(3) 生活水準の向上と自由時間の増大

 生涯学習の考え方の基となった「生涯教育」の考え方が1965(昭和40)年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の成人教育会議において初めて示されてから30年以上が経過しました。その間に日本は国民のたゆまない努力と勤勉さをもって空前の経済成長を遂げ、世界でも有数の経済状況となりました。近年の経済不況の中で見失われがちですが、日本は様々な商品やサービスが溢れる「ものの豊かな社会」であり、世界的視野に立ってみた場合、その生活水準が依然高いことは否定できません。また、週休二日制の定着や労働時間短縮の潮流により勤労者においても自由裁量時間が増大してきました。こうした社会の成熟化により、日常生活に経済的余裕あるいは精神的余裕が生じて、「ものの豊かさ」よりも「心の豊かさ」を求めて何かを「学んだり、活動したり」する人が増えてきています。

 人生80年とした場合、その人が一生の間に持つ生活時間は約70万時間(24時間×365日×80年)ですが、そのうち食事や睡眠時間といった生理的に必要とされる時間が約35万時間(12時間×365日×80年)、労働時間が約7万6千時間(年間1900時間×40年)とすると残りの自由時間は約27万時間となります。これは約30年分の時間であり、こうした時間をいかに過ごすかがその人の人生をよりよいものにするための課題であるといえるでしょう。この自由時間を使って、自分らしさや生きがいを求めて学んだり活動したりする「自己実現」を図ろうとする人々が増えてきたことにより、生涯学習が盛んに行われるようになってきています。


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