情報教育対応教員全国セミナー参加報告
                                        文責・土 井     社楽へ

 
平成13年9月29日(土) 於 岐阜大学教育学部附属小中学校

 
 授業公開  帰りの会  その他の感想  赤堀先生講演  井上先生講演 

 家庭との連携  校務の情報化  岐阜大学附属HP

北海道から沖縄まで200名が参加した。この参加費\2,000は安い。井上副校長先生の本だけでも\1,500する。主催者である日本教育工学振興会の資料も多い。協賛企業のパンフも多くありがたい。

この学校はITに取り組んで4年目。附属であるが,入試は完全抽選。いわゆる学力試験はなく,エリート養成学校ではない。小学校は1学年3クラス120名。中学校では、1クラス抽選によりプラスされる。

始めに社会科を中心に授業を参観した。

《1 授業公開》
2年3組社会科「開国と不平等条約」 山口正浩教諭

本時のねらい
自学Web教材を活用し、自ら問題解決に取り組むことができたか。
自分の考えを論理的、多面的にまとめ、表現することができたか。
井伊直弼が不平等条約を結んだのは、武力を背景に開国を迫る欧米諸国との武力衝突を避けるためであることがわかる。

 授業開始共に,7つのグループ4〜5名ごとにパワーポイントを使って発表の練習が始まる。
 あくまで発表は一人、他はアドバイサー的な役目である。内容により分担されている。

 全体では、希望者による一人の発表で授業が進行していく。実際の発表中にも次々に手が上がり付け足しの意見が加えられる。質問も鋭く,他の生徒から答えが出る。
 教師は、「誰に対する答え?」と確認がしっかりしている。コントロールは見事である。答えの根拠も「資料集の何ページには」と根拠の明示も徹底してしている。
 発表の補強となる意見も多い。難しい質問にも誰かが答える。約30名中10名ぐらいが複数回意見を言った
 すぐ資料(用語集・資料集)をさがす習慣もついている。話し方も上手だ。
 思考力とは、よく書き、よく話すことだと実感する。 
 また,パワーポイントをごく自然に道具として使っている

 生徒のリードで授業が進んでいるので、個人的に好きな授業だが、意見を言わなかった20名近くの子が気になる。
 ただ,授業についていけないのではない。本当は前で発表したいのかも・・・・
 結局2人の発表で40分以上費やした。教育課程の進行も気になるところだ。

 歴史はこのようなスタイルでいいのではないかと思った。

《2 帰りの会》
 帰りの会の中で、持ち物等が係から発表されるとすぐにパソコン(キッズウェア)で記録する係がいる。他の生徒はほとんどメモをしない。家に帰ってからも,パソコンで持ち物の確認ができるのである。そこには,授業の内容や反省も記録している。当然,親も見ることができるので、学校の様子も分かりやすい。
部の連絡なども、連絡の所へアップしておくと、朝の会で係が伝えてくれるので合理的だ。もちろん自分で見ても良い。
 連絡帳を書く時間を節約できる分,合唱練習などに費やすことができる。

 その後、生徒の代表が一人で説明してくれた。1年生の女生徒だが、大人に囲まれながらも堂々と説明し、入力も早い。

《3 その他の感想》

 個人新聞コンクールの掲示が廊下にあった。質の高い新聞が飾られていた。
 女子が男子を「さん」付けで呼んでいる。新鮮な気がした。
 中3の英語の選択授業では、大スクリーンを前に、サッカーについて英語でプレゼンしていた。質問も英語だ。レベルは高い。 

 小学校でも、至る所に英語が見られる。パソコンも至る所にある。科学実験教室にも10台以上のデスクトップと10台ほどのノートがある。

《4 全体会》

基調講演 
「なぜインターネットと校内LANを活用するのか」
東京工業大学教育工学開発センター教授 赤堀侃司
(かんじ)

 シンガポール、香港から帰日したばかりだ。どちらもITがさかんだった。狭い国土の両国は,どの学校も,人材育成に取り組んでいる。そのキーワードは校内LANである。
 コンピュータ室では限界がある。週に1,2回しか使えない。普通教室で気軽にITを利用するのが本物だ。
 シンガポールでもトップグループの学校を見たが、発言もすごい。教室にはノートパソコンが数台、プロジェクターもどのクラスにもある。ここまでは共通の設備だ。

 香港では、知識をどうやって伝えていくかが中心だった。パソコンで教材を提示し、子供がワークシートで答えていく授業だ。いわゆるOHPのような教材提示装置的な使い方だ。いつでもどこでも誰でも気楽に使えると言う意味では進んでいるが,どうか。

 大学の講義もかつてはOHP、スライドなどを作っていた。大変な手間だ。今では、インターネットにつながっているノートパソコンを持っていけばよい。事前に学生にコンテンツを紹介し、読んでおくように指示をしておく。それだけ,授業への興味はずいぶん高まる。
 これからは、各部屋にぜひプロジェクターがほしい。

 シンガポールでは、ふつうのソフトウェアで教材を提示して、それを元に議論している。そこが香港とは違う。

2点目。レポートの提出も紙のレベルと掲示板の2種類でやらせてみた。紙だとどうも内容が似てくる。しかし,掲示板だと、他の学生の意見が読めるため、同じ内容が出てこない。これもおもしろい。

 ある学校では、自分たちで調べたことを掲示板に載せている。次の年には、その内容より優れたレポートが集まるそうだ。互いに先輩の内容が見えることが大切なのだ。相手の考えを見ることができる、情報の共有ができることは重要だ。
 
 授業でどう活用するかの2点目。
 それは,コミュニケーションである。
 これができれば成功だ。
 先日、衛星放送で講義をした。衛星でビデオを撮られてるとなかなか質問をしないものだ。そこで、携帯電話を持って、質問があったらいつでも北海道でも九州からでも電話で質問をしてくれといったが、かかってこない。ところがiモードでメールがきた。「クーラーが利きすぎだから切ってくれ」
 コミュニケーションとはこういうものだ。

 人と人との心理的距離感をどう縮めるかが研究課題だ。
 不登校生徒にパソコンを与え,Eメールカウンセリングの実験をした。結果的に全員が学校へ行けるようになった。アンケートを採ると、不登校生徒は人と話をすることがこわい。しかし,キーボードで字を書くのは一番簡単なのだ。キーボードを通してコミュニケーションできる環境を作ることが重要で,それがきっかけになるのだ。

 CMC(コンピュータが間に入ったコミュニケーション)と言う言葉がある。
 これからますます重要性が高まるだろう。
 将来は携帯電話も授業で大切な道具になろう。

 次に調べることでは,課題が最も重要だ。
 課題がなければ調べろと言っても何の意味もない。
 課題の設定も、教員がガイドする必要がある。

 
調べ方、ある小学校では、検索していた。「アカエイ」を入れたが出てこない。先生が「水族館」を入れてみようとアドバイスしたら調べることができた。インターネットいえども,ある程度知識がないと、調べることもできない。そこでアドバイスできるのが教員。知識の構造体が調べ方におけるポイントである。課題がどうあって、教員がどう調べかたをアドバイスできるかがポイントなのだ。

 ルールも必要である。
 調べると言っても、コピー&ペーストだけでは意味がない。

 社会工学研究所には, いろいろな学生が来る。授業ではバックグラウンドが違うから大変だ。かつては始めに調べ方を講義したが身に付かなかった。それよりも2年前から、課題を与え,出身が違うもの同士がグループを作って調べて、9月の初日に全員の前で発表するようにした。それが,よく調べてくるのである。

 結局わかったことは、質問すれば本当に自分で調べたかどうかがわかる。

 調べたら発表させる。質問させる。来れがたいせつだ。

 他の発表を他の学生が見ることによりさらに勉強になる。その発表をWebに載せる。

 ルールは時間。発表は,30秒オーバーでアウトである。これを徹底すると,他のルールも守るようになってくる。


 4番目は 協同学習だ。
 かつては一斉授業で,限られた時間で多くの情報を全員に伝えた。効率的だが、個々の能力が違うからうまくいかない。そこで個別学習・個性化教育が生まれた。そのためにコンピュータ学習も始まる。
 しかし,協同学習はネットワークを重んじる。
 たとえば,レポートの課題を先生に送る。それを掲示板にアップし,各自が観点を決めて評価する。一つのレポートに対して20人ぐらい評価する。学生は,よく見ているし厳しい。
以前は30秒ぐらいでインタビューして評価していたが、多くの人が見る方がはるかに客観的である。

 これからは,すべてが協力する時代だ。
学校と地域を結びながら協力することだ。もともと,アジアの民族は協同は得意だ。
 総合的な学習との連携では,課題が重要。当たり前のことを当たり前のように覚えただけではこれからの社会は生きていけない。課題を通して基礎にかえり,応用に至る。

 
講演「ITで学校が変わる」副校長 井上志朗

職員会議を1年間でペーパーレスに

 紙の提案は受け付けない。職員会の提案はパワーポイントのみ。要領よく1枚にまとめる。印刷はしない。報告・起案はメール。
 メールは1日40通来る。これを朝の打ち合わせで行うのは無理だ。
 情報は共有、一元化。一太郎は受け付けない、ワードのみ。情報が必要な人が必要な時に取りに行く。
 個人研究室も誰でも入ってもいい。古い資料は捨てる。展示室はチャットルームに変える。物置をビューテラスにする。よほど生徒のためになる。

良いとこ見つけをしよう。関口先生の教えだ。
  キッズウェアシステムを使う。
  どの先生でも良いところを記入する。それが蓄積されている。そのまま指導要録に写すことができる。書かれていない子には積極的に見つけにいく。これもコミュニケーションツールだ。
 学級日誌の授業反省でも、子どもが良いところをみつけるようになってきた。悪いところは主観的,良いところは客観的なのである。
 学級日誌は,プリントして教頭・校長・生徒指導の所へ見せに来る。これで,コミュニケーションが増えてきた。
   
 キッズウェアシステムの出席簿をプリントアウトしてファイルしたものが公簿になる。
 学級通信も生徒がいるうちには書かない。その後に15分ぐらいにWeb上であげると家で見てもらえる。

 学校はコミュニケーションをするところ。
 個別にパソコンを打つのは家でやればいい。
 学校でしかできないことをやる。
 Web教材 はそのためにある。
  
《分科会》
【ITを活用した学校と家庭の連携】
丹羽教務主任

基本的な構え
 連携をより深める
 リテラシーの向上

一番変わったのは生徒指導に対する考え方が変わった。
昔は、指導という名で生徒を見下ろす発想
その後は軸足は生徒、発想が変わる
生徒や保護者に軸足をおいた情報提供
 昨年9月から毎日アップしている。
 全家庭にパソコンを持たせようと思うのはダメ。
 パソコンがあればこんないいことも見れますよと,とにかく発信し続ける
 95%の接続率
 5%は生徒が自分でプリントして持って帰る
 
学級通信よりメールの方が速い、作るのにも10分もかからない
返事も来るようになった

「学校からのお知らせ」
PTA予定表、献立表、部活予定表、教師のメールアドレス、できるだけ紹介している。

行事の様子までその日のうちにアップ

学習のページ
 過去のテスト、解答例をアップしている
 
リテラシーのワンポイントレッスン
明くる日の時間割もインターネットで紹介。
学級日誌をプリントアウトして持ってくる これもコミュニケーションになる
  

PTA会長より
 昨年夏より保護者とインターネットとつないでやってみたい
 試験的にやってみよう
 もっと使いやすいようにアピールしたい
 
プライバシーの保護
 PTA会員しか見られないパスワードを知らせてある
 基本的に生徒の良い姿しかせない
   生徒の表情も良くなってきた。
  
苦情のメール対策は?
  メールは言葉よりきつめになる
    その場合は会って話すと、裏の事情もわかる
    不満をためるよりはるかにいい
PTAへの広報は?
  副校長が出向いて直接説明した。

ハッカーにより情報が漏れることはないか
 本当に漏れてはいけない成績などはネット上に載せない
 それを心配してIT化を進めないのはもっといけない
    
【校務の情報化】
 教頭 田中先生

4月初めの職員会は紙1枚だった。
2回目は紙なし。
提案前に掲示板に載せている。
会議で話し合うものは、全員で討議したいものだけ。
当たり前のことは議題にもならない
討議したいものは自分から求めていく。そうでないと確認事項になってしまう
提案者はパワーポイントで提示する。
同じ時間をかけるなら本当に審議したいことに費やすべき
  事前にMLで十分審議する
提案も添付メール  
 
生徒指導上でも
  事件をアップ、だれか知らない?
  次々にアップ、情報が届く。
  指導の様子をアップ。
  対応策をアップ。
他の人も事件の情報について知ることができる。  

朝の打ち合わせ 今日で今年に入ってまだ4回目だ。  
 
時間がどんどん生み出されて、コミュニケーションの時間がとれる

職員のパソコンは貸与されているものが多い。
出欠簿も担任の確認が大切。 

とにかく1枚にまとめるプレゼンを作る
 職員にも生徒にも徹底されている。

あくまで,フェイストゥーフェイスが基本

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質問者は茨城、石川、栃木、徳島、広島、大阪などばらばら
全国から集まっているすごい会だ。