歴史教科書問題と最近の日韓交流    戻る

1 日本の歴史教科書をめぐる主な経過
  2001.4.3 文部科学省が教科書検定結果を公表
  2001.5.8 韓国政府が日本の歴史教科書に関し35ヶ所の修正を要求
  2001.7.9 日本政府が修正要求に対する検討結果を韓国政府に通報
  2001.7.12 韓国政府が日本大衆文化の追加開放中断を発表
  2001.7.13 韓国政府が日韓大学生及び教師の交流事業中止を発表
  2001.7.18 韓国国会が歴史教科書歪曲是正要求を決議
  2001.8.15 教科書採択終了

 <扶桑社教科書採択結果>
・ 公立学校… 5校、 23冊
・ 私立学校… 6校、498冊
( 計  11校、521冊 ) 採択率;0.04%

2 日韓交流延期・中止の動き
 2001年6月までは日韓自治体交流事業に対する直接の影響は見られなかったものの、
7月は日本の歴史教科書をめぐり揺れ動いた1ヶ月となった。
  まず、2001年7月12日以後、韓国政府が、日本大衆文化の追加開放中断、韓日大学
 生・教員の交流と政府レベルにおける教育代表団の相互訪問の取り消しなどの対抗措置
 を発表した。2001年7月18日には韓国国会が歴史教科書歪曲是正要求を決議した。
  同じ時期、こうした動きに呼応するかのように、自治体や学校の交流事業についても
 韓国側からの延期・中止の申し入れが急増した。韓国国内の情勢に配慮し、「このような
 雰囲気のなかでの交流事業の実施は適当でない。」として、やむを得ず延期・中止すると
 したケースが目立った。また、この時期はちょうど夏休みを利用した青少年交流・スポ 
 ーツ交流が数多く予定されていたため、各地における交流延期・中止の動きが大々的に
 報道されることとなった。
  2001年8月2日の韓国内の報道によると2001年に予定されていた韓日地方自治体間
 の交流767件のうち、19%にあたる148件が延期・中止され、青少年・教員の交
 流も30%が保留・中止となった。
(詳細は、参考1参照)


3 交流継続・再開への動き
(1)こうした一方で、政府の対応とは別に日韓交流を進めようという動きもみられた。
  韓国3大紙の一つ中央日報は、2001年7月9日付「国家対国家としての韓国と日本 
 の両国間の信頼関係は崩壊した。」としながらも、2001.07.13には「両国の関係が悪化し
 たとしても、民間レベルでの交流は続くべきではないだろうか。こうした時こそ、両国
 国民が顔を合わせ話し合う機会をたくさん持つことが望ましい。それこそが相互理解を
 深め、今回のような不幸な事態の再燃を防ぐ土台になると思われるからだ。民間レベル 
 での韓日交流はすでに断ち切ろうとしても断ち切れない段階に至っているだけでなく、 
 ワールドカップの成功のためにも重要だ。」 との社説を掲載した。
  
(2)大統領の談話
  7月20日金大中大統領は「感情的な対応や不必要な分野で(韓日)両国の関係を悪化
 させることは望ましくない」と述べている。

(3)8月2日 第14回「日本歴史教科書歪曲対策班」会議結果
                 (対日人的交流関連の抜粋)…詳細は参考2参照
・ 政府は、日本の歴史教科書歪曲問題にかかわらず、現在韓日間で進行中である青少年交流、教員交流、地方自治団体交流等一般的な人的交流は継続して推進しなければならないという立場である。
・ このような時期であるからこそむしろ韓日両国民間の人的交流をより活性化することが望ましい。
・ 日本の国民の方々や我が国の国民の皆様方に誤解が生じないように希望する。
・ 国内の一部の自治体や学校、団体においては、日本との交流の中断が相次いでいるが、これは当該団体や機関の自主的な判断によるものであり、政府とは無関係である。

(4)韓日文化交流会議
  日本の歴史教科書歪曲問題などで、日韓関係が急速に冷めてきているなかで、韓日
 文化交流協議会が、「2002年W杯を控えて、韓国政府は大乗的次元で文化交流を全面的
 に再開しなければならない」との声明を発表した。(8月29日)


4 最近の日韓交流事業
  2001.9.3 「第10回日韓内政関係者セミナー」
       日本の総務省事務次官、韓国行政自治部次官を中心にした地方行政関係者 
       によるセミナーをソウル及び地方都市において実施した。

9.3 「日中韓3カ国地方政府交流シンポジウム
        日中韓3カ国の公務員・議員等が参加し、東京において実施した。

    9.5 「第10回日韓海峡沿岸県市道知事会議」
       韓国南部の広域自治団体長と九州北部の県知事・市長が下関市に集まり開
       催された。

   10.12 「全州世界ソリ祝祭」
       全羅北道全州市において、世界各地の伝統・民族音楽祭が開催される予定。
       日本の地方自治体も参加予定。

   10.12 「日韓地域づくりリーダー事業」
       日本で地域づくりリーダーとして活躍している住民が韓国を訪問し意見交
       換会、交流会等を行う予定。

10.13 「地方公務員韓国派遣研修事業」
 日本の公務員が韓国を訪問し、行政研修を行う予定。

10.16 「日韓消防関係者会議」
 日本の消防庁関係者が韓国を訪問し、韓国の消防関係者と意見交換を行う 
 予定。


 (市町村の日韓交流事業)
○ 新潟県上越市;日韓フレンドシップコンサート(9月、韓国での演奏会は、延期して                       
        実施する予定)
○ 福井県松岡町;まつおか越の国伝説第10章(10月、予定通り実施する)
○ 山口県美弥市;交流10周年記念 日韓文化交流事業(8月、実施済)
○ 福岡県古賀市;福岡県・古賀市・韓国交流事業(11月、予定通り実施する)
○ 佐賀県三田川町;三田川吉野ヶ里日韓交流文化事業(11月、予定通り実施する)
○ 長崎県美津島町;「日韓交流」2000年代を語る(8月、実施済)
○ 鹿児島県和泊町;日・中・韓文化交流の夕べ(11月、予定通り実施する)

                    <所長手持ち資料>

(4)韓日文化交流会議
  日本の歴史教科書歪曲問題などで、日韓関係が急速に冷めてきているなかで、韓日
 文化交流協議会が、「2002年W杯を控えて、韓国政府は大乗的次元で文化交流を全面的
 に再開しなければならない」との声明を発表した。(8月29日)
  また、この声明で、「右翼教科書問題と小泉総理の靖国神社参拝問題は、日本の中央
 政治権力とその周辺右翼勢力が、危機意識をもったことから演出し遂行したものだが、
 それでも我々はただしい韓日関係のために、今、いかなる決断を下すべきなのか慎重
 に検討しなければならない」と述べた。
   協議会は、「韓国政府は、一層冷静で懸命な外交的接近をしなければならない」、「韓 
  日両国の文化交流は早期に、全面的に再開されなければならない」と韓国政府に建議
  した。1998年韓日両国首脳の合意で発表された「21 世紀へ向けた新たな韓日パート
  ナーシップ共同宣言」に基づき、両国間の文化交流のために1999年スタートした会議
  機構で、韓日両国政府の推薦を受けた各々11名ずつの知識人で構成されている。