2002.2.13
このページは "Architecture" 誌2001年12月号掲載記事の粗訳です。





サウジアラビア、ダーランのアル・ラシッド・モールにあるマクドナルドの「女性専用カウンター」。同社のデザイナーには世界中に広がる29,000のレストランで、どの様にしてでも規格型が機能する様求められている。

マクドナルドには地球上のどの都市にも当てはまる建築の方程式がある。ジェイコブ・ワードがそのプロセスに迫る。

外食産業の成長についてのエリック・シュローサーの注目すべき研究「ファストフードが世界を食いつくす」によればマクドナルドコーポレーションはスプロールと同義語である。レイ・クロックが1955年にリチャードとモーリスのマクドナルド兄弟からそのレストラン事業を買い取って兄弟によるプロセスの改革を初めて以来、同社の繁栄は自家用車によって膨張するアメリカ人の居住様式と結びついていた。コロラド州コロラドスプリングスを例にとり、シュローサーはマクドナルドのようなファストフードチェーンが「スプロールを肥やし、加速させ、見た目のトーンを形成するのを助けた。」マクドナルドは「獲物が祈るのを見る肉食獣と同じ目で自家用車を見る」企業の中でのマーケットリーダーだ。と述べている。




東京
ニューヨーク市
ライス(スイス)
リオデジャネイロ


マクドナルドが前提としているのはそれぞれの商品とそれを消費する体験とが絶対に切り離すことができない同一のものだということだ。ブランドとしての強さと同時に企業としての効率は世界中に広がる29,000のレストランで、建物に至るまで同一の体験ができる点にかかっている。それぞれの店鋪を設計することはフライドポテトを揚げるのと同じく切り離すことができない。
アメリカ国内に建てられたマクドナルドの店鋪の93%はイリノイ州オークブルックにあるマクドナルド本社の建築・構造・内装・設備設計の58人からなるチームによって設計されている。チームの責任者である建物担当副社長のフレッド・マシアスによれば「我々は5.6坪から278坪までの店鋪を建てるデザインの準備ができています。」設計プロセスの集中化は企業のコスト削減に役立っている。マシアスによれば「我々は地元の建築士を雇うのに較べより効率的です。」

アメリカ合衆国では消費はほとんどの場合「衝動買い」であるため、また消費者の行動様式は自動車交通に頼っているため、マクドナルドは常に安定した成長の見込めそうな地域を探している。学校がレイ・クロックにとっての最初の成長の目印であり、後にはマクドナルドはヘリコプターを使って郊外住宅地となりそうなやすい土地を探すようになった。近年になってマクドナルドは衛星写真、人口統計、商業調査の情報を組み合わせて市場機会を自動的に分析する「クインティリオン(同名の会社になっている)」と呼ばれる一連のソフトウェアを開発した。

マクドナルドは東部・中部・西部の3つのディヴィジョンに別れている。ディヴィジョンの不動産責任者が開発用地を選定すると、工事のスペシャリストが来て地元の条例の調査・地質報告書の作成・敷地の測量といった「敷地調査」を行う。これに加えて不動産グループは地域の人口統計を調べ、顧客が特定のエージグループからなるのか、子供を持つ客はどのくらいか、車で来るのか歩いて来るのかといった点を明らかにする。次に地域マネージャーが敷地が経済的に成り立つかどうかの決断をくだし、マネージャーの決済が下ると設計チームが仕事に取りかかる。