午後の部

 平成25年度 「名理会研修会 分科会」報告

<第1分科会>
発表者    研究テーマ・概要
発表1
名古屋市立幅下小学校
 原 田 竜 一

 
  
 学びを生かして活動する児童の育成
 「理科が好き」と思える児童を育てたい。そのために,児童が学びの中で自分の考えをもち,それを生かしていくことができるように育てていきたいと考え実践を行った。
単元 乾電池のつなぎ方・光電池のはたらき <小4>
手だて
@ 多様な問題をもつ活動
 思う存分に教材を使って体験活動をし,多様な気付きや疑問をもてるようにする。その中でつかんだ内容を基にして,自分なりの多様な問題をもち,予想や仮説を考えられるようにしていく。 
A 学びを生かした活動
 実験の条件を少しずつ変化させたり,比較しやすい教材を使ったりすることで,児童が学んだ内容を生かして考えられるようにする。
成  果
○ 体験活動をする時間を十分につくり,確かめたり調べたりすることで,,一人一人が自分なりの問題をもつことができた。また,問題に対して,予想や仮説を立てて実験することで,児童は自分の考えをもって観察・実験に取り組むことの楽しさを感じることができた。
○ 様々な教材や実験条件で実験することで,今までの学びを生かすことができた。予想や仮説を楽しみながら行うこともできた。また,少数派の予想が正解だったことが何度かあり,様々な意見をもっていいだという気持ちが生まれた。
発表2
名古屋市立笹島中学校
 澤 久 太 郎

 
 探究心をもって,課題解決を進めることのできる生徒の育成
 課題解決のプロセスを身に付け,課題解決を進めることができる生徒が,探究心をもって課題解決を進めることのできる生徒であると考え実践を行った。
単元:化学変化と原子・分子<中2>
手だて
@ 自然事象との出会いの工夫
 意外性のある事象を提示することで,生徒に「なぜだろう」と疑問を抱かせるとともに,それを「調べたい」という探究のきっかけになる。
A 学び合いによる仮説・検証方法の設定
 個人で仮説を考えた後,班で互いの考えを伝え合う場を設ける。自分の考えと他の考えを比較することで,自分の考えに自信が持てるようになり,探究心が高まる。
課題解決の8つのプロセス
@自然事象との出会い A問題の把握・設定
B予想・仮説の設定  C検証計画の立案
D観察・実験     E結果の整理
F考察        G結論の導出

成  果
○ 意外性のある事象を目の前にすることで,驚きや疑問を得ることができ,それを調べたいという気持ちの高まりが見られた。
○ 話し合いをすることで,課題解決のプロセスを踏まえて課題解決をすることができた。
<第2分科会>
発表者    研究テーマ・概要
発表1
名古屋市立東港中学校
 井 上 将 孝

 
 科学的に捉える力を育む理科教育
 −振り返り学習を通して−
 自然事象を科学的に捉えることができる生徒を育てたい。そのためには,筋道の立った自分の考えをもつことが大切であると考える。筋道の立った自分の考えをもつ力が身についてくると,事象を論理的に説明しようと,自分の考えを振り返りながら,試行錯誤する姿が見られるはずである。そのために,自分の考えを振り返る活動に重点を置き,この学習活動を繰り返し実践することで,筋道の立った自分の考えをもつことができるようになると考え実践を行った。
単元:運動とエネルギー<中3>
手だて
1 ワークシートの工夫
@ 自分の考えを引き出すための選択肢の設定
A 生徒間の話し合いのポイントを明確にするキーワードの記入
B 話し合いによる自分の考えの変容に気付かせる記入欄の設定
2 生徒間の話し合いによる振り返りの活動の工夫
 キーワードを話し合いのポイントにし,他の生徒と自由に話し合いをさせる。
成  果
○ 選択肢やキーワードを記入することにより,自分の考えをもち,筋道を立てて考えようとする姿が見られた。
○ 話し合いによる振り返り活動では,ワークシートの工夫により,話し合いのポイントが明確になり,積極的に参加する姿が見られた。
○ 自分の変容をワークシートに記録したことで,自分の考えを振り返ったり,自分の考えに自信をもったりすることができた。
○ 話し合いによる振り返り活動を行うことで,自然事象を科学的にとらえるために必要な筋道の立った考えをもつことへの意識を高めることができた。
発表2
名古屋市野田小学校
 紅 谷 達 彦
 
 
 見通しをもって観察・実験に取り組む児童が育つ理科学習
 −多様な予想を導く話し合いと,考えを練り上げる言語活動を通して−
 予想,観察・実験,考察・結果まで見通しをもち,自ら課題をもって観察・実験に取り組む児童を育てたい。そのために,児童が多様な予想を基に話し合い,考えを練り上げる場面が必要と考え,実践を行った。
単元:生命のつながり・もののとけ方<小5>
手だて
@ 予想する場面
 クラス全員で経験や知識を基にした話し合いを位置付ける。
A 考えを練り上げる場面
 一人一人の多様な予想をもち寄り,班ごとに予想を交流する言語活動を行う。
 ・予想を確かめるための実験方法を考える
 ・予想と結果を結びつけて考察する
成  果
 予想する場面・考えを練り上げる場面で話し合いを位置付けたことにより,児童が見通しをもって実験に取り組めるようになった。また,実験による新たな気付きも生まれた。
<第3分科会>
発表者    研究テーマ・概要
発表1
名古屋市立野跡小学校
 藤 井 伸 代

 
 問題を追究し続ける児童を育てる理科学習
 自然の事象・現象を注意深く観察し,そこから見出した疑問や問題を解決しようと,さらに観察を続けるような「追究し続ける児童」を育てたい。そのためには,児童に自然事象に対して疑問や問題をもたせることが必要であると考える。自ら抱いた疑問や問題を追究するために観察を続ける児童の姿を目指して実践を行った。
単元:季節と生き物<小4>
手だて

@ 模型の製作,観察カードの工夫
 生き物の観察後に模型を製作することで,細かな部分まで観察するようになる。
 継続観察をしていく上で,小さな変化や発見したことを細かく記録できる観察カードを用いる。
A 原寸大スケッチ,予想カードの活用
 継続観察では,模型では変化を表しにくいため,原寸大スケッチを活用する。
 予想カードでは,生物の成長の様子を原寸大の大きさで予想する。 
成  果
○ 模型の製作と観察カードを取り入れたことで,児童は詳しい情報を得ようと細部に目を向けた観察をすることができるようになった。また,観察から抱いた疑問を自ら進んで調べ,わかったことを友達同士で情報交換するなど,追究しようとする姿が見られた。
○ 原寸大スケッチ,予想カードとの比較を通して,児童は小さな変化も逃さずに観察しようとする姿が見られた。
発表2
名古屋市立港北中学校
 加 藤 公 士
 
 
 学習意欲を高める理科授業
 理科の楽しさを感じることができる授業を展開し,意欲的に授業に取り組む生徒を育てたい。そこで,授業の導入で,インパクトのある事象を提示し,また,身近なものを教材として利用することで生徒の学習意欲を高め,意欲的に授業に取り組む生徒を育てたい。
単元:音の性質<中1>
手だて

@ 導入でインパクトのある事象提示
 授業の導入でインパクトのある事象を提示することで,生徒の驚きや疑問をもたせ,関心・意欲を高める。
A 身近なものを利用した教材
 身近で,親近感のもてるようなものを教材として利用することで,身のまわりの事象への興味・関心を高める。
成  果
○ インパクトのある事象提示は,生徒に驚きを与え,様々な疑問をもたせることに有効である。
○ 身近なものを利用した教材は,生徒の身のまわりの事象への興味・関心を高め,インパクトのある事象提示とあわせることで,意欲的に授業に取り組む生徒が増えた。
<第4分科会>
発表者    研究テーマ・概要
発表1
名古屋市立旭出小学校
 加 藤  拓

 
 考えることを大切にする理科学習
 小学校中学年で,自然事象を調べる楽しみを知った児童に対し,高学年では,自ら自然事象に対して疑問をもち,解決していく,理科の本当の楽しさを感じさせたいと考え実践を行った。
単元:生命のつながり<小5>
手だて

@ みんなで考えカードの活用
 子どもが自ら学習課題を作るための手立てとして,導入で事象や科学的な情報を提示した後に,みんなで考えカードを用いてグループで話し合いを行う。
A 比べて考えシートの活用
 継続観察において,自分の仮説や予想に立ち返って,結果や考察を行うことができるようなワークシートを活用する。
成  果
○ 「みんなで考えカード」「比べて考えシート」の活用により,児童は目的を見失うことなく,予想と比較しながら観察・実験結果を記録できた。また,考察の場面でも,自分の仮説に立ち返りながら自分の考えをまとめるなど,意欲的に取り組むことができた。
発表2
名古屋市立上社中学校
 佐 野 嘉 昭
 
 
 明確な仮説をもって観察・実験を行う理科授業
 身の回りにある様々なエネルギーを「仕事」という科学知識から理解できる生徒を育てたい。そこで,明確な仮説を作り上げる言語活動を授業の中心とし,話し合いでは,「生徒の理論」と「科学理論」を積極的に競合させ,「どちらの理論が正しいかは,実験をやって決めるしかない」という状態を作り上げた。明確になった仮説を検証する役割として実験を行い,エネルギー概念へのコミットメント形成を行った。
単元:運動とエネルギー<中3>
手だて
運勢ラインの利用
 運勢ラインとは,理論への自信度を表現するツールである。これによって,実験結果の予想から,実験後の考察までの一連のプロセスにおいて,自分が今どの理論を支持するかを明らかにできる。
成  果
○ 運勢ラインの変化と生徒の学びを追うと,実験はコミットメントを変化させることに機能し。話し合いや考察・教師の説明は理論切り替えの場として機能することが明らかとなった。
○ 実験前に仮説を立て,話し合いによって理論を競合させる中で,仮説を明確にさせた。そして,明確になった仮説を実験によって検証することで,エネルギー概念へのコミットメントを形成することができた。