入試改革は進んでいるか?−今春,高校入試問題に見る改革状況− U
                                                2001.6.21土井  社楽152回へ

 学習指導要領が変わっても、身の回りで見聞きする日常の社会科の授業は、あまり変わっている気がしない。これは、愛知県の中にいるからかもしれない。目を外へ向けると状況は大きく変わる。

 そもそも、授業改革は簡単である。
 入試問題を変えればよい。
 例えば、静岡県レベルの高校入試問題になれば、中学校では授業のスタイル・考え方を変えざるを得ない。それは、必ず小学校にも波及する。

前回、今春の全都道府県の歴史の問題を見て,特徴的なこととして次の点を挙げた。

@ 長文の説明,自由度の高い論述問題がいっそう増加している。
A 歴史・地理・公民の融合(混合)問題が多い。
B 生徒の学びに即した問題が多い。たとえば,「○○さんは歴史上の人物のカードを作りました。」「これは山田家の年表の一部です。」というパターン。
C 教科書にない情報,時事的な話題,郷土史を取り入れている。
D 資料を高度に活用した問題が多い その他

 今回、都道府県すべての地理・公民問題を解いても同様に感じたが、さらにプラスしたい。

E 作図問題が多い。さらに、作図させて論述させるものも多い。
F 世界地理では選択問題が一般的だが、そうばかりでない。習っていない地域でも思考力があれば解けると考えられている。選択論述も増えた。
  その一方では、歴史・公民にも選択問題(兵庫)が登場した。
  
 @については、むしろ記号の方が少ない県が多い。極めつけの静岡県は、一部を除きほとんどが論述問題である。

主な論述試験の問題
奈良:女性が仕事を続け、社会進出を進めるために必要なことを、「仕事」「家庭」「役割分担」の3つの語句を用いて簡潔に書け。
宮崎:あなたが住んでいる地域を、より住みやすくするため」の条例案を考え、その条例名を書きなさい。
長崎:マスコミを通して情報を受け取る側が心がけなければならないことを、マスコミの特徴にふれながら「判断」という語句を必ず用いて書け。
(長崎県は記号が少ない)
鳥取:(『五体満足』乙武洋匡より引用して)障害のある方を地域全体で支援し、誰もが生き生きと暮らせるあたたかい社会づくりを実現するために大切なことは何か。100字以内で書きなさ   い。
岩手:農産物の輸入を増やすか、食物の自給率を高めるか、自分が支持する意見を選び、その理由を書け。
山形:陸上交通では自動車が中心だが、最近鉄道のよさが見直されている。その理由を書け。

その他の土井の感想
・ 地形図、時差を問う問題が多い。写真と地形図の比較問題もおもしろい。
・ IT革命、省庁再編、ベンチャービジネス、携帯電話という教科書にない内容も登場している。
・ 想像上の国を登場させている問題がおもしろい。(広島、埼玉など)単なる知識の暗記では解けない。
・ 県名カルタ、国名カルタが登場した。問題に電子メールが複数登場した。
・ 結局、思考力は@「書くこと」により問う、A 聞きたいことを直接聞かないでワンクッション挟む
 
○ 残念ながら工夫があまり見られないのは、愛知と千葉だけである。愛知の改革の遅れを複合選抜のせい(採点の時間がない)にするなら、その制度を変えるべきではないか。
 比較的改善の弱い東京でも論述、混合が見られる。同様に、神奈川も記号ばかりだが、混合問題があり、省庁再編の内容など一歩踏み込んだ問題もある。
 ただ、論述問題は採点基準等が曖昧にならざるを得ない。情報公開の時代にややブレーキがかかるかも?