メールヘッダを読む

同朋学園本部事務局経理課 河邊 憲二

1999.1.15

Windows環境で電子メールを利用している人は多くても、メールのヘッダを見たこと
のある人は少ないのではないだろうか。最近、メールの添付ファイルが読めないとか
文字化けのメールで質問を受けることがあったので、メールヘッダについて簡単に
まとめておくのも意味があるのでは、と思ったのが本稿の動機である。ここでは、 
電子メールのヘッダ部分の意味を簡単に解説し、Microsoft社の Windows98に 標準
で添付されている電子メールソフト Outlook Express の設定との関連を例として示す。

メールでよく言われるマナー

メールは葉書のように考えるのは無理があるのを承知でいうと、ヘッダの部分は葉書の表書きに近く、内容は裏書きに近い。どちらも第三者(配達人)が読めるようになっているという点では封書より葉書に近く、また、ヘッダが表書きというのは、これがないと相手に正しく届かないからである。そして、葉書でもメールでも相手が読めるように書くというのが原則で、そのためにメールに関してのルールやマナーがある。ただし、メーリングリストになると少し事情が違う。なぜならメーリングリストに参加するということは、参加者全員が読めるメールを書かなければならないからである。決まった個人のみとメールを交換するときは同じソフトで同じ設定にしておけば問題はないが、メーリングリストではUNIXありMacありWindowsあり、その上で動くソフトもいろいろで、そのことを承知の上で全員が読めるメールを書く必要がある。よく言われるルールには次のようなものがある。
これらは今までにいくつかのメーリングリストに参加してきて、そこで指摘されていた注意事項をあげたものである。このうちいくつかはメールソフトの設定に依存する部分で、自分の使っているメールソフトがどういう設定になっているか知っていなければならない。しかしたとえば、日本語文字を7bitのJISコードで送信しようとしても Outlook Express の設定画面に7bitのJISコードで送信という項目はないし、plain text で書くという設定項目もない。実際には使っているメールソフトの設定項目が何を制御しているのかが正しく理解できていないとわからない。もしわからなければ、自分の環境で送信したメールのヘッダを確認することである。文字化けメールでもヘッダを確認すればたいていは原因が分かる。

メールヘッダはどうやって見るか

メールヘッダについてはインターネットマガジン1998年10月号188pに解説があるが、その中に各メールソフトのヘッダの見方が載っている。たとえば Outlook Express では、受信したメールのプロパティを開くとヘッダを見ることができる。操作は次の通り。

1.ヘッダを調べるメールを選択して右クリックでメニューからプロパティを選択



2.詳細をひらくとメールヘッダが表示される


ヘッダの詳細

ヘッダにはいろいろな情報が書かれている。詳しくはRFC822を参照。メールソフトによっては、必ずしもこの規約に基づいていない部分もある。一般的には以下の内容である。

Received:
メールの中継処理の状況を示すフィールドで、そのメールがどのような経路でどのようなマシンを経由して届いたかが表示され、メールの配信過程で追加される情報である。システムにより、IPやソフトウェアのバージョンなども注釈としてここに表示される。

Message-Id:
メール送信時にメールサーバ側で付加するインターネット上でユニークな重複しない識別番号で、メールサーバ名などと組み合わせた番号が使われる。

From:
メールの差出人を示すもので、メールアドレスと注釈としてのコメント(たいていは差出人の名前など)が表示される。

Reply-To:
返信を出す場合の宛先を示すフィールド。

To:
メールの宛先を示すフィールドで、複数のメールアドレスを指定できる。

Cc:
カーボンコピー(Carbon Copy)としてメールの宛先を示すフィールド。通常、受信者以外のCcで指定されたメールアドレスが表示される。

Bcc:
ブラインドカーボンコピー(Blind Carbon Copy)としてのメールの宛先を示すフィールド。通常、Bccで指定された受信者の情報は表示されない。

Subject:
メールのタイトルを示すフィールド。ここに ISO-2022-JP が付いているものは、タイトルに日本語コードが使われていることを表している。ただし、タイトルに8ビットコードを使う設定にしている場合は、そのままコードが表示される。

Date:
メールが作成された日付が、曜日, 日 月 年 時:分:秒 TimeZone という書式で表示される。

Resent-
メールのフォワード、つまり転送を行うと、Resent-From のようにフィールド名に Resent- という文字列が付加されたフィールドが追加される。

Attachments:
添付ファイル名を示す。

X-Mailer:
X- で始まるフィールドはユーザー定義として利用される。通常、そのメールが書かれたメールソフトの種類やバージョン情報などを表示するのに利用される。

MIME-Version:
メールがMIME(Multi-purpose Internet Mail Extensions, RFC2045〜2047 参照)対応であることを示す。この場合、以下のようなヘッダが必要に応じて追加される。

Content-Type:
メールのデータ情報を示す。 Content-Transfer-Encoding:
データの転送時に利用するエンコード方法を示す。7bit, 8bit, binary, Base64, Quoted Printable などがある。MIME では、文字だけでなくバイナリも含むデータを扱うので、これをメッセージに文字列としてエンコードする必要があるためである。
MIMEに対応していないメールソフトでは、UUENCODEを用いる。

以上の情報は、メールソフトの設定に関係する。自分宛にテストメールを出してそのヘッダがどうなっているか確認すると良い。たとえば Outlook Express では、ツールのオプションで送信を開くと次のような画面になる。



ここでメールの送信形式に HTML 形式を選ぶと、メールは書式情報やタグなどが付加されたテキストで送信され、テキスト形式を選ぶと plain text 形式でメッセージのみが送信される。最初に述べたようにメーリングリストなどでは plain text 形式が一般的である。また、ここから設定ボタンを押すと次の画面になる。



ここでは、メッセージ形式を MIME と UUENCODE とから選択するようになっている。MIME を選択して、エンコード方法をなしにする。この場合には、7ビットエンコードが採用される。Base64, Quoted Printable などを指定する場合は、相手がデコードできることを確認した方がいい。また、タイトルには8ビット文字を出さないように、「8ビットの文字をヘッダーに使用する」のチェックははずしておく。折り返しやインデントマークはデフォルトのままで大丈夫。さらに表示フォントを固定ピッチに変更するには、同じくツールのオプションで読み取りを選択しフォントのボタンを押して、下図のようにプロポーショナルフォントを「MS Pゴシック」から「MS ゴシック」のように固定ピッチフォントに変更。これで ASCII 文字を使った地図や絵が崩れずに表示される。表示フォントに関してはヘッダと無関係である。ただし、HTML 形式などのメールでは、作成フォントの情報も送信される。



メールの差出人情報などは、メール設定をする場合に入力したものが使われている。これらを後から変更する場合には、ツールのアカウントを開き、メールを選択する。



変更したいアカウントのプロパティを開くと次の画面になる。



ここのユーザー情報中の名前の部分と電子メールアドレスの部分が、From の差出人情報となる。返信アドレスは Reply-To の情報である。差出人に書かれているアドレスと異なるアドレスへ返信が欲しい場合には記入するが、通常は記入しなくてもよい。上の欄にあるメールアカウントは複数のアカウントを利用する際などに、設定を区別するために付ける勝手な名前でヘッダには関係がない。

以上の情報を元に、自分宛にテストメールを出して、ヘッダにどんな情報がどのように書き込まれるか調べてみると良い。また、文字化けメールなどはエンコード形式が違っていたり、文字コードが違っていたりするので、ヘッダを見ることで原因や対策がわかる。少なくとも、自分の使うメールソフトがどういう設定になっているか、ヘッダを読んで一度は確認しておくことが必要である。

参考資料




K.KAWABE <kawabe@doho.ac.jp>
Created: Jan.15,1999, Updated: Jan.15,1999