(2) 職業能力の向上のために(生涯現役社会の到来)
産業構造の高度化や新たな産業の創出、職務の多様化など産業構造や労働環境の変化が進展しているなかで、生涯にわたって自らの職業能力を高め、新しい知識を習得するとともに新しい技術等に対応する必要が生まれてきています。
これまでは、勤労者の職業能力開発については、終身雇用制を前提として伝統的に企業内教育等の制度が発達し、仕事を通じての教育訓練(OJT)のなかで行われてきました。しかし、今日では、終身雇用制が崩れ労働市場の流動化が進行しつつあるなか、自らの職業能力を向上させ転職等を契機として自らのキャリアアップを図り、中途採用市場においてより自分の能力・適性にふさわしい職場を求める気運が高まっている一方、長引く不況の中で職を失う人も増加しています。また、企業等においてもすべての職業訓練を自前で行うのではなく、仕事を一時的に離れての研修、海外留学や大学等へ派遣するリカレント教育(学習)を通じて勤労者の職業能力を高め、人的資源の充実に努めつつあります。
さらに、高齢社会を迎えて65歳定年への延長も視野に入れながら、高齢者の雇用と職業能力開発について個人的にも社会的にも真剣な取り組みを図り、勤労者の能力や希望を最大限に発揮するための「学び」が必要になってきています。平均寿命が伸び健康や体力の面で就業可能な年齢が高くなってきた今日、「元気なうちは働きたい」という高齢者の意向を可能な限り尊重できる年齢による就業の制限のない「生涯現役社会」を実現するには、生涯にわたる職業能力開発の機会を設け、自らが望む時期に望む内容を学んだり身につけたりすることができる「生涯学習社会」の形成が求められています。
※1キャリアアップ;留学などをして経歴を高めたり、資格や能力を高め、高度な専門職や管理職を目指すこと。
※2リカレント教育(学習);循環教育。一度社会に出たものが、学校に戻ることができるように組織された教育システム。