研修6日目 3月1日(木)                             社楽の会へ

 危機管理2日目  講義「平常時の危機管理」
      パームコンサルティング代表
                          伊原 正俊


論語の戒めから
 
危機はどこにでもあり、絶対になくならない

・大間のマグロ なくなったので違うマグロを出したのでばれた。
裁判所の執行官が勤務中にダンスの練習、手当が少ないから捜査をしない警察官
・卒論をみてやるといってセクハラ
・4年前と同じ問題を出した大学
・出張中に観光をした校長
・HPに事故犠牲児童の写真を掲載
・不二家 不正工場ぐるみ。マニュアル無視常態可
・教育委員会 遺書があったのにいじめを否定。1年間隠蔽。
・「遺書と書いてないので遺書でない。いじめと書いていないのでいじめでない」
 
危機管理を管理と考えるから失敗する。普段の仕事や生活の中にある。
やるべきことをきちっとやることが危機管理の第一歩。
 
人は起こしたことで非難されるのではなく、起こしたことに対する対応に非難される。
平常時の危機管理ができずして、緊急時の危機管理ができるわけがない。
 
では、どうするか?
 
課題1 ダメージコントロール
課題2 クライシス・コミュニケーション
具体的業務
・対策本部の設置
・情報の収集と分析
・対応策の立案、指示
・クライシス・コミュニケーション活動の展開
・マスコミ対応の準備と実施
・緊急時記者会見の準備、実施
・ボジションペーパーの作成
・ステートメントとQ&Aの作成
※ 緊急時の最大のターゲットはマスコミ(報道機関)だ
※ マスコミは「社会の公器」記事やニュースは世論を形成する。

緊急(異常事態)発生時、教職員としての「5つの心得」
@ リスクを招いた職員をその場で叱るな!
 ・事実を話さなくなり、判断ミスを招く
 ・大切なのは、事実の掌握と原因の究明
 ・叱ることと処分は後でもできる。

A 不祥事を誤った判断で組織ぐるみにするな。
 ・マスコミは上司が絡むと組織ぐるみと見て管理責任を追及する。
 ・不祥事は必ず表面化する。泣いてばしょくを斬る覚悟が求められる。
 ・マイナス情報は時間が経つほどダメージを大きくする。
※ 記者は「組織ぐるみ、隠蔽」が大好き。
 
B 悪い情報は、即上司に報告させよ。
・緊急事態発生時に5W1Hのすべてを求めようとしてはならない。
・情報の遅れは、対応の遅れ、後手後手の対応になる
・危機管理はスピードが鍵
・2時間ルールや30分ルールを制度化している民間企業もある
※ ネッスル日本 苦情電話→すぐに最寄の営業に連絡→すぐに苦情者の家へ行く 2時間ルール
 
C 当局に第一報せよ
 警察・消防署、保健所、教育委員会、文科省など
・ 当局へは、速報、誠意、全面協力を三大原則として臨め
・ どこから第一報が入ったか。 心象に影響
※ 発表は関係当局が行う。
 
D クライシス・コミュニケーションが鍵だ
・ 迅速な意志決定と行動
・ 社会の目、市民の立場に立った判断
・ 情報開示の姿勢
 
不測の事態発生時のクライシス・コミュニケーションの重要性を認識せよ
1 この適・不適がその後の信頼感を左右する
 緊急時にいかに広報するか
 
2 クライシスコミュニケーションの3つのキーワード
 ・迅速な意思決定と冷静な行動
 ・社会的視点からの判断
 ・疑惑を生まない徹底した情報開示

 
緊急事態発生時、初期対応の基本要件
1 初期対応で過ちを犯さない
 →客観的判断とスピーディな対応が必須

2 最悪の事態を想定した対策・シナリオ
→最悪のシナリオを想定できるかが、初期対応の鍵だ
※ 参天製薬;脅迫状がきて製品回収、3億円の損害。それでも最悪の事態を想定した。タイガーのーる事件

3 早期収束が再優先、最重要課題である
→学校の論理の主張は得策ならず
※ 一佐が友人を射撃練習場に招待して銃を撃たせた。隠したことが重大記事になった。

4 誤った組織人意識に陥らない
→知られたら大変だ!トップは最後の切り札だは、最悪の結末へと導く
※ 小出し処分は逆効果。

5 事件・事故・災害などの緊急事態には2正面作戦で臨め!
→ 1 起こった事象に対する対応
 2 マスコミ対応
 
記者の視点
起こった事象は初めてなのか? 過去にもあったのでは? 他校では?
記者の推測・憶測等の確認→構造的、組織的、隠蔽
→ 取材の結果が、記事・ニュースとなって社会に公表され、世論を形成
 
クライシス・コミュニケーションの最大の対象はマスコミである
1 一人の記者、カメラマンの背後には数千万人の眼があること。社会の代表との認識を持つこと。
→ 記者は記者になりたくて記者になった。

マスコミは、早く、均一に、安く伝えてくれると考える。
 
※ 美浜原発事故;13年前の事故のときは10cmを超える資料を配付。記者が絶賛。
4人死亡のときは二点三点。
 
マスコミ別・セクション別に見た記者の特性
経済部
 トップに会いたがり数字がなければ記事が書けない。
 数字の背景と理由を聞きたがる。
 自分の見解をレクチャーしたがる。
 
 
社会部;
 読者の顔を思い浮かべて記事を書く。
 取材に来るときは70%以上の情報持っている。ストーリーはできている。確認に来るだけ。
 面談より、電談が多い。
 予見を持って取材に来る。質問に遠慮がない。
 経済部、政治部の記者に反発している。
※ 記者は性悪説、社会の不正を暴くという意識が高い。
 
雑誌記者;
  テーマとストーリーが決まってから取材に来る
テレビ
 シナリオ、台本がある。映像が第一で内容が第二、取材が1時間、オンエアは15秒から30秒

 
そこで
クライシス・コミュニケーションからみた、3つの情報特性

1 先に接した情報ほどインパクトを持つ
→先手必勝
※ ダムのオオタカの話し。
※ 原発事故、どんな小さな情報も情報

 
2 暴かれた情報は公表された情報よりインパクトを持つ→弁解に聞こえる

 
3 情報不足が誤解、批判、不信感を生む→迅速性、同時性、均一性 
告発型報道か客観的報道になるかの岐路
取材型報道はワンウェイ型報道→告発型報道・報道の長期化
発表型報道はツーウェイ型報道→客観型報道・短期間で収束
 
事件・事故・災害発生時の危機管理広報のあり方
1 マスコミ対応上、生じ易い現場での8つの混乱、トラブル
@ 事実確認できない中での電話取材の殺到
A 現場に記者やカメラマンが先着している
B 現場での取材をめぐる混乱
C 求められる資料、情報が整わないための混乱
D だれが話すか決まっていない
E 記者会見の時間をめぐる混乱
F 会見場の狭さから生じる混乱
G 記者会見の打ち切り時間をめぐる混乱
             
@ 現場にローピンぐし「立ち入り禁止区域」を示す
A 記者会見の予定時間と場所を直ちにマスコミに告知する
B 大事故・災害の場合は、「定時」「定期」に記者会見を開催する。
C 会見室と控え室はより広い場所と2本の動線を確保する。
   ※ 終わった後ほっとしたときにミスを起こす。
D 説明はちせつでも、必ず、図面を用意して説明する
E 情報は現時点では、現段階ではの限定条件でも公表する
F 公表済みの情報は、記者会見室、控え室に張り紙で掲示する。
G 市民の目と心でとらえ対応する

 
「不祥事」発生時のマスコミ対応の必須心得
1 電話取材には即答しない
  質問を確認し、こちらから折り返し回答(面談・電話・FAX)する
2 事実と違うことを絶対に言うな。くるしまぎれのウソ、その場しのぎのウソ、結果的なウソはだめ。
3 校内の不祥事を、組織ぐるみの不祥事に拡大させるな
4 法的立場からの見解、主張は極力控えること
5 不祥事の記者発表は、暴かれる前に迅速に行うこと
6 ポジションペーパーを用意し、取材に応じること
 
緊急時のマスコミ対応の巧拙がダメージを左右する
1 マスコミから「アカウンタビリティ」を求められる時代に!
責任ある立場からの事後説明責任
切り札はポジションペーパー
事前にステートメントと、想定問答集を作成し備える。
 
2 トップや管理職がマスコミ対応で失敗する理由
社会部記者との接触度、経験が極めて少ない
記者はプロ、管理職はアマ
記者は権力に無関係だから、手心を加えない。
 
3 緊急記者会見のもつ意義を認識すべし
アカウンタビリティを果たす場
何回も開かなければならない記者会見は社会的信用失墜を招く。
記者会見は早期収束の切り札
 
模擬・緊急記者会見やメディアトレーニングの重要性
 
記者会見を失敗させない心得
 記者の反応を念頭に置く
 記者は社会の代弁者
 簡潔に結論をまず話す。その後、理由や背景を補足説明する
 理由や背景の説明は、「それには3つ理由があります」と前置きをする。
 記者会見は法廷ではないので謝るべきことは素直に謝れ
 テレビの影響力を軽視しない
 ※ 記者は瞬時に責任回避の姿勢を見抜く。
 
ポジションペーパーとは
4列で
ことの経緯や事実関係
相手の主張、見解
対するこちら側の対応
こちらの方針、スタンス
を時系列で箇条書きで整理する
 
統一情報、統一見解の提示が目的
マスコミの一方的な情報提供に対抗できる。情報のバランスをとる。
あらゆる対象に配布する
 
記者会見 伝えるべき5つのメッセージ
@ 謝罪表明ー何はともあれ、お詫びをする姿勢を示すこと
A 現状説明ー不安定な憶測、疑惑などの発生を防止するために必要なすべての情報を開示すること
B 原因究明ー「なぜ発生したのか」直ちに原因究明に「取り組んでいる」「調査に着手した」などの意思を表明すること
C 責任表明ー発生した問題に対して、管理責任を表明すること
D 再発防止策(改善策)-「○○検査室を新設した」「○○調査委員会を発足させることにした」など、再発防止策を具体的な制度、組織で示すこと

笑わない、ありがとうも不要、最後は謝罪
※ 千葉県の下着泥
発表が二転三転

このあと、実際に模擬緊急記者会見を行った。
事前に、事件の概要を元に、
ステートメントとQ&A、会見シナリオを準備。
前夜にQ&Aのリハーサルを行い、事実関係を共通理解した。

当日は、記者側、学校側に分かれ、20数分ず交互に体験した。

13:00〜14:15
全体会・模擬記者会見
2つの班が代表で記者会見を行う。



 
14:35〜16;45
講評・質疑応答
Q 情報ガイドラインはどこか
A 市民の目で判断する。それぞれの立場でぎりぎりの判断が求められる。
 仮定のことには答えない。
 「情報を入手しておりません。」

Q 瑞浪でいじめの問題があった。被害者の人権をどうするか。
A ガイドラインはそれぞれで決める。
思われる内容は、「確かな情報を把握していない」という。
パチンコ屋の件は学校の名前は出すべきだた。

Q 司会の役割
A テキストp9

Q D教諭はいた方がよいのか。
A 原則、トップ一人でよい。「責任者として私がお答えします。」

Q 記者会見の2回目は?
A 殺人のケースは、最初に警察がやっている。
2回目のケースは、病院もやるだろう。
ここまでやれば、記者会見の回数は減らせる。
新しい情報が入れば、二度目もありうる。

Q 学校が記者会見を開くかどうかの判断
A のちほど

Q 多くの記者がいる場合、司会が整理する。そのさじ加減は。
A 質問が出る限りはやめるべきではない。ヤジは無視する。答える側はたんたんと。ヤジはテクニックで、わざと怒らせ、本音を出させるためのもの。
模擬記者会見でもつらい。本番はもっとつらい。いろんなテクニックを使う。
引っ掛け質問も多い。その場合は「仮定の質問には答えられません」でよい。

Q マスコミをどこまで入れるか
A 学校が決めればよい。ローピング。警察等と相談する。
校門の前で記者の質問を受けるときもある。
危機管理には正解はない。正解の方向性はある。

 
・こんな会見は開かない方がよい。
だからこその危機管理。とてつもない心理的圧迫がある。記者会見以外では会わないのも正しいスタンス。
一番大切なのは、謝罪の仕方。自分の誤りを悟り、それを認めること。
直面したくない真実
  ↓
これが問題の核心だ。
  ↓
まず降伏する。
そして誠実になる。
それが社会的な謝罪につながる

自分と他人に対して正直に真実を伝えなければならない。
その真実をベースに誠意を持って素早い対応をする。

あなたにとって人生は、あなたの生き方そのものである。

 
ブラジル人の交通事故
 謝罪の一方「これは事故」 
富山大 入試ミス隠す
 隠さなければ小さな記事。隠したために一面記事。
何が起きたのか、どう対応するのか、なぜ起きたのか、だれの責任なのか、どう再発を防止するのか
メディアを通して理解・認知獲得

記者会見の三カ条
@ 早期収束の切り札
A できれば要求する前に記者会見
B 「幕引き」であり「幕開け」にしてはならない
 
YTTの理論
これまでは
今は
今後は

記者会見の目的と効用
@ 学校側から社会に伝えたいメッセージ
A 学校側の意思と判断に基づいて
B 同一時点で
C 同一情報を
D 同値う人物の口から
E 公式の場で
F 全メディアを通じて社会に説明、伝達すること
記者会見の手順と準備
1 日時を決定する
2 場所を決定する
3 話し手を決定
4 ボジションペーパーを作成
5 Q&Aを作成
6 ステートメントの作成
7 リハーサルを行う
8 対象メディアリストの作成
9 案内状の作成
10 会場の設営
11 会見の2時間前に案内状をFAXする
12 1時間前に記者受付をする
 
必ずポジションペーパー
1 年月日時分
2 起こった出来事、相手側の主張
3 我々の対応、発言
4 資料名、保存場所、委員会名準備
 
「その件に関しては現在調査中であり、現在お答えできません」
 
記者会見開催するか否かの判断基準
@ あいついだマスコミからの取材
A 通常業務に支障が出る
B 誤報・混乱が見受けられる
C スクープ記事を防ぐ
D 社会的関心が高い
E 死者が出ている
F 被害が大きい
G 隠蔽した事実が発覚した
H 当事者のマスコミからの保護
I 学校の内外をマスコミ取材から保護
J 関係当局より会見開催の指示を受けた

 
トラブルを避ける「ノウハウ」はこれだ
@ 会場の広さを確認する
A 出入り口の位置関係。二つの導線を確保
B スポークスマンの席を確認する。
発表者は後ろ側の壁との間を空けない。机上には人数分のマイク。
C スポークスマン席と記者席の間隔はできるだけ空ける
D 記者席の最後部にYVカメラ用のスペースに導く。
音響卓から音声入力用のコードをTVカメラ用のスペースに導き、ターミナルを出席予定テレビ局分以上用意する。
E 電源の位置と容量を確認する。
F ホワイトボードを準備
G 映像危機等を確認する。
H 空調機器の能力と設定温度を確認。熱すぎるのは厳禁。
I 教室スタイルなら、足元が隠せるように
※ 低いところで行う。 
※ スキがあると「だから事故・事件を起こすんだよ」ととられる。
 
緊急記者会見でのスポークスパーソンの「心得7カ条」
@ 定時に入室し着席する。早めに着席してはならない。
A 逃げの姿勢、姑息な言い逃れをしない、
B ステートメントは持たない
C 話す時は通常よりゆっくり、語尾をはっきり
D 挑発質問にも力まず、淡々と語ること
E 潔さこそすべて。まな板の上の鯉の心境に立つこと
F 終了時間になったら直ちに退室すること
 
司会の役割
・ いつものお父さんに立って
・ メモ取り役
・ 質問の趣旨を確認
・ 質問をさえぎらない
・ 終了、閉会を決める
・ ありがとうを言わないで、終了、閉会を宣言する
 
その他
・ 関連するスローガン等ははずす 
・ 話は簡潔に短く
・ 記者の無知や誤解からの質問には一般論でやんわりと訂正する
・ 生きた自分の言葉で語る
・ 話せる情報と話せない情報をはっきりさせておく
・中途半端な説明をしない
・引っ掛け質問に乗せられない
・オフレコの話はしない
・ウソやあいまい、ノーコメントはしない
「後日お答えさせていただきます」
・他校やライバルの批判は冗談でも言わない。
・取材終了後も気を引き締めて
・記者の学歴などに触れてはならない
 
悪いときには悪いことが起こる。
 
トヨタ
失敗こそ新たな出発