物理的、経済的に使用可能な年数を示す建築物の耐用年数について、昔は木造で20年から30年、鉄筋コンクリ−ト造では60年というような数字を覚えているのだが、今その数字は法律のどこを探しても見つからない。
 今日、税法上は木造で22年、鉄骨造で27年、鉄筋コンクリ−ト造で47年とされている。一方で、法定耐用年数という中で鉄骨造については34年、重量鉄骨造では45年などという数字もあると聞く。
鉄筋コンクリ−ト造の構造物は、コンクリ−トの圧縮強さと鉄筋の引張り強さを組合せた耐火性が、他のどんな素材よりも高いとされてきた。
 確かに建造した当初は、コンクリ−トの有するアルカリ性によって、内部に張り巡らされた鉄筋は錆の発生から守られている。これが年数を経るごとにコンクリ−トの中性化が進行して、それが内分鉄筋に達すると錆が発生してコンクリ−トを押し上げていく。実質的な耐用年数は、このコンクリ−ト中性化が鉄筋に到達したときに終わるという意見もある。
 木造というのは、法定耐用年数が22年とされているが、確かに廃屋の老朽化は早いと感じるが、人間が居住している木造家屋はそれほどに感じないのはなぜなのかわからない。日本の古くからある寺社仏閣などの木造建築が、今に残っているのも、木造建築物の耐用年数という概念からは理解できないのである。
 先月、小田原地震、いわゆる神奈川県西部沖地震といわれる首都圏直下型地震に備えて耐震工事を進めていた神奈川県内のある小学校で、2階と3階部分のコンクリ−トの床と鉄筋が、予想をはるかに超えて劣化していることがわかったという報道があった。この学校は、1973年度に建設されており、築後まだ29年しか経っていない。建築当時の年号の昭和48年といえば、第一次石油ショックの時代である。当時建設業界では建設資材の単価が高騰を続け、公共工事の入札辞退が相次いだ時代でもあった。当時の資材を使った工事は、あちこちで補修を余儀なくされている。建設資材そのもの、石油ショックの影響を受けて劣悪の製品が多かったように思っている。
 さらにこの建設工事を請け負った建設会社は、とうの昔に倒産しており、手抜き工事として求償する術もないとのこと。
 当該教育委員会は、本格的な補強・補修工事とすることとし、約982平方メ−トルに及ぶ床の上部を削り取り、鉄筋と溶接金網を入れて、コンクリ−トを打ち込む工事になった。更に、床のコンクリ−トスラブの打ちかえだけではなく、1階から3階部分の天井の補修も必要になり、約1,280平方メ−トルにも及ぶ補修工事と、新たに耐震用の鉄骨の梁を補強するという大工事になった。
 工事費の2億7千万円余は、開会中の議会に緊急上程され可決されたている。昭和40年代後半に建てられた校舎で工事の補強のやり直しは、神奈川県でも初めてとのことだが、全国に同様な事例がある可能性は高いと思うのである。


建築物の耐用年数