教師力UPセミナー参加報告              社楽173回へ
◇ 講師:野口芳宏氏  ◇ 期日:7月13日(土)  ◇ 場所:小牧中学校
文責:奥村

T 音声言語の力をつける討論の授業−俳句を題材に−

   七月の蝌蚪が
   居りけり山の池
     (高浜虚子)

◇ 指名して読ませる→ただの活動にすぎない
☆ 授業は学習活動でなければならない
「あなたのこれまでで最高の読みを披露してください。」→学習活動
☆「学習活動」と「活動」の違い……自分を高めようとする目的があるかないか
★学習活動=前進的課題解決のための目的的活動

○「二人の読み方に違いがありました。その違いをノートに書きなさい。」
☆ 発問したら必ずノートに書かせる。(作業化させる)
◇ まだ書いていない人、手を挙げてください。(全員を参加させる)
☆ 作業の進行状況を随時確認する。このとき、できていないのに手が挙がらないのは、 教室の雰囲気がよくない。担任は自分の学級経営を点検してみる必要がある。
☆ 手を挙げた子だけが指名される=「挙手指名システム」→挙手した子中心に授業が進 み、全員のものにならない。
☆ 挙手は確認のために行う。「ノートに書いてある人、手を挙げなさい。」 
☆ 手の挙げ方
 @ ひじをまっすぐのばす。 技術
 A 指をそろえる 知識 → 行動化
 B サッと挙げる

○「季節はいつですか。ノートに書きなさい。」
☆ 一つの発問で、答えが分かれるのがよい。
☆「なぜか」に答えられるようにする。「なんとなく」という答えを許さない。なんとな く「なぜ」書いたのかを追究する。
★ 討論は集団思考である。

◇「今の意見に賛成の人は○、反対の人は×をノートに書きなさい。」
☆ 自分の答えに責任をもつ。
☆ 意見は、必要なことを端的に述べる。
★「変わる」ことはとてもいいこと。「変わる」のは、成長すること。できない子はいっ ぱい変われる。「変わった人、おめでとう。」=向上的変容
◇「季節は夏です」
☆ 国語でもちゃんと解を明らかにする。答えを束ねる。

○「どんな池でしょう。」
★ 教師の解(解釈)があること。
☆ 不気味さが重要。なぜ、7月なのにまだ蝌蚪がいるのか。
 ―水温が低い。池の向こうから化け物が出てきそうな不気味さ。

○「七月の」の後で切る(しょく切れ)か、山の池の前で切る(にく切れ)か。
☆ どっちが妥当か→討論になる

★「発言」について
 ―発言しない教室はない。教師に力があれば、キャッチできる。
 @ 音声発言
 A ノート発言
 B 表情発言……下を向いたりよそ見したりしている
 C 音読発言


   子を離す 乳首涼しき 青田風

○「この句の出来具合を5・4・2・1でつけなさい。」(3はつけさせない)
☆ 早苗田→植え田→青田→黄金田→刈田→ひつじ田

   子が離す 乳首涼しき 青田風
            (野口芳宏)


   行水の捨て所なし
   虫の声
      (上島鬼貫)

○「季節はいつですか」
☆ 教師は子どもの意見を黙って聴く。
★ 討論では、相手の論の中にある非(矛盾・飛躍・独断)をついて論破する。自分の考 えを述べ合うだけでは討論にならない。「〜す。」で終わるのではなく、「〜か。」で終 わる。
☆ 知的正義感を大切にする。
◇ 感動は「行水」と「虫の声」のどちらにあるか。
☆ 立場を決めさせる。傍観者でいることを許さない。

U 心の教育
 ◇ 30年ほど前、「落ちこぼれをつくるな」と言われた。これは正論で、一見美しく、  反対しにくい。しかし、本当にそうなのか。
 ☆「そんなことはできないよ。」が野口先生の答え
   能力差は歴然として存在する。一つのことを教えたら、できる子、できない子は必  ず出る。できない子は、何度も繰り返してできるようになっていく。
「落ちこぼれなんか、気にするな。」が私の結論。
 ◇「いじめはなくさなければいけない。」→本当にできるか。
いじめは大国主命の話にあるように神代からあった。
 ★「いじめはなくならない。大切なのは、いじめのある中でどう生きるか。」
◆ 「いじめに負けるな」という授業
 ◇「次郎物語」次郎とキタロー
 ☆ もし自殺したくなったら、相手を殺してから死ぬぐらいの気概をもて。(そうすれ  ばもっと他にすることはある。)※( )内奥村
 ☆ 自分の力で防げないときは、大人に助けを求めよ。
★ 道徳の授業では、美しいことばで終わることが多いが、それでは役に立たない。

1「心」とは何か
 ★ 行動を決めるもの
※ 非行・問題行動を火事にたとえるなら
 行動・現象←結果 ← 消火活動
 判断 ―
 価値観― 要因 ← 予防活動=心の教育
 人生観―
 ☆ 勉強の落ちこぼれはできるが、道徳の落ちこぼれはつくってはいけない。
 ◇ 戦後教育の目的
・ 成績を上げる(受験)
・ 試合に勝つ(部活動)
・ コンクール

2「教師」とは何か
 ★ 授業の本質は「学力の形成」である。
・ 楽しい授業、子どもが生き生きとする授業→この授業で学力は形成されたか? その手続きはそれでよかったか?
 ☆ 教師は、一般に伝達力は高い。
 ◇ 教育公務員特例法第19条
 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
 ☆ 学校は、研究会一色だった。修養がなおざりにされてきた。
 ☆「進みつつある教師」のみ教える権利がある。

   研 究 │ 修 養
 教え方 │  学び方
他者改造 │ 自己改造
伝達 │ 影響(感化) ★ 教師とは影響(感化)者

3 心の教育
 ☆「実感」……教師が本当にそうだと思えることを、子どもに伝える。
 ★ 昭和33年「道徳の時間」特設→それから効果が上がったか?あまり効果が上がら  なかったのはなぜか。
  @ 読本道徳
  A 偉人道徳……ヘレン・ケラー、リンカーン、マザー・テレサ、野口英世…。
  B 障害者道徳 

他者依存型道徳……教師も子どもも会ったことのない人に依存=口耳の学

担任道徳……その人でないと話せない道徳
・ 体験
・ 本音 に支えられた話……(例)先生の子どもの頃の話
・ 実感

子どもに語れるだけの人生経験をもちたい → 修養
 ★ きれい事しか話せない教師では、子どもの心に届かない。


○ 教育に「強制」はした方がいいかどうか。
 ☆ 個性尊重とか、児童中心主義の名の下に、「強制」はよくないという考え方が広が
っている。奉仕活動は、強制されてすることではないというが、放っておいてできるようになるか。体験をして初めて分かることがある。自発性はそれから生まれる。もっと意図的に教育するべきだ。善意の強制は悪ではない。
 アメリカでは、自主性を伸ばす教育から自己抑制教育(人格教育)に転換して立ち直った。日本はアメリカから20年遅れている。出生率が1.33%、離婚が28万組というのは国家の存亡に関わる大問題だ。できちゃった婚は4人に1人。欲望のコントロールができていない。これは教育に対する挑戦だと思っている。中2の1割がアダルトサイトを見たことがあるという。「見るな」と言っても無理。「見て」どうするかを教えることが大切。

○ 授業において「否定」は必要かどうか。
 ☆ 「ほめ」「励まし」ばかりではいけない。「間違いは間違い。」と、はっきり言うこ  とも必要。
V 教師の人間修養
 ・「教師は持ち前の知識で、その日その日を送ることのできる(  )職業です。」
(大村はま)
 ☆(  )の中には、「危険な」が入る。
 ・「教師は、自分のことばを自分の耳で聞けるようになれば一人前だ。」(青木幹勇)

1「憧れ」(「りっしんべん」に「わらべ」)→「子どもの心」を持ち続けること
 ☆ 大人になると、忘れがちである。
 ☆ 憧れを抱けば、その人に近づこうとする。
 ★ 教師修行の第一歩は憧れの人(目標)をもつこと
・ 野口先生の場合…平田医師(PTA会長)
 ☆ 謙虚でないと近づけない。「近くにそんな人いない」という人は傲岸。

2 「本」
 ◇「フレミング(ペニシリンを発見)の伝記」を平田先生から借りた。なんでもないと  ころに傍線が引いてあったので、その理由を尋ねた。
 ◇ 先生は、「天才は無邪気をもっている」という仮説をかねてからもっていたが、そ  れがここで実証されたと、話された。
 ★ 読書は「私」が主体である。本につきあうのではない。→読み方の変化

3 「観」を磨く
 ☆ 見方のこと。人生観、世界観、人間観…。
◇ 子どもとうまくいかない(摩擦)
 ☆ 摩擦はどんなとき起こるか。それは二つのものが近づきすぎているから起こる。教  師が1oでも高ければ、摩擦は起きない。(平田先生)
 ★ 見方を変えれば、同じ子どもの様子(現象)から、いろいろ学ぶことができる。

4 「異」に学ぶ―教師にもっとも欠けやすい点
 ☆ 異物を排除するのは、生命体の本能。
 ☆ 教師の世界は、きわめて同質。教員は「教育」の世界しか知らない。
 ☆ 先生が「教師はうらやましい」と言われた。その理由を尋ねると、「医者は病気に  なった人を治して、せいぜい元に戻すことしかできない。教師は、健康な子どもを預  かり、教育を施して変容させることができる。」
 ☆ 建設業者の人「会議に遅れてくる人が3人いる。それは医者と教師と百姓だ。なぜ  なら、この3人は自分の仕事の結果に責任をもたなくてもいいからだ。」

5 仲間を選ぶ
 ☆ 類は友を呼ぶ。「サークル」は職場を越えたつき合い。生涯つきあえる友かどうか。

 ★ あほかいな