十数年にわたって選挙ではライバルとしてしのぎを削りながらも、議員歴の三分の一ぐらいの期間、先輩議員として一目も二目もおきながら政治行動をともにしてきた県議が、去る5月下旬「斡旋収賄罪」の容疑で逮捕されてしまった。容疑は、4年前に遡る産業廃棄物処理業者に対する行政処分に拘わる事件ということである。
 逮捕容疑となった刑法第197条の4に規定されている「斡旋収賄罪」は、「公務員請託ヲ受ケ、他ノ公務員ヲシテ其職務上不正ノ行為を為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為スコト又ハ為シタルコトノ報酬トシテ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若シクハ約束シタルトキハ五年以下ノ懲役に処ス」というものである。
 斡旋収賄罪は、国会議員や県議会議員など公選による公務員が、その地位を利用して他の公務員(今回の場合は県の職員)の所管事項について斡旋し、それに対する謝礼を受け取ることを禁じたものだ。
 また、刑事訴訟法第250条の4によれば、収賄側の公訴時効は5年、贈賄側は3年とされている。新聞報道を読む限り贈賄側は既に時効が成立しているが、収賄容疑を課せられた側の時効期間は未了ということになる。
 現時点でこの「斡旋収賄罪」で実刑判決が下されたのは、埼玉県内の大手ゼネコンを含む建設会社による公共工事の入札談合を公正取引委委員会が調査していたことに関連して、独占禁止法違反で告発しないよう働きかけることを請託し、報酬として1千万円を収受したとして最高裁まで争われた前代議士の事例が1件あるだけだ。
 容疑が容疑で終わってほしいと思っていたが、その後本人も受領の趣旨を認めたうえ、議員を辞職した。このことで、関係者の間では実刑を科されれることはないだろうとの推測も聞かれるが、まだ予断は許されない。
 知事はこの事件を受けた記者会見で、県議会議員や市町村議会議員、市町村長あるいは一般県民にまで枠を広げて、県行政に対する働きかけや口利きを文書化し、情報公開の対象にしたいと表明した。
 議員だからといって、法令を曲げるような不当不正な働きかけをしてはならないことは充分に承知しているが、正当な県民の要望や陳情、行政の厚い壁、中には非情とも思える職員の前で立ちつくしている弱い立場の県民の側で、法令の解釈や行政の執行に目を光らせていくのも議員の仕事である。
 一方、真の地方分権、地方の自立が叫ばれている今日、開かれた議会活動と行政運営、またそれらの情報公開が、今まで以上に求められている時でもある。「情報公開」は正に時代の流れであり、「口利き」の文書化に反対する大義はない。
 しかし、議員に対する嫌悪感など職員の個人的な感情によって「口利き」「働きかけ」が恣意的に取り扱われてはならない。
「口利き」が文書化されたとしても、要は、行政は「県民のため」にあるという本分を忘れずに、行政と議員のそれぞれの立場で、「公平で公正な行政執行」を実行することを肝に銘じて活動することである。

あっせん収賄罪