県議会質問 平成2年9月
            
1 建設行政について
   1)業法改正に伴う中小建設業者への対応
   2)骨材資源の確保対策
2 農業行政について
   1)担い手の育成
      ・新農業展開への利子補給
   2)花嫁対策
      ・結婚推進機関の整備と情報ネットワ−ク化
3 福祉行政について
   1)長寿村の建設
   2)福祉総合利用権方式の導入
4 県西部養護学校における給食について
〇浜井
 『最初に、建設行政について、まず、建設業法改正に伴う中小建設業者への対応について伺います。
急速に進展する高齢化杜会に比例して増加する医療、年金等の杜会保障費は、杜会資本整備の投資額をますます圧迫していくものと思われ、残された今世紀の10年が、そうした整備を進める最後のチャンスだろうと言われています。
 西欧に追いつき追い越せと幾度かの試練を経ながら、しゃにむに成長を続けてきた日本杜会にあって、その一端を担い続けた建設業は、万年成長産業と言われてきました。しかし、昨今の杜会構造や人々の意識の変化によって、3Kとも6Kとも称される建設業は、技術者や労働者に敬遠され、公共投資の追い風とは裏腹に、特に中小の建設業者を中心に極めて厳しい入手不足の状況がつくり出されてきました。
 建設業法の改正に伴ってことしの6月から施行された指定建設業監理技術者制度への移行は、2年間の猶予期間があったにもかかわらず、中小建設業者にとっては前述のような環境の中で、一向に進展が見られず、対応に苦慮しているのが現状であります。
 ご承知のとおり、今度の改正は、特定建設業者のうぢ、土木、建築、管、鋼構造物、舗装の5業種に限請契約が2千万円、建築では3千万円以上になる場合に、一級の国家資格を持った監理技術者、または建設大臣により認定された技術者を置くことが義務づけられ、その配置ができなげれぼ、工事が施工できないばかりか、特定建設業の許可が取り消されるというものであります。
 従来から、1千5百万円以上の公共性のある工事及び下請契約が2千万円以上の工事については専任の技術者を置くことになっていたのでありますが、今回の改正で監理技術者の資格がより厳格になり、専任の監理技術者の配置が義務づけられたのであります。
 建設省では、この施行に当たり、国家資格を持たない専任技術者の場合は有資格者への変更届を提出させ、国家資格者を置げない場合は、特定建設業を一般建設業に切りかえることを通達、指導しており、今後何らかの彬でチェック体制がしかれていくことと思われます。問題は、中小建設業の中には、国家資格者が社長1人、あるいは社員1人だけといった場合があり、こうした業者は現場簿掛け持ちができなくなるので、工事を重ねて受注することが不可能となり、.工事量の確保と経営が一層厳しくなるものと思われます。
 .こうした場合の中小建設業の側の対応は、生き残りをかけて技術者を他杜から引き抜いてくるか、資格はあっても現場を知らない技術者に大事な現場を任せるしかないのであります。飽和状態にある業界の業者数の適正化と健全な発展、そして工事の安全、的確な施工を考えれぼ避けて通れない問題の一つでありますが、たとえ経営規模は小さくても立派な施工をする業者はたくさんあり、小回りのきくこうした業者が、年度末工事や災害復旧工事等でその存在価値を発揮するのであります。
 そこで、このたびの建設業法の改正に対応して、健全な中小建設業者を育成する上で、技術者の確保を図るために県としても積極的な対応が必要と思われますが、ご所見を伺うものであります。』

○斉藤知事
 浜井議員にお答えいたします。
初めに、建設業関係でございます。特に、中小企業関係についての格調高い高度広域的な識見に対して改めて敬意を表します。ご案内のように、日米構造協議に見られるように、建設関係につきまして、社会資本の充実整備を主たる政策の一つとして考えております私にとっても、社会資本の整備についての建設業の存在につきましては、強く認識をいたしておるわけでございます。技術者、労働力不足、骨材の不足等考えますと、非常に大変なときでございますだけに、そのご配慮につきまして改めて敬意を表します。細部につきましては担当部長から答弁をさせていただきます。』

〇寺田土木部長
 建設行政のうち、建設業法改正に伴う中小建設業者への対応についてお答えいたします。社会資本の整備を重点施策として取り組んでおります本県にとりましては、公共事業の直接の担い手であります建設業界の健全な発展は必要不可欠であると考えております。そのような観点から、中小建設業者の育成に努めているところてあります。国におきましても、技術と経営にすぐれた建設業者の育成のため、昭和62年に建設業法の改正を行ったところであります。県といたしましても、その趣旨に沿い企業体質が脆弱であるといわれる中小建設業者対策といたしまして、経営研修の実施や財団法人建設業振興基金の実施する経営改善のための財務診断を受けるよう指導しております。また、施工能力に応じた工事量の確保などにも特に意を用いてきたところであります。さらに、中小建設業者におげる技術者の確保対策といたしまして、国が行う特別認定技術者講習会や、静岡県土木施工監理技士会等が行う国家資格取得準備講習会などの開催を要望いたしますとともに、当該講習会に積極的に参加するよう指導してきたと
ころであります。今後とも関係機関と連携を図りながら、中小建設業者における技術者の確保などに努めてまいるつもりであります

浜井
『次に、骨材資源の確保対策について伺います。貿易障壁の解消を目指して繰り広げられた日米構造協議において、我ガ国は今後10年間に総額430兆円に上る公共投資が課せられたことは記憶に新しいところであります。本県も変化する時代に対応して新総合計画の見直しを進めながら、リゾ−ト地、県営空港、.大規模スポ−ツ公園、音楽公園を初めとする豊かで活力ある県づくりを目指す数々のプロジェクトや、第二東名以下4本の高規格幹線道路建設など大型の公共事業がメジロ押しであり、さらに、県下各自治体の町おこし、ふるさと創生等の建設事業から、衰えを見せない民間の設備投資に至るまで、本県の社会資本の整備は急ピッチで進んでいくものと期待しているところであります。
 気がかりなのは、こうした建設の基礎資材である砂、砂利、栗石などの骨材の生産と、その安定的な供給についてであります。本県の骨材は、天竜川水系、大井川水系、安倍川水系ほかからの購入がおよそ697万トンで64%、神奈川県、山梨県からの購入分が358万トンで約33%、つまり、県外産の骨材におよそ3割強を頼っているのであります。 建設省は、天竜川の下流域での採取量を限定する規制採取を今年度で打ち切り、来年度からは河川護岸や橋脚のかさ上付などの河川施設工事の一部を負担する特定採取への移行を通達済みであり、それにかわるものとして、上流の秋葉ダム、佐久間ダムの湖底の土砂を採取するよう指導しているのであります。また、安倍川においては、建設省が監理する区分については、既に全面規制が打ち出されており、建設が進む砂防ダムの影響もあって、流出する土砂の量は減少を続ける一方、河口部及びその周辺の海岸線の浸食が進行する中で、早晩、この水系においても砂利の採取は極めて限定されたものになると思われます。 他県においても、状況は全く同じであり、建設用骨材については、産出県内使用処理の方向へ進んでいくものと思われます。社会資本の整備拡充を標榜し、多くの大型プロジエクトを抱えた本県にとって、骨材生産の動向に関心を持たざるを得ないと思うのでありますが、県として、今後、骨材資源の確保対策についてのご所見を伺うものであります。』

〇寺田土木部長
 『骨材資源の確保対策についてお答えいたします。骨材の安定確保は、公共事業の円滑な推進を図る上で重要な課題と認識しております。本県におきます骨材使用量が最も多い生コンクリ−ト用骨材は、河川砂利が84%を占めており、34%を他県に依存している現状であります。骨材は各県とも資源確保の観点から、地域内利用を優先させる方向にあり、他県からの流入は今後減少することが予想されます。また、県内河川砂利の採取についても、採取可能量の減少が心配されるなど、骨材の安定確保が懸念されているところであります。このため、県の管理する河川につきまして、砂利採取者が河川護岸や橋脚の補強などの河川施設の工事費を負担する特定採取制度を活用させることにより、河川砂利の確保を図ることについて検討してまいりたいと考えております。
 一方、現在はほとんど使用されておりませんが、議員ご指摘のとおり、ダム堆積土の活用は、骨材資源確保の有力な手段であり、ダム機能の回復にとつても有効な方法であると考えております。現在、建設省においてその採取について指導しておりますので、県といたしましても、関係業界を指導し・骨材の安定供給に努めてまいりたいと考えております。以上であります。』


浜井
次に、農業行政について伺います。
 まず、担い手の育成についてであります。ことし発表された農業白書のキ−ワ−ドは市場適応型農業であり、関連して情報交換や経営感覚に秀でた農業の担い手の育成が急務であると堤言しています。さきに策定された本県の農林水産ビジョンにおいても、中核農家や基幹的農業従事者の減少、高齢化の進展、兼業化への移行が予測されるとして、産地を担う人づくりの重要性を改めて強調しています。
 来年度からは、。農林水産省は、一人でも多くの若く意欲のある農業後継者の確保対策として、脱サラなどで新たに農業に取り組もうとする者を対象に若い農業者入植促進事業を開始し、新規参入者の経営費負担を軽減するため、一人年間100万円を隈度に助成し、農業へのチャレンジを支援していこうとしています。また、農協組織の側を見ると、全国農協中央会は、明るい農協へのイメ−ジアップや意識改革を目指す農協のCI活動、すなわち組織イメ−ジ統合戦略の一環として、来年の秋にはジャパン.アグリカルチュラル・コオペレイティブス、略して「JA」と愛称を変えることを内定したと聞いています。
 このように、国は自立農家育成という農業基本法制定以来目指した目標の一部転換を図り、農協も単なるネ−ミングの変更だけでなく、これを契機とした意識の改革に真のねらいを込めた戦略をとり始めたということであります。この二つの事例は、厳しい環境下に置かれた農業と農家を新しい感覚でとらえ直そうとする試みの一つだろうと思うのであります。
 現在、農業金融制度資金のうち、農業近代会資金と自立経営農家育成資金の対象者は、農業改良資金の農業後継者育成資金を借りた者、将来農業を続けると見込まれる者のほか、特に市町村自立経営農家振興会に加入している者について有利な扱いとなっているのであります。今日、市町村振興会の正会員数は横ばい状態にあり、振興会の各種部会と各単位農協において組織されている同種の部会の間の方針や方法論が必ずしも一致しているようには思われません。21世紀の農業は、土地と資本と人問をいかに有効に使っていくかということに尽きると言われ続げてきました。これからの農業は、農地の集約と複合型の農業の展開を目指すべきであり、そのためには、専門の生産部会ごとに固まっているときではなく、農業生産物者間の異業種交流を図りながら、意見やノウハウの交換と協業化への道を模索していく必要があると考えるのであります。
 そこで、県下における専業農家、農業法人、または一種兼業農家も含めた中で、一定の耕作面積を有する者、あるいはこれ以外の農家であっても、農業に対する意欲のある者、さらに非農家の新規参入者においても、面積と従事日数の基準に達し、しかも実現可能な営農計画を持った者を一つのグル−プとして再編を図るぺきであると考えるのであります。そして、農業近代化資金や後継者育成資金制度を見直し、メニュ−に合わせた農業を強制するのでなく、全く新しい農業の展開に利子補給の道を開けば、担い手のやる気の換気につながると思うのであります。ご所見を伺う者であります。』

○斉藤知事
 次に、農業行政についてのうち、担い手の育成についてであります。近年、都市化の進展に伴う兼業化や生産の中心的な担い手の高齢化などにより、生産組織活動の停滞や労働生産性の低下が懸念されておりますので、担い手の育成が重要な課題であると認識はいたしております。県といたしましては、先に策定した21世紀に向かっての農林水産業のビジョンの中で、競争力のある産地を形成して、魅力ある静岡県農業を確立するため、企業的経営感覚を持った農家の育成と、兼業農家も含めた生産の組織化を進めるための施策を積極的に展開していくことといたしております。
 また、農村花嫁という言葉を、大変失礼でございます享、不勉強であったんですが、久しぶりで拝聴いたしまして、改めて傾倒いたしたところでございます。まさに農村の花嫁対策は、農業後継者を確保するための対策の一つとして重要なこととして再認識をいたしたところでございます。このためには、何よりも農業を魅力あるものにすることが必要であり、あわせて、これを担うたくましい農業青年を育てていくこどが大切であると考えております。これまで農業青年の育成に当たっては農業農業技術や経営を重点に行つてきましたが、浜井議員ご指摘のように、これからの農業青年には幅広い視野と豊かな創造性を備えた行動力を身につげることが重要でありますので、ご指摘をまつまでもなく、今後はこうした観点に立つて情報収集等努めさせていただき、交換施策の展開にも努めてまいりたいと考えております。


○佐藤農業水産部長
 農業行政についてお答えをいたします。まず、担い手の育成についてであります。
 ご提案がありました市町村自立経営農業振興会などのグル−プの再編でありますが、これらの組織は、地域における農地の有効利用や生産諾の向上など、それぞれの設立目的に沿つた活動をいたしております。しかし、これから競争力のある産地を育成しますためには、それぞれの組織が一体となつた地域ぐるみの活動が特に重要となってまいりますので、市町村ごとに設置してあります構造政策推進会議を中心に、互いに連携・協力をし合えるような仕組みづくりを関係機関と協議しながらら進めてまいりたいと考えております。
 また、担い手育成のための農業近代化資金や後継書成資金につきましては、これまでにも融資対象や貸付限度額の拡大など、国に対して要望した結果、制度の改善が行われてきたところでございます。今後とも産業に意欲的に取り組む担い手が幅広く活用できますように、担い手育成資金の創設、あるいは制度の改善について要望してまいる所存でございます。』


浜井
農政について、次は花嫁対策であります。昨年の9月議会に続いての花嫁対策への質間となりますが、今回は、高学歴化に伴う杜会参加が進む女性の意識の変化に合わせて、農村青年の側の変革を目指す側面的な花嫁対策についての私見を述べさせていただき、ご所見を伺うものであります。
 農政推進の立場に立ち、平成12年を目指してさきに発表された本県の農林水産ビビジョンは、「産地を担う人づくりとすぐれた経営育成」の柱の中で、営農女性や高齢専従者を産地の一翼を担う重要な担い手と位置づけていますが、農業を受け継ぐ青年があって初めてその存在が生きることであり、後継者が先細りの状況では、農業全体の地盤沈下を加速するだげだということを、我々は改めて認識しなければならないのであります。
 県内にある農業青年のグル−プは、4Hクラブ、青年農業士会、農業協同組合青壮年連盟、開拓農協青年部の4つの組織があり、これらの組織活動は、当然のことながら生産や経営に関する学習が主体であり、社会人として必要な事項については、仲間うちだけの講演会、研究会や体験発表を通じて学んでいるようであります。また、青年を対象にした農業講座は、農村青年セミナ−等が開催されているようでありますが、農業の維持、産地の形成、そして農業経営自立といったお決まりの講座のようであります。
 それも必要ではありますが、私の知る農村の青年たちは、情報を求めており、学習への意欲は十分持つているのでありますから、例えぼ、ワ−プロ、文学や歴史、生け花、フラワ−デザイン、楽器演奏、社交ダソスといったような文化的か、あるいは多少文化的なにおいがする青年の意欲を助長するような講座を設げてみたらどうかと思うのであります。 そしてそれは、特別に独身の農業青年だけを対象とする講座ではなく、一般の人たちにも参加を求めて、新しい人間関係、新しい触れ合いの場をつくっていく。あるいはまた、青年会議所や商店会青年部といった青年団体との交流機会も多くして、産業としての農業の自覚を育てていくといった方法も考えられるのであります。後継者の減少が一向にやまない日本の農業を守り、農業青年を変えるためのこうした講座の開設や・異業種との交流活動を活発に行つていくことが必要だと思うのでありますが、ご所見を伺います。


○佐藤農業水産部長
 次に、農村花嫁対策についてであります。農村の花嫁対策の一つとして、農業青年の育成につきましては、県はこれまで各種研修会の開催や4Hクラブ、青年農業士の組織活動の指導、農協青壮年連盟に対する連携と活動の支援など、農業技術や経営に重点を置いて行ってきたところでございます。今後は、新しい視点から農業青年の育成を図りますため、研修内容を再検討し、都市住民や異業種との交流事業を取り入れるなど、その充実を図ってまいりたいと考えております。さらに、市町村や各種団体が行う文化、スポ−ツ活動などにも、農業青年が積極的に参加するように勧めまして、触れ合い機会の増大に努めてまいる所存でございます。』


浜井
花嫁対策についての2点目は、結婚推進機関の整備と情報ネットワ−ク化についてであります。全国の農山村における結婚相談所等の開設事業については、ほとんどの県で、農業会などがこれを受け持っており、次いで市町村、市町村の農業委員会、農協、公民館といった順序で行われているようであります。
 自治体の結婚相談事業について調査をしたところ、東京23区のうち、13の区で公立結婚相談所が開設されており、また山梨県においても、県民相談センタ−において県営の公設結婚相談事業を実施↓ているようでありますが、民間事業との競合が問題のようであります。花嫁対策事業に対する自治体の補助制度については、基金を積み立ててその果実により経費に充当している県が茨城県ほか11県、毎年一定の予算を計上してこうした事業に対応しているのが北海道と愛知県であります。
 相談事業においては、事務貸、調査費、パンフレット等の作成費などに相当な資金を要し、相談員に対する謝礼や仲人への報奨金、結婚当事者への祝い金などの制度をとっているところや、そうした機関を通じて結婚が成立した場合に、総合資金、農業改良資金、農業後継者住宅改良資金、もっと親切なのは、農村花嫁寝室改善資金を優先的に約束しているところなどでは、さらに出費がかさむことになります。
 本県下の市町村においては、12市と12町で結婚相談所が開設され、もしくは心配ごと相談事業の中で結婚相談に応じており、また、県下の各単位農協においては早くから結婚相談員制度が導入されていますが、そうした事業の市町村問の情報交換は行われておらず、農協組織においても限られた農協間での交換が行われているだげで、広域的な幅の広い情報の交流が行われていないのが現状であります。
 そこで、既存の農業関係基金の活用や、毎年一定額の補助制度を創設するなどの方法によって、県下の全市町村にそうした推進機関設置するよう指導をしていくと同時に農協との連携を図りながら、並行してプライバシ−の保護に留意した相談情報のネットワ−ク化を進めていくことが必要であると思いますが、ご所見を伺うものであります。』

○佐藤農業水産部長
 『結婚推進機関の整備と情報ネットワ−ク化についてであります。現在、農業青年の結婚対策につきましては、県下36の農協で相談窓口が設置されており、また、農協中央会では、結婚相談窓口開設農協連絡会を設けまして、農協間の相互情報交換等を行っております。しかしながら、未設置農協があること、相談に訪れる青年が少ないこと、農村女性の都市への流出があることなどから、その活動が十分とは言い切れない実情にございます。今後は未設置農協に対しまして、窓口の開設を促しますとともに、現在あります農協中央会の連絡会が活性化されますように指導してまいる所存でございます。ご提案のありました市町村の結婚推進機関の整備とネットワ−ク化につきましては、各市町村の結婚相談業務に対する姿勢に違いがあり、その調整が必要でありますので、今後の検討課題とさせていただきたいと考えております。以上でございます。』


浜井
次に福祉行政についてのうち、長寿村の建設について伺います.
.世界に例のない早さで我が国が到達する超高齢社会は、社会構造の変化と意識の変革への対応を迫られる社会でもあります。
 高齢者が健康で生き甲斐をもって、平穏に暮らせる長寿・福祉社会の実現、つまり国の高齢者保健福祉推進10ケ年戦略の下敷きとなった長寿社会対策大綱が目指した活力ある、包容力ある豊かな長寿社会の実現が望まれるところであり、全国の自治体が、老人福祉施設等を中心としたシルバ−タウンの建設は、既に5カ所が完成、建設中若しくは計画中のもの45カ所に及ぶとされています。
 私はこの夏、平成2年度の高齢化率は全国第8位ながら、平成17年度には全国のトップに躍り出ると予測される秋田県が建設した全国初の老人福祉総合施設、秋田県南部シルバ−エリアの視察を行って参りました。
 そこは、昭和55年、庁内プロジェクトチ−ムが提唱した医療と福祉の複合施設構想を受け、計画策定に5年、建設に3年の歳月をかけて14万8千8百平方メ−トルの、小高い丘陵地の野中に、48億円の事業費を投入してオ−プンした施設であります。ここは、高齢者が地域から隔離されることなく、地域住民や子供たちとふれあい、医療と生き甲斐と安らぎのある生活空間の中で、薗豊富な知識や経験を地域社会に還元する総合的、複合的機能をもった福祉ゾ−ンであります
 在宅老人介護センタ−と内科、歯科及び整形外科を備えた医療・介護施設、近隣住民や子供たちとの交流を図るためのコミュニティ−センタ−、スポ−ツ広場、温水プ−ルなどの交流施設、そして、健康生きがい農園や生きがい創作館、養護と特別養護と軽費老人ホ−ムに老人専用マンションを合わせた生きがいと居住施設といった3つの機能に大別される14の施設があり、ごれらがすべて廊下で結ばれ、だれもが自由に好きな場所へ行き来できる構造になっているのであります。
 また、施設の一角に床屋や美容院、レストランが店を構えていて、私たぢが訪れたその日も、パ−マをかける老婦人、食卓を囲んで和やかなデイ・サ−ビスの老人たちや、談笑する車いす.の老人たちの背中に、プ−ルで遊ぶ子供たちの歓声が降り注いで、生き生きとした活気のある小さな町のたたずまいを感じたものでありました。
 高齢者たちが生きがいを持って、健康で安心してその人生を送ることを目指した秋田県の考え方は、居庄希望者に対する公平性、運営主体、将来の運営費、マンパワ−の確保等、幾つかの問題点はあるものの、極めて勇気のある先進的な試みであると評価するものであります。
 本県においても、21世紀の本格的な高齢化杜会に備えて、このような長寿村の建設を推進する必要があると考えるものでありますが、知事のご所見を伺います。
なお、こうした長寿村の建設を進めるに当たっては、秋田県南部シルバ−エリアが実行した3つの機能に加えて、老人保健施設や精神薄弱者更生施設、心身障害者職業訓練校、さらには、各種授産施設などの高齢者と障害者が共生できる生活空間を創造する総合福祉村にまでこの構想を広げてみたらどうかと考えるのであります。さらに、本年度当初予算の中で、仮称こどもの国基本構想策定費が計上され、調査が進行中であると思いますが、元気に遊ぶ子供たちの声を聞いたり・子供たちの動きを追ったりする中で、高齢者や障害者が、次の時代を担う子供たちとの触れ合いができる場を総合福祉村に連関させていくという考え方もできます。
 全国に展開中のシルバ−タウンとは一味違う新しい静岡県の総合福祉健康ゾ−ンを、県内に数カ所バランスよく配置していくといいうことについての知事のお考えも、あわせて伺うものであります。


○斉藤知事
 『福祉行政について、特に長寿村についてのことでございますが、秋田県までシルバ−エリアのご調査に行かれたということをお聞きいたしまして、改めてその行動力とご視察につきまして敬意を表する次第でございます。我が国における人口構成の高齢化は、ご案内のとおり極めて急速に進展いたしております。このような社会変化の中で、県民の皆様が健康で生きがいを持って生活し、長生きをしてよかったと実感していただくためには、健康、福祉、生きがい、さらには生活環境など、社会のシステム全体を高齢者の多い社会に適合したものとしていくことが必要であります。ご提言の長寿村建設は、このような来るべき長寿杜会に対応する地域杜会システムのモデルの一つとして、大変意義があるものと考えます。今後、県民の二−ズ、先進事例、国の動向など踏まえながら、本県にふさわしい施設の性格や機能などについて調査研究してまいりたいと考えております。
 また、障害者や子供も含めた総合福祉健康ゾ−ン構想につきましても、和歌山県下のご視察の結果のご示唆がございました。福祉行政の卓見として、貴重なご意見として、なおこの件につきましても調査研究に当たり、参考にさせていただきたいと思います。
 まさに高齢化社会における長寿村の発想につきまして、ユ−トピア的な考え方をも含めながら、何ともすぼらしい静岡県の存在価値をも含めて、前向きで研究をさせていただきたいと、このように考えます。

 なお、残余につきましては、それぞれの部長から答弁をさせていただきますが、これまた一言多いと言われるかもしれませんけども、養護学校の学校給食につきましては、お聞きして思わず先ほども.ジョ−クは言っておりましたげども涙のこぼれる思いでありました。重ねて、これは教育長の関係でまたお話があろうかと思いますが、そうした方々に対する重複重度の障害者の方々、最近、白松議員さんが地元に重複重度障害者の方々の施設をつくられました。ああした施設を見たときに、健常者である私たちが、やはりできる限りの私はお手当てをするということ、もちろん浜井先生ご指摘のように、まず、食べることから始まるということもありましょうけども、そうしたことに手厚い好意ある温かい手を差し伸べることが非常に重要であるということをお聞きいたしまして改めて感謝を申し上げながら、なお、その点につきましては教育長の方から答弁をさせていただきます。以上です
浜井
次は、福祉総合利用券方式の導入についてであります。超高齢化社会に対応する安心して老後を迎えられる社会づくりが緊急枢要な課題であり、施設の整備や保健・福祉・医療との連携・在宅福祉サ−ビスの拡充等、ますます増加する要援護老人の福祉対策が急がれるところであります。
 今回の社会福祉関係8法の改正によつて、入所措置や在宅福祉サ−ビスなどの実施主体が平成5年より、住民の要望の届きやすい市町村に移行されることとなりました。
 和歌山県では、法改正による平成5年の市町村の事務の移行をにらみつつ、県内市町村における老人保健・福祉事業のレベルアップを目的として、ことしの5月から「応援します暮らし、ご利用下さい在宅福祉サ−ビス」として、全国に先駆けたホ−ムヘルパ−、ショ−トスティ、ディ・サ−ビス3点セットの総合利用券方式を導入しているのであります。 私は、若者の関西都市圏への流出がやまず、一次産業比率と高齢化率の高い和歌山県を訪ね、こうした制度を導入した経緯などについて視察を行ってきました。
 これまで、こうしたサ−ビスを受ける場合は、必要の都度、県や市町村の窓口で申請をしていたようでありますが、この制度によって、県及び市町村の担当課、各民生事務所、社会福祉協議会、最寄りの老人ホ−ム、シルパ110番のいずれにおいても、本人または家族による利用の申し込みが可能とされたのであります。
 年度当初に一度登録を受けて、この総合利用券を手にすれぼ、その一年間はいつでもどこでも電話一本でサ−ビスの利用ができるという、いわぼ福祉サ−ビスにおいての保険証ともいえる制度なのであります。
 施設の整備という形では、時間的にも、コスト的にも間に合わない介護対策を、まずソフト面で対応し、補っていこうとするこの制度導入がきっかけで、例えば、サ−ビス提供の施設がなくても、老人憩いの家やコミュニティセンタ−などを改良するなどの工夫が生まれたりして、何よりも市町村の発想が柔軟になってきたことが一番の収穫でしたと、応対した県の職員が話してくれま
した。
本県でもコンピュ−タ−ネットワ−クを駆使した地域福祉情報システムへの取組を始めようとしていますが、市町村への事務移行が行われる平成5年に向けての対応も、また迫られているのであります。そこで、こうしたコンピュ−タ−システムを活用する初期の段階で、高齢者の利用の利便性を高めると同時に、各市町村の福祉行政の意識の向上と、施設整備促進への足がかりともなる、こうした総合福祉利用券のような方式を導入していくお考えはないか、伺うものであります。


○岩村民生部長
 『福祉行政についてのうち、福祉総合利用券方式の導入についてお答えいたします。
寝たきりや痴呆性老人など、援護を必要とするお年寄りの増加が見込まれる中で、高齢者に対する福祉サ−ビスの利用を促進するためには、ご指摘のように、その手続の簡素化も大きな課題と考えています。このため、従来市町村窓口で行っていた利用申請を昨年度からは利用者の身近にある市町村社会福祉協議会や特別養護老人ホ−ムにおいてもできるようにするとともに、本年度より新たに県下各地域に在宅介護支援地域センタ−を設置し、受げ付けを行うなど利用者の利使性に配慮した窓口整備も進めているところであります。
 ご提案の利用者が、あらかじめ市町村に登録することによりサ−ビスの利用ができるいわゆる利用券方式につきましても、来年度からの導入に向けまして市町村や老人施設等の意向を調査するなど所要の検討を進めているところであります。今後とも高齢者の方々がいつでもどこでも・気軽にサ−ビスが受けられるという老人福祉法等の改正の趣旨を踏まえ、施設整備の推進とあわせまして、利用手続の簡素化に努めてまいる所存であります。以上であります。
 
浜井
最後に、西部養護学校における学校給食について伺います。
敗戦の痛手を乗り越え、我が国が近代国家への道を歩み始めようとした昭和22年、新しい教育の基本を確立するため、教育基本法、学校教育法が相次いで施行され、基本法第3条においては教育の機会均等をうたい、教育法第6章においては、障害児のための学校として、盲、聾止養護の3つの種類の学校の設置を都道府県に課し、また、小学校、中学校、高等学校には特殊学級を置くことができると定められました。盲、聾学校については、翌年から設置が義務づけられたのに対し、精神薄弱者、肢体不自由者もしぐは身体虚弱者を含む病弱者を対象にする養護学校教育の義務制は、昭和54年の4月に至ってようやく実現を見たのであります。本県における特殊教育諸学校は、国立、公立、私立を加えて全部で22校あり、ごのうち完全給食制度をとっているところが20校、残りの2校は、一部おかずや弁当を持参するという変則的なものとなっているのであります。
 私は、そうした学校の一つである西部養護学校を訪ねてみました。ここでは在学する児童・生徒の障害が多岐にわたっており、障害の程度の軽いAコ−スから、障害の程度に応じて順次Dコ−スにまで分かれて学習をしています。特に重度1の障害を持つDコ−スの子供たちは、教師の全面介助なしでは一人で食事をとることもできず、パンを食べられない子、牛乳を飲めない子、上手に飲み込めない子、すぐに吐き出してしまう子など、それぞれの態様に応じて、教師の苦労は並み大低のことではないということでありました。 Aコ−スからCコ−スの子供たちのある者は、部分介助で給食を受けていましたが、パンはのどに張りつくため食べたがらない子や、このコ−スの中でもバンを全く食べられない子もいるとのことでありました。障害を持つ子供たちは、その幼児期の段階から母乳やミルクの飲みが悪かったり、離乳食を余り食べたがらないために、親は子供の好む物だげを与えがちとなり、偏食性が強いと言われています。この学校の一週間の給食のメニュ−は、月曜日黒糖入りコッベパン、火曜日食パン、水曜日はブドウ入りコッベパン、木曜日マ−ガリン入り渦巻きパン、金曜日卵入りコッベパンで、これに牛乳が一本つく給食の繰り返しであり
ます。
 知事は、今議会で、普通教育の諸学校における完全給食制度に対する所信の一端を述べられ、たまには母親の手づくりの温かい弁当も必要だとされました。私も同感であります。しかし、障害児を持った母親は、朝早く起き出して朝食とお昼のおかずの準備をし、時間をかけて障害児の食事の介助を済ませると、休む間もなく送迎のバスの乗り場か、あるいは直接学校まで送り届げる毎日を送っており、下校後も同様であります。
 私は、個別に寂しいパン給食をとっている子供たぢに、みんなが食堂に集まり、競争し合ったり、励まし合ったりしながら、要求される最低限の栄養の補給をし、食物の素材に季節の変化を知るという給食の持つよい面の教育を与えてやれたらと思うのであります。
 もちろん、隣接する施設から通園する生徒のための養護学校として設立された経緯や、重度障害を持った児童.生徒が多く、複数の献立が要求されること、校舎の敷地が狭隆で増築の余地が少ないことなど、現行の制度の背景には、それなりの理由があったことも十分承知の上であります。
「こんな娘でごめんね…なんにも親孝行できなくて…こんな私を許して下さい…できることは…一生懸命に生きること…父さん…ほんとにごめんなさい…母さん-こんな娘でごめん。母さんの手伝いをやりたいげれど…私には-・できない…ただできることは一生懸命生きること…それがせめての親孝行です…母さんごめんね・…:」
 これは、この養護学校の子供のつくった詩であります。自分の意思とは別に障害を持ってこの世に生まれた子ども、親を恨まずに謝っているその気持ちを察すると思わず涙を誘われるのであります。
 養護学校の子供たちは、思いのほか明るいという話を聞いたりする、何となく心が安らぎます。それは恐らく、この子たちが一生懸命に生きようと努力しているからだと思うからであります。完全給食制度をとる他の養護学校でも、単一障害と重複障害の子供たちのために二種類のメニュ−が用意されると聞きました。西部養護学校では、もう何種類かのメニュ−が必要になり、それは非常に困難な仕事のなるだろうと思うのでありますが、厨房や食堂はもちろんのこと、牛乳を保冷する大型の冷蔵庫も設備されていないこの学校でありますから、とりあえず委託方式などについて検討していただき、給食制度の見直しをお願いしたいとおもうものでありますが、ご所見を伺います。


〇庄田教育長
 『西部養護学校の学校給食についてお答え申し上げます。同校は、病院等の施設内に併設されたものでありまして、給食は、開設当初から入院している生徒につきましては、病院等の施設で実施してまいりました。しかし、通学生には、病院の施設が狭いものですから、給食ができない状況にあります。その後、通学生の受け入れが増加しましたので、狭い敷地内に教室等の施設を優先的に整備いたしました。したがって、現在、厨房及び食堂の建設スペ−スは全くとれない状態であります。また、委託方式をとる場合、児童・生徒の多様な障害に対応する一人一人異なるメニュ−を用意することの困難さや、食事の仕方、給食指導に対応する教育課程の改定等、解決を要する課題がたくさんあります。そこで、今後、病院等施設関係者の意見を聞きながら、こうした多くの課題の解決を目指し、障害を持った児童・生徒が、みんなで食事ができるような方策について研究してまいりたいと考えております。以上でございます。