昨年5月、世界保健機関(WHO)は、その総会で「たばこ規制枠組み条約」を採択した。
これに先立つ平成14年7月に、我が国は「健康増進法」を制定し、同年8月の公布を経て、昨年5月に施行された。同法第5章第2節「受動喫煙の防止」における第25条で、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数のものが利用する施設を管理するものは、これらを利用するものについて、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と規定した。
この条文の中の「その他の多数のものが利用する施設」には、鉄軌道駅、バスタ−ミナル、航空旅客タ−ミナル、旅客船タ−ミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテルや旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場なども、当然含まれるものと解釈される。
受動喫煙は、流涙、鼻閉、頭痛、呼吸抑制、心拍増加、血管収縮などで、人体に悪影響を及ぼすとされ、肺がんや循環器系疾患などのリスクも大きいとされている。現に、IACA(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこをリスクが最も大きいとするグル−プ1に分類している。
世界各国のたばこ規制の現状は様々だが、たばこの広告については、世界で一番早く法律で規制したイギリスをはじめ、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツ、韓国などが、電波媒体での広告を禁止している。また、オ−ストラリア、スウェ−デン、ノルウェイ、シンガポ−ル、中国、台湾などでは、電波媒体、印刷媒体を問わず全ての広告が禁止である。
我が国政府は、法的規制が困難として、業界による指針改正と自主基準の見直しで対応することを決めている。早速、日本たばこ産業等が組織する日本たばこ協会は、今年から新聞広告の掲載回数の制限や、電車やバスの車内広告を取りやめることを発表し、この3月には、新聞やテレビを通じて禁煙マナ−の啓蒙広告を集中的に行った。新聞では「はじめに言います。ごめんなさい。」とうたい、喫煙環境整備の不十分だったことを初めて謝罪した。テレビコマ−シャルでは、「たばこを持つ手は、子供の顔の高さだった。」と歩きたばこの危険性を指摘した。
本県議会でも、県民健康条例を制定しようと制定検討会を立ち上げたが、完全禁煙化か喫煙一部容認かと、たばこの規制方法のところで強硬派と穏健派に二分されたまま立ち往生している。結局のところ、嗜好品である喫煙による健康へのリスク負担は本人が負えばいいのだが、非喫煙者のリスク回避は、行政が負うことになるのだろう。
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タバコの受動喫煙