ぼくらはこんなのを聴いていた
大島豊
○ベスト10アルバム(聞いた順)

Mark Heard
●Mark Heard, DRY BONES DANCE, Via Records, 1990/1995, USAmerica
 1990年に亡くなったアメリカのシンガー・ソング・ライターの最高傑作の呼び声高いアルバム。いわゆる「クリスチャン・ミュージック」として分類されている人だが、同じカテゴリーから一般リスナーに認知されたジュリィ・ミラーとならべても遜色無い出来。良い具合に掠れた埃だらけのヴォーカルを気骨あるバックが盛りたてる。


ZEELLIA ●ZEELLIA; Chuckweed Productions, 1998, Ukraina/Canada
 カナダのウクライナ移民女性たちのコーラス・グループ。ウクライナの伝統音楽で、聞いているだけで体がよじれそうな奇妙な音階の歌を、鬼気迫るハーモニーで歌う。ほとんどア・カペラ。

●Tanglefoot FULLTHROATED ABANDON; Borealis, 1999, Canada
 こちらはカナダ東海岸のバンド。故スタン・ロジャースの衣鉢を継ぐ大地に根をはやしたオリジナル曲を、もうもうたる埃をまきあげ、まるでオーストラリアのブッシュ・バンドとも見紛う熱気でうたう。ドラムレスながら、その突進には抗う術なし。

Jon Jang, Jiebing Chen, Max Roach ●Jon Jang, Jiebing Chen, Max Roach BEIJING TRIO; Asian Improv Records,
1999, USAmerica
 FBEATS 常連の一人、みのさんの推薦で知ったアジア系アメリカジンたちによるジャズの中でもぴか一の一枚。ピアノ、胡弓、ドラムスによる即興。ジャズのスタイルの有効性を天下に知らしめ、音楽の地平を広げる。マックス・ローチが嬉々として参加している姿がかわいい。

●Ernst Reijseger & Tenore e Cuncordu de Orosei COLLA VOCHE; Winter &
Winter/Bomba Records, 1999, Sardinia
 サルディニアの男性合唱とドイツのチェリスト、スコットランドの打楽器奏者が、大いに遊んだアルバム。魂を揺さぶるポリフォニーと冒険精神の幸福な結合。

●Naftule Brandwein, KING OF THE KLEZMER CLARINET, Rounder, 1997, Jewish
 デイヴ・タラスとともに20世紀クレツマー・クラリネットの巨匠として知られる人の録音集。タラスとは対照的に、奔放でずぼら、実生活でもいい加減で晩年は悲惨だったそうだが、それだけミュージシャンとしては純粋。

●Taj Mahal, HANAPEPE DREAM/忘れられた夢; リスペクト、2001.05, USAmerica
 何も言うことなし。ディランの "All along the watch tower" は、この歌のベスト録音。

●Agatsuma Hiromitsu/上妻宏光, AGATSUMA, Toshiba EMI, 2001.09, Japan
 三味線を三味線から解きはなった音楽。和太鼓の入ったトラックも良いが、津軽三味線本来の伝統曲の演奏が光る。

●Ola Backstrom, Johan Hedin, Jonas Knutsson, TRIPTYK, Atrium, 1998,
Sweden
 フィドル、ニッケルハルパ、サックスによるトリオによるクリスマス曲集。原曲が歌もあるがオール・インスト。雄大で繊細、厳しくて暖かい。

●KALABRA, Caprice, 1997, Sweden
 スウェーデンの若手ナンバー・ワン・シンガー、ウリカ・ボーデンを擁するカラブラの1st。ここではサックスのアマンダ・セジウィックの活躍がすばらしく、ジャズの香辛料が目一杯利いている。



 ライヴはいいモノをたくさん見られましたが、一つだけあげれば、10月6日の大島保克スペシャル・アンサンブル@TLG, 台場。映画はほとんど1本しか見ていなくて、それも『センチヒ』で、大いに楽しみました。もう何回か見たいと思ったら、終わってしまった。本は世間とはかけ離れたものばかり読んでるんで、1冊だけあげれば、
火の記憶
●エドゥアルド・ガレアーノ/飯島みどり=訳, 火の記憶1:誕生 , みすず書房,1982/2000.12
 南北アメリカ大陸の先史時代からの歴史を、細かいエピソードの積重ねで語る年代記。この第1巻は1700年、スペイン王カルロス2世の死まで。中身は凄いし、翻訳も見事。

 ベルギー象徴派5人を集めた『ベルギーの巨匠5人:アンソールからマグリット、デルヴォー』展(1月・伊勢丹美術館)で、スピリアールトという画家を発見したのが収穫。実はデルヴォーの底が浅いことを発見してしまったのも収穫といえば収穫。銀座の老舗洋書店「イエナ」が年明けに閉店することにはいささかの感慨もあります。ずいぶんお世話になったし、ひところは銀座へ行くと、何も買わなくても寄らずにはいられませんでした。亡くなった人としては、山田風太郎、デイヴィ・スティール、ノエル・ブラジル。合掌。

selected by 大島豊/FBEATS/FWBEAT staff   AboutMe!


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