平成26年度「名理会発表会1日研修会」報告
午後の部・全体会

発 表 者 概   要





 
名古屋市立上野小学校

吹原 健志


生命尊重の態度を育む理科学習
単元 生命のつながり(小5)
研究のねらい
 理科の学習を通して、生命を尊重する児童を育てたい。生命を尊重する児童とは、生命に対する関心が高まり、生物の成長や体の仕組みに対する理解が深まり、生命のすばらしさを感じ、自他を大切にしていこうとする児童であると考える。

手だて
1 専門家との関わり(関心の高まり)
 単元の導入場面において、専門家から詳しい話を聞いたり、特別な教材による体験をしたりすることで、児童の関心が高まると考える。また、学習の過程において、解決が困難な疑問を、専門家からポイントを教えていただいて解決することで、児童の関心が高まると考える。
2 模型作り(理解の深まり)
 簡単な模型を作ることを目的とすることで、児童は事象をより詳しく見ようと細かい観察をすることができる。さらに、模型作りを通して新しい気付きを得ることで、児童は生物の体の仕組みや成長過程に対する児童の理解が深まると考える。

実 践
1 専門家との関わり 
 実践1:東山動物園メダカ館のメダカマスターに質問をする機会を設定
 実践2:助産師さんによる「思春期セミナー」
2 模型作り(理解の深まり)
 実践1:ペーパーメダカ作り
 実践2:油粘土を使った胎児模型

成 果
○ 専門家との関わりをもつことで、児童は生命への関心を高めることができた。また、専門家の説明により児童の疑問が解決され、意欲をもって活動に取り組むことができた。
○ 模型作りにより、児童は生命の理解を深めることができた。また、生命の体の仕組みや成長過程がわかりやすくなることで、児童は新しい気付きを得ることができ、深い理解につながった。





 
名古屋市立高田小学校

長崎 寛之


 
子どもの科学的な思考力を高める理科学習
単元 ものの燃え方(小6)
研究のねらい
 未知の事象に出会っても、自らの知識・技能と関係づけて仮説を導くことで、新しい知識・技能を構築できる科学的な思考力が高い子どもを育てたい。そのため、子どもにとって「難しそう。でも、考えてみたい」と思えるような難しく、やりがいがある事象(以下「難関事象」)を発展的な学習として提示し、「事象との出会い」から「仮説設定」までの場面を工夫して実践に取り組んだ。

手だて
1 子どもにとって適切な「難関事象」の工夫
 ○習得した知識・技能を当てはめて考えることで解決できるもの。
 ○一見しただけでは、習得した知識・技能と関係付けることが難しいもの
2 「難関事象」と習得した知識・技能とを関係付けるための工夫
 ○「難関事象」を単純化した図
 ○子どもが考えを自由に書き込める図

実 践 
1 子どもにとって適切な「難関事象」の工夫
 実践1:穴を開けた2種類の缶を提示し、「缶の中で割り箸を燃やした場合、どちらの缶の方がよく燃えるか」を考えさせた。
 実践2:木炭がよく燃えるための組み方を考えさせる。
2 「難関事象」と習得した知識・技能とを関係付けるための工夫
 実践1:2種類の缶の図を示し、周囲に子どもの考えを書き込めるようにした。
 実践2:木炭の代わりに粘土を用意し、粘土を使用して、木炭の組み方を子どもに考えさせた。

成 果
○事象モデルによって、子どもの考えが整理できた。
○「難関事象」の提示により構築された新しい知識・技能は、また別の「難関事象」でさらに新しい知識・技能を構築するといった、連鎖的な構造が見られた。 





 
名古屋市大野木小学校

室崎 学


 
実感を伴い、記憶に残る理科学習
単元 天気の変化(小5)
研究のねらい
 「天気の変化」の単元は、身近な自然や児童の生活経験から離れた事象を扱うことが多く、また、継続した観察から結論を得ることが必要であることから、実感を伴った理解を得にくい。そこで、本研究では自然事象への直接の働きかけをしながらデジタル機器のもつ利点を生かして学習を進める。さらに、身近な自然や生活との関連を図る場面を設ける。そうすることで、実感を伴い、記憶に残る理科授業を展開できると考えた。

手だて
1 実感を伴った理解を促す指導の工夫
 地域の天気を継続して定点観察する「大野木観測所」を校内に設ける。観察の記録には、正確かつ簡便な記録性をもつデジタルカメラを活用する。身近な天気の変化を継続して観察するとともに、デジタルカメラで得た画像をスライドショーなどで再構成することで、問題解決に生かす。また、実際に体験できない台風のような事象については、気象衛星画像を活用し、体験的な活動を通して、問題解決を行う。
2 記憶に残す指導の工夫
 既習の学習事項を生かし、翌日の天気を予測する活動を行う。また、雲の種類や天気に関することわざなどを調べる活動を行う。これらの活動を通して、学習した内容と自然や生活との関係について知る。また、学んだことを実際の生活に生かすことができるようにする。

実 践
1 大野木観測所を開設しよう
2 「天気調べ」をしよう
3 「お天気アナウンサー体験」をしよう
4 パラパラ台風で調べよう

成 果
○ デジタルカメラを使用したり、撮影した画像を加工したりすることで、定点観測による体験を補い、主体的な問題解決につながり、天気と雲の量や動きの関係を、実感を伴って理解することにつながった。
○ 「お天気アナウンサー体験」や「明日の天気予報」を行う中で、学習した内容を生かし、雲の量や動き、生き物の様子などを根拠にして翌日の天気を予測することは、学んだことを自分の生活の中で生かすことにつなぐことができるので、学習した内容を記憶残す上で効果があった。
○ 一人一人が自分の台風を繰り返し観察することができるため、台風について考える活動が主体的なものになり、天気の変化について実感を伴った理解につながった。





名古屋市八熊小学校

服部 正宗

多面的なものの見方を育てる理科学習
−ESDを視野に入れた環境学習を通して −
単元 生物とその環境(小6)
研究のねらい
 環境学習における「多面的なものの見方」を「地球環境を支えている絶妙なバランスを捉える力」と定義した。地球環境は、マイナスに見えるものが一方ではプラスに働いていたり、関係がないように見えるもの同士が実は密接につながっていたりすることで、絶妙なバランスを保っている。このように地球環境を捉える力を子どもに身に付けさせることで、ESDが目指す、課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すことにつながると考えた。

手だて
1 体験A 環境問題を身近にする体験
 二酸化炭素による温室効果や地球温暖化による海面の上昇など、環境問題を知識として知っている子どもは多くいる。しかし、体験を通してその知識を獲得した子どもは少ない。規模が大きくどこかの他人事になってしまいがちな環境問題について、観察や実験などの体験を通して身近に感じることで、自分事の問題として捉えられるようになると考える。
2 体験B 新たな見方を獲得する体験
 「新たな見方」とは、環境問題に対してまだ子どもが捉えることができていない見方や、他の事象とつなげて見る見方のことである。このような新たな見方を子どもが体験を通して獲得することで、子どもの見方につながりや広がりが生まれ、多面的なものの見方が育つと考える。

実 践
1 藤前干潟について知ろう
2 地球温暖化って何?
3 二酸化炭素はどこからでるの?
4 校庭の樹木は、どれくらいの二酸化炭素取り入れているの?
5 地球温暖化が進むと、どうして海面が上昇するの?
6 地球にとって二酸化炭素って何だろう?

成 果
○ 環境問題を身近にする体験を通して、子どもたちは地球規模の環境問題を自分の問題として捉えることができるようななった。
○ 新たな見方を獲得するための体験を通して、子どもの多面的な見方が育った。