○浜井 『次に飛行船の研究についてであります。 本年2月の鹿児島産業経済交流団に参加した私は、機内誌の「昭和4年、人類の空翔ける夢を乗せた世界一周の旅にでた飛行船“ツェッペリン号”が、日本の霞ヶ浦に寄港したとき、飛行船に乗った1人の日本人の少年の写真を探しに、ツェッペリンゆかりの地」を尋ねるという文章に心を惹かれました。 結局、写真は見つからないまま、「思い出の写真は、誰もの心の中にひっそりと浮かんでいるのだ。」と、文章は結ばれていました。 鹿児島訪問時も、今回の北九州視察でも、それぞれ移動の車中から、飛行船が係留されている光景を目の当たりにして、飛行船に対する思いがふくらんでくるのを感じました。 飛行船は、1900年、ドイツのツェッペリン伯爵によって第1号が作られ、その後ドイツ全土10都市を結ぶ航空路線の開設が果たされます。 当時既に、飛行機はありましたが、航続距離が短く、エンジントラブルが多発するなど、旅客を運ぶという概念がない時代でもありました。 昭和4年に霞ヶ浦に飛来した飛行船は、その前年に完成した「グラ−フ・ツェッペリン号」で、全長235メ−トル、航続距離1万メ−トルという地上最大の飛行物体でした。 1930年代に、全長245メ−トル、乗員乗客100人乗りの「ヒンデンブルグ号」が開発され、1936年には、同船による大西洋航路が開設されました。 しかしその翌年、悪天候の中をニュ−ヨ−ク郊外での着陸寸前に水素ガスが爆発炎上して乗客乗員97名中35人が死亡するという大惨事を起こしてしまいました。 この事件を契機に、飛行船時代は終焉したといわれてきましたが、今から14年前にツェッペリン社が再興され、カ−ボンファイバ−や不燃性のヘリウムガスなどを使用した新型飛行船「ツェッペリンNT号」が再び開発されました。 株式会社日本飛行船の渡辺社長は、「今日、ヒンデンブルグ号クラスの飛行船は、新素材の登場やコンピュ−タ−による最新の航法、気象、通信システム設定、太陽電池の開発など、当時とは状況が違っている。アッセンブリ−産業を得意とする日本が、主体になって作ることは可能だ」としています。 同社長が、近い将来、45人乗り、85人乗りという大型飛行船の開発計画の夢を持っているというのは大変魅力的です。 飛行船は、離発着に長い滑走路を必要としないこと、係留も陸上なら約400メ−トル四方の芝生などの広場に20トンのクレ−ン車1台で十分で、浮体構造の水上基地やウォ−タ−フロント周辺を利用した運用も可能とされていますから、新たな地域づくりの素材として最高ではないかと思います。 飛行船は、陸地から300メ−トル、海上なら600メ−トルの上空を、時速90キロから125キロで静かに移動するとされています。 また、連続24時間の空中静止が可能ということですから、災害時の物資の補給や救助、空中管制あるいは各種の調査計測や広告媒体などの多分野に、力が発揮できそうです。 伊豆半島のコミュ−タ−空港の代替機能として活用する、あるいは伊豆地域へ係留施設を誘致することも考えられます。 さらに県内の主要な観光地である浜名湖や富士山周辺に係留基地を作り、富士山静岡空港とのコミュ−ト機能と、それぞれの観光遊覧に利用できれば、誘客対策として最高です。 日本列島の中心に位置する本県に飛行船の係留基地を有すること、できれば新たな飛行船の建設基地を誘致できれば、21世紀の本県のポテンシャルは大いに高まります。 本県は、日本列島上の立地性を活かして、飛行船の研究に着手すべきだと思いますが、ご所見を伺います。』 ○花森企画部長 『富士山静岡空港についてのうち、飛行船の研究についてお答えいたします。 議員からご紹介のありました、民間で運行されております飛行船「ツェッペリンNT号」につきましては、昨年開催された「愛・地球博」での宣伝飛行に際して、本県に係留について打診がありました。 その折、様々な検討の結果、運行事業者は、飛行経路について中間的な係留地として旧浜北市内の工場跡地を確保し、現在も必要に応じて利用していると伺っております。 現在、飛行船は広告媒体として活用されておりますが、低空・低速かつ長時間の対空性などの特性を生かすことにより、地震などの災害時の救助活動や海難救助、水質調査、さらには、富士山、南アルプス、伊豆半島、浜名湖などの豊かな自然景観を楽しむ観光遊覧など、将来に向けて、本県においても多様な活用の可能性を秘めているものと考えております。 しかし、一方では、需要、採算性や運営体制等の検討、係留基地としての土地の確保や格納庫等の整備など、様々な課題がありますことから、今後、各関係方面からの情報収集等に努めながら、導入の可能性について研究を進めてまいりたいと考えております。』 |
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飛行船の研究について |
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平成18年6月議会 本会議