韓国事情(国政制度)   国内TOPへ
立命館大学国際関係学部
教授 文 京洙(ムン ギョンヌ)先生

韓国との交流に当たって念頭に置かなければならないことが2つある。
1 被植民地時代の問題・・・教育で植え付けられている
2 分断の問題・・・誰にも染みついている

戦後韓国の歩みと政治体制
1 分断の経緯 
 日本の植民地支配 → 戦後処理問題 朝鮮半島をどうするか? 
 1943年カイロ宣言:米英中(蒋介石) 「適切な手続きを経て独立」
 適切な手続きについて米ソで話し合い・・・信託統治 
  8月8日に参戦したソ連が38度線で分割占領(一時的であった) 
 ※ 日本の降伏がもっと早ければ米、遅ければソ連が占領していた。  
 1945年12月信託統治の内容が確定
   朝鮮に民主主義的な独立臨時政府。ただし、5年間は米英中ソが後見する。
 46年3月
   米ソが信託統治の内容を相談 決裂
 47年
   東西の対立が深刻、朝鮮半島でも冷戦の対応を強める。
   アメリカは朝鮮の対応を国連に持ち込む。→国連の監視下での統一選挙を提案 
    →南朝鮮に国連を派遣、しかし北では国連入国拒否。金日成が動く
 48年5月
    南朝鮮のみで単独選挙。制憲憲法制定  大統領制と内閣責任制の折衷
   8月
    大韓民国成立
   9月
    北朝鮮成立
 50年6月
   朝鮮戦争:北朝鮮の進撃により始まる。北が攻め込む。米が押し返す。中が38度まで押し戻す。ソ連の仲介で停戦。現在も停戦中。  
   300万人が死亡。これにより分断意識が草の根式に民衆に定着する。反共意識が徹底。韓国の風土を決定。
   
このいびつな体制をどう克服するかが両国の課題。

 李承晩 外国から独立運動を指揮。徹底した反日、反共
  1948年〜60年
    地主勢力 韓国民主党 と合同で政権を握る
  52年
    第1次改憲。大統領直選制へ    
  54年
    大統領権限の強化
  60年
    4・19学生革命  李 退陣   
    第3次改憲 大統領形式的に  1回目ソウルの春
  61年
    朴 正煕 政権 (軍政)
    第5次改憲              
     大統領直選
     対北との関係では自由の制限(国家保安法)
     他では意外と民主的でもあった。
  72年
    第7次改憲 維新改憲
     大統領に権限集中
     国会も大統領が牛耳る
     朴政権の間に工業化・都市化が進む
  79年10月
     プサン、マサンで民主化運動(金 泳三)
     朴 KCIA(韓国情報部)長官により銃殺
     2回目のソウルの春
     軍の中でクーデター
  80年5月
     光州事件 (金大中の基盤)
       反政府デモを軍が鎮圧 200数十人が死亡
       金大中が死刑判決
     第8次改憲 全斗かん 
       大統領の権力集中 経済発展
       学生運動が反米に変わる:アメリカが韓国軍の指揮権を持っている。光州事件もアメリカが承認した形になる。
       左翼的な潮流も復活する。
       それまでの反政府運動は、話し合い中心。これ以後は、過激になる。
  87年
     直選制をめぐって運動がおこる。
     高度経済成長の間に育った中産階級が大きな政治勢力になる。
    6月
     全 政権の退陣
     第9次改憲(第6共和国)
       5年担任の大統領制 
     廬 泰愚政権(全 の仲間) 88年〜92年 
       なぜまた後継者?金同士が分裂したため。地域対立を反映。
       廬 が漁夫の利を得る。
       地域主義をどう克服するかがかぎ。
       地域間格差が顕在化
  金 泳三 93年〜97年 
      3党合同  金大中包囲網
      20年ぶりの文民政権
      合同から 金ジョンピル派が分裂 →新韓国党に改名 → ハンナラ党に改名(第1党・野党)
      国民新党が分裂 イ・インジェ 
      3党合同が野合だったため、97年選挙で金大中が当選。
   
  金 大中 98年〜2002年
      平和民主党→民主党→国民会議 と自民連が連合  わずかの差で当選
      現在は、ハンナラ党から民国党が分裂
      2000年選挙
        落薦落選運動  市民運動が政治の近代化に貢献  
        金大中(民主党)過半数とれず。自民連から大臣を出す。         
           内閣責任制へ改憲の動き。もし実現すると初めてのまともな改憲。         
            
第9次改憲:現在の骨格を形成 87年以降

  立法府   行政府    司法府
   国会     大統領府   法院   憲法裁判所
            国務会議
  
 ※ 行政府の権限が強い。二重の構造。国情院も大統領に属する。国家安全保障会議も大統領府。内閣の上にある。
   国務会議の長が国務総理。総理も大統領が任命。国務総理の下に省庁がある。

    立法府は一院制。小選挙区比例代表制。

    法院も日本と似ている。違いは憲法裁判所があること。87年の改憲でできる。

政党
 民政党  廬
 新民主共和党   金 ジョンピル  朴 の側近。忠清道
 統一民主党  金 泳三  プサン  
 平和民主党  金 大中  光州  

韓国の社会経済
 日本以上の経済成長(1960年代後半〜 朴政権)
 政府が経済建設をリード。アメリカの援助から、自立経済へ
 輸出主導型、外資依存(借款中心)、
   外国企業の直接投資ではないので自立的
 日韓国交条約 1963年
    アメリカの圧力(ベトナム戦争の影響)
    ベトナムへ韓国兵派兵
    日本は5億ドル借款、計10億ドル以上借款している。
 ベトナム戦争時 40億ドル以上の外資導入  特需
        20 アメリカ 10 ヨーロッパ 10 日本
      財閥へ配分、低賃金労働者を使い、安い製品を作り、輸出する。
      そのために労働三権を押さえる。
    10%以上の経済成長を実現
    NIESと呼ばれる。70年代。77年がピーク(輸出100億ドル)
 過剰・重複投資、輸入が増える、対米貿易黒字、対日貿易赤字
 79年 第2次石油ショック 矛盾が爆発
   ほとんど破綻。マイナス成長。光州事件など
 
全政権 構造改革、一定の成果
   85年 プラザ合意 円が200数十円から130円ほどになる。ウォン安、円高。輸出有利へ。
   ウォン安、金利安、原油安 により、急速な成長に戻る。
   貿易黒字を実現。
   88年頃、 150億ドルの貿易黒字を実現
   先進国的な経済基盤
   87年民主化以降 労働運動が台頭。賃金が上昇。→ 国際競争力が落ち込む → アメリカ
の圧力 → 再び経済が低迷へ
   これまでの輸出中心から内需に力を注ぐ(90年代)
   民間投資、建設投資
 
 96年 OECDに加盟できるほどの経済大国へ。翌年から金融危機。その中で金大中政権が樹立


韓国の経済構造が変化
 産業別就業者人口の変化
   第1次産業 63年 63% → 97年 11%
 財閥支配
   
   米の自給は70年代に達成。
   WTOの圧力にさらされている。  
   農業は専業のみ
     工業投資を一部の都市に限定したため(拠点開発計画)

韓国の国土総合開発計画
  72年    第1次 
  〜2001年 第3次
     ソウルを中心に開発 
     南東(プサン、ウルサン、等)
       ウルサン 60年代 人口8万人 現在100万人以上(現代工業の本拠地)
     この2カ所で全体の8割の投資額

都市化・・・日本に似てきている
 人口の都市集中
   首都圏で45%
 農村人口の減少:10%
     
 伝統的なものを残しながらも、個人主義的な近代的な文化が育ちつつある。
 急激な変化した社会に特有な世代間格差がある。
 386世代  30代後半から40代はじめの年代が韓国の中枢に育ちつつある。
   80年代に大学生:民主化を達成
   60年代生まれ:高度経済成長と共に成長
   政治的な感覚も新しい。JSAのような映画を作ることができる。
   猛烈な受験戦争を勝ち抜いてきた。
   IT社会もリードしている。
   落選運動にもかかわる。

最近の経済状態
  金 泳三政権の末期より大不況。財閥中心の経済が制度疲労。
  5大財閥:現代、ラッキー金星、三星、サムソン、ラッキーゴールド
    同族企業、閉鎖的、国際化に対応できない、
  株価、為替の暴落、対外債務も払えない、IMF時代(管理下に) 
  財務改革、経営の統合化、
  労働市場の整備  
    労働 使用者 政府 の3つの委員会。(リストラ)
  どん底の時期を脱したが、まだ危うい。


韓国の地方制度と地方分権

1 韓国の地方自治の沿革  
    広域:道・ソウル市
        邑・・・町や村
1987年憲法 地方自治を憲法に明記
  88年    地方自治体法
  91年    地方自治を再開
  95年    団体長を含めた統一地方選挙

2 韓国地方自治制度の特徴と課題  
 地方行政・自治行政の階層単位
  広域自治体  特別市、広域市、道
  基礎自治体  郡、市、区

租税収入
   中央8 地方2
         交付金でカバー