研修7日目 3月2日(金)                             社楽の会へ
筑波研修5日目
9:15−17:00

学校組織マネジメント
     産業能率大学 (http://www.sanno.ac.jp/) 経営管理研究所主任研究員 
浅野良一先生
 
教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−平成12年12月22日に出され、
  http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/houkoku/1222report.html 

 そこに、「学校や教育委員会に組織マネジメントの発想を取り入れる」と、初めて組織マネジメントという考え方が出された。民間の動かし方を、学校用に工夫しようというものである。
 今回の発展コースとして、実践により近い学習をしたい。
 組織マネジメントとは、「環境の変化に合わせて、自らを変える技術」である。
 
第1章 学校マネジメントの着眼点 
 まず、自治体はどう変わろうとしているか。事業としては、執行中心から政策形成中心、行政主導の街づくりからNPOなどとの協働、計画通りの執行から成果志向で数値が要求される。
 組織としては、ピラミッド型からフラット型、年功序列から能力主義・実力主義。ある県の学校における環境変化への対応の方向性を見ると、今後はプロフェッショナル人材
を挙げている。
 プロフェッショナルとは、専門性、自律性:専門性を組織の中で活用する、成果を出す
の3つの要素があり、
  ・学校経営のプロ
  ・教科領域のプロ
  ・教育行政のプロ→片道切符 がいる。
 これまでの過度なフラットから、適度なフラット組織をめざしている。そこで、主任の実働化、主幹等新しい役職の発想が生まれた。
 
 組織体を変えるポイント
 教育活動を変えるためには、そのベースにある組織運営面を変える
1 戦略ビジョン
 @ 学校教育目標
 A 使命(ミッション・存在意義)
     建学の精神
     ・使命が組織をつくる
     ・地域に対する使命
 B 重点目標(3〜5)
     ・経営資源が豊富
     ・選択と集中 一点突破
             全面展開
    重点:戦略的意志決定
 C 特色
 
2 組織の構造に手を打つ
 @ タテ(主任)
 A ヨコ(分掌、委員会)
    フラット、マトリクス(格子状)
           分掌・学年・教科
 学校組織の長所
  創造的問題解決
   ・情報の共有化 
   ・前向きな議論
 伸びる人が伸びる
  ※ 企業 レンガ型(役割固定)
    学校 石垣型 (ロールテイク獲得)
 学校組織の短所
  多忙(感)
   仕事=作業  多忙感
   仕事が作業と感じない  多忙感はない
  短期志向 ビジョンと仕事が結びつかない
 
 B 企画機能;企画会議
 C 主軸
 
3 運営の仕組みに手を打つ
 @ 情報共有化
 A コミュニケーションのあり方
 B 意思決定のあり方
 C 仕事の進め方
 
4 教職員の意識・行動・能力
 
5 管理職行動
 
6 外との関係
 
この中で変えやすいものは
  1,2,3,5,6、
変えにくいのは4
  6の力、外との連携で教師の動きが変わる 外の風をうまく取り込む
 
どれも正解はない すべて特殊解
 
第2章 学校内の状況把握と分析
1 学校をシステムとしてとらえる
・ 学校の成果向上と教職員満足度の向上を統合するメカニズム
 
・人の協働システム 7つの要素
 1 管理構想
 2 リーダーの行動
 3 しくみづくり
 4 キーパーソン
 5 メンバーの効力感
 6 集団の活性度
 7 集団の革新度
 
OJD活性度診断簡易版
 診断モデル
  キーパーソン
 正当性(仕事を明確に周知する)
 準拠性(人柄のよさ)
 専門性
 情報性(校長・教頭とのコミュニケーション量)
 
診断
1 全体傾向
   1から3 マネジメントのパワー
   4 キーパーソン
   5から7 メンバー
2 リーダーシップのスタイル
 @ ビジョンによるリーダーシップ
    どの場合にも有効
 A コミュニケーションによるリーダーシップ 小規模校に有効
 B 環境整備によるリーダーシップ
    大規模校に有効
3 キーパーソン
   順機能  4・10・11が高い
   逆機能 4・11が高く、10が低い
4 個人と集団
   5が6よい多いとギスギスした職場
    外資系に多い
  6が5より高いと同好会的職場
  6が高いときは、5と1が高いとよい  
5 変化対応
   7,12,13
 
これは解決のための診断
 問題の発見
 問題の共有化ができてスタートライン
 診断はあくまでも道具
  ※ まきまさみ学校診断カードもある。
 
第5章−2 教職員の育成
ワーク「こうして育った私の経験」
 教職員を育てる要素
1 仕事
 @ やや難しい仕事
 A まかされる
 B 達成感
 C 新しい仕事
 D 立場・役割
 管理職は若い人に@〜Bを与えるリスクをしょえるか
 
2 上司・先輩
 @ 個別の指導
 A (評価の)声かけ
 B 支援的助言
 C 存在そのもの
 
3 職場
 @ 前向きなワイガヤ
 A まじめな雑談 ストーブ談義
 B よき同僚性
 
 4 顧客
 子ども・保護者・地域
  接点を持たせる
 
 5  外の風
  @ 学校以外の部署
  A 異業種交流
 
 6 研修
  @ 受講
  A 教える側に立つ
 
 7 トラブル・クレーム
 
 8 自己啓発
 
 9 家庭
 
 教え上手、学ばせ上手、場づくり上手
 
第6章 学校評価づくりの指標づくり
1 目標による管理手法
 ・ 学校評価
 ・ 教職員評価
教職員評価制度 
 目標管理と人事評価
 
学校ビジョンにベクトルが合う
 PLAN;ぎりぎりできる目標
 評価で育てる、目標で育てる
 
・成果主義に傾きすぎるのはなじまない
・単に査定をするのではなく、教師にやる気と自身を持たせ、教師を育てる評価であることが重要
 
(1)自己申告による目標管理の推進
 @ 学校の目標設定
 A 教職員の個人目標設定に対する支援
 B 教職員の個人目標の達成に向けた取り組みへの支援
 C 教職員の個人目標の達成度に対する評価
 D 次年度に向けた目標や計画の見直し等の取り組み支援
 
(2) コミュニケーションを通じた育成能力
 @ 「目標設定面談」や「評価に関する面談」によるアドバイス
 A 目標遂行を含む教育活動への職務の観察とアドバイス
 
(3)勤務状況の評価能力
 @ 意欲評価
 A 能力評価
 B 実績評価
    それぞれ評価基準が必要
 
2 目標管理の考え方と進め方
Management By Objectives & Self−control
 
 1目標の条件
  1 いつまでに
  2 何を
  3 どのレベルまで
  (1)目標をつなげる
  (2)努力すれば達成できる目標を
  (3)目標を重点化して設定する
      3つから5つ
     学習指導、教科外(生徒指導・学級経営、公務分掌
 2 自己統制 
 (1)自己申告により目標を設定する。
 (2)目標達成過程での創意・工夫を奨励する
 (3)目標達成度は、まず自己評価
  おしつけない
 3 管理
 (1)PDCAのサイクルを回す
 (2)達成度を評価しやすいように目標を設定する
 (3)組織の要請と個人の欲求の統合を目指す
 
目標具体化のポイント
  @ 目標項目
  A 達成された姿(達成基準)
  B 達成のためのてだて  
  C スケジュール
  D 子どもと向かい合っているか
     × 少人数指導の推進
     ○ 少人数指導の推進による算数科の学力向上
 
 目標数値化する効用と限界
   数値化しても目安、一部をカバーしたに過ぎない
  数値化は自己評価が容易、意欲が向上、外部への説明力向上
   ただし、数値を目的化してはいけない。
  活動、取り組みを数値化する方法もある  
 
☆★☆ コメント ☆★☆
 かつての勤務校でなんとなく感じていたことが、こうした診断で客観的に数値化されるとより鮮明に当時が思い出される。組織マネジメントを学校経営の全面に出すのではなく、知識としてもちながら、時々客観的な目で見つめ直すために活用するのが現実的だと思った。
 また、内容以上に、浅野先生の教授技術の高さには驚いた。またOJD活性度診断は、数値をひと目見てすぐに傾向を見抜いた。ここで「プロだから」と軽々しく使いたくない。我々を含め、全国の教師はすべてプロであるからだ。全国の教師は、浅野先生の教授技術を持っているか。 
 われわれプロの教師はまだまだ頑張らねばいけない。