○浜井 『中小河川の環境整備についてお尋ねいたします。 日本人の想像する最も一般的な原風景は、山のふもと、山の端に住み、目の前には小川が流れ、その川の向こうにはなだらかな丘が広がり、その先に再び緩やかな山が連なっている光景だと言われています。「兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川」は、まさにこの光景の中に点在しているのであります。 そしてまた、太古、人類の祖先も含めて、地球上の生命は海から発生したといわれ、世界の主要な文化、文明も川のほとりに起こっていったという事実を考えますと、生きとし生けるものすべてのものにとって、水を集め、いずれも海に向かって流れてやまない川は、命と魂のふるさとであるといっても過言ではないと思います。 しかし、地形が急峻で降水量が多い日本の自然条件は、極めて厳しいものがあり、川はそのはんらんによって生命、財産を一瞬のうちに奪い去る恐ろしい存在でもあります。 特に高度成長期に入っての急激な都市化の進展は、自然開発によって、保水や遊水の機能ばかりか、従来川の持っていた生態系をも消失させていきました。また、生活排水の流入によって水質は汚れるに任せ、効率的な機能追求のために、.川は地域住民とのかかわり合いを薄めて、対立する存在として位置づけられていたように思われます。 最近になってようやく、川を市民生活の中に取り戻して、緑と潤いを持たせ、治水機能一辺到であった川を親水性のある川へ再生させようとする動きが活発になってきました。 第四次全国総合開発計画においても、「水と緑のネットワ−クの形成」の項で、「水と人とのかかわりの再構築を目指す。都市においては、水面空間、水辺空間の有するオ−プンスペ−スの確保、自然とのふれあい空間の創出、非常時用水の確保等の多様な機能を復活確保するため、これらの空問を緑とあわせて配置し、水辺を生かしたまちづくりを進める水と緑のマスタ−プランを策定する」とうたい、昨年の9月に閣議決定された第7次治水事業5箇年計画における概要は、安全で活力ある国土基盤の形成、杜会経済の発展に向けての水資源開発と並んで、潤いと触れ合いのある水辺環境の形成を基本方針としているのであります。 こうした状況のもと、新年度予算において建設省は、治水対策事業の整備推進の諸施策にあわせ、新規事業として「河川とその周辺の良好な景観の形成を図るため、堤防の強化とあわせ、堤防に植樹を行う桜堤モデル事業」、そして「住民による堤防の良好な維持と河川空間の適切な緑化を積極的に推進するラブリバ−制度.の創設」を予算化しております。 我が県内には、一級、二級河川の数合わせて89水系525本、準用河川808本があり、うち二級河川の延長はおよそ2800キロメ−トルで、全国平均を220キロ上回って、延長数において第16番目であります。 そのため、非常にたくさんの住民団体が、地域の河川を再生させようとして、さまざまな活動を展開しているのであります。昭和46年以降、県内における河川愛護団体の表彰数は206団体に上り、そのほかにも他の任意の機関や新聞杜等、氏間の表彰を数え上げれば、恐らくさらに大きな数字になると思われます。 継続的に、しかも自発的に草を刈り、愛情を持って稚魚を放流しごみを拾う、こうしたこれらの団体に属する人々の心の中には、集会所や公民館や体育館では求めることのできない、また別のすがすがしいコミュニティがあると思うのであります。 自然の天蓋のもとで、何よりも川をよりどころとしたコミュニティでありますから、ふるさとの川はコミュニテイ−リバ−であると思うのであります。 県当局におきましても、県単独河川改良事業費、県単独臨時河川整備事業費に加えて、新年度より新規に河川特別対策事業費が予算計上されて、治水対策にっいては評価すべき体制が整ったように思いますが、こうしたコミュニティ・リバ−となっている地域中小河川の環境を整えていくことは、地域におけるささやかなリゾ−ト開発でもあると思うのであります。 知事は、このような環境整備についていてどのように考えておられるか、お伺いをいたします。以上をもちまして、湖と川を主体とした私の質問を終わらせていただきます。』 ○斉藤知事 『中小河川の環境整備についてでありますが、水と緑の貴重なオ−プンスペ−スとして、河川空問の持つ価値が改めて見直され、最近、潤いと触れ合いのある水辺環境づくりが脚光を浴ぴていることは、大変喜ばしいことであると思っております。河川環境の整備につきましては、私はかねてから深い関心を持っておりまして、建設大臣のとき河川審議会に対し、今後の河川環境管理はいかにあるべきかにっいて諮問を行いましたが、そのときいただいた答申が、現在河川環境施策の基本になっているところであります。 河川事業につきましては、従来とかく治水対策に重点が置かれ、実施されてきているところでありますが、最近における県民意識の変化、生活様式の多様化等に伴い、ご指摘にもありましたように、人間の生活と深いかかわりを持つ河川本来の機能が着目されるようになり、河川環境の整備に対する要望が高まってきているのはご案内のとおりであります。 このため、県といたしましては、先生からも強いアピ−ルのありました、従来からの河川環境整備事業に加えて、昭和62年度から新たに河川環境特別整備事業を創設し、地域のまちづくりと一体となった、潤いと安らぎのある河川環境の形成に努めているところであります。 また、河川環境の保全と整備を図る施策を総合的、計画的に実施するため、河川環境管理基本計画を策定することとし、そのための調査費を新年度の予算でお願いしているところであります。県といたしましては、こうした調査結果を踏まえ、今後とも地元市町村とも協議しながら、中小河川の環境整備の推進を図ってまいる所存でございます。』 |
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中小河川の環境整備について |
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昭和63年2月議会本会議