私説:70年代ポストGSバンド列伝
JEFF「恋は燃えている」

私説:70年代ポストGSバンド列伝
Jポップの歴史に埋もれた彼ら
BAR
 最近の日本のヒット・チャートの上位には、たくさんのバンドが顔を並べているが、30年前にも同じようにチャートをいろんなバンドがにぎわせていた。それは、ビートルズの来日後におきたグループ・サウンズ(通称 GS)ブームだった。ブルーコメッツ、スパイダースという先駆者が作ったブームに続き、沢田研二のタイガース、萩原健一のテンプターズと2大アイドルGSが覇を争った。67年にブレイクしたこのブームは、68年後半には、はやくも下り坂にはいりあっという間に終息してしまった。

 70年代になると大半の若者の目は、フォークや歌謡ポップスへ向き、商業主義に背をむけた日本のロックバンドは、TVに映ることもほとんどなかった。

 が70年代にもGSの夢をもう一度とヒットをねらったアイドルバンドは実は、ちゃんといたのだ。ここでは、GSの熱狂から今のビジュアル系に連なる系譜のミッシング・リンクかもしれない彼らを紹介したいと思う。

列伝 その1 ジェフ

 彼らは,74年に芸能誌月刊「平凡」で募集されたバンドで、演奏力よりもルックスで選ばれたと思われる。このころのロック・バンドといえば長髪にジーンズといったお世辞にもきれいとはいえないスタイルがほとんどだったが(サディスティック・ミカ・バンドのようにグラマラスなのは異色)、ジェフときたら、フリルのついたぴらぴらの王子様ルックだ。もちろんメンバーそれぞれにMABOとかANDYとか愛称がついている。平均年齢18.5歳。レコードの音は、スタジオミュージシャンだと思う。

 当時銀座ナウ(この番組は、70年代B級バンドを語るには、はずせない番組。しかし山口富士夫の村八分も出たことがあるらしい)に出演していたのを見たことがあるが、残念ながらどの程度の腕前だったか記憶がない。

 ジェフの曲でイチオシは、このシングル「恋は燃えている」。作曲は、元ブルーコメッツ、井上忠夫(大輔)。ショッキングブルーのパクリ度が高いが哀愁のある名曲。

 LP「まぼろしの夏」は、GSファンにはそそられる1枚。というのは、この頃のGSフォロワーバンドにありがちなパターンだが、GS出身者が作曲した曲や「君だけに愛を」などGSのカヴァーが収録されているのだ。なかでも注目は、岸部修三作詞、森本太郎作曲の「涙の思いで」、これは、サリーと親交があったらしいアルフォードというGSが自主制作盤のシングルでリリースしていた幻の曲のカヴァーだ。

 GSらしい哀愁のあるなかなかの曲なのだが、なぜタイガースでこの曲やらなかったのだろう。もっともジュリーのカラーとはちょっとちがう感じの曲だが。どうもタイガースというバンドは、オリジナルでいわゆるGSサウンド的な曲をあまり演奏せず他と差別化を計っていたらしい。

 洋楽カヴァーも60年代のストーンズ・ナンバーと正しいGS道を歩んでいて、どうやら彼らは、“70年代のタイガース”を目指したようだ。しかしオーディションでルックス優先で選んだせいか逆に、メンバーがみんな同じような感じになってしまってバンドとしての個性が乏しくなっている。

 不幸なことにこの手のバンドのレコードは、ほとんど再発されていない。だが、中古レコードは比較的安いので一度聴いてみてはいかが。
text by 招き猫aboutME!
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