平成14年11月12日(火)平成13・14年岐阜県教育委員会指定 特色ある教育課程実践推進事業公表会   社楽第179回へ
研究主題 「ふるさとを愛し、たくましく生きる力をはぐくむ教育課程の開発」

以下の記録は、土井が参加しながらモバイルで記録したものです。当然、言葉足らずのもの、誤解があるかもしれませんが、学校や授業者には全く責任はありません。ご了承ください。 

関ヶ原町中学校2校、小学校4校による研究である。
関ヶ原歴史民俗資料館に車を止めて南小まで歩く。関ヶ原の町中を歩くのは初めてなので、マイクロに乗らないで、自分の足で歩く。首塚やら、徳川家康最後陣、藤堂高虎陣など、歴史的ファンにはたまらない表示が次々にある。関ヶ原は、全国でもっとも有名な町ではないだろうか。歴史のある町はうらやましい。
 
町内全小中学校での発表だが、時間の都合で、午前 関ヶ原南小、午後 関ヶ原中を参観
《関ヶ原南小学校》
 すでに5年生は、わざみの学習(総合的な学習)を始めていた。ベッドや車椅子を使って介護の体験をしていた。やっていることはけっこう本格的だ。
 6年生は、廊下にこれまでの総合の流れを個々に毎回カードを貼り足して毎時間の足跡を残している。グッドアイデアだ。
【公開1時間目】
4年1組 社会科「私たちの関ヶ原祭」を参観 増田英雄先生
 教室に入った瞬間、集団の雰囲気の良さを感じる。先生の人柄と指導力のなせる技であろう。確かに顔も声も、資料のプレゼンの仕方もいい。
 単元のテーマ「関ヶ原祭りが240年続いた秘密を調べ年表にまとめよう」
 これまでにやってきた提灯作りを振り返り、プロの後藤さんとの比較をする。意見を出し合った後、課題を作る。「後藤さんのすごいところを見つけよう」に決まるが、違う意見を言った子へのフォローもなされている。
 調査の方法は?聞いてみる、写真を見る、思い出す、年表カードを見る、(3つの提灯をつけた後)これからも見つけることができるね。学び方の指導も怠りない。
 課題を全員で復唱した後、いくつみつけるかな?何分までにできるかな?など、意欲を高める言葉でじらしている。このあたりもうまい。
 当然、「初め!」の合図ですぐに児童が動き出す。流れがある。
 
 活動中、算数の少人数を見に行く。2年生2クラスを解体して、3クラス(こつこつ、のびのび、ぐんぐん)の習熟度別のような感じだ。基本的に学習課題は同じで、6本1セットのローリーの本数を調べるものであるが、アプローチの方法は異なる。また、1年生は附属幼稚園で園児と一緒に活動している。
 
 社会科に戻る。
 児童はワークシートの観点(ひごを切る・和紙を切る・和紙を貼る・絵や字をかく、その他)に従って、後藤さんのすごいところをまとめている。
 ここまで25分。ここで児童は席に戻る。教師は「すばらしい!」などのほめ言葉が多い。ここで意見、全員の手が挙がる。
 一人の女の子が3つの観点から発表。拍手がおこる。すぐに付けたしの手が挙がる。このあと、次々に意見が付け足される。明るい雰囲気だ。
 教師は男子にも「○○さん」と呼ぶのは、長良東小でも同じ。男子も女子も男子のことを「こうたろうさん」とさん付けで呼んでいる。
 意見は、単にうまい・速いから、「のりの無駄がない」など深まっている。発表が始まって15分たつがいまだに意見がとぎれない。
 最後の5分間に後藤さんの説明が始まる。
 児童は自分たちが作った提灯は「売れない」でも「捨てられない」と言ったが、後藤さんの提灯は「失敗したら破棄する」と言った。その言葉が効果的で、児童にプロの厳しさがわかったようだ。
 この後年表カード(振り返りカード)に各自が記入する。いわゆる学習のまとめであり、自己評価でもある。
 
【公開2時間目】
 6年生のわざみの(総合的な学習)を参観。2学級が3人の教師、4つの会場に分かれて学習する。活動40分、ふりかえり5分、交流10分という55分授業。
 教室には「PRの方法を工夫して、調べたことを伝えたり広めたりする準備をしよう」とあり、「絵本作りの手順」「切り絵ポスター作りの手順」「劇作りの手順」が示されている。学び方の指導が定着している。その手順に従って、児童がグループごとに活動している。地域の人に、太鼓を習うグループもある。
 廊下の習字作品に手を加えていないことに気づく。付箋紙に評価が貼ってある。今の流れか?
 
 ここで4年2組の社会科に移る。4年1組の続きの活動にあたる。10時35分スタート。小懸美幸先生
 課題は黒板にすでに書かれている。前時に決めたようだ。「後藤さんが提灯づくりを17年間続けてこられたのはなぜだろう」
 児童は、すでに自分の考えを持っているようで、次々に発表する。発表者が立つと全員がその方を向き、聞く指導がなされている。最近の傾向は、「聞く」指導がなされている事だ。
 「誰もやらない、跡を継いだ、注文がある、ありがとうといわれる、喜んでもらえる」→やりがいがある
ほとんどが「喜んでもらえる」を支持。どうやって調べる?資料、聞く。「では後藤さんに聞いてみましょう」
「挨拶しましょう!あいさつの時は一番いい姿勢、いい顔、いい声でね」教師の指示に配慮がある。
 このクラスの先生も、笑顔、言葉などレベルが高い。少ないデータでひとくくりにするのは危険だが、長良東や加納、附属など、岐阜県の先生のレベルは高い気がする。
 ここで後藤さんが話をして、ここで新たな課題が生まれる。「何分あれば調べられる?」さりげない言葉が児童のやる気と集中力を高めていることがわかる。このあたりの教育技術は、もって生まれたセンスに負うところが大きい。
 児童は積極的に後藤さんに群がり質問、またはこれまでの年表を食らいつくように見ている。
 
 ここで6年生の総合に移動。それぞれの活動をしていた。パソコンでまとめているチームには、母親らしきボランティアの人がついて指導している。
 つかむ、見通しを立てる、取り組む、深める、まとめる、ふりあえる の流れで全体をとらえていることが、掲示物からも伺える。
 
 4年生に戻る。発表が始まる。全員起立し、誰かと伝え合った人から座っていく。自分がよくやる手法だ。
そのあと「Bになりましょう!」の指示で、みんなが向き合う。話し合いの体勢だ。一人の発表に対して、「違う意見です!」とほぼ全員が挙手。このあたりのやり方はいろいろあるが、個人的には好きだ。子供らしくていい。先生は、さりげなく、すばやく手を挙げた子、挙げない子をチェックしている。高い技術だ。
 意見が続く。「Aにもどしましょう」で前を向く。
 「後藤さんはなぜ跡を継いだの?」みんな手をあげるが先生の「手を降ろして!」の指示。緊迫したムードはいよいよクライマックスであることが伝わってくる。
 意見をまとめた後「ここで提灯をつけてみよう」「うわ〜」「みんなどんな気持ち」「うれしい」「なぜ?」
 この言葉をきっかけに次々にお客さんの気持ち、後藤さんの気持ちに迫っていく。ここで「作ってもらった人の気持ちをビデオで見てみよう。」たった1分のビデオだったが効果的だ。ビデオと説明は短いほどよい。
 最後に、後藤さん「(ビデオの言葉は)私の胸に刻み込まれています。祭りをこれまでも続けていこうと思ってつくらさせていただきます。」 地域の人のために・・・徐々にやりがいに結んでいった。
 全体に自然な流れで、うまく児童を誘導しながらも、決して教師主導でない見事な組立である。講師の出番も必要最小限で、無駄がない。4年生2クラスとも立派な授業であった。
 このところの研究発表は、どこもPTA参観も兼ねている。それでいいと思う。
 
《関ヶ原中学校》
 かなりの距離を歩いた。どうも道を誤ったようだ。熊が出そうな林を抜けてやっと学校の反対側に到着。掃除中であった。すれちがう中学生が元気よくあいさつをしてくれる。それも笑顔だ。こんな中学校はあまり経験がない。初めてかも?
 
 昼休みに合唱練習をしていたが大変レベルが高い。そこでまず音楽の授業を見に行ったが・・・驚いた。
ピアノ・指揮を除くと女子10名、男子16名。全員がNHK合唱コンクールの雰囲気だ。姿勢ができており、口の開け方ができている。音楽の和田由美子先生がすごいキャラだ。ぐいぐい引っ張っていく。
 歌詞を大切にして、言葉にこだわっている。自然に口の形もできてくる。この地域では有名な先生なのだろう。ここだけ教室が満杯で中に入りづらい。
 教室には生活ノートがあり、生徒は毎日反省を書いている。それに対して、先生も朱をびっしり書いている。こうした努力は大切だ。
 男子生徒が司会していたが、同じ男子に「○○さん」と呼んでる。新鮮だ。
 
 音楽以外は、生徒が主に動いているので、なかなか教師の動きがわからないが、3年生の生徒の前での発表能力は目立ってよいわけではない。個々の意見はまあまあのレベルか。
 1年生は、鉱物の学習のまとめとして、地域の砂を顕微鏡で調べて、地域の過去の様子を探っていた。内容はおもしろく、生徒の活動も活発だ。
 学校全体でウェビングを活用している。3年生の授業でも、個々でウェビングでまとめをしている。廊下の掲示もウェビングが多く見られる。それにしても、先生が若い。
 
 南小学校でも思ったが、一人の先生に名古屋弁と関西弁が混じっている。関ヶ原は中部と関西の間になるが、言葉までもそうか?一人の中でおおよそ名古屋弁が7割・関西弁が3割のイメージだ。
 
 3年生は、「ふるさと再生、発展、関ヶ原」というテーマの総合的な学習で、本時36/77である。3クラスを解体して、5人で行っている。最終的に町への提言を前提としており、「食コース」「観光コース」「芸能コース」「未来コース」「街コース」に分かれて学習している。
 今回は、中間交流会を前にして、これまでの追究内容が本当に町へ提言できる内容なのか、見直すことを目的としている。町への提言を最終目標にしている点は、「参画と貢献」のキーワードにあてはまる。

 授業の後に、学年合唱、全校合唱があった。やはり、合唱で学校を引っ張っていることがわかる。こうしたことのできる先生がいることがすばらしい。
 3年生は「学校の伝統である合唱を・・・」と言っていた。一人一人がその意識がないと、なかなかここまでは歌えない。男子が女子(33名)の1.5倍近くいるため、女子のパワーが必要だが・・・
「きこえる」:しっとりと歌い上げている。強弱も見事。フォルテではやや女声が弱い。高音の音程がやや下がる子がいるのはどこでも同じ。中音域のハモリ、声の溶け方は見事だ。発声法をそろえないとできない。
「大地賛」:8名によるアカペラから始まった。電気ショックを受けるほどすばらしい。途中から全員が参加。男声がしっかりしているので安心して聴ける。音程感も高い。男声の何人かはすぐにでも大人の合唱団に出演できる響きだ。
 
 次は全校合唱。これだけの合唱を目の前で聴いて、1,2年ががんばらないはずがない。文化委員会を中心とするハーモニーデーで練習を積んできたそうだ。
「旅立ちの時」:文句なくこれまでに聞いた全校合唱の中でのトップだ。とくにこれだけ響く男声は聴けない。音程がやや甘いのは全校合唱ならやむを得ない。
 これを聞けただけでも来た甲斐があった。それにしても、歌は正直だ。合唱を聴けば、学校の評価ができてしまう。中学校は合唱と部活の占める割合が余りにも大きい。
 
《全体会》 
あいさつ: 岐阜県教育委員会、関ヶ原町研究企画委員会 
研究発表
1 総合的な学習を学んだ児童・生徒による座談会 
テーマ「総合的な学習で学んだこと」 司会もパネラーも子どもだ。
自己紹介のあと、司会(関ヶ原中)どんな活動が思い出に残っていますか?
今須小 「名人の上田さんと一緒にしゅもくを使って山で木登りをしたこと。」しゅもくとは?「真ん中に丈夫なロープがあって、木が巻きつけてあるもの」「疲れたけど楽しかった」
関ヶ原南小「東町太鼓は雨乞いの踊りをして、昔は太鼓を担いで山の神社に上っていました。その気持ちを知ろうと上りました。」
関ヶ原中「2年生の後半から3年生まで観光コースに所属している。観光施設に話を聞きに言った。関ヶ原は宿泊施設がない、高齢者の客しか来ない問題点がわかった。子供向けの学習施設が必要だ。地域でも、清掃や旗を立てるなどの活動をしていることを知った。子供のためにクイズづくりなどをしているが、今後も町が活気づくように工夫したい。」他の問題点は「雪が多く、交通が不便。秋には観光客が多い。」
関ヶ原北小「福祉領域で活動した。困っていることを聞いて、自分でできることは解決しようとした。」
どうやって調べた?「体験やインターネット、施設でのアンケートで調べた」
工夫した点は?「アンケートを大きな字で書いたり、耳が遠い人のために画用紙で質問した。」
今須中「ふれあい21に参加。ビデオで撮ったり工夫した。」「町民に来てもらえるように工夫をしていることを知って、よい町だと思った」
司会(関ヶ原中)「働くお年寄りに目を付けて調べた。みなさんは何を学んだか?」
今須小「総合的な学習で今須の杉が有名なことを知った。」
関ヶ原南小「太鼓には努力や願い、気持ちがこもっていることを知った。」「若い人にやってもらいたい、続いてほしいという願いがあることがわかった」
関ヶ原北小「町内にはすばらしい施設がある。自分の家族がその施設に行ってしまったら寂しい。施設は立派でも家族と離れると寂しい。」
今須中「地域振興課では町民のために行事をしていることを知ったので、これからは町民として参加したい」
関ヶ原中「前にはわからなかったことが、観光施設の人に話を聞いて、苦労や生き甲斐を学ぶことができた」
司会「追究活動を通して、関心が高まってきた。お年寄りの人が町のために働いていることを知り、私たちも何か町のためにできることはないか考えます。以上で終わります」
 
 最近は、子供を発表の中に組み入れることが増えてきた。ショーとしておもしろいし、それなりの説得力を感じるが、本当にこれがよいのか考える必要がある。
 
研究発表
関ヶ原のイメージ:ふるさとに誇りを持つ子に
町全体の願い
子供と地域の実体をふまえ、自己の生き方を考える子を育てたい ためにテーマを設定した。小中9年間で、ふるさとを愛する子に、そこで各校で連携して具現化を図ってきた、
総合的な学習の指導計画と開発
 ふるさとを愛する心をはぐくむこと亜出来、解決すべき課題がある。
 小中で同じことをやる場合もあったため、町としてつける力を明確にした。
2 授業改善の推進
   教科の授業を振り返り、自ら学び、自ら考える力を育てようとした。
3 5校の連携。 
 
歩み
 研究の足場固め。町としてつけたい力を明確化し、各校で指導計画、教育資源の共有化、題材系統表の作成
2年目は組織を整備 
 
総合
ふるさとを愛する心、生涯に和たてたくまし悔いきる力
 自らか大を見つける力、課題を解決する力、・・・・
 
 情報活用能力、共生の力:このような力を一貫して育てる系統表を作成した。
 各学校では、これに従って系統表を作成。学年テーマを設定し、年間指導計画を作成、題材系統表を作成、歴史・環境などでまとめる。年間指導計画には、多領域や多学年との関連もとらえなおした。
 学習課程や指導援助にもつとめる。
 
十分な時間をかけた課題づくり。
観点を持った振り返り
 
研究2授業改善
 明確な課題のある授業、体験的問題解決的な学習を位置づけた授業、一人一人に対する指導・援助のある授業
研究3 全教員がどちらかの部会に所属:校区の教育資源をデジタルで作成
 
成果と課題→パンフ通り
 
指導講評: 西濃教育振興事務所
あいさつ: 西濃教育振興事務所、関ヶ原町教育委員会教育長 
 
《全体を通した感想》
 やはり岐阜県はレベルが高い。なぜか?教育振興事務所の存在か?
 組合の組織率が低く、勤務時間にこだわらずにがんばる教師が多いと聞いたことがあるが、果たしてそうなのか。もしそうだとしたら、組織率100%近い愛知県をどうとらえたらいいのだろうか。大学との連携も強いと聞くが、どの程度か?知りたいことばかりである。
 さて、町ぐるみで小中一貫した研究は期待以上の内容だった。幼稚園を含めた連携以上の効果がある。それは、行政を含めた大人が、子どもためという一つの方向で一致した動きを見せた事が大きいと思う。 
 指導講評は、なかなかうまく整理されていた。
なかでも、学び合う姿を、友達の意見に反応しているか、友達と高め会って成長した姿を気づかせているか、などと観点を明確にしているのが勉強になった。