平成14年度 愛知県社会教育委員連絡協議会 総会        第171回社楽へ
 
記念講演 「これからの日本政治」
中日新聞(東京新聞)政治部長 菅沼堅吾氏
文責 土 井
※ 部分的に土井が補足した箇所もあります。この講演要旨の文責は土井にあり,菅沼氏に責任はありません。
 文中敬称略
 
政治部に属して14年目になる。
中日新聞の政治面は,東京で作成して名古屋に送っている。最近は政治家にもきびしいように,政治報道に対しても厳しくなっている。一昔前と状況は違ってきた。
 
昔は密室政治だった。ドンの一言で政治が変わった。
海部首相のあとは,金丸・竹下・小沢の間では渡辺に決まっていて推薦文までできていた。
しかし,奥田敬和が金丸に「好みで選んでいると国民に言われる」というと,「わかった」と宮沢に決まった。
小渕の後は例の5人組の密室会談で決まった。こう言ったことを「一寸先は闇という」
 
一方,今は劇場型政治といわれる。小泉首相は,政治のプロでは理解できないやり方で,党の根回しの前に国民の前で言ってしまう。
 
よく「小泉さんは元気ですか?」と聞かれるが,元気である。ただ,最近答弁で言葉につまる場面が多い。小泉首相自身は専門分野がせまく,本当は苦戦している。
土日には,競馬やサッカーに積極的に出かけている。学者の中には,1日は休養,1日は不況の世の中に出て自分の目で見てほしいという人がいる。
 
「政府首脳発言」という表現があるが,多くはオフレコ発言である。信頼関係を維持するため,我々は守っていきたい。政治を動かしているのは官房長官だので,オフレコでしたか見えないものもある。あの報道以来,中止になってしまった。
政府筋とは「官房副長官」,首相側近とは「飯島秘書官」,政府首脳が「幹事長」,政策は「麻生政調会長」だと思っていただければいい。
 
ここから本題である。
T これからの日本政治を予想するポイント
1 政治家の原点をチェックする
 小泉首相は1972年初当選以来,(1)郵政民営化,(2)首相公選制,(3)反田中・竹
下を一貫してあげてきた。お母さんの葬儀で横須賀に行ったが,自衛隊や米軍基地の環境の中で育ってきたことがわかった。福田赳夫の書生だったが福田赳夫はタカ派である。
 どちらかというと,竹下派は金,宮沢派は政策通,福田派はタカ派だ。
 また,大蔵族である。財政の正常化が信念。そのため国債発行高などにはこだわる。
(1)郵政民営化
  官から民へ,すなわち「競争,自由,効率,中央から地方へ」の考え方は一貫している。 「新保守主義」といわれる。構造改革,特に市町村合併,それによる税金以外の権限委譲は進むだろう。
(2)首相公選制
  大統領型トップダウンのやり方にあこがれがある。根回しで積み上げる竹下のやり方を脱したいと考えている。
(3)反田中・竹下
自民党をこわしたい。郵政・道路公団の民営化は,竹下派の票・金づるをこわしたいという思いもあり,民営化を図っている。
 
2 人間関係のラインを読む
 日本を動かしているのは5,6人というのはやむを得ない。かつては,小泉−森−青木の3人がキャッチボールをしながら決めていた。
 今は小泉−古賀ラインが強い。古賀は,遺族会で道路族の古いタイプだ。言ったことは守るし言われたことを人には言わない。小泉首相は田中真紀子の更迭も古賀に相談している。
小泉は「やっりたいことがはっきりある」タイプで,古賀は「やりたいことははっきりしないが調整力がある」タイプだ。今後は古賀の発言が要チェックだ。
 
3 内閣支持率をチェック
 劇場型政治にとって,内閣支持率の持つ意味は昔より大きい。
 今は40%台で歴代の内閣では高い方だ。
 ポイントは2つで,1つは51%。国民の支持が過半数あれば,よほどのことができる。
もう一つは30%。党の支持率より高いと選挙に有利なので自民党の議員の支持が得られる。
また,支持の理由が大切で,「他に適当な人がいないから」は,ちょっとしたことで大きくくずれる可能性がある。
 
U 新しい潮流
1 利益誘導型の政治の終わり
 新潟では,現市長が選挙に5連敗している。公共施設の建設が争点になっていた。この結果は利益誘導型政治の終わりを意味する。
 
2 左右のバランスの崩れ
 数々の疑惑により,田中,加藤,鈴木,辻本が力をなくし,野中の発言力も低下している。北朝鮮の訪問に熱心で,親中国といわれた人ばかりだ。軍事的役割の拡大に反対していた人が力をなくし,右側がアップした。右傾化だ。
 
3 世代間ギャップ
 自民党の安全保障の中枢といわれる人は,憲法を理屈で解釈しようとする人たちだ。
 中谷 元 44歳,石破 茂 45歳,安倍 晋三 47歳,
戦争を知らない世代が,安全保障の中枢を占めてきた。梶山静六は「自分が生きている間は,絶対に海外派兵はさせない。理屈ではない。」戦争体験から言わせた言葉だ。
  自民党の当選4回以上と3回以下では感覚が違う。
 当選4回以上:大臣が近いので,自民党をこわさない
 当選3回以下:そうでもない,変わってもいい
  民主党も同様。
当選4回以上は政界再編に疲れた。
若手からは政策別選挙をやってほしいという意見も出ている。
 
V ポスト小泉
 リーダーが変わると,次のリーダー争いが始まる。
1 自民党がどうなるか? 
 結論から言うと「ポスト小泉は小泉」
 最大派閥の橋本派には候補者はいない。あえて言えば鈴木宗男だった。
 これまでの基準「当選10回以上」を、古賀は「当選7回まで引き下げよう」といっている。7回には「古賀 誠、高村 正彦、平沼 赳夫、麻生 太郎」の仲良しがいるが、パワーに欠ける。
 ある人は、小泉は信長、秀吉が福田 康夫、家康が加藤紘一だといっていたが、福田と加藤が力をなくした。明智光秀の田中真紀子は本能寺の前にやっつけてしまった。こうなると、信長に少しでも長くやってもらわないと困る。
 
2 石原新党
 都市部の議員は不安に思っている。石原に頼りたい。
 石原新党に都市部の保守票、自民党に田舎の保守票を集め、連立したらと言っている人もいる。
 
3 民主党 
 今年の秋には代表選挙がある。支持率は8〜9%だが、菅、鳩山の続投・再登板では伸びない。人材不足だ。
 当選3回以下グループは、岡田 克也(三重県3区)、北川三重県知事を担ごうという動きもある。
 次回はサポーター制(1,000円の参加費で1票)でどうなるか楽しみだ。新進党時代は小沢−羽田の選挙でも同じようなことをしたが、実態は企業にぶつけた。今度はそうならない。
 
 小泉内閣の終わりは、小泉首相が「民主党のまだ見ぬリーダー」と言ったことがある。育成できるかが課題だ。ブレア首相は10年かかった。
 総理の誘惑は、1 政策で歴史に名を残す、2 解散して信を問う の2つあるが、小泉首相は1をとろうとしている。今年は続くだろう。
 最近、有事法制など急ぐ必要のないことを急ぎすぎ。それより「構造改革」「経済政策」をしっかりやってほしい。
 政治の意志決定の見直しが必要だ。この10年間、新しいものを出していない。
 最後は総選挙だ。どんなに遅くても、再来年の参議院との同日選挙は避けられない。
 新聞は、次期総選挙に向けて、有権者が選択できるように、ていねいに報道していきたい。
 
 政治は「一寸先は闇」と言ったが、「一寸先は光」となるような報道をしたい。政治に可能性を感じながら政治ウオッチングをしてほしい。