第16回オープン・スクール実践研究発表会      第183回
平成15年1月24日(金)

「子どもが生きる力をはぐくむ学校をめざして−個性化カリキュラムの実践とその評価−」
東浦町立緒川小学校研究発表会
後援 東浦町教育委員会、全国個性化教育研究連盟、東海個性化教育研究会

以下の記録は、土井が参観しながら記録したものです。そのため、言葉足らずのもの、誤解があるかもしれませんが、学校や授業者には全く責任はありません。ご了承ください。

寒い朝、7時35分に家を出て、名鉄とJR東海道線、武豊線を乗り継いで緒川駅へ。9:12 に学校に到着。緒川駅から学校までの町並みに、ところどころ点在する古くからの家が歴史をうかがわせる。
東浦町は家康の母の出身地であり、緒川城跡などの史跡も多い。

緒川小学校はオープンスクールをもっとも初期から導入し、地道に実践を重ねている。過日、加藤幸次教授が、卒業生の追跡調査をしており、その成果が公表されている。「自己教育力」、さらに「生きる力」と、日本の教育に与えた理論的、実践的な影響は大きい。その中での研究発表会であり、加藤先生の講演もあることから、今日の日を楽しみに参加した。

学習公開1(9:20〜10:30)
1年生
ダンスの授業だ。ポーズ、ボディパーカッションを組み合わせた活動。
インフルエンザでかなり欠席者が多いらしい。班ごとに今日のめあてを述べていた。
教室では衣装を考えているチームもいる。単に、表現活動としないで、総合的な学びにしているところがすごい。衣装担当の先生の遊び心が掲示物にあふれている。

4年生は「地球の環境を守ろうー環境フォーラムをしよう」3カ所に分かれての活動。
情報センターの中央・くぼんだ段状のスペースでの発表は雰囲気作りには最高だ。ただこの凹んだスペースは使い方は限られるが・・・
発表能力は普通か?。もちろん原稿は見ていない。ビオトープのチームは先生の話が続いていた。
木を守り隊チームはゲストティーチャーの話だった。「聞いた話はすぐに忘れるが、やったことは忘れない」「大人になったときに子どもを連れてみてほしい」というゲストティーチャーの話に、スケールの大きさを感じる。

3年生は表現
劇の練習だ。群読プロチームはビデオで撮って見て、振り返りをしていた。
役者プロチームは衣装に着替え中。その他、音楽プロ、大道具プロもいる。

6年生は健康。
虫歯のTTは、教師間の連携に問題を感じた。いわゆる普通の講義式の授業だった。
理科室では気体検知管を使っての実験。吸う息、吐く息の酸素・二酸化炭素の成分を調べる管だ。初めて見た。
ここでは、週間プログラム学習として「コツコツコース」、「ゆったりコース」に分かれて学習しているが、基本的に一人学びだ。
生活室では1食分のメニューを考えていた。これはおもしろそうだ。栄養のバランス、主食・主菜・副食のバランス、色どりが条件だ。多くの料理の本、パソコンでのレシピソフト、調理のVTRなど、資料を駆使してそれぞれが条件を見たそうと工夫している。自分なら、材料費いくらとしたいところだが・・・

5年1組は学習基礎として、算数「円の不思議を発見しよう」に取り組んでいた。
単元内自由進度による一人学びだ。プリントをやっている子、丸太の直径をメージャーで測っている子、円をはさみで切り取っている子などいろいろだ。究極の少人数指導。それぞれが真剣に取り組んでいるのは、個人での学習が1年生より定着しているからであろう。安心してみていられる。
壁際には、計算プリントの小棚があった。公文式のようなプリントと解答が入れてある。はげみ学習用のプリントだ。

また、2組は宇宙の映画を見ていた。
その後、宇宙の成立の話、すごい人で、内容がわからない。大人気

2年生は「緒川の町のピカピカみつけたよ!」
ゲストティーチャーの話を聞いていた。すてきな人を発表するための絵を描いているチームもある。

それにしても贅沢なスペースだ。広い。不覚にも迷子になってしまった。

1年生の教室には「プランニング」として1週間の予定が貼ってある。
1月20日 1ブロック リズムで遊ぼう、漢字博士になろう
       2ブロック 働く車博士(銀行ごっこ)
       3ブロック前半 働く車博士(銀行ごっこ)
1月21日 1ブロック 働く車博士、銀行ごっこ、
       2ブロック ダンスダンスダンス
1月22日 1ブロック ダンスダンスダンス
       2ブロック 銀行ごっこ、きれいにしよう
       3ブロック前半 漢字博士になろう
1月23日 1ブロック 働く車博士、銀行ごっこ
       2ブロック 自分を見つめよう、漢字博士になろう
といった調子だ。
1ブロックが、普通の学校の2時間続きになり、学習内容によって2つに分けている。柔軟な時間帯だ。

【土井の感想】
学校の広さ、教育環境のすばらしさは本当にすばらしい。また、参観者も大変多い。
児童は、のびのびと取り組んでいる。どこにでもいる普通の子どもたちであり、特別に育っているという感じはしない。
別にこだわるわけではないが、あいさつはできていない。しつけを問題にするのではなく、「人」に接することに慣れているかという問題だ。「見られ慣れているが、接し慣れていない」と言うのは言い過ぎか?

教育課程は、後ほどじっくり見てみたい。大胆なカリキュラム編成で、学習指導要領の内容をクリアできるのか、大変興味深い。
校内、至る所に児童の学習の振り返りが掲示してある。また、その方法も多彩でプレゼンテーションの参考になる。卒業作品と思われる壁を飾る作品群はたいへんすばらしい。
こうして参観して、個性化教育の価値は認めながらも、今一度見直す時期に来ている観も否めない。学校は共に学ぶところであるからだ。長良東小を見たからよけいにそう思えてきた。
「読み・書き・そろばん」はもちろん大切だ。しかし、「みる・きく・はなす」も同様に大切だ。計算力を高めるために、個別のプリントで行う方法もあるが、長良で見たように教え合い、高め合う価値と比べるとどうしても見劣りしてしまう。
井上先生が言われた「家でできることは家でやれ。学校でしかできないことをやるべきだ。」「学校はコミュニケーション能力を高める場」という言葉はある程度真であろう。
昨年のノーベル賞受賞により、あるマスコミは「変人とも見られかねない強烈な個性が受賞を招いた。学校は個性を伸ばすべきだ。」と書いていたが、田中さんや小柴さんは変人ではない。ただ、自分流の学びの型を持っていたのだ。学校は、変人を育てるのではなく、その子その子に合った学びの型を身につける場であり、それを支援するのが教師である。そして、それこそが、緒川小のねらうところだろう。
  
総合学習「生きる」は、実践力の育成をねらいとしている。その説明を聞くと、かつて布袋中学校での「実働体験学習」のねらいそのものだ。
創造活動は「独立国活動(児童会活動)」「クラブ活動」「オープンタイム」をさす。いわゆる「創造力」とは違うが、特別活動を「創造」という視点で取り組むと、


学習公開2 オープンタイム (10:50〜12:00)
個人の総合的な学習の時間というより、ひとりカルチャー講座といったほうがぴたりとくるイメージの時間だ。

虫の図鑑を作っている子、編み物、ビーズアクセサリーを作っている子、ポケモンのモンスター?を描いている子もいる。学習になっているのかは疑問の子も少なからずいる。
他にも、算数パズルを解いている子、日本の歴史、木工、バレエ、ピアノ、リコーダー、調理、オリジナルろうそく作り、なわとび、三国志をインターネットで調べる・・・・などなど、活動は多彩だ。
基本的に計画書を出して認められれば何をやってもよいらしい。教師は、個別のカルテに記録をして回っている。

3年特設講座では、折り紙名人が折り紙を教えている。デコパージュ(材料費¥300)やボディパーカッション、Enjoy Englishの講座もある。
「前期のオープンタイムを振り返ろう」という掲示を見ると、取り組みがわかる。
「バスケで10回連続シュートが入るようにしよう」「バントの練習をしてジュニアで生かそう」「50mで8秒をきろう」「フリーキックの練習をしてフリーキックを入れよう」など、3回の練習と、4回目でレポートを作成している。

【土井の感想】
オープン・タイム(以下OT)について
一人一人の取り組みはさすがに鍛えられている。多くの参観者がいようと、意に介さない。
ただ、活動の内容を「学習」ととらえると、首を傾げざるを得ないものもある。あくまでも「学び方」という視点、さらに言えば「ひとりクラブ活動」という見方で見るべきものなのだろう。

OTには関係ないが、
文字のはげみ、数のはげみは、いわゆる公文式の学習だ。
学習効果は認めるし、一時代を築いたことも確かだ。しかし、今の学力観に合っているのかは疑問になってきた。もちろんスキルは必要だが、漢字が書ける、計算ができるというのは、国語・算数の力の一部にすぎない。もっと大きくとらえたスキルが必要だ。
メインでなく、朝のタイムなどの限定的な使われ方がふさわしい。緒川小ではさすがにそうしているようだ。

もう一つはITの活用だ。
問題、結果が一つのサーバに格納され、それを学校でも、家庭でもできるようになれば、さらに幅が広がるであろう。ITの普及は、緒川小の形を変えるかもしれない。
教師がスタッフジャンパーを着ていたのもこれまでには経験がない。

開会行事、研究概要(13:00〜13:50)
宮崎校長挨拶
  オープンスクール25年目。実践研究会も16回目を数える。これまでめざして実践してきたものは、子どもはみんな違うという個別化・個性化教育。一人一人に合った方法でよりよい成長へ導くもの。学校教育すべてに見直しを測り、実践してきた。
 5日制、新指導要領になったが、これまでの実践は新しい教育に重なる部分が大きい。学力低下論などについて、加藤先生の研究調査に基づいた講演がある。これまでも中間発表があったが、今日は最終まとめの講演である。
 今日は、4分科会を設定した。それぞれで講演をいただく。
 今後もいっそう研究を進めていきたい。

東浦町長来賓挨拶
  全国から集まっていただいた。町長になって24年。当時は、オープンスクールについての議論が賛否両論があった。公立学校だけに、社会的認知不足のなかを、土台を作り発展させてきた。
 新しいものに取り組むためには、挫折もある。よく頑張ってきた。
 ここへきて、やっと認められてきた。これからますます存在意義型か高まるであろう。

 首長が教育に口を出すようになってきた。愛知県でも有志の市長が集まり発言をしている。それがこれからどう進むのか、よい方か、スタンドプレーか、これからの教育委員会、先生は正念場を迎える。行政と議論する場も必要。積極的な発言を期待する。

 東浦町は、古い町。縄文前期の貝塚遺跡がある。弥生時代の遺跡もある。
戦国期は、家康の生母、お代の水野家があった。戦国期に揺れ動いた時代の史跡も多い。
戦中戦後は木綿の繊維工業が栄えた。今は、トヨタグループのおかげで、人口も増えてきた。トヨタとソニーが液晶パネル専用工場にできた。1200億円の投資した。
もうすぐ5万人。活気のある町である。
 ブラジルの子が3割いる学校もある。新しい文化が持ち込まれ、地域も波乱に富んできた。
 カルタも作られた。
 今日は実りのあることを期待する。

研究概要の説明
 研究紀要参照

【土井の感想】
すごい人だ。体育館に入りきれない。ホールで中継をしているほどだ。
研究概要はよくまとめられていた。実践があつい理論に支えられていることがよくわかった。

講演(13:50〜14:35)
 演題 オープンスクール25年の成果
 講師 上智大学文学部教育学科教授 加藤幸次

25年前は、オープンスクールは10校ぐらい。85年から多目的にスペースのある学校に文部省が補助金を出し、3000校はあると思う。経済事情、時代性、もあり、ここのようなホールのある学校は少ない。後退しているのではないか。
はじめは壁を取る。英語では「開かれている」。オープンネス、壁がない、何の壁か?
1 教室の壁
2 せんせいとこどものこころが開く 、子供同士の心:縦割り集団など
3 時間を開く:ブロック制、2時間ひとかたまり、
4 教科と教科の壁を開く:25年間総合学習をやって来た。
5 学校と地域の壁を取る:マスメディアの開かれた学校の概念、ボランティアはいまでは当たり前
個性化教育連盟が支えてきたが、よく分かれずに来た。

20周年を記念に追跡調査を始めた。
1千万のお金と膨大な時間を使った。
緒川小と卯の里小(24年目)、岐阜・池田町の池田小学校(23年目)の3校の調査の話をしたい。

わたしは半田の生まれ、2年地元で教師をやった。
研究者はたくさんいるが地元でやれたことは幸せ。今年で定年なので、過去形でお話しする。
20年やってきたところで、どういう形の仕事をしたのかを調べておきたい。そう思って調べてきた。
浅沼先生が修士論文を書かれた手法をまねた。
試案を作り、東京でやってみた。アンケートは43項目。
回収率は20%しかない。発想して返ってこない。15%は宛先不明で返送されてくる。
中学校は中2を対象に。高校は2学年、大学も。一袋160円かかって、返信用90円入れても返ってきてしまう。  
項目は3つある。
・学校で学んでどうだったか。
・自学する人間になったか。
・社会性をもっているか。

中学生は5年前に87名。高校生は51人、大学生は57人、一般はそれ以上。対象群は874名。
T検定は、中高一般を併せて比較している。

5%は100回中、95は同じになる。
小学校への印象は
  
学習についての項目

3月までには最終集計をして、論文を書いてもらいたい。
もう少し早ければ、学力低下論争にならなかった。

別に、インタビュー調査もした。緒川小学校だけで30〜50人ぐらいやった。
先生方にも同様に調査をした。まだ、集計をしていない。
膨大なデータを誰が処理するのだろう?

週間プログラムは概して評判よくない。私は、よかった思っている。子どもたちは自己責任で、苦しんだ。それが頭に残っている。
 子どもによっては、はしょったりする。それが気になっていたようだ。教師だけが週案を作るが、児童も作ればいい。月曜に作るようだが、計画にとても力を入れている。
 町長が、学力低下論の番組を見ていた。「ひきつっていた」そうだ。敵ばかりだったから。
あの時に、このデータがあればよかった。
 5時間議論しながら、教科とか評価という言葉が使われていない。
 戦後の学力論争は、経験主義か系統主義かを専門家間で争った。
 今の学力論争は、素人の間の論争。受験がないから、難しいことを教えないから、・・・・話が通じない。現状は、そういう状態。教育の素人がものを言い出した。
 そういう中で、教科と教科の壁を取り開くところまでやりたかった。緒川は少し踏み込んだが、もう少しやりたかった。
 来年あたり、池田や卯の里が発表してくれたらもう少しデータが育つ。 
 今年中には統計の部分が整理できそう。インタビューも私がやればいいのか・・・ちょうど時間となりました。 

【土井の感想】
 これまで加藤先生の本は何冊も読んだと思うが、誠実な書き方が好きであった。講演もその通りだ。ユーモアも入れながら、控えめに話される。
 
 今日は、オープンスクールの追跡調査の話を聞きたいという目的通りの話だった。調査方法から、これまでにわかった一部の結果を紹介していただいた。
 まだ全体の概要をつかむにはデータが少なく、また、当然予想される結果の範囲内ではあるが、数字で実証されたことの意味は大きい。さらなる分析が進むことを期待したい。

 もっとも印象に残ったのは、学力低下論争についてである。先生が言われたとおり、これまでの論争は専門家の間で行われてきた。しかし、学力低下論争については、素人が、一般の人までが論争を挑んでくる。一億総評論家時代と言われて久しいが、教育がそのターゲットにされている。首長が教育に口を挟むようになってきたという話があったが、発言するならもっと現実を見るべきだろう。
 
 加藤先生の論争相手の発言
「受験勉強がないから学力が低下する」
「難しいことをやらないから学力は低下する。江戸時代にはもっと難しいことをやってきた。」
などに反論する、根拠と実践データをそろえなければならない。 

分科会(含 ミニ講演会)(14:45〜16:30)
どの部会にしようか迷ったが、国立教育政策研究所初等中等教育研究部長の高浦勝義先生の話を聞きたかったため、中学年部会を選択した。

 内容は紀要参照

このあと質疑応答。
Q ひとり学びで学習システムに乗れない子にどのような支援をしているか 
A 個別にアドバイスや援助を放課後などにもしている。  
  集団での練り上げは、ひとり学びがきちっとできないとできない。 
  シート学習には乗れない子もいる。ビデオや音声も活用している。
  緒川小学校でも一斉学習はある。みんなで話し合う場面もある。
Q 国語や算数がなくてもよいのか        
A 紀要にあるよういに行っている。4年生では、学習基礎に国語120時間、算数153時間、健康で国語13時間、算数7時間、表現では国語15時間ある。 
Q はげみ学習とマスタリー学習の違い、さらに教師集団のグループワークは?
A はげみは全校体制。文字(漢字)と数がある。無学年制で全校体制。
  マスタリーラーニングは、単元内でのチェックテスト。学年、学級体制
  週プロはワークシートを活用し、学年、学級である単元で行うもの。学習方法を身につけるもの。基礎・基本はおさえる。

高浦勝義先生
緒川小学校は研究開発学校。学習指導要領を離れてもよい。
研究開発学校が終わったときにどうするかが課題。
少人数指導は、もともとは一斉授業でない授業を開発するために始まったが、少人数学級で指導するようになってしまっている。
はげみ学習は家庭教師並の少人数指導。
少人数は、学級集団を離れて授業をするのが前提。
愛媛の附属が少人数のパンフを出したが、いろいろある。

A 学校便りではげみやマスタリーの説明をしていることに感心した。
Q 三年峠を中心に見てきたが、学習指導要領の内容が込められていた。
  グループ(音楽・大道具・群読など)によって、(音楽・図工・国語などを)やることやらない子が出てくるが、どうするのか。
A まず国語でやった。それ以後全員で音楽や大道具、衣装などをやった。さらに深めるためにグループに分かれた。
Q 一般の学校では自由にできないのか、やっていけるのではないかと思うが
A 8,9割はできる。一般校では名前を変えるのは難しいが、内容的には9割近くできると思う。
Q 朝の時間は何をやっているか。
A 火曜から木曜は30分のはげみタイム。金曜は読書タイムとして、自由に読む。
Q 年間カリキュラムは何年ごとに見直しているのか
A 毎年3月に見直している。
  子どものカードは、6年間綴ってある。それを見て変容を把握する。

高浦勝義先生
  総合は評価に関心が移った。授業は大丈夫か?評価に耐えうるか?
英会話などに総合の時間がとられてしまう。
 英語が楽しい授業をするというのは嘘だ。外国へ行くと、涙が出るほど苦しい。
 総合はねらいがしっかりしていないとだめだ。
・一番多い間違いは、総合は学び方や問題解決の時間と考える学校。総合は学び方だけではない。
・問題解決学習は教科でもしなければならない。
・知の総合化をするのが総合。これも
・横断的・総合的な学習。横断的は教科の横断で、総合的な学習が総合。
・総合は生活科の延長です。ある意味では正しいが、生活の捉え方が間違い。
・情報と英会話だけやればよいと言う考え方。

総合は、(1)問題解決学習、(2)学び方、主体的創造的な探求の態度、自己の生き方
態度までは教科の学習でも必要。
特に自己の生き方が総合の部分。

生き方:朝起きてからねるまで ;生活科の延長。社会・理科ではない。  
 豚を飼うのは、養豚農家になるためにやっているのではない。

6人で総合的な学習について考えたが、  
環境で言えば、エルニーニョ現象が・・・・・・これは理科。
  自分が環境に優しい生活をしているのかどうか考えるのは総合。

今問題になっているのは、評価規準。(達成目標の目安)
評価の4観点をもとにして作る。
4観点はどこから出ているか。「自ら学び・・・・」から出ている。関心態度、思考判断、技能表現、知識理解 学びの課程である。重要度の順番ではない。
総合の評価の観点を例示をしている。
1 課題設定の能力、問題設定の能力、
2 学び方ものの考え方、主体的に生きる態度、自己の生き方
3 情報活用能力やコミュニケーション能力

それぞれプッシュしたグループが違う。
わたしは2がいいと思う。

1だと20年前(S55年2月の指導要領)にかえる。観点別指導目標。内容と観点が一対一対応していた。教科の内容から決まっていた。

今のは平成3年がベース。学び方から決まった。自己教育力、今で言えば「自ら考え、主体的に・・・・・・」
 たとえば、かけ算の勉強だけでも4観点いる。過程だから。

学びかたからきまったのだから、順序が変わった。関心が1で知識が4、これは重要度を示すのではなく、学ぶ順序に合わせたため。

評価規準:時間通りに終わることができる
評価基準:A じゅうぶん満足できる;ちょうど終わった
       B おおむね満足  ;少し前に終わった
      C 不十分;延長した
(到達するための達成状況)

外国ではルーブリックをつくっている。
総合でも4観点でABCを作ってもよい。個人内評価も絶対評価もおなじ4観点でできる。通知票もそうすればよい。ここで大切になるのが、評価目標が何をもってどう評価するのか、評価資料が必要。

学習カードに、○をつけるのがあるが、なぜ子どもがそこに○をつけたのかがわからなければならない。少ない資料で評価が基本。使わない資料は集めない。集めた資料は十分使う。
指導と評価の一体化や外部への説明責任のために使う。
 
総合的な学習の評価の研究をしている。来年度にはまとめが出せると思う。
ある学校で、単元目標と評価基準をつくった。
関心意欲態度、 思考判断、 きづきをかく

指導案には、児童の活動、教師の支援を書く。その横に観点別に書いてほしい。そこでBやCなら自分で作った指導計画を見直す。それが指導と評価の一体化。

今回二つのレベルを考えた。
1 教師が評価を主導する方法
  「このカードに書いてね。」ここで基準があれば便利。

2 子どもが計画を作って自分で評価する。   
   ニューヨークハイスクールでは入学時に卒業までのスケジュールをだす。この問題ができれば卒業。実際に自分で計画して、2年で卒業するものもいる。

劇でも、「もっと大きい声でしゃべります」「大きいって?」「体育館でも?」目標が明確になり、自分で目標に向かって努力するようになる。結果もよくなる。

明確な基準で
子どもたちが評価したものを数値化できる。それをもとにすれば、文章化もできる。

基準がいい加減だと、先生は信用されなくなる。子どもたちとの距離が遠くなる。

【土井の感想】
質問者の出身地から、全国各地から集まっていることがわかる。
高浦先生の話は大変興味深かった。
さすがに総合的な学習導入の中心人物だ。説明はきわめて明快だ。もっと早く聞いていればよかった。これまで、二次情報を数多く聞きすぎた。
平成3年の4観点の順番の変更の意味も今日初めてわかった。これまでは重要度だと聞いていたが、そうではなかった。学びの活動の順番なのだ。
こんな基本的なことをこれまで知らなかったなんて恥ずかしい。

ただ、あまりにも短時間に多くの情報があったため、消化不良もあった。もったいないことをした。
もう一度、高浦先生の話をじっくりと聞きたい。

【全体の感想】
終わってみれば、高浦先生の話でそれまでのいくつかの思いが飛んでしまった。
生活科の中野先生の話のように、やはり導入の中心人物の話から聞くべきだ。それを理解した上で、他の学者の話を聞くのはよい。順序が違うと、大きな遠回りをしなければならない。
総合的な学習、評価規準と基準の理解がすっと通った。

よく、「自己の生き方を考え」の部分で、人生観のようなものまでイメージしてしまうが、高浦先生は「朝起きてから寝るまで」と、「生活」と言い切った。総合的な学習は生活科の延長なのだ。
そう考えると、ずいぶん吹っ切れた。