これを書いたのは1998年の4月です。今の値段と較べてみると面白い。その後出てきたiMacはできるだけ長い期間、値下げをしないでも良いように、 という価格設定をしているようです。で、そのために障害となるのは日本の流通機構。というわけでアップルと卸売り各社が綱引きをしている、 と言うのが日本のパソコン業界にとって、技術的な問題なんかよりも大きな、1998年最大のトピックスかも知れません。

ことは住宅でも同じで、全ての建材を工場出荷価格+運賃で買うことができれば、日米の住宅価格格差が2倍、なんてことにはならないのです。

新しく開発された技術が、定着して安定したものとなるためには20年から25年位かかるのが普通なのだそうだ。 高校の同級生であった Steve Wozniak と Steve Jobs が Apple I を作ったのが 1976 年、 Apple Inc. を設立して売り出した Apple II が爆発的に拡がり、パーソナルコンピュータの時代が始まったのが 1977 年だから、 パソコンなるものもそろそろ技術的には成熟、安定期に入ろうとしているのだろう。
その間にパソコンの製造は巨大産業と化してしまって、Wozniak に言わせると

「昔みたいに若者がガレージで作り出したものが世の中を変えることなどできなくなって」
しまったようだ。

ウィンドウズ95以来、迷走を始めたかに見えるマイクロソフト同様、 アップルにもひと昔前のようなときめきを感じられなくなっているとも言われるが、 それはつまりパソコンが成熟期に入って「出来ること」と「出来ないこと」がはっきりしてきたためだろう。
MiniCadで図面を書く、という様に用途を限定して、「出来ること」と「出来ないこと」をきちんとしておけば、 無闇に高価な新機種を買い込まなくても、数年前の先端機種でパソコンCADのかなりの部分はカバーできる、という考え方も成り立つのだ。

私は現在、3年前に買った PowerMacintosh 6100/66 を使っているが、これも建て売り住宅24軒を3Dで立ち上げて色を付ける、 という必要に駆られたからで、2Dの図面を書くだけなら8年前の新製品である IIfx にMiniCad v.5 を乗せれば、 世の大半の人々が「パソコンCADの最先端」だと思い込んでいる機能を実現する環境の殆どは手に入るのだ。

というわけで、現在の私のデスクの上を眺めてみた。結構古い機械もある。パソコンも捨てればゴミ、なわけで、 環境問題を考える上からも捨てないことが第一歩、である。NiftyServeなどコンピュータ通信で中古品を譲って貰えれば、 少し前の機種なら驚くほど安い、というのも有難い。 各々の機器について、私が購入した当時の実売価格と、 現在NiftyServe の掲示板/売ります/アップル/に掲示されているおおよその売却希望価格を並べて見た。

一昨年、MiniCad v.6 の発売に先立って、A&Aから意見を求められた時、 同席した SONYの音響営業担当の方の話では、SONYでは全世界300箇所以上の音響営業拠点にMiniCad v.5 を配備してしまったので、 ヴァージョンアップは容易でない、ということであった。関連業種から見て、パソコンCADは MiniCad v.5 と見切ったのであろう。

MiniCad v.5 で良い、と考えればハードウェアも MiniCad v.5 リリース当時の新鋭機種があれば充分である。 CPUに 68040 を使った Quadra シリーズか、 PPC601 を使った PowerMac 6100, 7100, 8100 がこれに相当し、 現在ではだいぶ安く手に入れることができる。

中古品の一般的な注意としては、 IC, LSI の寿命は100年以上と長いのに対して、 その他の周辺部品のほうが寿命が短い点であろう。コンピュータ本体では、熱源となるトランスを含む電源部分がこれに当たり、 ハイビジョンテレビと似た構造をもつモニタの寿命も7-10年である。ハードディスク、MO等の記憶装置も、 プリンタ、スキャナ等の出入力装置も同じように、モーターという物理的回転部品がネックであろう。

キーボード、マウスはスイッチのバネ部分が急所で、一日8-12時間使用して、2年か3年で擦り潰しているので、 長く使うつもりなら中古品は避けたほうがいいだろう。