『永遠の遠国』

▲永遠の煉獄の彼方より(ついに再発されたあがた森魚の名作)
『永遠の遠国』あがた森魚

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 うんとうんと重たい靴を履いて歩きまわってる気分、だ。あがた森魚『永遠の遠国』を聞いていると、だ。
 四角四面に囲まれて『永遠の煉獄の彼方より』やってきたその唄々は、解き放たれてまさに「スターカッスル星の夜の爆発」となったのだ。そこより、永遠の始まり、遙か遠国。

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 レコードでなら3枚目、復刻CDなら2枚目。そもそもは「チョコレット」A面から、始めてみる。 組曲「スターカッスル星の夜の爆発」で、目くるめく世界が広がる。凝縮CD「ガリガリ版」(今まではこの音盤が唯一永遠の遠国への扉だった!)でこの歌は、僕をまったくぶちのめしたのだった。畳みかけるようなピアノがゆったりと時を刻み、顔面蒼白に唄うあがた森魚の声が、心を刻む。大貫妙子の澄み渡った唄声が空気を刻むと、一転スゥイギングな原っぱへさしかかる。きまって胸の裡を掻きむしられ、絶え絶えとなる僕は、其処に来て安堵のため息を、ひとつ。

 が、あまりにもそれが急いで過ぎ去ってしまうので、僕はどんなに哀しんだことか。それがなんと此処では、組曲としてその全貌を顕わにする。

 変幻自在にその形を変え、縦横無尽にその表情を変え、天壌無窮に続いては、天地長久に僕の心に溶け込んでくる。それは寄せては返す波のよう、だ。吹いては戻す春風のよう、だ。煌めいては一閃を放つきららのよう、だ。

 「星の夜の爆発」はかくの如し。

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 うんとうんと重たい靴は、歩いているのが僕によくわかるように。アルバム『永遠の遠国』は、直向きな心が僕にしっかりとわかるように。
 「いとしの第六惑星」をこよなく愛す「情念の少年」あがた森魚は、「春の嵐の夜の手品師」。誰も描けないだろう僕の絵を描いて、春宵一刻値千金に、輝く。
text by あがったAboutME!
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[B E A T E R 's E Y E]