2007.9.5

まちづくりの参考にならんか、ということで「涙」という昭和31年の松竹映画を見せてもらいましたが、これが圧倒的でした。脚本・監督など木下恵介一家であり、「浜松にて長期ロケ敢行」というわけで、いきなりタイトルバックから昭和31年当時の中心市街地のパノラマが写し出されます。実にオモシロイ。

若尾文子演ずる主人公は日本楽器の女工さんということで、当時の面影の残る建物が無いかと本社工場を一周してみたのですが、さすがほとんどの建物は窓もアルミサッシに換えられ、きれいになっていました。一ケ所だけかすかにスチールサッシが残っているのが見えましたが、倉庫にでも使われているのでしょう。

耐火建築促進法(1952)の4年後、全国総合開発計画(1962)の6年前であり、中心市街地はほとんどが平家か二階建てのいわゆる戦後バラックの名残りを感じさせる建物で、その中にただ松菱だけが聳え立っています。 有楽街、千歳、砂山の飲屋街などもていねいに描き出されており、地元をお尋ねすれば当時の場所を特定できるのでは無いかと思われます。

郊外も伝統的農家建築はともかく、遠くに何も見えない「一本松バス停」など、現在の姿からは想像も付かないことでしょう。変わらずに当時の面影を残しているものがあるとすれば、「気賀のお寺の山門」位のものではないでしょうか。

今ならまだ間に合うでしょうが、遠からず画面に出てくる場所を特定できる人も少なくなってくるものと思われます。そうすればこの映画の景観を現在の地域と繋ぐことは出来なくなってしまう訳で、一刻も早くそうした調査が必要と思われます。

ビデオはVHSテープに収められていましたが、調べてみると版元の日活のホームページからも既に姿を消しており、悪くすればこのまま消えてしまうことも考えられます。何とかしたいものです。