平成7年から8年にかけて、全国の自治体で「官官接待」に伴う食料費などの不適切な支出が問題になり、住民による監査請求、住民訴訟が相次いだ。
会計検査院が、明らかにした食料費等の流用の調査結果の総額は全国で約55億円にものぼっていた。
静岡県においても然りで、平成8年9月19日、県の監査事務局は、前年度における支出のうち、食料費、使用量及び賃借料の支出について不適切な会計処理、いわゆる「預け金」の事実があったとする監査結果を公表した。
この「預け金」は、知事部局の11部局と教育委員会において、平成6年度末に1,263万円余が捻出され、翌7年度にも新らたに299万円余を発生させていた。同年度中に費消した額は630万円余、差引年度末残高は932万円余にも達していた。
当時、当局は、「預け金」は予算編成時に想定できなかった活動が必要な場合に備えて行ってきたもので、今後は弾力的な予算執行システムを構築するなど善処し、こうした公会計の制度的疲労を是正していくとの説明を受けて、県議会は「公金の適正な使用を求める決議」を全会一致で採択し、当局の努力に期待することとして矛を収めた経緯があった。
ところが一昨年来、複数の財務事務所の内部告発から公金の不正使用に係る公金横領事件が発覚、とうとう現職と県職OBから逮捕者を出してしまった。この事件を発端に、不適切な事務処理により捻出された「事務所運営費」いわゆる「プ−ル金」、〜前回はこれを一括して「預け金」と称していたが〜の問題が再燃したのである。
「預け金」の時もそうだったのだが、職員同士が示し合わせて実行する「出張費」などの出金操作を、議会側がチェックすることは不可能に近いこともわかっていたから、再び当局にだまされたことになる。
免責を条件にした県当局の調査で、14年度末における「プ−ル金」の総額は1億4千2百万円余という巨大な数字になっていることが分かった。最初に問題提起され、改善されたはずのた平成8年度末にも、なお2億5千3百万円余の額が存在していたことも合わせて公表された。
知事を含めた三役と教育長は減給処分とし、次にプ−ル金の存在が明らかになった部局長、各所属の長等に対する処分が9月に行われ、知事部局で懲戒戒告51人、文書注意100人、文書厳重注意6人、教育委員会で懲戒戒告19人、文書注意17人、文書厳重注意9人と、合わせて202人にのぼった。
平成8年度におけるあの大騒動を忘れたかのように、平成9年度から昨年度までに費消された額が1億1千1百万円余も達するという事実には、開いた口がふさがらない。
しかも使途不明額が5千2百万円もあった。公金というものに対する概念、倫理観の欠如も甚だしいとしかいいようがない。
議会は再び「公金の適正な執行を求める決議」を行った。再発防止は、とにもかくにも職員の自覚と組織としてのモラルに頼るしかないのである。 |
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再び県庁の「プ−ル金」