平成14年度 岐南町立西小学校研究発表会       社楽第180回へ 

平成14年11月19日(火)
研究主題「学び方を身につけ、仲間とかかわりながら たくましく生きる子どもをめざして」

以下の記録は、土井が参加しながらモバイルで記録したものです。当然、言葉足らずのもの、誤解があるかもしれませんが、学校や授業者には全く責任はありません。ご了承ください

学校HP http://www.ktroad.ne.jp/~ginan-ws/ 

 学校HPにも「学校の3方面を21号線バイパス、JR東海、 名鉄本線を囲まれ、現代の交通の要所でもあり、モノ、人、情報の要の地でもあります。」とあるように、道路と線路に囲まれた学校だ。我が家から学校まで自動車で20数分。思ったより近い。
教育方針の基本に「あじさい教育」があり、いさつをする、かんをまもる、いごまでがんばる、つもなかよくするを校訓のようにとらえている。
また、平成8年度から平成10年度まで、文部省指定 体力つくり研究推進校として、研究主題「進んで運動に親しむ子どもの育成− 一人一人が仲間とともに生き生きと活動する姿をめざして−」をテーマに発表した。それは現在でも生きており、体力作りを楽しい学級の礎とし、いつも、子どもも教師もいっしょになって楽しく笑顔で運動場で遊んでる。
 今回の研究も、体育と総合を核とした発表だ。特色がはっきりとしている。
要覧を見ると、今日は「自主発表会」となっている。大学の協力校でもないのに自主発表会ができる学校はたいへんすばらしい。それだけでも価値がある。
 運動場は、緑がたいへん多く、落葉樹と数多くのベンチ、FBC参加の花壇、大きな藤棚とその下で学習できる環境はうらやましいほどだが、反面管理はたいへんだろう。
 今日は保護者の授業参観をかねている。PTAの人が多く、児童の表情も明るい。あいさつもよくできる。
 
【公開授業1時間目】
 6会場すべて女性だ。少人数はなく、あくまでも体育と生活・総合をメインにもってきている。ゲストティーチャーや養護教諭・栄養士とのTTはある。
 まず、6年1組の体育を見る。若い女性の先生だ。単元は「頭はね跳び」だ。
 「〜しましたね」に対して全員が「はい。」 話を聞くルールができている。先生も床に座って、子どもの目線にそろえている。「今日の課題」の説明で、「その時は?」「ぐっぱーん」タイミングを音でイメージさせている。そして、人形で形を示す。
 次にビデオで、昨年の模範演技を見る。「足がそろっている」など気づいたことを発表すると自然と拍手が起きる。話を聞く指導、共に学ぶ指導は学級づくりであることを実感させるような雰囲気だ。先生は、男子にも「○○さん」と呼ぶ。
 「ぱーんをみんなで言ってあげる」という声かけがポイントであると強調される。また、掲示の中に、「仲間の温かい言葉 励みになった言葉」が児童の書き込みによりまとめられている。
 壁には、各種目のレベルの表、ポイントが具体的に図で示されている。指導のレベルの高さが分かる。
 このあと、グループで相談。チャレンジカードに記入しながら発表。「私は課題は〜、○点をめざして、練習方法は〜、やる気は4点です」などと順番に全員が発表。時間は意外とかかっていない。グループごとに、ホワイトボードや人形などのグッズをもっている。その後練習に入った。難易度別に8つの練習台がおいてある。いつの間に準備をしたのか、素早い動きだ。
 さすがに体育指導では定評のある学校だ。ここまでの流れは見事である。全く無駄がない。

 ここで4年生の総合へ移動した。南舎はたいへん明るい。
 「だれにもやさしい町を−福祉について考える−」のポスターセッションの最中だった。黒板の前には、「調べる」「まとめる」「発表の仕方」が貼ってある。
 「話す力」はまあまあ。原稿を見ている子はいない。
となりでは3年生が総合「岐南町ってすてきだな」を学習している。2つに別れて、ゲストティーチャーの話を聞いている。この教室も習字には朱を入れていない。
 課題「岐南町の行事は、どんな思いや願いで行われているのだろう」で、町民運動会やふれあいまつりの担当者に来てもらい話を聞いているのだ。今の自分の仕事に関係が深く、こうした学習の大切さは実感できる。門脇厚司教授の話を思い出す。
 1年生は、何カ所かに別れて昔の遊びを地域の人から学んでいる。これはよくある実践だ。ただ、最後の振り返りをしっかりやるものと予想される。
 
 6年生の体育にもどる。班ごとに、人形を使って1人ずつの問題点を話し合っている。
 2年生は、となりの町民会館の2階で行っている。平均台の授業で、「いろいろな動物やものになってすいすい歩けるようになろう」が課題である。黒板には、「こんな声かけをしよう」として、「○○がいいよ、□□がすごいね、△△のところがそっくりだったよ」とかかれている。共に学ぶ姿勢が、低学年から徹底されていることが分かる。
 練習中はざわついていたが、教師が集めると静かに集合した。集中して話を聞くことができ、教師の語りかけもうまい。
 箱の中からカードを引いて、そこにかかれたものを平均台の上で演ずるという課題が出される。遊び心たっぷりの課題だ。学習カードを見ると、友達から「合格!」の声をもらった子がシールを貼れるようになっている。1人が終わると、「三角」「よかったよ」と評価している。

 ここで5年生の保健に移動。養教とのTTで、クイズから始まったことが分かる。ここも先生が若く、説明はなかなかうまい。模型とパソコンによる映像をうまく使っている。
 もう一度6年生にもどる。振り返りをしている。「だれの言葉が励みになった?」というと全員が挙手。次々に発表が行われ、励ましの言葉から、演技のコツへ結びつけている。
 このあとの片づけでは、テンポのよい音楽が流れ、全員で協力して片づけている。ほほえましい。あれだけのものを片づけ、モップで掃除するところまでわずか3分で終えてしまった。とても訓練された、しかも心が育っているよい集団である。指導のたまものだろう。
 今回は、この体育の授業を見ただけでも十分価値がある。これまではどうしても社会科に偏っていたが、やはり、その学校の特色が現れた授業を見るべきだ。
 ここで体育倉庫をのぞく。跳び箱のセットが14,ソフトのものが1つ、ロイター板はバネ付きが7、板のものが5,とても充実している。
 体育館の学習掲示も種目ごとにレベルとコツ、学習手順が示されている。

【公開授業2時間目】
 放課のうちから次のクラス(4年生)がきて、シュート練習を始める。練習方法が身に付いており、何をすべきかがみんな分かっている。ゴールは手作りで、4年生でも入りやすくできている。
 
 1年生の保健の授業から見る。人形「なおちゃん」が登場し、そのカバンの中からチョコやジュース、ビスケットなどが登場。黒板に貼っていく。児童は大喜び、のりのりだ。児童の興味の引きつけ方がたいへんうまい。話術もたいへん上手である。おやつは「たのしみ、げんきが出る」とまとめる。
 「いつ食べる?」児童はまちまちだ。黒板の掲示(冷蔵庫、戸棚)が興味をそそっている。
 ざわついてくると「おはなしきいて」といえば、「はい、どうぞ」と唱え、全員の姿勢がよくなる。大切な約束であり、学習習慣形成の裏技だ。

 ここで2年生へ移動。途中の絵は酒井式のものが多い。酒井式の威力はすごい。
 2年生はカーニバルの準備のために別れて作業をしていた。それぞれ集中している。作業のため、教師の動きは残念ながら分からない。
 5年生は「お米調査隊」パソコンでの調べ学習であるが、書籍資料の準備、ゲストティーチャーも招いてあり、多様な調査が可能になる。
 6年生はあじさいの部屋で、中国について調べたことを発表していた。あじさいの部屋は、木をふんだんに使い、格子戸も渋い。児童の発表力はまあまあで、原稿を見ないでがんばっていた。聞く側の指導に工夫がほしいところだ。
  
 再び1年生に戻る。ジュースと同程度の砂糖水を飲んだ後、いかに甘いかをスティックシュガーで表した。ドーナッツやケーキが6本・・・。児童が家に帰って食べたいものカードで調べると、多い子はスティック46本分のお菓子を選んでいる。この後で、子どもが1日に食べて良い量は「4本」と発表されると弱いどよめきが起こる。ここの提示は、もっとドラマチックでも良かった。
 砂糖をとりすぎるといけないことは?「太る」「虫歯になる」中には「糖尿病になる」という子もいる。
ここで天才博士の姿をした栄養士が登場。遊び心がたっぷりだ。その他に「つかれやすい」「ほねがよわくなる」「イライラする」の説明がある。
 
【全校運動】準備込で30分間 
 縄跳びと一輪車の活動が始まる。クラスごとか?良い悪いではなく、このあたりが特別活動と体育のどちらを重視するかの違いだろう。
 仲良しアワーの活動計画という掲示板があり、活動場所や活動計画が貼ってあり、児童会活動として別の動きもあることが分かる。
 集団縄跳びの回数に挑戦しているクラスを見ると、今のやり方はこうなのかと驚く。自分もかなり挑戦したが100回は難しい。この方法(姿勢を低くして片足ずつまたぐ)だと確かに体力の消耗が少ない。
 さすがに一輪車はうまい。先生も上手に乗っている。連続縄跳びも早い。
 体育倉庫の中のものを含めると、一輪車は100台ほど、竹馬は60組ほどあった。ナイター照明は6基。高さ2mのスプリンクラーは初めて見た。
 時間が来た。やりっ放しではなく、クラスごとに集まり、児童、あるいは教師が前に立ち振り返りをしている。楽しければよいのではなく、あくまでも意図的であることが分かる。
 
【アトラクション】
 6年生66名によるマーチングの発表があった。フラッグ10本、Tp23本、Hn4本、AHn4本、Tb7本、Eu4本、Tu2本、スーザホーン1本、Per9人、指揮者1人という編成だ。
 クラブならよくあるが、学年全員という金管バンドは珍しい。総合的な学習での取り組みだそうだ。6年生は国際理解とブラスバンドという内容である。それに、コンピュータや英会話が組み込まれている。ブラスの指導にも養護教諭の先生が活躍していた。パソコンと音楽に強いらしい。
 総合でバンドというのは、指導者の確保が大変であろう。それを思うと見事であった。

【全体会】
校長あいさつ
(要旨)今日は保護者や地域にも公開した。テーマはたくましい心と体。中教審の答申「子どもの体力向上のための総合的な方策について」が出されたが、本校では新教育課程について、体育と総合で研究を進める。子どもたちに自らの良さについて気づいてほしい。
☆☆ 宮本校長は品の良い女性校長だ。 明瞭で、過不足のない簡潔なあいさつであった。

来賓あいさつ
町長
(要旨)今日はいきいきとした子どもたちの姿を見ることができてうれしい。岐阜県域教育長会議で、それぞれが地域の特色にあった教育を総合などを中心にすすめていることを確認した。西小では、花壇やあじさい教育、マーチングなどで成果をあげている。やればできる。
☆☆ 前を見ての堂々としたあいさつであった。

羽島郡四町教育長
(要旨)新学習指導要領初年度としての課題がある。地域に合わせてどう教育課程を組むか。生きる力をどうとらえて、手を加え、評価するか。地域にどう理解してもらうか。
 西小については、子どもたちが明るく元気、先生と心が通い合い、先生は明るくメリハリがある。表情も明るく、動きがいい。などの評価をいただいている。
 今後はさらに、生きる力、たとえばお年寄りと握手した時に、その手を握った感触から、このお年寄りがどのような生き方をしてきたのかに思いを寄せるような子にしてほしい。
☆☆ 「羽島郡四町教育長」という名称に驚いた。4町で一人の教育長なのか、詳しいことは分からないが、そういった発想もあるのかと思った。

研究発表  略

指導講評
岐阜教育振興事務所  川治秀輝課長補佐
 宝物いっぱいの成果を見せてもらった。
体育について。心身の健康は笑顔にある。できた喜びを笑顔から感じることができた。児童と共に保護者の笑顔もすばらしい。なぜか?それは、教師の情熱だ。西小は、伝統校であるが、授業改善が行われている。授業改善は、まず先生からだ。今日は、自分の授業を高めていこうとする視点があった。
 ポイント1は、高まりのある授業−できる喜びを味わうと言うことだ。
 平均台では遊びながら、多様な動きづくりをさせている。砂糖のとりすぎはいけないので、ジュースをお茶にするという子が増えた。
 2番目は、学び方が身に付く授業である。課題解決の学習が定着している。
 手をついて一拍おく感じになると答えた児童は、追究する姿勢の表れ。また、3分での片づけも運動量が豊富になる。仲間へのアドバイスから仲間と共に学ぶ姿も感じた。VTRや人形、図などを駆使していた。
 3番目は、感動のある授業である。
 運動の特性にふれる感動−見事なシュートができる感動は、手作りのゴールのおかげである。
 みんなの体の血液は牛乳パック16個分で、これだけなくなると命が危ないと具体的に示し、止血の重要性を理解させた。知的な感動である。
 課題は、さらなる専門性だ。運動の能力向上の過程を見極める目を磨きたい。一人ひとりの課題を見極め、できない子を高めていく指導をお願いしたい。

 社本勝義指導主事(生活と総合)
 1年生の終末で、できたことを発表していた。「これだけできるようになったよ」そうしたらGTが「この子の姿を見てやってください」「ここができるようになったんだよ」今日は、遊びを通して人とのかかわりを身につけさせたいという願いが実現していた。まさに地域と一体となっていた。
 ポイント1は付けたい力を意識していることだ。
 「子どもが見える→指導が変わる→子どもが変わる」という。
 掲示の中に「プログラムを作るために7回も」「ボランティアを120人も」こうしたところに目をつける先生の姿が子どもを変えていく。
 2番目は、生活や総合の入り口が曖昧でない。
 「はじめに子どもありき」「はじめにねらいありき」が問題になるが、どちらもいいところがある。インターネットで調べた子がGTに聞き、またインターネットで調べ直していた。これは課題がはっきりしていたからだ。
 3番目は、生活や総合の出口が曖昧でないことだ。
 「友達やGTのささえがあったからだよ」「いろいろな人がたすけてくれたからだよ」など、振り返りがあった。 
 課題は、付けたい力を学校として、発達段階に合わせてより明確にすると良い。「たくましさ」は低学年と高学年は違う。

《全体の感想》
 体育の伝統校らしく、保健体育はすばらしい授業であった。指導法、評価、共に学ぶシステム等よく研究されており、たいへん勉強になった。
 生活や総合も水準以上だと思う。
 注目すべきは総合的な学習の教育課程の組み方である。これまで取り組んできたFBCや特別活動の領域になるブラスバンドを総合に組み込んでいる。
 ゆとりの時間の削減で、そういった活動を放棄するのか悩まれたことだと思うが、総合の中に組み込むことで残していくのは、学校の特色の維持を考えると現実的な判断だろう。
 むしろ、FBCやブラスといった活動の中に、いかに課題を見つけ、解決していくかという内容を考えた方が良いのであろう。