平成20年度 「名理会発表会1日研修」報告

午後の部・全体会

 発表会の様子
発表1 発表2 発表3 発表4
 
発 表 者 概   要





 
名古屋市立名北小学校

吉田 貴子
 
科学的な考えに高める理科学習
−「3つの対話」活動を取り入れて−
単元 ものの燃え方と空気(小6)
研究のねらい
 「自分なりの考えをもち、友達の考えと比べて客観性を高める」、「検証実験をした後に追究を振り返りながら、論理性を加えて考察できる」ような、科学的な考えに高まった児童の育成を目指した。
指導の重点
1 ものとの対話
 経験不足を補うための実験から自分なりの考えをもつ。
2 友達との対話
 「考え変容ボード」を活用した友達との意見交換を行い、客観性のある自分なりの考えになる。
3 自分との対話
 理論性を高めるための、ワンページポートフォリオを活用した考察を行い、客観性・論理性のある考えになる。
手だて
1 ものとの対話
 単元の始めに自由試行の実験を行う。その中で自分の思い通りにならなかったり、必ず同じ結果になったりする状況など「もの」と対話し、課題を問題に高め、問題に対する自分なりの考えをもつ場を設定する。
2 友達との対話
 「考え変容ボード」をつくり、自分の考えをカードに書き、それを問題に対する視点に着目しはっていく。「変容ボード」を見て、友達と意見交換をし、自分の意見を吟味・修正し、客観性を高めていく。
3 自分との対話
 検証後にワンページポートフォリオを活用して振り返る活動を行う。これまでの対話、検証実験で得た情報を取捨選択し、それぞれを結びつける活動を行い、論理性を高める。
成 果
○ 「ものとの対話」で、問題に関する体験を行うことにより、自分の考えがもちやすくなったり、意見交換をしたときの友達の考えを理解しやすくなったりした。
○ 「友達との対話」で「考え変容ボード」を活用して意見交換を行ったことにより、自分と同じ考えや異なる考えが一目でわかり、短時間で多くの友達と意見交換をすることができた。
○ 「自分との対話」では、追究の流れが1枚にまとめられていることから情報を取捨選択し、論理性のある考えを導き出しやすかった。





 
名古屋市立熊の前小学校

石橋 里志

 

学ぶ楽しさを味わう理科学習

単元 電池のはたらきをしらべよう(小4)
研究のねらい

 学習する事象がどうのような仕組みで起きているのか、それをどのようにして調べるのかを、これまでの経験や学習を生かして考え、試行錯誤を繰り返しながら観察・実験をして解き明かしていくことから、科学的な見方や考え方を育て、学ぶ楽しさを味わうことができる児童を育成したい。
学習の重点
1 「解決すべき問題」を明確にして、問題解決への意欲をもつ。
2 「これまでの学習の成果」を生かして観察・実験の方法を考え、問題解決への意欲を高める。
3 「結果から分かること」をとらえ、事象に対する自分の見方や考え方を科学的なものへと高める。
手だて
1 学習する事象がどういう仕組みで起きているのか、ともに学ぶ仲間と見方や考え方を交わす活動が有効であると考え、話し合い活動を行う。その際に修正が容易なホワイトボードを活用する。
2 学ぶ仲間と協力して、観察・実験の方法を考えられるようにするグループ学習を行う。その際に、ワークシートを活用をする。
3 観察・実験で何が明らかになったのかを「解決すべき問題」と照らし合わせながら考え、学習前にもっていた自分の見方や考え方と比較する活動を行う。また、新たな見方や考え方をより明確にとらえることができるように、学ぶ仲間と新たな見方や考え方について意見交換をする活動を行う。
成 果
○ 話し合い活動をしたことによって「解決すべき問題」が明確になり、「結果から分かること」をとらえることができた。
○ 話し合いの場面で、活発に意見交換を行ったことで、実験の「結果から分かること」をとらえることができた喜びを感想で述べる児童が多かった。 





 
名古屋市立鶴舞小学校

犬塚 由美子
 

気付きを深める生活科学習

単元 生きものをしょうたいしよう 他(小2 生活科)
研究のねらい

 児童が生活上直感的に感じる気付きを、活動を繰り返す中で、互いに関連づけたり、比較したり、自然現象と結びつけたりしながら、「○○と△△は似ているね!」「○○はきっと△△だからだよ!」といった新しい気付きを生み出すことで、気付きを深めていく。この活動が、第3学年からの理科における「科学的思考力」の素地となると考え実践を行った。 
基本的な考え方
直感的な気付きを深まった気付きに深めていくために、次のような段階を考えた。
1 自分の気付きを表現する
2 気付きを交流する(同じ生き物・違う生き物)
3 自分なりに考えを表現する
手だて
1 一つ一つの気付きを関連付ける場の設定
 ・ 一人一人が「生き物博士」になるために、生き物と十分にかかわる
 ・ 生き物と生息場所などを意識した住みか作りを行う。
2 同じ生き物を育てた子同士の気付きの交流
 ・ 友達と同じ気付き→自分の気付きに自信をもつ
 ・ 友達と違う気付き→自分の気付きを見直す
3 自分と違う生き物を育てた子との気付きの交流
 ・ 自分が育てた生き物と、友達が育てた生き物を比較する。
 ・ 比較することで分かったことを表現する。
成 果

○ 生き物の住みか作りを行ったことで、生き物と生息場所を関連づけて考えることに役立った。
○ 友達と気付きの交流を通して、自分の気付きに自信をもったり、見直しをしたりできた。
○ 自分と違う生き物を育てた子との交流から、自分が育てた生き物と比較したり、関連づけたりしたりすることで、新たな気付きを生み出すことができ、気付きを深めることができた。





名古屋市立港明中学校

鈴木 秀樹
植物の生き方の巧みさが実感できる理科学習
−方形区枠の継続観察を通して−
選択理科(中3)から「植物の生活と種類」(1年)での取り組みに向けて
研究のねらい

 校内の身近な植物の定点観察を通して、他の植物と競争しながら生き残っていくために、さまざまな工夫があることに気付き、生物の生き方の巧みさを実感できる生徒の育成を目指した。
基本的な考え方
1 方形区枠を利用した継続観察
 人がほとんど出入りしない体育館裏に1m四方の方形区枠を設置し、限定された枠内の植物の増減や草丈、成長段階を比較し継続観察を行う。
2 中単元交互履修
 中学校1年生の「植物の種類と生活」の中での学習を進めていく上で、春先だけの断片的な観察ではなく、継続的な観察を行いたい。そこで、学習時期を調整した中単元交互履修を計画した。
成 果

◎ 方形区枠から消えていく植物に着目し、その植物の子孫を残すための工夫に気付くことができ、生き方の巧みさが実感できた。
○ 春先のできるだけ早い時期の記録が重要である。
○ 事前にデジタルカメラで記録し、植物名検索用プリントを準備するとよい。
○ 4月〜6月は一気に成長しないため、月1、2回、それ以後は月2、3回の記録が必要である。
○ 観察記録が多すぎると、変化の違いが分かりにくいため、1学期に計4回の記録をとっておくとよい
指導・助言 名古屋市教育センター 鷲尾 順一先生
1 各発表について
発表1…一人一人の変容をしっかり見つめて、対話を通じてしっかりした個別指導がされている。ワンページポートフォリオは、児童の変容を見るのに効果的であった。
発表2…問題解決の場面で、児童の「話し合い」「学び合い」がていねいに行われている。ホワイトボードの活用においても、活用方法がはっきりしていることが重要で、本実践では効果的な活用となった。
発表3…児童の記録・発言から、気付きを深めている姿がよく現れていた。先生の児童とのかかわりかたが非常によい効果をもたらしている。生活科として幼稚園とのつながりも考えていけるとよい。
発表4…中学校における定点観測による継続観測、なにか驚きのある物をみせるのではなくその地道な活動から、生き物の巧みさを見いだしていくところが素晴らしい。

2 授業力の向上について次の点を見直してほしい
○ 事象提示
  ・ 児童・生徒にどう事象と見合わせるのか、どのような体験をさせるのか。
   目的がはっきりしているか。
  ・ 児童・生徒の実態から、事象に対してどのような反応をするのか、
   それを予測し、次の活動を考えているか。
 ○ 発問…発問を計画的に行っているか。
 ○ 話し合いの力を鍛える
  ・ 話し合い活動の取り組みがいろいろな場面でされているか、
   まず学級全体での話し合いができているか。
  ・ 児童・生徒が話し合いをしたいと思うような授業になっているか。

<文責 林本 勝徳(名古屋市立藤森中学校)>