地球上に存在する水は、海水が97,5%を占めていて、淡水はわずかに2,5%でしかない。この地球全体の水のうち70%が極地にあり、29%は地下水で、人類が利用できる水は、地球全体の水の0,08%以下であるといわれている。
 また、2000年版資源白書によれば、世界の一人当りの生活用水使用量は一日約170リットル、これに対して日本人は約2倍の一日約320リットルも消費している。
水は限りある資源というより、地球を循環する資源として捉えられてきたことと、またその安全性という面からも、民間企業による水道事業は馴染まないというのが世界の共通認識であった。
 しかし1980年代にいたって、財政的な面と、非効率的な面の両面からイギリスにおいて、水道事業の民営化が実施されたのを契機にして、ヨ−ロッパや開発途上国の各都市において水道事業の民営化が加速されていった。
 かってオ−ストラリアに、行財政改革の先進事例を視察したおり、訪れたシドニ−市において水道事業が民営化されていたことを思い出す。たまたまその時は、同市全域で水質汚染が発生、給水停止措置がとられていた。私たちは、ホテルが朝晩用意するミネラルウォ−タ−だけが頼りという2日間の滞在生活を強いられた。
 さて当然、我が国における水道事業は、地方公営企業法によって地方公共団体が管理運営することとなっているが、全国の自治体の公営事業の官民の役割や民営化の促進について研究を続けてきた日本政策投資銀行が、先頃、香川県善通寺市と共同で、同市の水道事業の民営化について検討を開始するというニュースが流れた。
 同市の水道事業における給水世帯数は約1万1,700戸と、モデル事業を実施するに当たって最適な数字だという。
 そして、同市の水道事業会計は、これまでに人件費などの削減に努めるなど、徹底した改革を行っており、過去の10年間の水道料金を据え置いたままで なお黒字経営となっているということである。
 しかし、同市では、事業開始からすでに35年を経過して給水管などの老朽化が進んでいることから、いずれ早い段階で次の設備投資の必要性が検討課題となっていたことから、投資銀行の申し出は渡りに船だったと思う。
 報道によれば、同市では単なる管理運営の委託だけでなく、老朽施設の更新や新しい設備投資も含めた民間委託も視野に入れているという。
 仮に民営化を実施するということになれば、現行法制度上の問題をクリア−することはもちろんであるが、オ−ストラリアのシドニ−市の例を見るまでもなく、市が水道水の安全性とサービスの質の低下などに対するチェック体制をどう整えるかが、最大の課題だろうと思われる。
 いずれにしても、水道事業民営化への試みは全国的に初めてのケ−スだけに、このモデル事業の行方を見守りたいものである。  


水道事業民営化