研修3日目 2月26日(月)                             社楽の会へ

9:15〜14:15
教育法規U  学校教育を取り巻く関係条例
             弁護士  松崎 勝 先生


 明日中にも注目の判決が出る。国旗・国歌をめぐって最高裁が判決を出す。今日は法律実務の話をしたい。
 現在、訴訟制度を知らなければならない時代になった。昔は訴訟は好ましくないと思われていたが、今は違う。知識を持っていないといけない。
 論より証拠。文部科学法例要覧のP.3724をみてほしい。平成16年に改正された「行政訴訟法」である。
 46条「行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。
 行政庁は、処分に対しては裁判を起こすことができることを相手に伝えろという条文である。何かあるとすぐに裁判になる。管理職は手続きを知るべきだ。
 レジメを見てほしい。

第1 はじめに−社会生活と法律
Q Aさんが貸したお金をBさんは返さなければならないのか?
A 「証拠があれば返さなくてはいけない。」
松 「証拠がなければ返さなくてもいいの?子どもがボールを貸したといったら、証拠はと聞く?」
A 「聞かない。」

 弁護士と言うと堅苦しい世界だと思うかもしれないが、常識的なものである。この答えは、「請求できる。」である。では、なぜいえるのか?善悪を考えた常識だからだ。
 しかし、常識と言う言葉ほど、怖いものはない。万人共通の常識はないので、時には対立する場合がある。
 保護者会でもそう。いろんな意見が出たときに、「常識ですから。」というと議論が深まらない。今日の話は、当たり前のことが法律上どうなっているかを勉強したい。
 このケースは法律上可能だ。条文に書かれている。今朝も新聞に出ていた。最終的には、条文を考えていただきた。ただ授業の前に六法全書を読めとはいわないが。

 貸したお金の話は民法587条に載っている。資料を見てほしい。現在はひらがな化し、常用漢字を使っている。

(消費貸借)
第587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

 法律の世界で、お金の貸し借りのことを、消費貸借と言う。土地は、賃貸借という。お金の貸し借りという言葉がある。土地の貸し借りという言葉もある。
 お金と土地の最大の違いは何か?
 お金はそのものを返さなくてもよい。同じ種類ならよい。土地は同じものでないといけない。法律は、それくらい中身を分析をしている。
 そういう前提で587条を読むとよくわかる。借金をなぜ返さなければならないかと言う常識も、民法で裏付けられているのである。

 法律は難しいか?たいていの人は難しいという。しかし実は簡単だ。
 貸した場合と、あげた場合は違う。 

Q もらった金は、なぜ、返さなくてもよいのか?

 どこが違う?借したお金は誰の物?「私のもの?」いいえ、相手の物。そうでないと、相手の人はお金を使えない。つかうと横領罪になる。あくまでも相手のものだが、しかし、私に請求権はある。
 これがわかると司法試験が受かる。

○ Aさんが100万円の束をBさんに貸す。
○ Cさんがいて100万円の束をDさんにあげた。
 この二つを絵に描いて、見比べて違いがあるか?見かけ上の差はない。

 ポイントはどこか?何と言って渡したかだ。言葉は重要だ。同じ行動をしながら、言葉によって意味がまったく違う。
 次の質問をしよう。その言葉はどこから出てくるか?口から出るとは言ってはいけない。
そう、心、頭の中だ。貸す、借りるか。あげる、もらうか。これらは頭の中。頭の中を、「意思」と言う。
 片方は貸す意思で渡す。相手はもらう意思で受け取る。これがトラブルになる。法律では「意思主義」をとっている。人が何らかの拘束を受けるときに最終的にはその人の意思に拠っている。これが法律の理念。

 今日この研修に来ているのは?病気でないのに今日の研修を合法的に休む方法は?
 年休?これは当局が認めないとだめ。
 答えは?先生やめることです。近代国家は意思に基づいている。法律は最終的には、意思が問題。
 契約とは?法律家は、「意思の合致」ととらえる。意思を中心に法律を構成する。しかし、そこには弱点がある。外から見えないことだ。意思主義と言いながら、外から見えない。そこで、“言葉”を問題にする。しかし、“言葉”はすぐ消える。
 そこで、消えないものにする。それが書面から。契約書とは、意思の合致を証明する文書である。

 第1 はじめに、「社会生活と法律」をまとめると、
我が国は法治国家。しかし、ほとんどの方は、法律を使わないで住める国家。それは日本は和があるから。
 先日教頭会で話をしたら、感激していた。なぜなら、弁護士と初めて話をしたからだそうだ。それくらい日本社会は訴訟に縁がなかった。
 ここで問題。日本の弁護士の数は?医師とどっちが多い?
 病気にかかると医師にかかる。事件が起こっても、弁護士にかからない。高校の授業へ行ったら、「日本はあいまいな民族」「高知県は東京から遠く離れた地域」です。と言っていた。外国人は、「遠く離れた地域」というと、必ず「何キロ離れているの?」と聞く。
 日本人の弁護士は約22,000人。人口は1億2千万人。
 アメリカは2億7千万人。弁護士は?。日本の割合なら5万人。しかし、実数は100万人。日本の20倍いる。アメリカ人が日本の弁護士の数を知るとびっくりする。あるアメリカ人は、「人口の何万人に一人しかいないなんて、法治国家と言えない。話せばわかる国家だ。」
 弁護士の人口比はイギリスは10倍、ドイツは9倍、フランスは4倍。そのために、日本政府は何を考えているか。司法試験だ。
 私のころの合格者は年間500人。今年の合格者は、2,700人。近々3,000人にする。
 医者が増えると病人が増える。弁護士が増えたために、訴訟ごとが発生する。学校関係者はこれを踏まえてほしい。 
 
第2 法律の基礎知識
1 法律とは社会のルール。知っていて当たり前の世界。知らないでは済まされない。

 
2 法源について
 @ 日本は成文法、法律、命令(政令、省令)、規則
 『新学校管理読本』P1、「1 わが国における法の体系」を読んでおいてほしい。

 A 慣習法(法例2条)も日本では認められている。明文規定はないが、社会通念上、裏打ちがあれば法的な効力を持つ。実は、数年まで、日の丸、君が代も慣習法だった。
 H11年、広島の事件をきっかけに、
 「国旗及び国歌に関する法律」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO127.html
がつくら、成文法になった。今は、慣習法的な取り扱いがされているのは、人事異動の内示制度のみである。

 
 B 条理 
 条理(常識)は法律か?
 明治8年太政官布告第103号裁判事務心得3条
「民事の裁判に成文なきもは習慣により、習慣なきものは条理を推考して裁判すべし」とある。条理が法律家は、学者の間でも議論がある。

 
3 法律の解釈について
 法律は抽象的なので、人によって解釈に違いが出る。そこで、正しい法律解釈とは、裁判所で通用する解釈が日本における正しい解釈になる。

 
4 判例について
 判例とは、裁判所で通用する解釈をいう。判例を理解するためには、司法制度を理解する必要がある。
@ 我が国の裁判制度
 裁判所のイメージは、たいていの人は出るのは嫌がる。典型的なのは行政訴訟法46条。裁判に対するイメージを変える必要がある。
 裁判所;最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所−家庭裁判所(三審制)
 簡易裁判所が一審のとき、高等→最高の場合と、簡易→地方→高等の場合がある。その違いは、刑事と民事の違いである。
 裁判の仕組み;わかりやすい説明 http://www.kantei.go.jp/jp/kids/magazine/0407/5_1.html 
☆ 三菱重工事故隠し事件
☆ 鹿児島 公職選挙法無罪事件

 
 「この中で、スピード違反をしたことがない人は?」20人ほど挙手。
 つかまったかどうかではないですよ!(笑い)
 反則金と罰金は違う。路上喫煙?あれは過料。罰金は裁判所しか取れない。反則金は、行政上の処罰。
 スピード違反の最高は6カ月以下の懲役。あるスピード以上だと懲役。70キロ程度のオーバーらしい。北海道ではある。懲役1月がつくと、執行猶予がついても、公務員はクビ。気をつけたい。
 罰金刑は簡易裁判所、懲役刑は地方裁判所にいき、退職金もなくなる。なにかあったら、簡易裁判所に。
 警察庁をやめた人が在任中の罪にとわれ、退職金を返納した例がある。もし、酔って人の自転車を乗ったら、懲役になるかもしれないので注意してほしい。

 
 最高裁は1つ、高裁は8つ、地裁・家裁は47+3、簡易 438  
 http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/zinsokuka_kentoukai/01/syurui.html 
 同じ事件でも、刑事事件で120万円までの請求金額でわかれる。120万円以下が検察が簡易に、以上だと地裁に持っていく。

 
 刑事と民事もわかれる。
 刑事事件は犯罪者の処罰。民事事件は、権利などの確認。一般人は、裁判と言うと、刑事裁判をイメージするが、実際に裁判所で取り扱う件数は、圧倒的に民事事件が多い。

 
 裁判官・検察官・弁護士・訴訟代理人・原告・被告・被告人

 
 なりたい順に番号をつけてみてください。左から右が普通だ。私は弁護士と紹介されたが、月曜には訴訟代理人をやってくる。刑事事件に立つと弁護人、民事事件に立つと訴訟代理人。私は民事ばかり。
 原告、被告は民事。被告人は刑事事件。
 民事事件は、訴えられた方が、訴えるより得。正しいことをやると訴えられる。新聞は、被告と被告人を使い分けていない。麻原被告というが、正式には麻原被告人。
 被告は良い・悪いはない。意見が食い違うときに、裁判に持ち込んだ方が原告、受けた方が被告。
 ある時にお金を請求された時、裁判に持ち込ませた方がよい場合がある。訴えられたら自信を持って受けてよい。被告と被告人はまったく違うということを理解してほしい。

 
 管理読本P301
 永山中学校事件最高裁判決  http://osaka.cool.ne.jp/kohoken/lib2/19760521.txt で見てみよう。
 昭和43年;年区分。年度ではないので1月から12月まで。
 (あ)ひらがな;刑事事件、(ア)カタカナ;民事事件
 1614号;その年の訴えた順  
 刑事事件なので、主文には「被告人」と書いてある。

 
 P394
 目黒電電事件   http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/hanrei/data/124.htm 
 昭和47年(オ);民事事件

 
 P427
 伝習館高校事件
 http://www.h5.dion.ne.jp/~hpray/kyouikumondai/hourei-mondai/denshuukan-hanketu.htm 
 昭和59年(行ツ)民事、行政事件訴訟法

 
A 判例と裁判所の区分
 〇 学説の位置づけは?
  同じ判決で比較する。

 
判例とは先例的価値がある。裁判官はまず判例を探す。
一方、裁判例はあくまでも参考例。知っていた方が良いが、絶対的なものではない。自分たちで探さなくてはならないが、簡単なのは、最高裁判決。最高裁の判決は不動。判例変更は大法廷しかできない。または、立法が法律を変える場合のみ。
 よって、最高裁判決が判例。下級審判決が裁判例。

 
 あす、最高裁判決が出る。学習指導要領について何らかの解釈が出される。
 最高裁判事の数は何人?
 引っかけ問題で、たいてい間違える。
 答えは14名。最高裁長官が1名。最高裁裁判官は15名。
 判事は国務大臣と一緒、長官は総理大臣と同格。
  http://www.courts.go.jp/saikosai/about/index.html 

日本には三権の長が存在する。
  安倍晋三       誰でも知っている。
  河野洋平、扇 千景  わりと知っている。
  島田仁郎       一般には知られていない。

 
判例;最高裁判決をいう。普通は小法廷でそれぞれ判断する。15人そろうのはまれ。憲法上、重要な判断をするときも大法廷。

 
 旭川学テ事件は、大法廷
P323 岩教組事件最高裁判決も同じ日に判決。大法廷判決
P339 全農林も大法廷
 判例 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件 大法廷
   http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/hanrei/jirei58.htm 

 
判例は現在は速報される。pdfファイル
   http://www.courts.go.jp/saisinhanrei.html 

 
次の学校関係者は必読。クラブ中の落雷事件。
   http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/tosakoukou.htm 
 
B 判例、裁判例と行政実例の関係
 司法   判例と裁判例
 行政庁  判例が最終判断 
 時々大きく食い違う。
 〇 最高裁昭和59年5月31日判決(大津市支払命令事件)

 
C 判例分析
キーワードは、「本論と傍論を区別する。」
 事件番号 
 判決  当事者
 主文 「    」←簡潔にわかりやすく書く
 理由 その後に書く。ここに法律論が展開される。主文との兼ね合いで読む。

 
盛岡地裁 S62年3月5日判決
仙台高裁 H3.1.10判決
 岩手靖国訴訟
  地裁 合憲
       主文 県側が勝ち
  高裁 違憲
       主文 県側が勝ち
 
盛岡は昭和、仙台は平成の違いがあった。
 朝日新聞 H3.1.11 一面は「公式参拝・玉串料違憲」という見出し(傍論) 
 31面には、原告が勝ったような記事が書いてある。
盛岡、仙台 は裁判例で、判例は最高裁。
H9.4.2 最高裁大法廷 玉串料は違憲と判断。

 
〇 判決のスタイル(書式)−民事訴訟法253条
 (判決書)
第二百五十三条  判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  主文
二  事実
三  理由
四  口頭弁論の終結の日
五  当事者及び法定代理人
六  裁判所
2  事実の記載においては、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない。
 
〇 主文とは 簡潔に
〇 理由とは?→本論と傍論の区別
 
 
第3 法律についての雑学
1 法律家(判事、検事、弁護士)について;既述

2 民事事件と刑事事件の区別
 〇 被告と被告人の違い;既述
 〇 口頭弁論期日と公判期日の違い
  始める日   
    民事が口頭弁論期日
    刑事が公判期日

3 訴訟費用とは?
   弁護士費用は含まれていない。ほとんど印紙代のみ。

 
第4 教育公務員と法律
1 教育公務員が知っておくべき法律
@ 憲法        http://constitution.at.infoseek.co.jp/ 
A 教育基本法   
         http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16405089.htm 
B 学校教育法   http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO026.html 
C 地方公務員法  http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO261.html 
D 教育公務員特例法  http://www.houko.com/00/01/S24/001.HTM 
E 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)
          http://www.houko.com/00/01/S31/162.HTM 
F 国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給与特別措置法)    http://www.cebc.jp/data/education/law/jp/kyuuyo.htm 
 
2 民間労働と公務員労働の根本的差異
 大学法人と教員はどう違うのか。
 法律の世界で、労働関係については、民間労働と公務員労働に分けている。
 郵政民営化とは、公務員から民間に移そうとしてること。
 ・民間(私)企業 は 労働契約
 ・公務員は 行政処分(任命、登用)
 大学法人も民間。

具体例
〇 最高裁昭和54年7月20日判決
(大日本印刷採用内定取消事件)http://www.office-fujimoto.net/hanrei/archives/1979/07/54720.php AさんがB社の採用試験を受けて内定通知を出した。誓約書も出した。急きょ内定を取消をした。
 労働者であることの確認を求めた裁判。
 内定通知は、法律上書いてない。そこで、契約論争になる。意思の合致=合意=契約が成立している。
 内定を、解約権が留保された労働契約としたが、グルーミー(陰湿)な印象なので、採用を留保するために内定とした。しかし、内定時にわかっていたことなので、解約することは解約権の乱用とすべき。大学生の言い分を認めた。
 判決は、過去どんな判決があったのかが大きく左右する。

 
〇 最高裁昭和57年5月27日判決(東京都職員採用内定取消事件)
 Aさんが東京都採用試験を受けた。採用内定が来て、保証書も出した。しかし、キャンセルした。http://www.hiraoka.rose.ne.jp/C/820527S1.htm 
 3月に、ゲバ棒を持って研修センターに乱入したから。公務執行妨害で逮捕された。
 一審が棄却、二審が取消、却下、

 
棄却;裁判として成り立つ。
却下;門前払い

 
Aさんは、一審で負けて、二審はもっと負けた。最高裁では、「本件上告を棄却する」
 公務員は、辞令でもって公務員になる。採用内定の取消は、民間では起こせるが、公務員ではできない。
 民間とは異なるから。この違いは、憲法28条に表れている。
 

 
3 公務員と労働三権
〇 憲法28条は公務員にも適用されるのか?
第二十八条【労働者の団結権・団体交渉権その他団体行動権】
 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

 
→地方公務員法第37条
 (争議行為等の禁止)
第三十七条  職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

 
後に労働会で問題になった。
経緯は?
昭和21年5月 大蔵大臣からGHQへ要請。アメリカの公務員給与をどうしているか教えてほしい。
昭和21年11月 合衆国人事顧問団が日本へ来る。
昭和22年6月 フーバー勧告
  人事院など、アメリカ的な発想をだす。当時は片山哲内閣。唯一の社会党内閣。
22年8月に、国家公務員法を国会に提出。
22年11月 同法施行。争議行為禁止を抜いた。
23年8月 ゼネスト計画を発表
23年7月 ゼネスト計画の直前、GHQ書簡が出される。
 ルーズベルトを引用。公務員の争議行為を禁止。芦田内閣へ。
 政令201公布。即日施行。ポツダム政令。国会の承認不要。
23年12月 国家公務員法改正
 これを受けて、地方公務員法ができた。
  ・ 最高裁昭和48年4月25日大法廷判決(全農林警職法事件 刑集27巻、4号、547項) 管理読本339  http://dai18ken.at.infoseek.co.jp/kenpou/98/15-keisyokuhou.html  主文「本件各上告を棄却する」
 

・ 最高裁昭和51年5月21日大法廷判決(岩教組労テ事件、刑集30巻、5号1178号) 管理読本 P323
 
4 教育公務員の服務上の義務
 1 服務の根本基準(地方公務員法30条)

 2 服務の宣誓義務

 3 法令及び上司の職務上の命令に従う義務

 4 信用失墜行為の禁止
    勤務時間の内外に関係ない

 5 守秘義務(地公法34条)
最高裁昭和52年12月19日判決(堺税務署職員徴税トラの巻事件)
最高裁昭和53年5月31日判決(外務省秘密漏えい事件)

 
 6 職務専念義務 
    地公法35条
  現実に裁判をやっている。
  職務専念2つの要素 
   身体活動、精神活動 
  管理読本 P394
   最高裁昭和52年12月13日判決
    目黒電電事件 http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/hanrei/data/124.htm 
     精神的にも一生懸命でないとい        けない。

 
 7 政治的行為の制限(地公法36条)
  教育基本法第14条
  教育公務員特例法21条の3

 
 8 争議行為等の禁止(地公法37条)

 
 9 営利企業等の従事制限(地公法38条)

 
 
第5 学校事故と法律
 1 憲法17条について
第十七条【国及び公共団体の賠償責任】
 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
 
 戦前は公権利の行使に関して国家は責任を取らされない原則があった。ヨーロッパでも昔はあったが、第1次大戦のころから外し始めた。日本は 国家不問責だったのでで、従軍慰安婦などの裁判で使われる。

 
 2 民法709条の要件
  (不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 

  
 (相当)因果関係
 〇 最高裁昭和52年10月25日判決(福岡県立高校事件)

 
 
3 国家賠償法1条と民法715条の関係
〇 最高裁昭和30年4月19日判決(県知事農地委員会解散命令事件)
  http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/hanrei/jirei12.htm 

 
 民法715条[使用者責任]
@或ル事業ノ為メニ他人ヲ使用スル者ハ被用者力其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加へタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但使用者力被用者ノ選任及ヒ其事業ノ監督ニ付キ相当ノ注意ヲ為シタルトキ又ハ相当ノ注意ヲ為スモ損害ヲ生スヘカリシトキハ此限ニ在ラス
A使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
B前二項ノ規定八使用者又ハ監督者ヨリ被用者ニ対スル求償権ノ行使ヲ妨ケス

 
使用者責任と、労働者・社員等の被用者が事業の執行についての不法行為により第三者に損害を与えた場合に、その使用者が負う損害賠償責任をいう。

 
 国家賠償法
第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

  
 公務員のミスにより損害を出した被害者は、職員ではなく、国のみに賠償請求できる。
民間と公務員とは違う。民間では、使用者が責任を取り、その分を個人に請求する。
 学校事故の場合、重大な過失の場合以外は個人無問責原則がある。
 現在は、公立病院医師以外は個人無問責。公務員は公務優先。多少の落ち度は、役所が責任をとると言う考え方である。

 
 
4 国家賠償法2条と民法717条の関係
 設備に落ち度があった場合は、国家賠償法第2条が問題になる。
 昭和53年7月8日判決
  神戸市道事件
   子どもの請求棄却。道路は遊び場でない。保護者の責任である。

 
第6 裁判実務について
 1 証拠とは?
  学校で起きたら学校の責任という条文はない。過失があるからどうか。とにかく証拠。証明力のあるものを残す。

 
 2 署名と記名押印、実印と三文判の違い等について
  署名と記名の違い
    署名は自書。記名はそれ以外。
  署名の時は押印入らない。記名と押印が法律の大原則。
  遺言のみ、署名・押印。
  署名は押印不要。
 法律上は、署名=記名+押印
 証明力は、署名。
 警察は、署名と指印をもらっている。最終的には証明力のため。

 
 3 裁判報道について
  マスコミは、自治体が負けたときしか報道しない。

    
第7 おわりに 
  事故報告は、子どものためと思って虚偽の事実を書いても、裁判で問題になる。かならず、事実を書くこと。
 学校の先生は争いに弱い。喧嘩が下手。 
  そのためには武装しなさい。理論武装。一番強いのは、法理論。
  最高裁の判決を知っていれば、鬼に金棒。日本最大の暴力組織は警察だ。法律で動いている。法律を勉強することは、国家を見方にすること。
 ただし、法律を児童、生徒に振りかざさない。法律は知っていても知らないそぶりで。
 まずは、判例をよむ。プロの弁護士も、何かあれば、判例を探す。