トム・ラップの事なんか、誰も知っちゃあいねぇ。
大昔のヒッピーの生き残り。彼の音楽をアシッド・フォークと呼ぶのは勝手だが、それがまるでカッコ悪い事も承知しなければならない。
いつのまにか亡霊のように復活した。ボッシュの「快楽の園」をあしらったジャケットで、当時のエセ・スノッブ連の注目を集めたパールズ・ビフォア・スワイン。その首謀者だった男が、トム・ラップだ。
「疫病の年の日記」と題された新作。26年ぶりのソロ・アルバムとなる。なぁんにも変わちゃいない。落ち着きどころのない不思議な旋律、誰にも聞かせたくないような自分だけの世界に埋没したヴォーカル、26年という重みも軽みも無い。この、へたり込むようなダウナーさがトム・ラップの信条なのだ。
故カート・コヴァーンに捧げられた「The Swimmer」、螺旋状に落ちていくようなメロディにのせて、幻想的な歌詞が沈殿している。トム・ラップがどのように彼の事を歌おうが、何も変わらない。動かすべき世界は、彼の手の届かないところに存在しているから。
誰もトム・ラップの事なんか知っちゃあいない。アルバムが出た事も、未だに歌っている事も。トム・ラップの事なんか、、、、
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