NEW EDUCATION EXPO 2002(名古屋会場) 参加報告   社楽の会第170回報告へ

今こそ「学び」を変えるときである
   ー学力低下問題をふまえてー
青山学院大学文学部教授
東京大学名誉教授     佐伯 胖 氏

学力低下問題で騒がれている。
山口小学校では、基礎・基本の徹底で有名になった。卒業生が進学校に進んでいるそうだ。
その他,反総合学習の動きもある。でもそうではない。
勉強しなくなっていることが原因である。
勉強の意味が分からず、将来も見えず、「かかわり合うこと」が下手になっている。
門脇さんの「子供の社会力」(岩波新書)という本でいっている。

広がるする虚無主義が問題なのだ。
これまでの日本人は,成長を信じて突っ走ってきたが,しかし,環境問題や金融破綻を生んだ。戦争もいっこうに減らない。何をやっても裏目になる。その結果,無力感が各世代に行き渡る。
「勉強してなんになる」という考えに至る。ドイツでも学級崩壊が頻発し、伸びているのはシュナイダー教育だけだ。片やアジア系は、猛勉強をまだやっている。しかし二極分化が始まっている。
根本的なところを考えないといけない。
学ぶことの意義が忘れられているのが緊急課題だ。

学ぶことは、他者や共同体の呼びかけへの応えだ。共によくなろう、よくしようとする。
「してくれる → してあげる」自ら他者をよくしようとし、してあげようとすることが、学ぶことの意義を実感させる。学び=教え=ケアすること だ。

ある荒れた学校の中学校で、職業体験のようなもので幼稚園児と関わってよくなった中学生がいた。数年間かかわり卒業の時は涙、涙だった。育ちを喜ぶことで、子供たちが変わってしまったのだ。
自分は自分だけで生きているのではないということに目覚めることが大事。

勉強とは、社会における何らかの外的基準から望ましいとさせる態度や知識を他者からの教示に従い、練習を通して、獲得すること。
学びとは、人が共同体の活動に参加することを通して、全人的な意味でなってよかったと思う自分になること。

学びとは,
参加の深まり、関係性の変化、自分らしさ
ものにする、賞味するapppreciate
具体的・状況的
what,why

勉強とは,
個人の能力の向上、個人特性の変化、みんなと同じ、知る・できる、身につける
脱・状況的、how to

両方大事だが、勉強だけを目指してきたことが破綻を招いた。
遊びが重要だ。
遊びとは、その活動それ自体が充実し何か別の目的の手段ではなく、それ自体をより豊によりよいものにしようとする活動を指す。

勉強とは、特定の能力

学び−勉強=遊び

益川敏英教授について述べる。
小林・益川理論はノーベル物理学賞が有力な理論だ。彼らはおもしろいことを研究した。2002年2月13日日経新聞 「素粒子いろいろより」グループ学習でおもしろくなってきた それがおおきかった
面白がる力が大切なのだ。

追いつく学力とそうでないものがある。
計算や漢字は追いつく。
東大では学習の目的を失い引きこもりが結構いた。はい上がるが大変で、かなりの数の学生が経験的に身に付いた塾や予備校の先生になる例が多い。それに対して、おもしろいときに熱中できる力が大事。

オープンスクールの学習効果。
追跡調査をすると、偏差値では中1では0.3ポイント上、中2では13.5ポイント上
自分で調べて最後までやるのが好き、
学んだことをレポートにまとめるのが好き
友達と協力して何かをやりとげるのが好き

緒川や卯ノ里の子は本当の学びに強い
奈須正裕「総合的な学習と子に応じた指導でどんな子が育つか」に書かれている。

基礎に関する3つの神話 というのがある。
1 跳び箱順序神話:上位の知識は下位知識が獲得されなければ獲得できない
2 学者流客観性神話:基礎は学問的体型で客観的に決まっている
3 知能テスト流発達段階神話:なにが基礎かは子供の発達段階で決まる。

学ぶ力の基礎
わかることを常に最優先
わかることの喜びをすると苦労してでもわかりたいと思うようになる。あることが本当にわかると次々と新しいことがわかってくる。何が基礎かはその都度変わる
「これがわからなければあれがわからない」ということがわかる,これが基礎だ。

知の分散と統合
知は分かちもたれることで達成される
知は道具、人、環境の中にわかちもたれている
脳は脳だけで情報処理しているわけではない

これまでの学力論で決定的にかけていたこと
学びの社会・文化的側面である。

学びは実践共同体への参加だ。
文化的実践の共同体への参加であり,自分のアイデンティティを確率することである。
学習論革命「正統的周辺参加論」には,人類の学習は本来徒党的なものである。

 学習は正統的

生涯学習を見据えた学校へ
 学校の学びは人生のほんの一こま
脱・学校化した学びへ
e−learning は「学習革命」か?
 学習者が自分のカリキュラムを作る時代
 学びたいときに、学びたいことを学ぶ

個人能力還元主義からの脱皮
 能力とは、様々な状況の中で様々な人やもの、あるいは目的などとの関連で
「おんがえし」して,学びあう共同体を作ろう

第2講
まち・ひと・思いをつなぐ学校施設
北陸先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究調査センター
助教授 平井明成


専門 建築工学、学校施設計画

学校施設設備に関する基準の変遷
模範提示
 明治5年 学制発布
 明治28年 学校建築図説名及び設計大要
補助基準
 昭和28年 公立学校施設費国庫負担法等の制定
 昭和42年 学校施設指導要領(羊羹型の校舎・蒲鉾型の体育館)
指導指針
 昭和49年 学校施設設計指針
 平成4年  学校施設整備指針
 
施設機能の水準を確保するために、学校施設の計画及び設計において必要となる基本的な考え方や留意事項
健全な教育環境づくりのための注意喚起
これからの施設づくりのあり方

高機能かつ多機能で変化に対応しうる弾力的な施設環境の整備
健康的かつ安全で豊かな施設環境の確保
地域の生涯学習やまちづくりの核としての施設整備

環境を考慮
複合化高層化                                                        地域と連携
中高一貫
バリアフリー、
安全                                                               耐震性の向上
化学物質
維持管理

新しい指導要領への対応
心の教育の充実と確かな学力の充実

これからの子供たちの教育の場を考えると
 体験学習の必要性
 いじめや学級崩壊などの深刻さ
 放課後や土曜日曜の子供たちの過ごし方
 学校を凶悪事件から守る対策
 もはや学校だけではすべての対応が困難

文部科学省・国土交通省・厚生労働省
合同調査研究会報告書
 「まち・ひと・思いを伝える学校施設」
総合的・横断的な検討が必要

子供たちの教育、地域のコミュニティ、子育て・高齢者福祉
をとりまく一つとしての学校

学校づくりはこれからどんな方向に向かうのか
子供たちを巡る社会環境の変化
 自然体験者買いたい券の不足と地域における遊び場の不足
 情報の氾濫
地域コミュニティの変化
 地域コムyにティから失われてきた生活支援機能
学校を巡る現状と新たな要求
 学校と家庭と地域社会の連携協力
 新しい教育課程の実施と完全学校5日制の導入
 子供たちの才能を引き出す教育環境の整備と学校施設の老朽化対策

これからの学校づくりにとって大切な視点
 子供お発ちの育成環境づくりに大切な視点
  体験する場作り
  交流の機会づくり
  安全・健康な環境づくり
まちづくりに有効な視点
  学校の整備を景気としたまちづくり事業の展開
学校づくりに大切な視点
  地域コミュニティの中ではぐくまれる開かれた学校づくり
  地域コミュニティの連携

連携による学校づくりの課題について解決のためのヒント

まち全体を大きな教室に
 地域全体のまちづくりの中で学校が果たす役割を考える
  長野県浪合村の浪合学校
   学校を核としたまちづくり

地域にとけ込む学校づくり
 学校開放をより活発にする工夫を考える
   会津町立西会津中学校
     IT化  情報の発信拠点

 子供たちへの解放も大切
   横浜市のはまっこふれあいスクール
     
世代を越えたコミュニティの拠点に
 地域の人々との交流の場として学校が持つ可能性を考える
  文京区立昭和小学校
  京都府立向日市立第四向日小学校
    小学校と高齢者福祉施設との複合化や余裕教室の転用からの交流活動
  
みんなの思いを込めたプロセスが大切
 連携をはぐくむプロセスの実践
  福岡県山田市立山田小学校
   住民参加の委員会
  福島県只見町立只見小学校
   設計者による住民を交えたワークショップ
 
連携を育むプロセスの考え方
 企画立案プロセスと参加者共通のイメージ作り
 リーダーシップを発揮する人が大切
 行政サイドや連携施設間の体制づくりも必要
 ゆっくりつくることには意味がある
   合意を得ることが大切

学校施設づくりの指導の方向
 窓の大きさ、便器の数
 必要な部屋、規模
 諸施設の留意事項
 施設の機能・役割
 計画のプロセス

第3講
情報社会の進展に学校はどう対応していけばよいか
−教育の情報化に関する動向と現場の実際−
静岡大学情報学部情報社会学科 助教授 堀田龍也


情報社会の進展と教育へのインパクト

情報はメディア経由できている
マスコミの責任の大きさ
撮る側に回るといろいろ見えてくる
撮る側には伝えたい文脈があり、仮説がある。
子供がホームページを作っても、載せたいことを載せる。

メディアが送る情報も脚色されたものなのに、それを忘れて見ている。
情報教育も、内容と人間の関係が問題になる。

小笠原と北海道がインターネットで出会い、雪を送ってもらった。
体験を豊かにするためにメディアを使う

data-mining
おむつを買うひとは金曜日に20から30代のひとが買って、ついでにビールを買う。
情報に支えられた経営もおある。

文部省はコンテンツ開発から活用に移った。

情報技術・社会と教育の関係
  教育を支える情報技術
    子供用ソフトウェア、教師用Web
  情報社会を支える教育
    情報教育・メディアリテラシー
  
HPで情報を発信することが説明責任
 公的機関としての説明責任
  
情報化が学校にもたらす変化
公開性
 情報公開の促進、個性のアピール、学校選択のための判断情報
多様性
 多様な情報の流入、価値観の多様性への対応義務
連携性
 物理的距離を超えた外部人材との連携、地域人材の価値の見直し
教師の資質向上
 情報社会の社会人としての教員の資質
組織改革
 情報社会の組織としての学校のあり方、迅速な意志決定、組織のフラット化

情報化に対応した教育 
 情報化の進展に対応した・・・協力者会議

・情報教育; 子供に情報活用能力を付ける
  
・学習指導における情報手段の活用;よくわかる授業のために利用する

・校務の情報化

学校教育の情報化
 次は2005年の4年間
  ブロードバンド
  コンピュータ密度 5.4  540人に100台
   宮崎市は実現 

教育情報ナショナルセンター 

教育用コンテンツ開発
 「わかる授業」実現のために

情報教育の目標
 情報活用の実践力;生活の中に生きて働く力
   情報教育実践の6ポイント
1 コンピュータだけの部屋にしない
そこらへんにあって道具になる
 情報収集の様々な方法 いなにし小学校 名古屋
 コンピュータに支援させて練習する
2 学習環境に埋め込む
 毎日の学習の中に埋め込む
 身体表現とパソコンプレゼンの合成
3 モデルを見せる
 「調べてまとめて伝えよう」
4 型からはいることもある
   型は乗り越えるためにある
5 学校のカリキュラムに位置づける
6 情報手段を活用する際の心配
    データを元に報告する体験
    同時に生活化をねらう

第4講 
新しい情報教育
 基礎としてのコンピュータ科学
慶應義塾大学環境情報学部
  大岩 元(はじめ)
専攻 認知工学、ソフトウェア工学


サマリー
IT技術者の育成を怠った日本人
情報リテラシーの3要素
 ・タイピング能力
 ・プログラミング能力
 ・発想法

日本のソフト技術者
ソフト技術者不足は量でなく質の問題 
情報工学科でもコンピュータ科学が教えられていない場合が多い
  技術者の質のために生産性が問題
   中国人は年収10分の一から30分の一、しかも優秀
   IT化;ホワイトカラーの人がいらなくなる
   評価のシステムができていない
     だから時間に対してお金を払う
     できる人は安月給、ちんたらやる人が高給取り
   
産学双方にコンピュータ科学の専門教育が必要
  達成されればひとが余る

情報処理学会の活動
  カリキュラムJ90を策定
 文部省は一般情報処理能力教育のカリキュラム作成を養成してきた。 
 検討結果は、かなりの部分が中等教育の内容であるが、やっていないので大学でやらざるを得ない
 
コンピュータは超有能
 パソコンのクロックが1GHz
  時間単位が10億分の1秒
  1億倍以上の情報処理の能力
 ジェット機の速度は歩く速度の250倍

こんなすごいものがこんな安くてに入る
 
ソフト技術者の問題
 いい加減な仕事でもコンピュータでやれば役に立つ
 役に立つソフトだからと金を払う人がいる。
 稼げるからプロだと思う技術者
 仕事を頼む人がしっかりする必要がある。

ソフトウェア開発の問題点
利用者の要求と違うものをつくる

教育も学びにいかざるを得ない。

学習におけるストックとフロー
 日本の経済学者はストックはあるがフローはない。
 日本の情報技術者はストックはないしフローもない。
 学校は、ストックを作ること。
  ストック:知識の体系
  フロー:取り込んだ情報

ブートストラッピング
 コンピュータニ最初のプログラムをどうやって書き込むか;
   
小さなブーターが次々と大きなプログラムを読み込んでい
ブーツストラッピング汎用概念

情報処理能力の部ブーター
 身体軸
  タッチタイピング
 論路軸
  プログラミング
 感性軸
   図解力(発想力)

タッチタイピングのコツ
毎日使う、単語単位で羽化価値の胃の後寺もに道に

論理軸のスキル
情報機器の本質を炉ら絵師ごとを行わせる


プログラミング能力 
  計算機はなにができるかできないかがわかる
プログラミング教育
  6歳の子供も教えればできる
 しかし、大学生に教えるのは困難

日本の教育における論理能力の育成
 
戸塚滝登氏のLOGO教育
 コンピュータに教わる教育からコンピュータに教える教育に
学習障害児が文章題が説けるようになる
子供たちは11年たっても正11角形の描き方を思い出せた
 
感性軸のスキル
 KJ法 カード操作による発想
  新たな発想が生まれてくる