岐阜市立長良東小学校第11回研究発表会               社楽第179回へ
平成14年11月1日
 研究主題「自ら求めみがき合って高まる学習の創造」
  共通視点 「かかわる力」「表現する力」の育成を通して   文責 土井
 
以下の記録は、土井が参加しながらモバイルで記録したものです。当然、言葉足らずのもの、誤解があるかもしれませんが、学校や授業者には全く責任はありません。ご了承ください。
 金華山の北にある長良東小学校は、岐阜大学附属教育学部の協力校で、着実な教育実践で有名な学校である。一度は見てみたいと思っていた学校の1つである。

第1時
参観できなかったが、生活・総合だった。開始時間が異なり、総合は9:00〜、生活科は9:30〜の30分間である。これだけでも興味深い。
 
第2時 4年生算数    授業者  渡辺 出先生、園部貴弘先生
 4年生算数を参観した。少人数指導だが、前半は一斉である。
 課題提示「432枚の色紙を18人に分けます。何人に分けられ、何枚余るでしょう。」
 児童は、次々に自分の考えを座ったまま表明し、しばらくすると静かになり手を挙げはじめる。そこで教師が指名する。指名された児童は、前でマグネットの表示を使いながら順序立てて説明。これまでの指導(わり算の手順)が生きている。
 すぐに他の生徒が反応する。どの子も用語を使って説明している。前時の学習内容が教室側面に掲示してあり、それを使って説明する子もいる。
 
 マグネット表示は次のものが作ってある。
「自分の考えを作るために」;式で、お金で、図で、筆算で、数直線で、〜を使って、 テープ図で、表やグラフで
「順序よく、分かりやすく」;まず、次に、そして、だから、なぜなら
 
 教師が式を提示するとまずそれぞれ取り組み、しばらくすると席を立つ児童があらわれる。立った子同士が歩み寄り自分の考えを説明している。このあたりは見事である。
 1/3ぐらいの子が立って説明をすると、教師が「見通しが立った子は移動しよう」と声をかけ22人が移動し、別室で授業が始まる。そこでも、座席は通常通り前向きだ。22人は事前に決まっていたのかどうかはわからなかった。
 
 別室は、どうやら発展コースだ。ここでも考えを順序立てて説明できる。一人の意見が終わるとすぐに質問・付け足しの声が出て、正解に対してもやり方で反対意見が出る。
 ここで教師がまとめ
「商が2けたになるときも割る数を概数にして商の見当をたてて考えていけばよい。」
 この後、振り返り
「〜がわかってよかったです」「〜がよくわからなかったので家で勉強します」など、メタ認知に近い感想が述べられる。このあたりも参考になる。
 その後3題の発展問題が出され、3人が前のホワイトボードで取り組む。教師は、「振り返り」であまりわからないと言った子に個別指導している。
 
 答えをボードで確認した後、チャレンジ問題に移る。基礎のコースとはここが違うだけだ。基礎コースは、練習問題を数多く説いている。
 「4桁割る2桁」など児童が予想する、8960÷35 に対して「おもしろそう」の声。何ともにくい。
 やり方の順序が口に出てくる子もいる。解き終わると相談を始める子が数人。答えでなく、やり方(概数のたてかた)について相談しているからすごい。学び方が身に付いている。
 解いた子が説明を始める。「〜ですね」「はい!」あくまでも、教師にではなく、みんなに説明している姿が徹底している。
 この後、教師が次はどうなるのかな?と予想させ終える。ノーチャイムである。
 
 日直が前に出て、一人を指名。
「今日は3桁割る2桁が少し難しかったけれど、できてよかったです」と振り返る。
 
全体会(11:20〜)
校長挨拶
創立29年目。研究テーマは創立以来変わらない。学力向上フロンティアスクールとして国・算・理で少人数を行っている。
 
研究発表
テーマは生きる力
H12より共通視点をもとに、個人研究を行っている。
「かかわる力」教材や仲間や教師、自分に積極的に働きかける
「表現する力」自分で整理し自分なりに表現し、対象に働きかける
 生きる力は「かかわる力」と「表現する力」が必要
 
 課題を持つ場、高まる場、自己評価の場に絞って研究
 
課題を持つ場
願いや見通し
○ 事象や活動等に興味、関心、願いを持つ
○ 事象に対しての矛盾、疑問、発見を持つ  
○ 学習の見通しを持つ
 
交流によって高まる場
事実認識、試行錯誤
○ 課題解決に向けて、観察、実験、調査する
○ 願いをもとに活動、追究、運動する。
○ 事実、考え、感じ方を比べる
 
自己評価する場
関係把握、活用、鑑賞
○ 新たな疑問を持ち追究しようとする
○ 決まり、知識、技能を日常に生かす
○ 学習を生かし、豊かに表現する
 
【ここまでの土井の感想】
 1クラス見ただけだが、想像以上の子供たちだった。目が真剣。よく考えている。よく言葉を出す。相談する。反応が早い。
 わり算の筆算の授業だったが、わり算の筆算の手順が良く理解されている。一見機械的なようでもあるが、よく考えた上でのことがわかる。正解に対してでも概数のたて方で異論が出るのは、たとえば塾でやり方だけ教わったのとは違う。たいしたものだ。
 
パネルディスカッション(11:35〜12:25)
テーマ「一人一人の子供に確かな学力が身に付く少人数指導のあり方」
講師 岐阜大学教育学部教授
 岩田 慶司 先生
少人数指導のねらい
基礎・基本の確かな定着を図り、個に応じて確かな学力を身につける
 
国語 4・5年生
算数 3・4・5年生
理科 ?年生
 
少人数教育の構え
1 基礎・基本の明確化
2 学習団の編成
3 指導方法の工夫
4 自己評価能力を伸ばし自己選択を大切にする
5 適切な評価
 
国語:言語能力の育成が基礎基本
適切な表現、正しい理解
学習集団は柔軟に
文学は均質集団(幅広い読みとりを生かす)
説明は習熟度別(知識や語彙力の差が小さいため)
活動は子供の希望を生かす
3クラスを5クラスに編成
補充コース:モデルを示す
基本コース:選択制
発展コース:枠だけを与えて自分で決定する
 
途中で分かれるのは不可能なので、事前にアンケートをする。その内容で分けている。
子供が自分で自分を振り返って選択。
 
理科:科学的な見方考え方が基礎基本
習熟度別で工夫
習熟度は既習内容の定着、見通しを持つ場面で差が付く。見通しの立たない子には既習内容を振り返る提示を工夫。見通しを持った子には対象を広げたり、他の方法で調べたりする。見通しをもてたかもてなかったかを自己評価し、自己選択する。選んだコースが実体にあっているかが課題。
見通しをノートに書き、確かかどうか確認することにしている。こうして、自己評価能力を鍛えている。
 
算数:
ねらいに応じた学習集団
習熟度別が有効
最初に一斉、課題化の後に自分の判断で分かれる。最初から均質の場合もTTの場合にもある。
差が付くのは補充と発展問題。個に応じた教材開発が課題。基本は自己判断。考えるスピードだけで分けるのは疑問。
 
Q 教師の打ち合わせ時間がない、生活班と別なので深められないが?
A 打ち合わせは難しい。5人がねらいを共通理解しなくてはいけない。国語主任が指導計画を提示し、発展的な内容を考え、みんなで分担する。
学習集団が変わるので名前がわからない、力がわからない。そこで、子供と教材が深くかかわるような教材づくりをしている。
 
Q 本当に確かな学力が身に付いたか
理A 明確な評価基準が必要。正確に捉えることは難しい。
 主体的な姿で取り組む姿を見ると学力が付いていることがわかる。
算A 補充クラスの方が満足している。わかる喜びを感じている。
 自分にあった問題を解くことで満足している。自分のペースで取り組むことも大事。
国A 評価規準に基づいて毎時間評価。しかし、観点が多く、量的な評価が難しい。全体の中では発言できない子も、補充クラスでは発言できるようになる。
 
アンケートは80%以上の子がよいと認めている。
しかし、時間の不足、分け方、など課題も多い。
 
岩田恵司先生アドバイス。
今なぜ少人数か。
指導内容の削減。基礎学力低下の危惧。マスコミでは偏った報道。
時間数と内容の削減は、学力低下につながるか?
 時間の不足は補充の時間を減らしたからつながるだろう。
 
基礎的・基本的内容は活用して初めて基礎的・基本的内容になる。
少人数は人格の育成が主で、学力だけを目指すものではない。
少人数学級ではなく、少人数指導。
追究意欲がなくなればだめ。
長良東では、学力だけをねらった少人数ではない。
課題が終わったら次の課題を持たせるような終わり方をする。
 
学習内容を想起させることは安易ではいけない。系統性、効率性が大切。
 
わすれさせない努力が大切。意味のある活動をし、評価をすることで、活動・言葉・論理が重なってはじめて力になる。
 
つめこめるものは詰め込めばいい。価値のあることはやるんだと言う信念。
 
子供同士が選んだコースなら、習熟度でもかまわない。いっそうの教材研究が必要。
 
【土井の感想】
 これまで、少人数の分け方で習熟度別というのに疑問を持っていた。進度の差が開くばかりでそろう場所がない、優越感や劣等感を刷り込むことにならないかがその理由である。
 しかし、今日のパネラーの話を聞いていると、その思いは若干緩和された。やはり、分け方にも明確なねらいが必要で、授業内容はほとんど同じで、スキルの部分で繰り返し行うか、発展問題に挑戦するかぐらいの違いでよい。発展問題は、評定の対象にはしないのが順当か?
 これは、指導要領の内容をクリアできたときに評定を3段階の3と見るか2と見るかで大きく異なる。ここは十分に議論が必要であろう。
 講師の先生の話は今一よくわからなかった。
 しかし、次の点では参考になった。
・ 基礎・基本は、発展があってこその基礎・基本である。
・ 少人数の目的は学力だけでなく、人間形成もあること。
 
第3時
 4年生の国語、5年生算数、6年生の理科の少人数授業、その他校内の掲示物等を参観した。
 どのクラスも共に学ぶ姿勢が徹底している。相談している姿は、人間関係の良さを感じる。一年生からの積み重ね、しかも全職員がその価値を共通理解していることがわかる。
 掲示物もしっかりしている。デジカメ・カラープリンターを使いこなしており、行事の報告はカラフルで、臨場感がある。特別活動の掲示も参考になる。
 習字作品に朱が入っていない。よく見ると、紙が張ってあり、そこに3つの評価規準について自己評価がしてある。さらに振り返り感想。教師の一言である。これだ!
 これは、図工の作品でも同様だ。すべてにこの発想は生きる。
 
【全体の感想】
  少人数の勉強に来たが、まだ理解したとはいえない。しかし、少しイメージがわいた。今日の算数のパターンは理解しやすい。はじめは一斉→自己判断でコースに分かれそこで学習。
 自己判断は、日頃から自己評価で鍛えてある。進度の差が大きく開くことなく、それぞれに満足感を与える。
 国語の「文学教材は均質集団、説明文は習熟度別」も一理ある。
 掲示物の工夫もすばらしい。
 ただ、美しい掲示物が多すぎる気がした。これは、教師の労力を心配してのことである。児童の手作りの掲示物でも十分だと思うし、それが好きだ。