東大生が大麻所持および吸引で逮捕された。今年に入ってから、上智大生や中大生などが同容疑で逮捕されている。昨年、薬物に絡んで逮捕、送検された検挙者数は1万7千人。うち覚せい剤は、8割以上の1万5千人である。中学生や高校生をはじめとする未成年者の摘発が5年連続して千人を超しているという事実には背筋が氷る。今日、覚せい剤は第三の乱用期といわれている所以だ。
 留学や海外旅行などが当たり前の時代となり、法規制のない外国で大麻を経験し、そのまま中毒になってしまう若者もいると聞くが、もっと大きな要因は、いわゆる合法ドラッグの存在だといわれている。英語のドラッグ(drug))は、薬、薬剤、麻酔剤、麻薬などを意味するが、カタカナで日本語として使われる場合は、主として乱用薬物を意味する言葉として使われてきた。合法ドラッグという言葉は、製造、販売業者などが、販売促進と自己擁護のためにあえて作り出した造語であると同時に、その語感からはいかにも法的に許可された薬品だ、という安心感を与え乱用へ誘導しやすい危険性を孕んでいる。表向きは、たとえば芳香剤やビデオヘッドクリ−ナ−などと表示されるこれらのドラッグは、雑誌などの通信販売、インタ−ネットサイト、アダルトショップ、ビデオショップ、ドラッグ専門店、さらには露店などで売られている。その気になれば誰でも簡単に手に入れることができる代物だ。
また、法律で販売や譲渡が禁止されている医薬品でも、所持や使用が禁止されていない向精神薬や、パ−キンソン病やアルツハイマ−病などの精神神経疾患に使われてきた薬剤や一種のハ−ブ剤などを組み合わせたものなど、医師の処方を必要としないスマ−トドラッグと呼ばれるものも出回っている。若者たちが最初は興味半分、おもしろ半分でこれらのものに手を出して軽い幻覚作用や興奮状態を体感し、エスカレ−トしていくことになる。
警察も、「麻薬および向精神薬取締法」「あへん法」「大麻取締法」「覚せい剤取締法」などに規定のない、あるいはすれすれで法の網をくぐるこれらの薬物に対する対策に手を焼いているのが現状である。
東京都は、平成8年からこうした脱法ドラッグを購入し、調査を続けて違反業者の指導や取締まりを強化する一方で、広告や食品、業界関係団体などへの周知徹底と、違反商品名の公表など都民への情報提供を行っているが、いたちごっこが続く。
フリ−タ−やニ−トが増え、まじめに働こうとする若者たちが減っているように感じる今日の社会の中で、健全な青少年の育成、さらに大きくウィングを広げれば少子化対策の一環としても、一行も早く法改正による若者たちへの被害防止が急がれる。


合法ドラッグ