(4) 長寿社会の到来のために
生活水準の向上や医療技術の進歩によって平均寿命が延び、日本は世界の最長寿国になりました。人が長生きできるようになることはすばらしいことであり、多くの人が「元気で長生きできること」を望んでいることからも、長寿社会が到来しつつあることは積極的に評価すべきことであると思われます。
しかし、日本では高齢化とともに子どもの数が少なくなる「少子化」が進行しつつあり、将来の産業の担い手である生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の割合が減少し、生産・消費の両面における経済規模の縮小や、医療・介護面での負担増加が懸念されています。職業生活から離れた高齢者は自分の時間を自由に使いながら、生きがいや心の豊かさを求めて生涯学習に取り組んで来ました。高齢者が元気で活躍する場を持つことは、本人の生きがいにもつながるだけではなく、社会全体にとっても有益であり、結果的に今後、激増することが予想される社会保障費の伸びを抑えることにつながることでしょう。国立教育会館社会教育研修所の「高齢者の学習・社会参加活動の国際比較」(平成10年度)によると、高齢者の学習活動と健康との間には関係があり、学習活動をしている高齢者の方が何も行っていない人よりも健康状態が「良い」と答えています。
また、(社)国民健康保険中央会の「市町村における医療費の背景要因に関する報告書」でも老人医療費を低くする要因として「活発な保健活動と生きがいを持つ高齢者の生活」が挙げられており、特に「公民館などの社会教育活動も活発」であることが活発な保健活動の基盤になっていると指摘されています。今後、高齢者が生き生きとした人生を送ることができるように高齢者の現状をふまえ、それぞれの学習活動を支援することが一層求められると思われます。