○浜井
 『西部養護学校における学校給食について伺います。
敗戦の痛手を乗り越え、我が国が近代国家への道を歩み始めようとした昭和22年、新しい教育の基本を確立するため、教育基本法、学校教育法が相次いで施行され、基本法第3条においては教育の機会均等をうたい、教育法第6章においては、障害児のための学校として、盲、聾止養護の3つの種類の学校の設置を都道府県に課し、また、小学校、中学校、高等学校には特殊学級を置くことができると定められました。盲、聾学校については、翌年から設置が義務づけられたのに対し、精神薄弱者、肢体不自由者もしぐは身体虚弱者を含む病弱者を対象にする養護学校教育の義務制は、昭和54年の4月に至ってようやく実現を見たのであります。本県における特殊教育諸学校は、国立、公立、私立を加えて全部で22校あり、ごのうち完全給食制度をとっているところが20校、残りの2校は、一部おかずや弁当を持参するという変則的なものとなっているのであります。
 私は、そうした学校の一つである西部養護学校を訪ねてみました。ここでは在学する児童・生徒の障害が多岐にわたっており、障害の程度の軽いAコ−スから、障害の程度に応じて順次Dコ−スにまで分かれて学習をしています。特に重度1の障害を持つDコ−スの子供たちは、教師の全面介助なしでは一人で食事をとることもできず、パンを食べられない子、牛乳を飲めない子、上手に飲み込めない子、すぐに吐き出してしまう子など、それぞれの態様に応じて、教師の苦労は並み大低のことではないということでありました。 Aコ−スからCコ−スの子供たちのある者は、部分介助で給食を受けていましたが、パンはのどに張りつくため食べたがらない子や、このコ−スの中でもバンを全く食べられない子もいるとのことでありました。障害を持つ子供たちは、その幼児期の段階から母乳やミルクの飲みが悪かったり、離乳食を余り食べたがらないために、親は子供の好む物だげを与えがちとなり、偏食性が強いと言われています。この学校の一週間の給食のメニュ−は、月曜日黒糖入りコッベパン、火曜日食パン、水曜日はブドウ入りコッベパン、木曜日マ−ガリン入り渦巻きパン、金曜日卵入りコッベパンで、これに牛乳が一本つく給食の繰り返しであります。
 知事は、今議会で、普通教育の諸学校における完全給食制度に対する所信の一端を述べられ、たまには母親の手づくりの温かい弁当も必要だとされました。私も同感であります。しかし、障害児を持った母親は、朝早く起き出して朝食とお昼のおかずの準備をし、時間をかけて障害児の食事の介助を済ませると、休む間もなく送迎のバスの乗り場か、あるいは直接学校まで送り届げる毎日を送っており、下校後も同様であります。
 私は、個別に寂しいパン給食をとっている子供たぢに、みんなが食堂に集まり、競争し合ったり、励まし合ったりしながら、要求される最低限の栄養の補給をし、食物の素材に季節の変化を知るという給食の持つよい面の教育を与えてやれたらと思うのであります。
 もちろん、隣接する施設から通園する生徒のための養護学校として設立された経緯や、重度障害を持った児童.生徒が多く、複数の献立が要求されること、校舎の敷地が狭隆で増築の余地が少ないことなど、現行の制度の背景には、それなりの理由があったことも十分承知の上であります。
「こんな娘でごめんね…なんにも親孝行できなくて…こんな私を許して下さい…できることは…一生懸命に生きること…父さん…ほんとにごめんなさい…母さん-こんな娘でごめん。母さんの手伝いをやりたいげれど…私には-・できない…ただできることは一生懸命生きること…それがせめての親孝行です…母さんごめんね・…:」
 これは、この養護学校の子供のつくった詩であります。自分の意思とは別に障害を持ってこの世に生まれた子ども、親を恨まずに謝っているその気持ちを察すると思わず涙を誘われるのであります。
 養護学校の子供たちは、思いのほか明るいという話を聞いたりする、何となく心が安らぎます。それは恐らく、この子たちが一生懸命に生きようと努力しているからだと思うからであります。完全給食制度をとる他の養護学校でも、単一障害と重複障害の子供たちのために二種類のメニュ−が用意されると聞きました。西部養護学校では、もう何種類かのメニュ−が必要になり、それは非常に困難な仕事のなるだろうと思うのでありますが、厨房や食堂はもちろんのこと、牛乳を保冷する大型の冷蔵庫も設備されていないこの学校でありますから、とりあえず委託方式などについて検討していただき、給食制度の見直しをお願いしたいとおもうものでありますが、ご所見を伺います。』

〇庄田教育長

 『西部養護学校の学校給食についてお答え申し上げます。同校は、病院等の施設内に併設されたものでありまして、給食は、開設当初から入院している生徒につきましては、病院等の施設で実施してまいりました。しかし、通学生には、病院の施設が狭いものですから、給食ができない状況にあります。その後、通学生の受け入れが増加しましたので、狭い敷地内に教室等の施設を優先的に整備いたしました。したがって、現在、厨房及び食堂の建設スペ−スは全くとれない状態であります。また、委託方式をとる場合、児童・生徒の多様な障害に対応する一人一人異なるメニュ−を用意することの困難さや、食事の仕方、給食指導に対応する教育課程の改定等、解決を要する課題がたくさんあります。そこで、今後、病院等施設関係者の意見を聞きながら、こうした多くの課題の解決を目指し、障害を持った児童・生徒が、みんなで食事ができる
ような方策について研究してまいりたいと考えております。以上でございます。
9月議会質問
西部養護学校の学校給食について

平成2年9月議会 本会議