剤に対して抵抗性を持たせたダイズ
      その結果、何種類もの除草剤を使う必要がなく、ラウンドアップだけを使うことになる。
  A Btコーン (モンサント社が開発)
      アワノメイガに抵抗性を持つトウモロコシ
      殺虫効果があり、殺虫剤の使用を減らせる。
 3、遺伝子組み換え作物の販売法
     種子代+特許料を払わなければならない
     買った種を第三者には売らない契約をする
     特許があるので、翌年に残すことはできず、毎年購入する必要がある
     ターミネーター技術(2年目には死滅するようにする技術)の開発も進められている
 4、急速な普及
     1988年までに、ダイズは全体の38%、トウモロコシは25%まで広まった
 5、普及の要因
     政府の後押し
     大きなビジネスチャンス (モンサント社のように)
     危険という認識は薄い
     深くほらなくてよいので、表土流出防止=環境によい
     除草剤の使用を抑えれる (一部の除草剤の独占使用につながるが)
     穀物価格の下落で、コストをかけたくない農家の事情
     労働力不足で、労力の軽減化をしたい農家の事情
 6、遺伝子組み換えへの批判
     世界規模の生物奴隷制につながる 数社のアグリビジネスが世界を支配してよいのか
     ターミネーター技術 毎年、種子を購入しなくてはならない
     グリーンウォッシュ 実態を装った宣伝
     政府との癒着
     都合の悪い情報を隠す
     反対する市民への訴訟
     信仰の自由の侵害 生物に特許をかけてよいのか
 7、安全性の確認が不十分
     世代にわたる危険な影響
     エコシステムへの悪影響
     食糧や水の汚染
     アレルギー反応
     食物性質の予期せぬ変化
     年月を経ないと気づき得ない有害効果
     新しい毒物
     抗生物質の効果減退
     家畜の病気と苦痛の増加
     重要な食物成分の欠落
     広域にわたる収穫不足
     偽りの新鮮さ


第2回目:ミネソタ州の人々の暮らし方
                   寺本 潔(愛知教育大学)

1、広大なトウモロコシ畑と繊細な感性
 ・ハートランドとしての中西部ー大草原の小さな家
 ・ミシシッピー川で南部とつながるー小麦の積み出し港
 ・アートが盛んな州ー現代美術のメッカ
 ・森と湖の州ー車のナンバープレート

2、私が住んだ街の人々の暮らし
 ・セントポール市の郊外
 ・巨大なグロッサリーストアー(レインボー)
 ・コモ公園ー散歩する人々
 ・小学校の施設ー美しい芝生

3、ミネソタ州の暮らし
 ・農業が盛んー巨大な農業機械見本市
 ・教会が大きいーセントポール大聖堂
 ・雪の日ーマイナス25度の世界
 ・ハロウィーンで楽しむ子供の世界
 ・安いゴルフ、どこでもあるテニスコート
 ・キャンピングカーでの楽しみ

4、知人・大学・地理教育・いろいろ
 ・光が違う、広さが違う、空気が違う
 ・やる気が違う、資金が違う、スケールが違う
 ・最もアメリカらしい州の1つかも?

第3回目:海を渡った日本人ー日系アメリカ人の歴史と居住地域
                   杉浦 直(岩手大学)

1、アメリカ合衆国への日本人移民の流入
(1) 初期の日本人移民の流入
 最初の集団的渡航 1868 ハワイに153人 さとうきびの収穫など
 1980,90年代 日本からの移民増加
  背景 中国人労働者の入国禁止による労働者不足
      日本の農村人口過剰 西南日本からの小農が移民に参加
(2) 日本人排斥の動き
 20世紀に入ってから日本人への敵意増加
 排日運動 1906 サンフランシスコ学童差別事件 日系の生徒が中国系の学校に強制移動
        1913 カリフォルニア州「外人土地法」 帰化できない外国人(日本人など)の土地所有の禁止
        1924 排日移民法 帰化できない外国人(日本人など)の入国禁=日本人移民の禁止を意図した
        第2次世界大戦中 日系人の強制立ち退き 強制収容所へ移動させる
(3) 戦後の動き
 1945〜47 収容者たちの再移住 カリフォルニアなど西海岸に多くいた日本人が全土に広まる
 日系一世の市民権獲得運動広まる 1952 移民法改定とともに実現・外人土地法も改正

2、日系人の文化的状況とエスニック・アイデンティティ
 一世 日本文化をひきづる 日本語で生活 日本人で集まって生活
 二世 家庭では日本語、日本文化、学校など外では英語、英語文化のbicultural
      アメリカ人になる努力をした
      「バナナ」(外は黄色で中は白)とか「卵」(まわりは白いが黄身が中央にある)と称される
 三世 同化しているがマイノリティ意識がある
      イエローパワーとしての意識もある 

3、ロサンゼルスにおける日系人の展開とリトルトーキョー
(1) ロサンゼルスへの日系人の集中とリトルトーキョーの形成
 1869 ロサンゼルスに一人の日本人が記録されている
 1885 最初のビジネスマン レストランを経営
       East First Street付近に日本人ビジネス街が形成され始める
 1890年代 市内在住の日本人 150人ほど
 1910〜20年代 ロサンゼルス地区への日系人集中
       リトルトーキョーが全米最大の日本人町になる
 1942〜1945 日本人強制収容で一時アフリカ系アメリカ人らが住むがその後復活
(2) リトルトーキョー再開発に至る事情
 再開発の背景 建物の老朽化 危険建物指定が増える
           居住コミュ二ティとしての衰退 老人たちの住処となる
           市行政地域の拡大 リトルトーキョー北部に市役所・警察署などが立地
 1963 住民による再開発計画スタート
 1965 カジマビル建設 再開発の見直し
 1968 ロサンゼルス市再開発局による調査始まる
 1969 リトルトーキョー開発諮問委員会設置 初めて公的なセクターに移った
 1970 リトルトーキョー再開発事業が市議会で承認される
(3) 再開発の進展と社会的対立
 1970年代 10のプロジェクト完了
  リトルトーキョータワーズ 東本願寺 ニューオータニホテル ウエラーコート
  ジャパニーズ・ビレッジ・プラザ など
 1980年代 商業・オフィス関係中心
(4) East First St.北側地区の保存と日系アメリカ人歴史博物館
 1986 E. First St.北側の13の建物が National Registor of Historic Placesに指定
  パブリックアート「思い出の小東京」などが作られる
 1902 日系アメリカ人歴史博物館会館
  旧東本願寺ビルを利用している
(5) リトルトーキョーの現状
 住宅の確保、文化・コミュニティ施設の建設
 商業・業務地区としての大規模活性化
  この2つの相矛盾する方向の折衷した形となっている

第4回目:米国経済の現状・歴史と展望
           宮原 悟(名古屋女子大学) 

1、はじめに
 米国経済の世界経済に占める位置ー農業を中心に
2、経済で動く米国
(1)世界恐慌における経済政策の検証と大統領選挙の歴史
(2)米国が経済で動くその要因
3、米国の経済政策史の概観とその特徴
4、米国グローバリゼーションの実態
5、米国経済の展望と日本