教研資料 心理学の紹介   川井 栄治先生のレジメをもとに土井が理解した範囲でまとめました 

 1 心理学ってどんな学問?
   心理学とは、人間を理解していこうとする学問で、ユング、フロイト以後の心理学の流れが示されています。

 2 交流分析(Transactional Analysis:TA)について
   アメリカの精神科医、エリック・バーンが提唱した、精神分析の口語版といわれるもの
 (1) 構造分析
   人格の構造を、Parent(親の自我状態)、Adult(大人の自我状態)、Child(子どもの自我状態)に分け、自我状態を分析するもの。
   さらにParentはCP(批判的な親)、NP(保護的な親)、ChildはFC(自由な子ども)、AC(順応する子ども)に分けることができます。
   これらのバランスが崩れたときに、悩みや葛藤、対人関係でトラブルが起きます。

   フロイトの心的構造における、超自我(良心や道徳、社会的規範を基準とした心)、自我(超自我とイドと外界との間を取り持ち仲介する心)、イド(自己中心で快楽のみを追求する心)、がそれぞれ P、A、Cに対応していると考えることができます。

 (2) 心的構造の発達過程
   心は三重(超自我、自我、イド)の構造により成り立っており、そのバランスが性格や行動を決定します。
 児童前期にはいずれも未発達ながらバランスがとれているのですが、前思春期にはイドが、思春期にはイドと超自我が大きくなり、バランスが崩れ不安定になります。
 
 (3)交流パターン分析
   P,A,Cを利用し、日常のお互いのやりとりを分析できます。

  相捕的交流:例えば互いにA同士で交流した場合のように、刺激と反応のやりとりが平行している交流。安定した人間関係が保たれます。
  交叉的交流:AからAに送った答えがPからCへ返された場合のように、人がある反応を期待して始めた交流に対して予想外の反応が返ってくる交流
  裏面的交流:反応にウラの心がある場合。

 (4) ストローク
  ストローク(stroke)とは、その人の存在や価値を認めるための言動や働きかけで、人間が心身共に成長するために欠くことができない生物学的刺激のことです。肯定的ストローク、否定的ストロークがあり、それぞれ無条件・条件付きに分かれます。
 肯定的な無条件のストロークを十分に受けて育った子どもは、他者からの賞賛や承認を素直に受け入れることを学び、自分が属する集団に与えられる賞賛も自分の喜びと同じように受け入れることができるといわれています。
 ストロークがない状態が最悪で、ストロークをもらおうとして否定的ストロークをもらう行動に出ます。
 無視させるのが、人間は最もつらいのです。

 (5)基本的構え
  自己や他者や世界に対する基本的な反応態度、あるいはそれに基づく自己像や他者像は、幼児期に良心とのふれあいが主体になって培われます。
 自己はOK、自己はNOT OK という自己の軸、それと垂直に交叉した 他人はOK、他人はNOT OK という軸で説明されています。
 
 自分はOK・他人もOK     → 自他の調和・共存(真の人間尊重、協力関係、平和主義、真の自己実現)
 自分はOK・他人はNOT OK → 排他主義(強い自己愛、野心家、独善、妨害、非行、犯罪)
 自分はNOT OK・他人はOK → 交流の回避(自己軽視、対人恐怖、劣等感コンプレックス、うつ反応)
 自分はNOT OK・他人もNOT OK → 拒絶・閉鎖(基本的不信感、虚無主義、放棄・絶望、精神病・自殺)

3 教育とカウンセリング
 (1)カウンセリングとは
     クライエントとカウンセラーの人間関係を媒介にして、クライエントが自己発見をし、成長と発達をしていく過程。

 (2)教育的な指導とカウンセリングの相違
     教育は知性に焦点を合わせるが、カウンセリングは情動的。
     教師がカウンセラーになりにくいのは、すぐに理屈で教えてしまうから。いっしょに考えることが大切。
 
 (3)カウンセリングのカテゴリー
  @ 治療的カウンセリング
  A 予防的・開発的カウンセリング
      キャリア・カウンセリング
      構成的グループ・エンカウンター
      サイコ・エデュケーション
       
4 おわりに
  
小学校
低学年は言語によるカウンセリングはしにくい。遊戯療法や箱庭療法が有効。子どもの社会化のためには、予防的・開発的カウンセリングを進めていく必要がある。
  学校におけるカウンセリングの一番の利点は、子どもの心に寄り添った方向へ教師の見方が変わること。

参考文献
 『わかりやすい交流分析』中村和子・椙田峰康 1984 チーム医療
 『交流分析入門』桂 載作・杉田峰康・白井幸子 1984 チーム医療
 『学校カウンセリング』友久久雄 1999 ミネルヴァ書房
  
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